勇者「魔王倒してから暇だな」戦士「えwwwww」 2/6

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夜 寮

勇者「こんなものか」

勇者「……」ギシギシ

勇者「堅いベッドだな」

僧侶「―――勇者様?」

勇者「どうした?」

僧侶「これを」

勇者「なにこれ?」

僧侶「基本的なスケジュールを書いた紙です」

勇者「ありがとう……」

勇者(こんなにやることあんのか……)

僧侶「あと22時には消灯ですから」

勇者「早くないか?」

僧侶「ここでの規則は守っていただきます」

勇者「あ、ああ……そうだな」

翌朝

勇者「ふわぁぁ……」

勇者「ねむ……」

僧侶「―――勇者様、着替えは済みましたか?」

勇者「ああ」

僧侶「勇者様」

勇者「な、なに?」

僧侶「シーツ、綺麗に畳んでください」

勇者「いや、畳んでるだろ」

僧侶「どこがですか?きちんと折り目をつけて、角も合わせてください」

勇者「そこまでしなくても―――」

僧侶「勇者様はもう教会の人間です。規則には従っていただかないと困ります」

勇者「……」

僧侶「早くしてください。ミサに遅刻などあってはなりません」

勇者「わ、わかった」

神父「であるように―――」

勇者(ねむい……)ウトウト

僧侶「……」ツンツン

勇者「は……?」

僧侶「(居眠りはご法度です)」

勇者「(あ、ああ……ごめん)」

勇者(朝は早いし……神父の意味のない話をきかないといけないなんて……)

勇者(冒険してるときはもっと気楽だったな)

勇者(命のやりとりはあったけど、今に思えば充実した毎日だった気がする)

僧侶「……」

勇者「……」ウトウト

僧侶「……」ツンツン

勇者「は……?」

僧侶「(いい加減にしてください)」

勇者「(ごめん)」

僧侶「では、掃除をはじます」

勇者「はい」

僧侶「勇者様にはここの廊下とトイレをお願いします」

勇者「一人で?」

僧侶「1時間で終えないと朝食が食べれませんよ?」

勇者「うぐ……」

僧侶「ここに掃除用具があります。チェックは神父様とシスター長が行いますので手抜きはできません」

勇者「……」

僧侶「隅々まで丹念にお願いします」

勇者「わかった」

僧侶「では」

勇者(僧侶……旅してるときはすげー優しかったのに……)

勇者(こんなところにいちゃあ性格も変わるか……)

勇者「……」

勇者「早く終わらせないと」

勇者「……」ゴシゴシ

勇者(やべ……コツがわかんねえ)

勇者(1時間で終わるのかよ……)

勇者「……」ゴシゴシ

勇者(無理だろ……)

神父「どうですか?」

勇者「あの……もう一人ぐらいいりませんか、ここ?」

神父「彼女も最初に来たときはそんなことを言っていました」

勇者「……」

神父「それでも一人でなんとかしていましたよ?」

勇者「そうですか……」

神父「はい」

勇者(あーもう、トイレ掃除もしないといけないのに……!!)

1時間後

神父「では、点検を」

勇者「はぁ……はぁ……」

神父「トイレの床がまだ汚れていますね。お願いします」

シスター「廊下も窓拭きがまだみたいです」

勇者「……」

神父「ここは私たちだけではなく参拝者も利用する場所ですから、丁寧に掃除をしていただきたいのです」

勇者「はい」

シスター「それでは」

勇者「……」

勇者「……」ゴシゴシ

勇者(なんだろう……泣きたくなってきた……)

昼休み

勇者「……はらへった」

勇者(朝は食えなかったし……その後も参拝者の相手やら食事の用意やらで考える暇もなかったなぁ)

勇者「こんなに忙しいのか……」

勇者「なにか食べないともたない……」

僧侶「勇者様?」

勇者「え?」

僧侶「お昼はお取りになりましたか?」

勇者「まだ」

僧侶「……では、これを」

勇者「これは?」

僧侶「参拝者用の食事を少し作りすぎてしまいましたので、勇者様もどうぞ」

勇者「ああ……ありがとう。賄いか」

僧侶「……はい」

勇者「いただきます……」モグモグ

勇者「疲れた……」

勇者「もう21時か……」

勇者「風呂に入ったら消灯時間か」

勇者「……」

勇者「自分の時間がないじゃないか」

勇者「教会ってそういうとこなのか……」

勇者「自分を律する場所なのかなぁ」

勇者「……」ウトウト

僧侶「―――勇者様」

勇者「わぁ!?」

僧侶「入浴の時間です。早くお願いします」

勇者「あ、ああ。ごめん」

僧侶「それでは」

消灯

勇者「……」

勇者「休もう……明日も早いしな……」

勇者「……」

勇者(こういうときに限って、目が冴えるんだよな……)

