王「我が息子の結婚相手は勇者にしようそうしよう」勇者「え?」 1/6

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謁見の間

王「よく来たな、異国の勇者よ」

勇者「どうも。はじめまして」

王「魔王を倒してすぐに呼び出すのもどうかと思ったのだが、すぐにでも話しておきたくてな」

勇者「なんでしょう?」

王「我が息子、つまり王子と婚姻の儀を交わして欲しいのだ」

勇者「え?」

王「お前ほどの美貌、資質。どれをとっても未来の妃に相応しいと思う」

勇者「あの……僕、男なんですけど」

王「え?」

勇者「え?」

王「そんなに結婚したくないのか?悪い話ではないのだが」

勇者「いえ、本当に男です」

王「またまた、そんな美しい男がいるものか。わっはっはっは」

勇者「……そこの兵士さん」

兵士「はっ」

勇者「こっちにきてください」

兵士「なんでしょうか?」

勇者「……みてください」バッ

兵士「うわぁぁぁ!!!そんな勇者殿!!いきなり―――」

勇者「よくみてください」

兵士「おぉ……」

王「ど、どうした?」

兵士「王、勇者殿は男です。立派な」

王「なんだと……!!」

勇者「もう……」

勇者「それではこれで」

王「ま、まて!!」

勇者「なんですか?」

王「その……王子に会っていってはもらえんか?」

勇者「しかし、結婚はできません」

王「いや……その……王子はお前の写真をみてひとめぼれしてしまってな」

勇者「……」

王「それでその……結婚する気まんまんなのだ」

勇者「男であるということを説明してください」

王「だが……」

王子「―――父上!!勇者様はこられましたか!!」

王「あ、ああ。いるぞ」

勇者「……」

王子「うつくしい……結婚しましょう!!」

勇者「え……」

王子「貴女の写真をみたときから慕情が私の胸に芽生えました」

勇者「はい……」

王子「毎日、貴女の顔が浮かんでは締め付けられるような息苦しさを覚え、夜空に向かって嘆息を吐いていました」

勇者「それは……どうも……」

王子「貴女を想うだけで幸福と不幸が同時に来るようで……私はもう……どうにかなってしまいそうです」

勇者「……」

王子「勇者様……」

勇者「あの……」

王子「私と……結婚をしてもらえませんか?」

勇者「ごめんなさい」

王子「……」

勇者「結婚はできません」

王子「何故ですか?」

勇者「それは……僕が男だからです」

王子「お、とこ……?」

勇者「はい。そこまで愛していただいて大変嬉しく思いますが、お断りさせていただきます」

王子「なるほど……勇者様」

勇者「はい?」

王子「私は性別など気にしない」

勇者「は?」

王「お、おい!!」

王子「私は貴女が好きなのです。女だから、男だからなんて瑣末ごとにすぎない」

勇者「大事だと思うのですけど……」

王子「勇者様……さぁ、結婚しましょう」

勇者「だからぁ」

王子「わかりました……では、一週間だけ私と生活してみませんか?」

勇者「あのですね……」

王子「それで私のことを受け入れられないというなら、潔く諦めましょう」

勇者「……」

王子「一週間、一週間だけ……どうかこの哀れな道化に慈悲を」

勇者「お断りします」

王子「おねがいします。絶対に苦痛を与えたりはしません」

勇者「既に苦痛なんですけど」

王子「この通りです!!」

勇者「……」

王「どうやら諦める気はないようだ。勇者よ、一週間だけでもお願いできんか?」

勇者「でも……」

王子「……」

勇者「……一週間で諦めてくれますね?」

王子「は、はい!!」

勇者「なら、構いません」

王子「勇者様……!!」

勇者「は、はい……」

王子「幸せにしてみせます」

勇者「あの……一週間だけですよね?」

妃の部屋

王子「どうぞ」

勇者「うわぁ……ここが部屋ですか?なんというか一般家庭の家ぐらいありますね」

王子「私の妃になったものは、この豪奢な部屋を使ってもいいのです」

勇者「そうですか」

王子「貴女はここで一週間、過ごしてください」

勇者「いえ。こんあ立派な部屋はいりません」

王子「しかし……」

勇者「私は兵士さんの宿舎でも……」

