勇者「まずは仲間を集めなくてはならんぞこれしかし」 2/7

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北の街

勇者「ふう……なんとか日が高いうちに着けましたね」

僧侶「はい」

町民「はぁ……今月でもう3人目か……」

町民「俺の城下のほうへ引っ越そうって思ってるよ」

町民「だよなぁ……王が屑だけど……ここよりははるかに……」

勇者「あの……何かあったのですか?」

町民「ん?旅の人か?」

僧侶「はい。今、来たばかりです」

町民「悪いことは言わない。すぐに出ていきなさい」

勇者「どうしてですか?」

町民「この街には今、殺人鬼がいるんだ」

僧侶「殺人鬼……」

町民「もう何人も殺されてるんだ……ホントに恐ろしいよ」

勇者「殺人鬼……」

宿屋

店主「と、とまるんですか?」

勇者「ええ……野宿のほうが怖いですから」

店主「わ、わかりました……一泊10Gです」

僧侶「では、これで」

店主「部屋は二階になります」

二階

僧侶「ふう……疲れましたね」

勇者「あの……」

僧侶「なにか?」

勇者「別の部屋をとったほうが……」

僧侶「路銀がありません。同室で寝ましょう」

勇者「しかし……」

僧侶「それに殺人鬼から私の身を勇者様に守って頂かないと」

勇者「……わ、わかりました」

僧侶「……」

勇者「―――僧侶さん、お風呂空きました」

僧侶「あ、はい」

勇者「何かありましたか?」

僧侶「この街は夜になると随分静かになりますね……少し怖いぐらいです」

勇者「殺人鬼がいるから警戒するのも仕方ないのでは?」

僧侶「まあ、そうですね」

勇者「お風呂、どうぞ」

僧侶「はい。すいません。入らせていただきます」

勇者「……」

勇者(確かに静かだ……)

勇者(このままでは普通の生活が送れないだろう……)

勇者(よし……)

公園

勇者「……灯りが一つもないなんて……人がいなくなったみたいだ」

勇者「殺人鬼か……一体、どんな奴……」

「……うぅ……」

勇者「!?」

勇者「誰かいるんですか!?」

「た……すけ……」

勇者「……貴方は!?」

宿屋

僧侶「勇者様がいない……全く……」

勇者「―――僧侶さん!!」

僧侶「もう!心配するじゃないですか!!―――あ」

勇者「この人の傷を!!」

僧侶「わかりました!!」

「うぅ……」

僧侶「ふう……落ち着きましたか?」

「すいません……」

勇者「一体、どうしてあんな傷を?」

「それが……この街の人たちに……」

僧侶「どういうことです?」

「わかりません……」

勇者「俺、訊いてみます。何があったのか」

僧侶「勇者様、危険ですよ?」

勇者「僧侶さんはこの方をお願いします」

僧侶「わかりました……」

「……」

勇者「それでは」

僧侶「お気をつけて」

「………」

住宅街

勇者「夜分、恐れ入ります!!」

勇者「……ここもいない」

勇者「警戒しているのか……?」

勇者「それにしては……静かすぎる……」

勇者(本当に誰もいないような……)

