勇者「ないないない!!!!ないわー!!!」
メイド「そうですか?美男同士……特に問題は」
勇者「いや!!なんか妄想しちゃったじゃないですか!!もうやめてー!!」ジタバタ
夜 浴場
勇者「はぁ……」
勇者「今日は一日中、王子を変に意識しちゃった……」
勇者「……」
王子「これは勇者様、奇遇ですね」
勇者「もう狙っているでしょう?」
王子「ふふ」
勇者「もう……」
王子「裸の付き合いもいいものです」
勇者「……あの盗賊たちはどうなりました?」
王子「それが討伐隊が現地に着いたときには蛻の殻で」
勇者「そうですか」
王子「今、更に人員を増やして捜索しているところです」
勇者(てことは今夜の警備は薄いってことか……逃げるには絶好のチャンスだけど……)
勇者(流石に盗賊を放ってはおけない……)
翌日
勇者「あと三日……がんばろう……」
王子「勇者様!!おはようございます!!今日も素敵な衣装ですね」
勇者「貴方が選んだんでしょう?」
王子「さぁ。今日は少し遠出をしませんか?」
勇者「どこにいくんですか?」
王子「近くの湖畔まで」
勇者「んー」
王子「駄目ですか?」
勇者「お付きは何人で?」
王子「兵士が二人に侍女を一人」
勇者「それなら……まぁ……」
王子「ふふ、では行きましょう!!蜜月の我らで逢引を楽しみましょう!!」
勇者「あの!!貴方の脳内で既に結婚しちゃってます!??」
湖畔
兵士「ここです」
勇者「うわぁ……素敵な場所……」
王子「ここは我が国が誇る観光名所でもあります」
メイド「ここでは結婚式もあげることがあります」
勇者「え?」
王子「よし」
兵士「では、こちらへ」
王子「さぁ」
勇者「あのぉ……」
兵士「では、誓いのキスを」
王子「んー……」
勇者「うわぁ!!」ドゴォ
王子「いたぁ!!冗談、冗談ですよ!!」
勇者「はぁ……はぁ……!!」
勇者「はぁ……」
王子「勇者様、お弁当でも」
勇者「いりません」
王子「な、なぜですか……?体調が?」
勇者「ここに来てから僕の体調はすこぶる悪いです」
王子「おいたわしや……」
勇者「あなたの所為です!!」
王子「では、少々お待ちを。食事の用意をさせます」
勇者「……あの」
王子「はい?」
勇者「貴方は……僕のことが好きなんですよね?」
王子「ええ」
勇者「それで一人の女性が望まない子どもを産むことになってもいいのですか?」
王子「え……?」
勇者「どうなんですか?」
王子「もしや側室の……?」
勇者「はい。結婚し始めて子どもが産めないと分かったなら、一国の主として側室との間に子どもを作ることも理解できます」
勇者「国王の務めは国の発展と繁栄。それは子孫なくてしはできません」
王子「ええ」
勇者「でも、僕との間に子どもは作れない。それは最初から分かっていることです」
勇者「なのに側室がいるから問題がないと言い切る貴方には……疑問を感じざるを得ません」
王子「なるほど……。流石は勇者様。侍女のことも気にかけていると。全くもって素敵だ」
王子「その清純な心……内外ともにいじらしい。益々惚れました」
勇者「あのですね……」
王子「わかりました。では、側室とは関係を切りましょう」
勇者「はぁ!?」
王子「次期王は養子でも―――」
勇者「なんでそこまで……!!」
王子「それだけ私は貴方を好きだからです」
勇者「王子……きもい」
王子「ふふ、褒め言葉として受け取っておきます」
勇者「だめだ……この人……」
王子「それでは食事をお持ちします。しばらくお待ちを」
勇者「……」
メイド「勇者様」
勇者「あ……」
メイド「これで分かったでしょう?王子は真剣です」
勇者「でも……」
メイド「無論、あと三日しかございません。それでも心が変わらないようでしたら、この国を去ってください」
勇者「……」
メイド「でも、勇者様には是非とも妃になっていただきたい」
勇者「どうして?」
メイド「それは―――」
盗賊「―――へへ……いたぞ」
勇者「!?」
王子「勇者さまー、食事を―――あれ?」
王子「勇者様!!勇者様!!」
王子「おい!!」
兵士「はっ!!」
王子「勇者様はどうした!?」
兵士「それが少し目を離した隙に……侍女とともに」
王子「何をやっている!!昼寝でもしていたのかぁ!!」
兵士「も、もうしわけありません!!」
王子「くそ……探すぞ!!」
兵士「はっ!!」
王子(胸騒ぎがする……!!)
