勇者「まずは仲間を集めなくてはならんぞこれしかし」 4/7

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女性「もういい……生きるのに疲れちゃったし……」

僧侶「生まれてからずっと迫害を?」

女性「……ねえ、どうして魔族と人間の間に子供が生まれると思う?」

勇者「え……それはやっぱり、禁断の愛?」

女性「あははは!!アナタ、童貞?」

勇者「な!?それは関係ないでしょう!?」

女性「早くやってあげなよ」

僧侶「な、なにをですか!?やめてください!!」

女性「……人間の実験。普通に考えて人間と魔物が恋に落ちるなんてありえない」

勇者「実験って……どのような?」

女性「魔王の脅威は勿論、魔物の凶悪化が進む中で人間が考え出した兵器よ」

僧侶「まさか……無理矢理な交配を?」

女性「試験管に人間のと魔物のものを入れてね。完成したのが私」

勇者「そ、そうなんですか……」

僧侶「ハーフは人間が自ら生み出していたなんて……」

女性「そう。人間が生み出した癖に人間は私たちを気味悪いって疎むのよね。笑っちゃうわ」

勇者「……しかし、そんな実験を王が許すとは思えません。そうなると非合法な人体実験として摘発されるはずでは?」

女性「言ったでしょ?魔物の凶暴化に備えてのこと……この免罪符があれば……」

僧侶「王も認める?」

女性「正解。この実験は王が認めたものよ」

勇者「そ、そんな馬鹿な!!王は!!だって、王は民を統べる御人……」

女性「なに?王様を崇拝してるの?珍しいわね、ボウヤ」

僧侶「この方は、勇者様ですので。王のことを信頼しています……心から」

女性「勇者……ああ、王様の狗か」

勇者「……愚弄は許しません」

女性「……ごめん。でも、私は王を好きになんてなれないから」

僧侶「……」

女性「さあ、お話は終わり。帰ってくれる?私は死んで罪を償わないといけないの」

勇者「死ぬなんて許さない」

女性「なんですって?」

勇者「貴女は生きるべきだ……罪を償うために」

女性「馬鹿言わないで」

僧侶「私たちとともに、魔王を倒しませんか?」

女性「……それで、英雄になれって?確かに英雄になれば罪は消えるかもねー」

勇者「いいえ。貴女は人を殺めた。英雄になってもそれは消えない」

女性「なによ……じゃあ、どうしろっていうのよ!!」

勇者「それを探しましょう。俺達と生きて。死ぬ以外の償う方法を一緒に」

女性「……なんで、そこまでするの?あなた達には関係ないじゃない」

試験官「―――良い考えだ」

勇者「!?」

僧侶「あなたは!?」

試験官「このゴミが魔王討伐の役に立てるかは甚だ疑問だが、盾ぐらいにはなるでしょう」

勇者「……」

僧侶「アナタ……」

試験官「それに万が一、魔王討伐に成功すれば我々の考えは正しかったといえる。研究も進んで行くことになる」

勇者「我々……まさか、貴方が人体実験を?」

試験官「そうです。そもそもその娘はこの街で生まれた珍獣ですからね」

女性「……」

僧侶「それなら、もっとやり方があったんじゃ……!!」

試験官「その娘は近年稀にみる成功例。人間らしい生活を送ってもらいたかったのに……魔法使いになると言いだしてね」

勇者「何か問題でもあるんですか?」

試験官「魔法使いになれば戦争に赴くこともある。そのとき人間を裏切ってもらっては我々が困るのですよ」

僧侶「それで……この街に閉じ込めておくために……」

試験官「試験のときのこの娘のためだけに監視役を何人も割かなくてはならず、大変でね」

勇者「……」

女性「くそが……」

試験官「ですが、勇者様の傍にいるのだったら構いません。その娘を存分に御使いください」

僧侶「使うって……」

試験官「……まあ、裏切られて死んでも私たちを怨まないように」

勇者「わかりました」

試験官「アバカム……貴女には魔法使いとして生きることを特別に許します。はい、これ。卒業のときに授与される杖とローブ」

魔法使い「……」

試験官「では、よろしくおねがいしますね。勇者様。ああ、そうそう。死体はいりませんから」

勇者「……行きましょう」

僧侶「さ、歩けますか?」

魔法使い「歩けるわよ……うるさいわね」

試験官「ご武運を……ふふ」

街道

勇者「あの……これからよろしくお願いします」

魔法使い「ふん……」

僧侶「……」

魔法使い「……いいの?」

勇者「え?」

魔法使い「罪人と一緒にいるなんて、やりにくいでしょ?」

勇者「そんなことは……」

魔法使い「罪を償う方法……そんなものない」

僧侶「あ……」

魔法使い「生きて魔王を倒したら、きっとまた私みたいな子がこんどは大量に生まれる」

勇者「王に進言します」

魔法使い「無駄よ……そんなことしたって」

勇者「……」

魔法使い「そんな世界になるなら……私は死んだ方がいい……途中で死んだほうが良いに決まってる」

王城

王「……勇者の動向は?」

兵士「はっ!数日前、魔法使いの街にて実験体を仲間に加えたとの情報が」

王「ほお……あの出来そこないのドラゴンか」

兵士「はっ」

王「それは面白い……くくく……討伐が叶えば奴らも狂喜乱舞することだろうな……そして我への献上も増える……ふふふ」

兵士(屑が……)

