勇者「まずは仲間を集めなくてはならんぞこれしかし」 3/7

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ホテル

店員「休憩ですか?宿泊ですか?」

勇者「えっと……宿泊で」

店員「宿泊だと600Gです」

勇者「え!?」

僧侶「流石は都会ですね……お値段がすごい」

店員「どうされました?」

勇者「……あ、新しい武器のために貯めてたんだけど……」

僧侶「しばらくこの街を拠点に路銀を集めた方がいいかもしれませんね」

勇者「はぁ……まあ、致し方ないですね」

僧侶「では、これで」

店員「ゴムはご利用になりますか?」

勇者「ゴム?いいえいりません」

店員「では、ごゆっくり」

僧侶「いきましょう」

勇者「僧侶さん!すごい部屋ですよ!!」

僧侶「天井が鏡になってますね……」

勇者「すごい大きなベッドですよ、これ!」

僧侶「もうはしゃがないでください。にしても都会の宿屋は趣が全く違うのですね」

勇者「よし……僧侶さん、一休みしたら街を見に行きませんか?」

僧侶「はい。そうしましょう。武具はともかく、旅の水と食料は買わないといけませんし」

勇者「あと魔法使いも」

僧侶「これだけの都会ですし、一人くらいはいてほしいですね」

勇者「ですね」

中心街

僧侶「―――迷ってしまいそう……」

勇者「あ、僧侶さん、手を」

僧侶「あ、はい」

勇者「こうやって握っていれば逸れることはないですね」

僧侶「……ええ」

道具屋

店員「ありがとうございましたー」

勇者「よかった……ちゃんと買い物ができて」

僧侶「なんか勝手が違うから怖いですね」

勇者「僧侶さん、これ……」

僧侶「はい?―――魔法使い最終試験会場……?」

勇者「外で出逢った人もいるんじゃないですか?」

僧侶「ああ、でも部外者は入れないでしょう」

勇者「外から覗くだけなら」

僧侶「ふふ……そうですね。行ってみましょう」

試験会場

勇者「あそこだ」

僧侶「……何か様子が変ですね」

勇者「なんだろう……喧嘩?」

女性「ちょっと!!どうして私だけが不合格なのよぉ!!」

試験官「どうしてだと……?そんなの技量が足らないからに決まっているだろ?」

女性「な!?」

試験官「他の者はみな三日前にはここに辿り着いている」

女性「ちょ……でも、この日までに街に帰ってきたら合格でしょ!?」

試験官「ただ帰ってくるだけなら誰でもできる。これは魔法使いの試験だ。魔法で帰ってきて初めて合格だ」

女性「そんな話聞いたことないわよ!!」

試験官「当たり前だ。今まで徒歩で帰ってきたのはお前ぐらいだ」

女性「くっ……なによ……!!えらそうに!!!」

勇者「ちょっと!!暴力は―――ぐぁ!?」

女性「あ……な、なによ!!割りこまないで!!!」

僧侶「頭を冷やしてください。暴力での交渉は失敗しかありませんよ?」

女性「……なによ……」

試験官「よかったな。今、私を殴っていたら来年の試験も不合格になっていたぞ?」

女性「くそ!!」

勇者「あ、待ってください!!」

試験官「ふん。君達、あの子の知り合いかね?」

僧侶「まあ、一応」

試験官「悪いことは言わない。彼女とは関わらない方がいい」

勇者「何故ですか?」

試験官「……彼女は魔族だ」

僧侶「魔族……?しかし、人間にしか」

試験官「魔族と人間の間に生まれた者だ。普段はモシャスによって女性の姿に化けているだけだ」

勇者「本来の姿は……?」

試験官「おぞましいドラゴンだ……」

僧侶「……」

試験官「だから関わらない方がいい」

勇者「僧侶さん、俺……」

僧侶「はい。彼女を追ってください。私は、この方ともう少しだけお話がしたいです」

試験官「なに……?」

僧侶「魔族と人間の間に生まれた者を迫害するするのは現代の風潮ですよね?」

試験官「……何が言いたい?」

僧侶「あの人が魔法使いになれないのではなく、貴方達が魔法使いにさせたくないのでは?」

試験官「ふん……推測で語らないで頂きたい」

僧侶「私はここの規則がどうなっているのかは知りません。ですが、彼女の実力を公平な目でみているのかは疑問です」

試験官「下らん。おい、誰か。この部外者を連れ出せ」

警備兵「はっ」

僧侶「……」

警備兵「こっちにこい」

僧侶「はい」

路地裏

女性「はぁ……はぁ……くそ!!くそ!!!いつもだ!!毎年、私だけが僻地に飛ばされて……!!」

女性「余力を残して帰ってくるなんて……絶対に無理じゃん!!!」

女性「………もういいや……もう、私は……」

女性「……人間にも……なれない……」

通行人「あはは、でさー」

女性(みんな幸せそう……)

通行人「マジで!?魔法使いになれたんだー」

女性(なんで……私だけが……こんなにも明るい街で惨めな思いをしなきゃ……)

