勇者「いいですよ。大丈夫です」
メイド「そうですか」
勇者「すこし寝ますね」
メイド「はい。では晩餐の準備が整いましたらお呼びいたします」
勇者「はい……」
勇者「……」
勇者(一週間もいたら僕の貞操がどうにかなりそう……)
メイド「勇者様」
勇者「ん……?」
メイド「お目覚めになってください」
勇者「あ、時間ですか……?」
メイド「はい」
勇者「それはどうも―――って、なんですか!?このドレス!!??」
メイド「王子様がそれを着せろと」
勇者「いや!!こんなのないですよ!!やめてください!!」
メイド「申し訳ありません。これも侍女のつとめです」
勇者「……誰が着替えさせたんですか?」
メイド「侍女が5人がかりで」
勇者「僕を起こさないように事を済ませるなんて……」
メイド「侍女ですから」
勇者「……ん?なんだか……違和感が……」
メイド「下着も女性モノにしてあります。ガーターベルトもつけておきました。セクシーです」
晩餐会場
王子「おぉぉぉ!!!勇者様!!お美しいですよ!!!」
勇者「……それはどうも」
兵士「すげー……おれ本当に男か?」
兵士「かわいすぎるだろ……」
兵士「だける……」
勇者(男性の見る目がこわい……)
王「す、すばらしいな……勇者よ、そこに座るが良い」
勇者「では失礼します……」
王子「もう風格が出ていますね」
勇者「……はずかしいんですけど……」
王子「時期になれます」
勇者「なれたくないです……」
王「さあ、勇者よ。宴をはじめよう」
勇者「はぁ……」
王「―――なるほど。魔王とはそのように恐ろしい怪物だったのか」
勇者「はい。辛い旅でした。ですが、僕は人間的にも成長できましたし、掛け替えのない友を得ることが出来ました」
王「そうかそうか」
王子「ですが、これからはもう貴女が辛い目に遭うことはありません」
勇者「え……?」
王子「私が守ります」
勇者「歯、眩しいほどに白いですね」
王「ふふ、この国も安泰ということか」
勇者「だから!!何度も言ってますけど!!僕は男ですからね!!」
王「す、すまん。その格好だと……どうしてもな」
勇者「……」
王子「まだ性別の問題を口にしますか?」
勇者「しますよ!!そこが一番の問題点ですよ!!」
王子「気にすることはありません」
勇者「気にしてくださいよぉ……」
妃の部屋
勇者「つかれたぁ……」
メイド「勇者様、お風呂はどうされますか?」
勇者「え……あぁ……入ります」
メイド「ご案内いたします」
勇者「大丈夫です。昼間に確認しましたから」
メイド「そうですか」
勇者「では」
メイド「おやすみなさい」
勇者「え?」
メイド「いえ。夜は私もここを離れますので」
勇者「ああ、そうですか。一日、お疲れ様でした」
メイド「いえ。これが侍女のつとめです」
勇者「は、はい……」
浴場
勇者「広いお風呂だなぁ……」
勇者「泳いでもいいかな……?」
勇者「……」バシャバシャ
王子「―――おや、勇者様」
勇者「わぁ!!!」
王子「何を驚かれますか?」
勇者「僕が入浴してるんですけどぉ!!」
王子「何を照れることがありますか。男同士なのに」
勇者「卑怯な……!!こんなときだけ男扱い……!!」
王子「背中を流しあいっこしませんか?」
勇者「け、けっこうです!!」
王子「ふふ。この程度で恥ずかしがっていては……夜は……」
勇者「そ、それ以上言ったら……怒りますよ……?」
王子「これは失礼しました。それにしても……その裸体もやはり洗練されている。理想的な肉体といえましょう」
勇者「も、もうでます!!」
王子「そうですか?」
勇者「……」タタタッ
王子「あ―――」
勇者「え―――」ツルッ
王子「危ない!!」パシッ
勇者「あ……どうも……」
王子「ここではあまり走らないほうがいいですよ?清掃が行き届いているとはいえ、水場。滑りやすいですから」
勇者「すいません……ありがとうございます……」
王子「勇者さま……」
勇者「王子……」
勇者「―――ふん!!」ドゴォ
王子「おふぅ!」
勇者「顔が近い!いつまでも腕を掴まないでください!!」
王子「こ、これは失礼しました……。その紅潮した顔も素晴らしいですよ?」
妃の部屋
勇者「もう寝よう……」
勇者「寝間着まで女性モノなんて……」
勇者「下着も全部……」
勇者「もう……どうにかなりそう……」
勇者「いつまでもここにいるわけには……」
勇者「よし……」
勇者「逃げよう……」
勇者「着替えないと」
勇者「……」ゴソゴソ
勇者「うん」
勇者「自分の貞操は自分で守る……!!」
廊下
勇者「……兵士さんに見つからないように」
勇者「……」コソコソ
勇者「ん?」
メイド「……」スタスタ
勇者(あれは……メイドさん……こんな夜中にまで仕事を……?)