勇者(旅してるときもあったしな……慣れない所では寝れないのか、俺)

勇者「はぁ……」

勇者(ここでやっていけるのか……俺……)

勇者「……」

勇者「だめだ!!早く寝ないと!!」

翌朝

僧侶「勇者様!!勇者様!!」

勇者「ふぇ?」

僧侶「おきてください!!」

勇者「ど、どうかした?」

僧侶「もうミサまで時間がありません!!」

勇者「え……うわぁぁ!!!!」

僧侶「早く!!シーツは私が畳みます!!」

勇者「あ、いや、駄目だ。そんなことしたら君まで遅刻するぞ?!」

僧侶「ですが……!!」

勇者「いいからいって」

僧侶「でも……遅刻者には罰が……」

勇者「寝坊した俺が悪いんだから、君が巻き添えを食うことはないだろ」

僧侶「……わかりました。ではできだけお急ぎください」

勇者「ああ、わかった!!」

聖堂

神父「ふむ……」

勇者「申し訳ありません」

神父「仕方ありませんね。規則には従っていただきます」

勇者「はい」

神父「おつれして」

シスター「どうぞ」

勇者「……」

神父「まさか勇者様が寝坊とは……」

僧侶「……」

シスター「こちらです」

勇者(どんな罰が……)

勇者(折檻か……?)

倉庫

シスター「ここの清掃をしていただきます」

勇者「ここは……?」

シスター「古い倉庫ですよ。貴重な品もありますので、どうか気をつけてください」

勇者「はぁ」

シスター「それから」

勇者「はい?」

シスター「今日はここの掃除をしていてください。恐らく一日では終わりませんでしょうし」

勇者「ああ、はい」

勇者(なんだ、楽じゃないか)

勇者(ビビッて損した)

シスター「では」

勇者「わかりました」

勇者「……」ゴシゴシ

勇者「……」ゴシゴシ

勇者「……掃除始めてからどれくらいたったんだ……?」

勇者「時計も窓もないから良くわからないな」

勇者「……ま、いいか」

勇者「……」ゴシゴシ

勇者(何が罰なんだろう……)

勇者(むしろ仕事が減ってる気がするけど……)

勇者「……」

勇者「……」ゴシゴシ

勇者「―――あれ?」

勇者「ちょっと待てよ」

勇者「朝飯は……?」

勇者「……今日はここで掃除をしとけって……」

勇者「まさか……!!」

勇者「一日中、掃除をやれって……消灯時間までここを掃除しなきゃいけないのか!?」

勇者「……」

勇者「あっはっはっは」

勇者「そんな馬鹿な話はないよな」

勇者「ここは教会だ。なんでそんな罰があるんだよ」

勇者「ないない」

勇者「……」

勇者「腹へった……」

勇者「―――駄目だ……マジだ」

勇者「こんなことって……」ウルウル

勇者「……魔物狩ってるほうがよっぽど楽だぞ」

勇者「思えば肉体的な辛さには耐えてきたけど、こういう精神にもくる苦しみはあまり経験してこなかったなぁ」

勇者「襲ってきた魔物を切っていくだけでよかったし、俺のやりかたに文句をいうような奴もいなかった」

勇者「……」

勇者「はぁ……」

勇者「なんでこんな湿っぽいところで冷たい雑巾を握り締めてんだろう……」

勇者「俺はこんなことをするために魔王と戦っていたわけじゃ……」

僧侶「―――勇者様?」

勇者「お?もういいのか?」

僧侶「いえ、サボっていないか確認をしにきました」

勇者「そうか……」

僧侶「……」

勇者「……」ゴシゴシ

僧侶「辛いですか?」

勇者「え……?」

僧侶「あの、無理はしないほうがいいですよ?」

勇者「……」

僧侶「教会に務めるには勇者様は少々不向きかもしれませんし」

勇者「そうか?」

僧侶「はい。私たちのチームリーダーであり、皆を引率してきた勇者様ではこのように規則に縛られる生活は似合わないかと」

勇者「……」

僧侶「私は……そう思います」

勇者「そうか……」

僧侶「はい」

勇者「ありがとう。サボらないから自分の仕事に戻っていいよ」

僧侶「はい。失礼します」

勇者「……」ゴシゴシ

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