通行人「―――って!?おい、いってーだろ!?」

女性「……」

通行人「謝ったらどうだ?」

女性「……ろ」

通行人「このブスが!」

女性「……えろ」

通行人「あ?なんだよ?はっきりいえよ?」

女性「―――消えろ!!!ゴミ屑がぁぁ!!!!!」

通行人「―――あ」

勇者「―――ん!?なんだ?爆発音が……!!」

勇者「行ってみよう!!」

「きゃぁぁぁぁ!!!!」

「うわぁぁ!!!魔物だぁぁぁ!!!」

ドラゴン「死ね!!死ね!!!!」

勇者「な!?」

ドラゴン「―――オォォォォォン!!!!」

勇者「ドラゴン……どうしてこんな街中に……いるはずないのに……」

僧侶「勇者様!!」

勇者「僧侶さん、あれ!!」

僧侶「ええ……こんな街中にドラゴンが誰にも気づかれず出現することはありえません……恐らく」

勇者「彼女……ですか」

僧侶「とにかく止めないと、被害が大きくなります」

勇者「しかし……どうやって……」

ドラゴン「ガァァァァァ!!!!」

勇者「……考えている暇はないか」

僧侶「―――援護します!」

勇者「はぁぁ!!」

ドラゴン「ガァァァ!!!」

勇者「ずっ……!?」

僧侶「ルカニ!!」

ドラゴン「……!?」

勇者「―――やぁ!!」

ドラゴン「ギャァァァン……!!!」

勇者「よし!効いたか!?」

ドラゴン「―――くたばれ!!」

勇者「炎!?」

僧侶「危ない!!―――フバーハ!!」

勇者「っ……ありがとう!!」

僧侶「やはり、今の私たちでは……」

試験官「―――皆の者、ドラゴンを囲い込め!!」

魔術師「はっ!!―――ドラゴンは氷系の呪文が弱点だ!一斉に仕掛けるぞ!!」

勇者「な!?」

僧侶「ちょっと、待ってください!!」

試験官「なんだ?この街を脅かす魔物を排除するだけではないか」

勇者「でも、彼女なんですよ!?」

試験官「関係ない。奴はこうして魔物になった。殺すべき対象だ」

僧侶「ですが……」

ドラゴン「ガァァァ!!!」

魔術師「マヒャド!!」

魔術師「マヒャド!!」

ドラゴン「オォォォォォォン……!!!」

試験官「よし!モシャス!!」

女性「……」

勇者「あ……」

試験官「……連れて帰るぞ。やはり、この者は牢に入れておかなくてはならなかったな」

僧侶「そ、そんな……」

勇者「彼女をどうするつもりですか?」

試験官「然るべき機関によって裁いてもらう。これだけのことをしたのだ、もう言い逃れはできん」

僧侶「……貴方がたの責任でもあるのでは?」

勇者「僧侶さん!」

試験官「ふん、試験に落ちたというだけで死傷者を出してもいいと?」

僧侶「……」

試験官「この者には魔法使いになるだけど資質も資格もなかった。それだけだ」

勇者「本当にそうなんですか?」

試験官「ああ。もう彼女は今年で5回も試験に落ちている。なのにこりもせず、本当に馬鹿だったな。これも魔物の血が半分流れている所為だろうが」

僧侶「……っ!!」

勇者「ダメです!!」

僧侶「放して、勇者様」

勇者「暴力はダメです」

僧侶「……すいません」

試験官「気は済んだか?それでは失礼する」

僧侶「確かに死傷者を出した罪は……あります。ですが……」

勇者「……僧侶さん。この街でやり残したこと、ありますか?」

僧侶「え……?」

勇者「すぐにでも出発できますか?」

僧侶「勇者様……」

勇者「水と食糧……武具はもう次の街まで我慢するしかないですよね?」

僧侶「はい」

勇者「では、一度宿に戻りましょう」

僧侶「私は、彼女の居場所を調べてみます」

勇者「はい。お願いします」

ホテル

勇者「……彼女はきっとずっと独りだったに違いない……」

勇者「俺と一緒だ……」

勇者「よし……いこう」

僧侶「―――勇者様、お待たせしました。参りましょう」

魔法使い学校 地下

試験官「……お目覚めか?」

女性「……」

試験官「お前は処刑だ。裁判も略式で行われた」

女性「あっそ」

試験官「短い人生だったな」

女性「……消えろ」

試験官「ふん……」

女性「―――何が短い人生だよ……」

勇者「―――お邪魔しまーす」

僧侶「誰もいませんね」

勇者「今のうちに……」

女性「ん……?だれ?」

勇者「どうも……今、助けますね」

女性「……なんで?」

勇者「誰しも死にたくないでしょう?」

僧侶「はい」

女性「……馬鹿ね。ここは鍵で開けないの。呪文じゃないとね」

勇者「呪文……?」

僧侶「ニフラム!―――ダメですね」

女性「……早く出ていって。目障りだから」

勇者「でも……」

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