王城 謁見の間
王「嘆かわしいぞ!!!勇者であることを驕ったか!!!」
勇者「王、何のことかわかりません!!」
王「ええい、白を切る気か……よかろう、連れて行け!!」
兵士「は?」
王「何をしておる!!何をしてもかまわん!!勇者が漁村でなにをしたのか吐かせろ!!」
勇者「ちょっと待ってください!!!」
王「僧侶と魔法使い、あと魔物は好きなようにして構わん」
勇者「王!!俺の話を聞いてください!!!お願いします!!!」
王「ええい!!早く連れて行け!!」
兵士「……っ!―――勇者殿、こちらへ」
勇者「王!!お願いです!!!俺の話を―――」
王「ふん……勇者なら全てが許されるとでも思ったか……許されるのは我、王だけだとういうのに……なあ?」
王子「……少し、席を外します」
王「そうか。もうすぐ、夕食の時間だ。遅くならんようにな」
地下牢
看守「……勇者殿!?」
勇者「……」
兵士「牢屋に入れておけ」
看守「しかし……」
兵士「王の命令だ」
看守「は、はい……こちらへ」
勇者「……」
僧侶「あ……勇者様」
魔法使い「おかえりー。早く処刑されないかなー?」
スライム「勇者さーん!!心配しましたー!!」
勇者「はぁ……何を聞いてくれなかった……ごめん、魔法使いさん」
魔法使い「だから言ったでしょ?私の存在は、無かったことになるだけ。魔王倒しちゃったら大変よ」
僧侶「……ん?誰ですか?」
王子「―――勇者殿、お久しぶりです」
勇者「貴方は……!?」
魔法使い「わお!!イッケメーン!!!」
僧侶「王子!?」
スライム「こ、こんにちは!!」
王子「はい、こんにちは」
勇者「王子がこんなところに来ては……」
王子「構わない。今は王子ではなく、勇者殿と共に殺人鬼を捕えた武道家としてお話しにきました」
勇者「え……?」
僧侶「あ、あのときの武道家さん……?」
魔法使い「ねえねえ、紹介してよー」
勇者「こ、これは……その節はとんだご無礼を!!」
僧侶「わ、私も……気安く話してしまって……!!」
王子「顔を上げてください。アナタの言う通り、ここに王族は来てはならない。―――だから、今は王族であることを捨てている」
勇者「王子……」
王子「勇者殿、何があったのですか?この短い旅で知ったことを自分に教えてください」
勇者「―――以上です」
王子「……そうですか……父である王がそのようなことに手を染めていたなんて」
僧侶「あの……王子が気にするようなことでは」
王子「何を仰いますか。これは我が一族の恥だ。……魔法使い殿」
魔法使い「あ、は、はい!なんでも言って!」
王子「この場を借りて……謝罪する」
勇者「王子!?土下座なんておやめ下さい!!!」
スライム「ぴぎゅー!ここ床が汚いですよー!!」
魔法使い「……そ、そうよ。服が汚れるでしょ……?」
王子「我が名よりも汚れた場所などない」
僧侶「王子様……」
魔法使い「やめてよ。ここには王族なんていないんでしょ?」
王子「……」
魔法使い「ほら、顔を上げて。服が……汚れてるわ……」
王子「すまない。この事は必ず公の場で謝罪すると誓う」
勇者「王子、実験は……」
王子「分かっています。即刻中止させ、技術の全ても廃棄させます」
魔法使い「あの……私みたいな子がまだ何人がいるはずなんだけど……」
王子「はい。その子たちも責任を持って自分が引き取りましょう」
スライム「かっこいー!!ぴぎゅぅぅ!!」
魔法使い「そ、それって!!あの!!私も入ってます!?」
王子「ええ、勿論です」
魔法使い「―――やったー!!!王子様ゲットだ~!!!!」
勇者「死にたかったんじゃないんですか?」
魔法使い「お……バ、バカ!!もういいわよ!!こうしてちゃんと私を認めてくれるならね!!」
僧侶「分かりやすい人……」
魔法使い「うっさい!!おばさん」
僧侶「だから、まだ16歳ですってば!!」
王子「それでは少しばかりお待ちください。すぐにここから―――」
兵士「王子!!大変です!!東から魔族の大軍が攻めてきているとのことです!!すぐに王の元へ!!」
謁見の間
王「すぐに兵を集結させろ!!」
王子「―――すいません、遅くなりました。戦況は?」
王「東から万を超す大軍を引き連れて魔王が攻めてきておる」
王子「……戦争か……無理もないでしょう」
王「何がいいたい?」
王子「いえ」
王「しかし、急な進撃だ……如何せん戦力が足りぬ」
王子「……」
王「おお!そうだ、勇者たちも隊に加えろ」
王子「何を言っているのですか!?彼らは長旅で疲弊し、更に牢獄という場所で精神的にも……!!」
王「構わぬよ。勇者は王のために存在する。王の危険に牢で寝かせておくわけにもいくまい?」
王子「あなたって人は……!!」
王「勇者たちを連れてこい!!今すぐだ!!」
兵士(……王子……!!)
