女勇者「・・・・・・?」
魔王「それゆえの、戦い方もあるのだ。 ・・・・・・考えろ」
側近「523回目」
魔王「・・・・・・っ(今のは・・・・・・危なかった・・・・・・)」
女勇者「ぜーっ、ぜーっ・・・・・・はぁっ・・・・・・ッ!!」チャキ
魔王(脚捌きに迷いが無い。 避ける方向に剣を振り抜いてきた・・・・・・気付いたという事か・・・・・・)
魔王(左右の肩の鎧に掠らせ、尚且つ剣を振ろうとすれば、どうしたって体勢に無理が出る)
魔王(威力そのままに振りの速さだけを強弱させるとは・・・・・・感服)
魔王(このままでは・・・・・・本当に殺されるかも知れんな・・・・・・くく、この感情は父上以来だ)
側近「・・・・・・」
魔王「まだ、いけるか」
女勇者「はいッ!」
魔王「では、参る」
側近「・・・・・・魔王殿」コンコン
魔王「側近か、入れ」
側近「は・・・・・・」
魔王「・・・・・・どうした」
側近「・・・・・・今日、とても危ないように感じました」
魔王「ふ、分かるか。 ああ、とても危なかった。 見ろこの鎧」
側近「これは・・・・・・」
魔王「うむ、肩の部分がもう削り取られていてな。 買い替えだ、ふはは」
側近「心配でありまする・・・・・・」
魔王「・・・・・・」
側近「もう、よいのでは? もう、後一ヶ月をきりました、精神鍛練だけで・・・・・・」
魔王「そうだな。 終わりにしよう、か」
側近「! それでは・・・・・・」
魔王「明日、決める。 大魔王に匹敵するか。 全力で、娘の首を、殺りにいく」
側近「!? それは・・・・・・!」
魔王「回数はあの後増えず、523回のままだった。 お前の言う通り、やめにしよう」
側近「違います! そうでは、ありませぬ! 私は、ただ、貴方が・・・・・・」
魔王「黙れ」
側近「ッ・・・・・・」
魔王「本当の殺意を、知らねばならぬ。 それに耐えることが出来たのならば、合格、だ」
側近「その、本気になった魔王殿を止める為には・・・・・・?」
魔王「斬るしかないな」
側近「嫌です、やめて下さい! お願いします!」
魔王「・・・・・・お前は何だ? 誰だ? 側近だろう。 ・・・・・・黙っていろ」
側近「っ!! ・・・・・・私は、私は・・・・・・!」
魔王「もう、下がれ。 ・・・・・・んむっ!?」ドサッ
側近「ん、ふっ・・・・・・ちぅ・・・・・・んむ・・・・・・!」
魔王「んぐ・・・・・・ッ! ・・・・・・や、めろ!!」ドン
側近「きゃっ!? う・・・・・・うぅ・・・・・・ひ、う、ぅぅぅぅ・・・・・・」ポタポタ
魔王「・・・・・・・・・・・・何故泣く」
側近「私は、愛しているのですっ、ひ、ぅ、魔王殿、死なないで下され・・・・・・っ」グスグス
魔王「・・・・・・何を勘違いしている。 私が死ぬものか。 信じて、後ろに付いてればよい」
魔王「側近、お前の愛、確かに受け止めた。 だが、答える気は無い。 下がれ」
側近「ぅ、う・・・・・・・・・・・・・・・・・・」ガチャ
魔王「・・・側近が泣く声が聞こえる、すまない、すまないな。 私は・・・・・・罪深い・・・・・・」
魔王「何故だろう、私も側近を愛しているの筈なのに、答えられぬ・・・・・・」
魔王「教えてくれ、母上。 魔王として、私はどうすればいいのだ。 魔王とは・・・・・・なんだ・・・・・・」
侍女「起きて下さい。 女勇者様」
女勇者「ふあぁ・・・・・・ん・・・・・おはようございます・・・・・・ッ~」
侍女「今日の調子はどうですか」
女勇者「くちゃくちゃ元気です! なんだか今日は体が軽いです!」
侍女「そうですか。 お着替え下さい」
女勇者「おっはようございまーす!」
魔王「うむ、おはよう」
側近「・・・・・・」
女勇者「? どうか、しましたか?」
側近「! い、いえ・・・・・・なんでも」
女勇者「大丈夫ですか? 顔色悪いですけど・・・・・・」
側近「大丈夫です。 心配なさらず」
魔王「・・・・・・」
女勇者(な、なんだか・・・・・・暗い、な)
侍女「・・・・・・」カパ
女勇者「うわぁ!! す、す、すごい・・・・・・ご馳走・・・・・」
魔王「今日の訓練次第で、お前は実践訓練から開放される。 めでたい日だ。 食べておけ」
女勇者「ほんとーですか!? 食べます食べます!」
側近「・・・・・・」