王子「いけません。兵士といえど男。変な気を起こす輩もいるやもしれない」

勇者「王子が言うんですか?」

王子「わかりました……。では私の部屋で―――」

勇者「ここでいいです」

勇者「ふう……」

勇者「僕の容姿は……本当に女の子みたいだから、よく同姓にも告白されたけど……」

勇者「まさか結婚なんて……」

勇者「……」

勇者「そういえば……」

僧侶『勇者様、将来の伴侶はいるのですか?』

勇者『特にいないかなぁ』

僧侶『では、自分と……』

勇者『いや、僕は男です。貴方も男です』

僧侶『魔法で女になります』

勇者『やめてください』

勇者「旅をしているときも色々あったからなぁ」

メイド「失礼します」

勇者「はい?」

メイド「どうも一週間、身の回りのお世話をさせていただきます」

勇者「そうなんですか」

メイド「よろしくお願いします」

勇者「あの、そんなことしなくても……」

メイド「仕事ですので」

勇者「そうですか?」

メイド「……」

勇者「じゃあ、お願いします」

メイド「はい」

勇者「それにしても立派な部屋ですよね」

メイド「そうですね」

勇者「……」

メイド「……」

勇者「あの……なんでそこで立っているんですか?」

メイド「基本的にこの場所に私はいます。何かありましたらお声をかけてください」

勇者「そうですか……」

メイド「……」

勇者「……」

勇者「す、することがないですね。お話でもしませんか?」

メイド「いえ。侍女と王室の方が私語を交わすのは厳禁です」

勇者「僕は王室じゃないです。お客さんですから」

メイド「……しかし、王子の妃となるのでは?」

勇者「なりません。僕は男ですから」

メイド「……」

勇者「なにか?」

メイド「おとこ……?」

勇者「ええ」

メイド「またまた」

勇者「いやいや」

メイド「どうみても女性……」

勇者「でも、男なんです。身も心も」

メイド「……」

勇者「だから、僕は……」

メイド「そうなのですか」

勇者「え?」

コンコン

メイド「……どうぞ」

王子「勇者様!!」

勇者「どうも」

王子「城内を案内しましょう」

勇者「え……」

王子「さぁさぁ!」

勇者「あの……ちょっと」

メイド「いってらっしゃいませ」

王子「どうですか、この城は。景色もいいし、清浄な空気に包まれている」

勇者「そうですね」

王子「魔王がいなくなってから周辺の魔物も随分と大人しくなりましたし、これも勇者様のおかげでしょう」

勇者「どうも」

王子「だけどまだまだ、世界は、この国は混乱の中です。国の未来は私の双肩にかかっている」

勇者「がんばってください」

王子「私を支えてください……ずっと」

勇者「だから」

王子「そうだ。今宵の晩餐は勇者様のリクエストお応えしましょう。なんでもおっしゃってください」

勇者「……」

王子「肉ですか?魚ですか?」

勇者「僕は男なんですよ?どうしてそこまで……」

王子「性別など関係ないといったでしょう?」

勇者「それでも一国の王子ですか?」

王子「勇者様……?」

勇者「国の未来を考えるなら、きちんと女性を傍に据えるべきです」

王子「……」

勇者「子孫なくして繁栄はありえません」

王子「それなら問題はありません」

勇者「え?」

王子「確かに王と妃の間に子を宿すのが理想ではありますが、それでも必ずしも妃が孕むということはありません」

王子「体質、相性、持病……様々な要因で子が生まれないこともあります」

勇者「それは……」

王子「その場合……どうするか」

勇者「どうするんですか……?」

王子「側室です」

勇者「な……」

王子「だから、勇者様。私との子を宿せないのを気に病む必要など、どこにもありません」

勇者「いや……あの……」

王子「さぁ……国のために尽力を……!!」

妃の部屋

メイド「おかえりなさいませ」

勇者「おぉ……」

メイド「どうかされましたか?」

勇者「王子の熱烈な愛の告白を受けていました……」

メイド「……」

勇者「はぁ……」

メイド「お疲れのようですね。マッサージでもどうでしょうか?」

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