王子「勇者様……!!」
洞窟
盗賊「こいつがあの王子の?」
盗賊「えらいべっぴんだなぁ」
勇者「貴様ら……!!」
メイド「申し訳ありません……私が人質になったばかりに……」
勇者「何をするつもりだ……!!」
盗賊「そうだなぁ……」
首領「―――まずは身代金だ」
勇者「お前が……ボスか」
首領「ふふ……と思ったが、この美しさ……いいねえ……」ペロッ
勇者「ひっ……!!」
メイド「やめなさい!!その方は未来の妃ですよ!!触れていいのは王子だけです!!」
盗賊「やまかしい!!」ドゴォ
メイド「ふぐぅ!!」
勇者「彼女に手を出すな!!」
首領「いいねえ……その気丈さ。実に俺好みだぁ」
勇者「……っ」
首領「このメイドを助けたければ言うことを聞きな」
勇者「何が望みだ……!!」
首領「俺の女になれ」
勇者「僕は男だ」
首領「え……?ぶわっはっはっはっは!!!なんだその嘘はぁ!!」
勇者「本当だ!!」
首領「じゃあ、確認させてもらおうか?」
勇者「……」
首領「ぐふふふ……おらぁ!!!」
ビリビリビリ……!!!
勇者「くっ……」
メイド「あぁ……勇者様……」
首領「ま、マジじゃねえか……!!こ、こいつ男だ!!」
盗賊「ひぇぇ……!!」
勇者「わかっただろう……女になることはできない」
首領「……」
勇者「……」
首領「つまり、あの王子は変態野郎ってことか」
勇者「否定はしない」
首領「いいネタができたぜぇ」
勇者「え……?」
首領「王子は男を妃にしようとしていた。大スキャンダルじゃねえか」
メイド「それは……!!」
首領「この世には他人の弱みで食っていく術だってあるんだぜぇ?」
勇者「やめろぉ!!」
首領「こりゃあ、国が傾くかもなぁ……ぶわっはっはっは!!」
勇者「卑劣な……!!」
メイド「勇者様……!!」
首領「しばらく、牢屋にいろ。殺しはしねえよ。くひひ」
勇者「……」
メイド「勇者様……私の上着を……あ、でも下は隠せませんね……」
勇者「えっと、腰巻にします」
メイド「どうぞ」
勇者「大変なことになりましたね」
メイド「はい……」
勇者「でも……この程度の危機など何度も経験しています」
メイド「え?」
勇者「逃げましょう」
メイド「どうやって……?」
勇者「―――うぁぁ……!!うぐ……!!」
メイド「勇者様!?どうされたのですか?!」
盗賊「なんだ!どうした!?」
勇者「くるしい……胸が……はぁ……このままだと……僕は……女の子になってしまう……!!」
盗賊「なんだとぉ!?」
メイド「そんな!!」
勇者「はぁ……もう股間から……うわぁぁ……」
盗賊「……」ゴクリ
勇者「おねがいだ……こんなところ誰にも見られたくない……!!何か……布を……!!」
盗賊「よ、よし……わ、わかった……へへ……」
ガチャ
メイド「……」
勇者「はやくぅ……おねがぃ……んぁ……」
盗賊「どれどれ……どんな風に女へ―――」
勇者「変態!!」ドゴォ
盗賊「がふぅ!?」
勇者「さ、逃げましょう」
メイド「え、ええ。あの……この手はよく使われていたんですか?」
勇者「仲間から教わりました。こうすれば大概は逃げ出せると」
勇者「はぁ……はぁ……!!」
メイド「向こうですね」
勇者「よし」
盗賊「まちな」
首領「どこにいくんだ?あぁ?」
勇者「くっ……」
メイド「そんな……」
首領「てめえ……逃げられるとおもってんのか?」
勇者「ふぅー……こい」
首領「やっちまえ!!!」
勇者「はぁぁぁ!!!」
メイド「勇者さまぁ!!―――あまり足技を使うと見えてしまいます!!」
勇者「え?」
盗賊「すきありぃ!!」バシィ
勇者「あぅ!!」
首領「へへ……面だけなら絶品なんだけどなぁ」
勇者「しまっ……」
メイド「あぁ……そんなぁ……」