勇者「王……」
王「勇者よ、戦え」
僧侶「……」
魔法使い「何だこいつ、えらそーに」
王子「すまない。自分の父です」
魔法使い「お、お父さんでしたか!?これはこれは!!なんか聡明そうですね!!」
スライム「ぴぎゅぅぅ……」
王「さあ、行け!!国民の脅威を打ち崩してこい!!!!」
勇者「……王子は?」
王子「自分は―――」
王「王子、こちらへ」
王子「……は」
王「(今のうちに隠し通路から我が一族は遠くへ逃げる。準備だけはしておけ)」
王子「……っ」
王「(王族は死んではならん。わかるだろ?死ぬのは平民だけでよいのだ)」
街の外
魔王「あそこに人間の王がいるのだな?」
魔物「はい」
魔王「ふん……よし、進むぞ」
魔物「全軍、前進!!」
魔物「「オォォォ!!!!!!」」
魔王「同胞の恨みは必ず……!!!」
兵士長「―――来たぞ!城下町には指一本触れさせるな!!!」
兵士「「おおおお!!!」」
勇者「始まった……」
僧侶「……勇者様」
勇者「大丈夫、僧侶さんは守ってみせる」
魔法使い「あたしもーまもってー♪」
スライム「ぴぎゅぅぅ!!勇者さん!!ぼく、絶対魔王様に怒られますー!!!」
勇者「はいはい……みんなを守るよ……絶対に」
城下町
神父「はやく!!みなさん、避難を!!」
神父(国王……民よりも自分の身を優先させますか……)
僧侶「神父様!!」
神父「おぉ……どうしてここへ?」
勇者「この街を守るために戻ってきました」
神父「勇者様……そうですか。この娘を今まで守ってくれてありがとうございます」
魔法使い「だれー?このジジイ?」
僧侶「マホトーンくらわせますよ?」
魔法使い「ちょ!?」
神父「ふふ……可愛いお友達も増えたみたいですね」
勇者「街が戦火に巻き込まれる可能性が十分にあります。神父様も速やかに避難を」
神父「……僧侶?」
僧侶「はい」
神父「……死なないでください。絶対に」
魔王「よし……全軍、止まれ」
魔物「全軍、とまれー!!!」
兵士長「……」
魔王「―――人間どもよ!!!答えろ!!!我が同胞に何をしたぁ!!!」
勇者「……」
魔王「答えないのなら構わん。貴様たちは数種類の我が同胞を捕え、そしてとある実験をしたな!?」
魔法使い「魔王……こわ」
スライム「ぴぎゅぅぅ……」
魔王「そして生まれた魔族と人間の混血種……。何が目的だぁぁ!!!!」
魔王「兵器の運用……憂さの捌け口……そのためだけに生み出したのか!!!」
兵士長「……答える義理はない!!」
魔王「……そうか。ならばもういい!!―――全軍、突撃!!」
魔物「突撃ぃぃぃ!!!!」
兵士長「怯むな!!いくぞぉぉぉ!!!」
兵士「「おぉぉぉぉ!!!!」」
勇者「……」
魔法使い「あーあ、始まった。―――メラゾーマ」
魔物「ぐわぁぁ!!!」
僧侶「勇者、様……バギクロス!!」
魔物「ひゃがやああ!!」
スライム「ぴぎゅーー!!!やめてーーー!!!」
勇者「魔法使いさん」
魔法使い「また!?私は便利屋じゃないんだけど?」
勇者「お願いします」
魔法使い「はいはい……」
武道家「勇者殿!!」
勇者「王子!?どうして……!?」
武道家「……何も言わず自分を連れていってください」
勇者「王子……」
ドラゴン「はやくのってよー!!!この姿、目立つんだからー!!―――しゃくねつ!!!」
魔王「……む?」
ドラゴン「こんちはー!!」
魔王「……お前は……魔族ではない……そうか、お前が混血か……辛かったであろう?」
ドラゴン「まあ、ね」
勇者「魔王!!」
魔王「勇者か……我に直接挑むとはいい度胸だ」
勇者「……人間を代表して俺が詫びよう!!」
魔王「なに……?」
勇者「人間がしてきたことは許されることではない!!それは分かっている!!」
武道家「ああ!!償う覚悟はある!!」
スライム「魔王様ーー!!もうゆるしてあげてーーー!!」
僧侶「お願いします!!」
魔王「……そして我々が人間に行った行為を詫びればいいのか?」
勇者「その通りだ!!」
魔王「……ふふふ……面白い……」
勇者「魔王……」
魔王「ならば!!その覚悟を見せろ!!!」
ドラゴン「どうやって?」
魔王「貴様たちの王の首を持ってこい」
勇者「……!?」
武道家「それは……」
魔王「出来ぬというなら、この場で刃を交えるしかないが?」
勇者「……」
武道家「自分が―――」
ドラゴン「ちょっと!!それは!!!」
勇者「俺の首ではダメだろうか!!」
僧侶「勇者様!?」
スライム「それはだめですよー!!!」
魔王「……ならんな。貴様はこの国を憂いている。そういった者が死ぬのは国のためにならん」
勇者「魔王……」
魔王「王一人の首で平和が訪れるのだぞ?何を躊躇う?」
勇者「……」
武道家「……」
ドラゴン「いーじゃん、王が死んだって。王子がいるしー」
僧侶「魔法使いさん!!」
勇者「ダメだ……王は……王だけは、人間の手で裁きたい!」
魔王「……下らん。それに何の意味がある?」
勇者「王が全ての人間、魔族、そしてハーフたちに頭を下げなくてはならない」
魔王「首を晒した方がいいだろう?」
勇者「言葉は大事だ。殺したから終わる問題でもない」
魔王「平行線だな……貴様の考えは立派だがこの戦争を止める一手には程遠い」
僧侶「……そんな」
スライム「魔王様のいじわるーー!!!!」
魔王「さあ、早く決断しろ」
王「―――我が息子め……姿が見えぬと思ったら……あんなところで人間を裏切ろうとしておるのか……!!」
王「おい」
近衛兵「はっ!」
王「あのドラゴンに乗っている者を全て射殺せ」
近衛兵「は?しかし、あそこには王子が……」
王「やれ。人間を裏切ったものなど、一族には不要だ」
近衛兵「………」