スライム「きゅぷー!?!?」

勇者「な!?街中にスライム!?」

スライム「きゅぴー!!きゅぴー!!」

勇者「……なんだ?様子が変だ」

スライム「きゅぴー!!きゅぴゆー!!」

勇者「そっちに何かあるのか?」

スライム「ぷるぷるー!!」

勇者「……よし、案内してくれ」

宿屋

勇者「宿屋じゃないか……」

スライム「きゅぷぅぅ……きゅぴ!!」

勇者「あ、待て!!―――行ってしまったか」

勇者「何があるというんだ……?」

二階

勇者「――僧侶さん、すいません」

殺人鬼「お?なんだ、もう帰ってきたのか?」

勇者「お前は!?」

殺人鬼「ぎゃははは!!」

僧侶「くっ……!」

勇者「貴様……その人にそれ以上なにかしてみろ……絶対に許さないぞ」

殺人鬼「ぎゃはははは!!!!そりゃあ、無理な注文だぁぁ!!!」

勇者「やめ―――」

「させるかぁぁ!!!」

勇者「え?」

殺人鬼「てめえ?!!今、くたばったはずじゃあ!?」

武道家「やはり……お前が殺人鬼だったんだな」

勇者「あなたは!?」

武道家「自分は旅の者です。この宿屋の店主は旅人を襲っては私腹を肥やしていた狂人です」

殺人鬼「くそが……黙って死んでいればいいものを……」

勇者「そうだったんですか……」

殺人鬼「ぎゃははは!!もう町民は外に出てくれないからなぁ!!旅人を殺すしかなかったんだよ!!」

勇者「外道め……」

僧侶「ゆう、しゃ……様……」

勇者「こちらへ」

武道家「その人は自分の恩人だ!!貴様は我が拳で砕いてみせる!」

殺人鬼「やってみろ!!ぎゃはははは!!!!」

勇者「加勢します!」

武道家「助かります!行きましょう!!」

殺人鬼「―――が……!?」

武道家「ふぅ……」

勇者「こいつは然るべき場所に預けないと」

武道家「それは自分がやりましょう。勇者殿はあのご婦人の手当てを」

勇者「そうだ!?僧侶さん、大丈夫ですか!?」

僧侶「は、い……武道家様が守ってくださいました……」

勇者「申し訳ありません……俺が守らなくてはいけなかったのに」

僧侶「いえ……勇者様はこうしてすぐに駆けつけてくれたじゃないですか……十分、守ってくれましたよ」

勇者「僧侶さん……」

武道家「……お二人は……恋仲か何かなのですか?」

勇者「な……!?ち、違います!!いや、あの……大事な人では……ありますけど……」

僧侶「ふふ……嬉しいです」

武道家「二人はゆっくりと休んでください。こやつの見張りは自分が引き受けます」

勇者「すいません。お願いします」

早朝 宿屋前

勇者「本当にお任せしてもいいのですか?」

武道家「はい。自分は王城に用事がありますので」

僧侶「それでは……」

武道家「はい。ご武運を」

勇者「ありがとうございました」

武道家「勇者殿にお礼をされるとは……これは我が一族にとって最高の誉れですよ」

勇者「そんな……大げさです」

僧侶「勇者様?」

勇者「はい……また、どこかで」

武道家「はい。また」

武道家「―――あれが勇者殿か……」

武道家「まだまだだが……それなりの人物ではあるようだな」

武道家「また。いずれ会うこともあるかもしれませんね」

街道

勇者「そういえば、ここから次の街へはどのくらいなんでしょうか?」

僧侶「そうですね……ここからだと……」

女性「はぁ……はぁ……」

勇者「あ、僧侶さん、あの人」

僧侶「誰か倒れてますね」

勇者「助けないと!!」

僧侶「あ、ちょっと。そんな無警戒に……!!」

勇者「大丈夫ですか?」

女性「み……ミミズ」

勇者「ミミズ?」

女性「あ、いや……水……」

勇者「水……はい、どうぞ」

女性「やった……いだだきます!!―――ゴクゴクゴク!!!!」

勇者「ああ、あの俺達の分も残してくれると嬉しい……んですけど」

女性「ぷっはぁー!!!いやー!!いきかえったー!!ありがと!それじゃあねえ!!」

勇者「あ―――」

僧侶「待ってください!」

女性「あーん?なによ?」

僧侶「施しを受けておいて、その態度はあんまりです」

女性「うっさいなぁー」

僧侶「む……」

勇者「僧侶さん、落ち着いて」

僧侶「ですが……」

女性「ごめんて。今は先を急いでるの!この先の街まで早く行かなきゃならなくてさ!」

勇者「なにかあるんですか?」

女性「この先の街、どんなとこか知らないわけ?」

僧侶「ええ、生憎と」

女性「魔法使いの街だよ。魔法使いを目指す人たちが世界中から集まるんだよ。で、私は最終試験を終えて戻ろうとしてるわけ」

勇者「それは大変ですね」

女性「そうなの!もうルーラも使えなくて困ってたんだ!いやーだから、助かったよ!サンキュー!!」

僧侶「はぁ……」

勇者「頑張ってくださいね」

女性「うん!んじゃ、また会えたらお礼してあげるー!!」

僧侶「行ってしまいましたね」

勇者「魔法使いの街かぁ……」

僧侶「魔法使いさんが仲間になってくれるといいですね」

勇者「はい。じゃあ、俺達も行きましょう」

僧侶「ですね。水がありませんし……早く行かないと干からびてしまいます」

魔法使いの街

勇者「―――ここが」

僧侶「すごい活気ですね……城下町以上に発展している街があるなんて……驚きました」

勇者「と、とりあえず、宿屋を探そうか?」

僧侶「そ、そうですね……でも、どこを探せば……」

勇者「あ、こっちホテル街って書いてますよ?こっちじゃないですかね?」

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