兵士「―――王!!王子が戻ってまいりました!!」

王「おぉ!!早く通せ」

王子「お父様。ただ今、戻りました」

王「久しいな。見聞の旅はどうだった?」

王子「はい。自分としても収穫が多かったです」

兵士「北の街の殺人鬼を捕えて戻られたのですよ!」

王「わっはっはっは!!流石は我が息子!!鼻が高いわい!!」

王子「……」

漁村

勇者「はぁ……ここまで長かったですね」

魔法使い「全くよ……もうだめ、歩けない……勇者ーおぶってよー」

勇者「ええ?」

魔法使い「はやくー!!つーかーれーたー!!」

勇者「はいはい」

僧侶「勇者様!!」

勇者「よいしょっと……ここで駄々に付き合ってたら日が暮れますし」

魔法使い「やっほー!らくちんじゃーん!!」

僧侶「もう……」

勇者「とにかく、宿を探しましょう」

僧侶「ですね」

魔法使い「おい!勇者!!アソコに船があるよ!!すっごいねー!!」

勇者「はいはい。すごいですね」

僧侶「……はぁ」

宿屋

勇者「では、買い物に行ってきます」

僧侶「はい。お願いします」

魔法使い「一緒に行けばいいじゃん」

僧侶「ダメです。逃げないように見張ってないと」

魔法使い「ちっ……いつか犯してやろうか」

僧侶「何を!?」

勇者「仲良くしてくださいよ?」

魔法使い「べーっだ!!」

僧侶「ふん!!」

勇者「……」

道具屋

勇者「では、これで」

店主「どうも……あなた、旅の方ですか?」

勇者「ええ、そうですけど?」

店主「この先は危険ですよ?」

勇者「危険とは?」

店主「最近、魔物の侵攻がすごくてね……もう手に負えないんだ」

勇者「そんなに?」

店主「ええ。魔王が大規模な戦争を仕掛けるんじゃないかって噂もあって……この漁村も危ないんだよ」

勇者「そうですか……魔王が戦争……」

店主「陸路は危険だから、海路にしたほうがいい」

勇者「でも……船が……」

店主「それなら余ってる船を使えば良い。この漁村も人が少なくなって、乗り手が激減したからな」

勇者「いいのですか……大事な船を使っても……」

店主「ええ。どうぞどうぞ」

勇者「では、お言葉に甘えて」

店主「……」

勇者「ありがとうございました」

店主「いいよいいよ……ヒヒ」

宿屋

勇者「ただいまもど―――」

魔法使い「このやろー!!!」

僧侶「ちょ!!まくらは一つまでのルールですよ!!」

魔法使い「うるさい!!あんたのその真面目なとこがきにくわないのー!!!」

僧侶「なんですかそれは!?」

勇者「あの……何を……ぶっ!?」

僧侶「あ……勇者様」

魔法使い「あーん!!勇者ーきいてよー!!僧侶がいきなり枕で私をぶつんだよー!!」

僧侶「な!?違います!!私はこれからのことを彼女と相談しようとしたら、いきなり枕を投げてきて―――」

勇者「はぁ……」

魔法使い「勇者ーそれよりはらへったぞー」

僧侶「もう!!何なんですか!!貴女は!!一つの話題を終わらせてから次の話題にですね―――」

魔法使い「うっさい、おばさん」

僧侶「まだ16歳です!!」

勇者「はい、どうぞ。パンですけど」

魔法使い「やったー!はむはむはむ」

僧侶「勇者様、甘やかしてはダメですよ」

勇者「まあ、まあ。一々、反応していたら話が進みませんから」

僧侶「それは……」

魔法使い「べーっ」

僧侶「む……」

勇者「それより今後のことですけど―――」

漁村 中央広場

店主「情報通り勇者一行だ」

村民「ヒヒ……よくやったな?尾行任務、御苦労」

スライム「あ、あの……」

店主「なんだ?」

スライム「あ、あの人たちは……そんなに悪い感じはしないよ?」

村民「魔王様に盾突こうとする人間だ。魔王様に刃向うことは大罪。殺さなくてはならん。そうだろう?」

勇者「―――というわけで、海路で魔王の城を目指すことにしました」

僧侶「えっと……魔王の城がある孤島までは……日数的にはそれほどでもありませんね」

魔法使い「……船をもらったの?」

勇者「はい。どれでもいいと」

僧侶「良い人たちですね」

勇者「ええ。まあ、乗り手がいない船という条件ですけど」

魔法使い「ふーん」

僧侶「では、どの船がいいか見に行きましょうか?」

勇者「そうしましょう」

魔法使い「船ねえ……おばさん」

僧侶「な……!?」

魔法使い「親切って怖いよ?」

僧侶「アナタの口の悪さよりはマシです」

魔法使い「……まあ、いいけど。私的には死んだ方がいいしー♪」

僧侶「……?」

船着き場

勇者「おおー。どれも立派ですね」

僧侶「ええ。これ、本当に貰ってもいいんでしょうか?」

魔法使い「……」

勇者「どうかしました?」

魔法使い「べっつにー」

僧侶「……?」

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