メイド「……」コンコン
ガチャ
王子「―――」
メイド「―――」
勇者(何か話している……なんだろう……?)
兵士「勇者殿?なにをされているのですか?」
勇者「きゃぁ!」
兵士「部屋にお戻りください。平和になったとはいえ夜は危険ですよ?」
勇者「は、はい……すいません」
翌朝
勇者「ふわぁぁ」
メイド「おはようございます」
勇者「あ、おはよう……」
メイド「顔を拭きます」
勇者「ちょ……うぷ……!」
メイド「……」ゴシゴシ
勇者「うぷぷ……」
メイド「はい、綺麗になりました。では、今日のお召し物をどうぞ」
勇者「またドレス……」
メイド「王子様のご希望ですので」
勇者「そうですか……」
勇者(昨日のはこれを伝えていたのか……)
メイド「では、お手伝いいたします」
勇者「ひ、ひとりでできますよ!!」
王子の部屋
王子「おはようございます、勇者様。今日も麗しいお姿ですね」
勇者「どうも」
王子「今日は城下を案内しますよ」
勇者「え!?」
王子「この国の民に姿を見せるのも次期王室の務め」
勇者「だから!!一週間の約束ですよね!?」
王子「さ、いきましょう!!」
勇者「やだぁー!!」
王子「わがままいわずに」
勇者「こ、こんな醜態を衆目に晒したくないです!!」
王子「醜態?どこがですか?まるで水面に浮かぶ可憐な月。その秀麗さは如何なる魔物の心もひきつけることやむなし」
勇者「やめてぇ……」
王子「勇者様が出る!!道をあけろぉ!!」
兵士「ははぁー」
城下町
「あれが噂の?」
「可愛いな……」
「この国もきっと今以上に大きくなるよ」
王子「どうですか、勇者様。皆は好意的です」
勇者「そうですね」
王子「このままこの地に骨をうずめても……」
勇者「お断りします!!」
「なんだ、喧嘩か?」
「王子との仲がよくないのかしら……?」
王子「ほらほら。笑顔笑顔」
勇者「あ、はは……」
王子「そう。貴女にはその愛らしい笑窪を浮かべているのが似合っております」
勇者「そ、そうですか……?」
王子「ええ。民も貴女の美しさに酔っているようだ。このまま街を巡りましょう」
兵士「―――以上です!!」
兵士長「うむ」
勇者「なにかあったんでしょうか?」
王子「おい」
兵士長「これは王子に勇者様!!」
王子「何があった?」
兵士長「この民家に盗賊が押し入ったとの情報がありまして」
勇者「盗賊……?」
兵士長「はい。最近、被害が相次いでおりまして、こちらとしても捜索に全力を出しているのですが」
勇者「なにかお手伝いできることがあれば……」
兵士長「いえ!勇者様のお手を煩わせることはありません!!」
王子「その通りです。勇者様はもうこういう危険なことからは身を退くべきです」
勇者「ですが……」
王子「ありがとう。捜索のほう、引き続き頼むぞ」
兵士長「はい!」
王子「どうでしたか。我が街は」
勇者「いいところですね」
王子「そうでしょう、そうでしょう」
勇者「……でも、妃にはなりませんからね」
王子「ふふ、またまた」
勇者「なんで冗談を言っているようにおもうんですかぁ!!」
王子「それでは勇者様、私はこのあと用事がありますので」
勇者「そ、そうなんですか……?」
王子「ええ。おい、そこの者」
兵士「はっ!」
王子「勇者様を部屋までお連れしろ。いいか、くれぐれも失礼のないようにな!」
兵士「はい!」
勇者「……」
王子「では、また夕食のときに」
勇者「わ、わかりました……」