魔王「くく。 私も、今日は食べるとしよう。 側近、お前も食え」
側近「・・・・・・は」
女勇者「でも、こんな食べると動けなくなりそう・・・・・・」
魔王「訓練は昼からだ。 昼飯は無い。 食べておけ」
女勇者「は、はい!」
魔王「側近、食べておけ。 魔法がを使える奴が疲れていては支障を来たす。食え」
側近「はい・・・・・・」
女勇者「側近さんどうしたんですか? ほんと、元気ないですよ」
側近「触らないで下さい!!」パシッ
女勇者「ぁ・・・・・・」
側近「!? わ、私は・・・・・・あ、ぁ、し、失礼します・・・・・・!」ガタッ
女勇者「側近さん!?」
魔王「・・・放っておけ」
女勇者「え、で、でも・・・・・・!」
魔王「時が迫っていて、側近も怖いのだ。 また謝りに来る」
女勇者「は、はぁ・・・・・・」モソモソ
女勇者(側近さんがいないと、やっぱり、おいしくないな・・・・・・)
魔王「・・・・・・すまない」
女勇者「え?」
魔王「少し、いざこざがあってな、機嫌が悪いのだ。 私が悪い」
女勇者「・・・・・・こんな事いうのあれなんですけど・・・・・・早く、謝ったほうがいいですよ」
魔王「ふふ、そうだな。 さぁ、側近の分を残して、食べておこう」
女勇者「そう、ですね」
女勇者「今日は、なんだか凄い訓練だそうですが・・・・・・」
魔王「うむ・・・・・・死合だ」
女勇者「し、あい・・・・・・?」
魔王「ああ」
女勇者「そ、それって、騎士さんと、私が、ですか?」
魔王「そうだ」
女勇者「そ、そんな・・・・・・」
魔王「最終訓練だ。 これを達成すれば、私が教えることは何一つ無い」
女勇者「る、ルールは・・・・・・? 最初の一撃、ですか?」
魔王「ふふ、違う。 私はお前の首を刎ねるつもりで攻撃する。 それを、止めろ」
女勇者「!?」
魔王「死ぬか、殺すか。 私がお前の首を刎ねるが先か、お前の剣が私を破壊するが先か」
女勇者「そ、そんなの出来ません!!」
魔王「ならば、死ぬだけだ。この広場に側近の結界を張ってある。今日を過ぎれば、この空間は消滅する」
魔王「蹲っているだけではどちらも死ぬ。 私を殺す気でかからねばお前が死ぬぞ?」
女勇者「いや・・・・・・いや・・・・・・!」
魔王「・・・・・・甘えるな。と言わなかったか? 勇者だろう、お前。 構えろ。・・・・・・構えろッ!!」
女勇者「ひッ・・・・・・!」
魔王「よし、では・・・・・・参る」ゴォオオッ
女勇者(これが、本当の、騎士さん・・・・・・! お、重い・・・殺気で、呼吸が・・・・・・!)
女勇者(脚が震えて、たって、られない・・・・・・怖い。 怖い!! 力が入らない・・・・・・)
側近「女勇者殿!!」
側近「戦いです。これは、戦いです!! 構えて! 勇気を! 意思を!」
女勇者(側近さん、辛そう・・・・・・。そうか、この戦いを知れば、あんな事になるに決まってる)
魔王「そうだ。 立て。 私を斬ってみろ!!」ズワッ
女勇者(命を、私の為に、命を賭けてくれてるんだ・・・・・・。戦わ、ないと!!)
女勇者「はぁあああああっ!!」ジャキン
魔王「うむ。 良い目だ。 闘志に燃えて・・・・・・(勇者・・・・・・か)」
女勇者「来て下さいっ! 騎士さん!!」
魔王「ふっ!!」ド ド
側近「・・・・・・一先ず引き分け・・・・・・でも」
魔王「ぬっ!」
女勇者「やぁあっ!!」
側近「ぅ・・・・・・やめて・・・やめて・・・・・・・」
魔王「はあっ、はっ、はあっ、もう、夕刻、か・・・・・・」
女勇者「ぜーっ、ぜーっ、そう、ですね・・・・・・」
魔王「次で・・・・・・幕だ」
女勇者「はい・・・・・・っ!」
魔王「ぬ、ぅおおおおおおおおおっ!!!」
女勇者「う、う、うわあああああああっ!!!」ドボオオオオッ
側近「ぅ、そんな、いや、いや・・・・・・」
魔王「・・・・・・ふ、ふふふ、私の、負けだ。 命の駆け引きでも、私の、負けか・・・・・」
女勇者「ぅ、ぅ、ぅ、いや、騎士、さん、死なないで・・・・・・っ!!」
魔王「お前なら、必ず、大魔王を・・・・・・っ・・・・・・・」ドサッ
女勇者・側近「いやああああああああっ」
侍女「・・・・・・何とか、一命を取り留めました」
侍女(右半身を持っていかれていますが、魔族だし側近様が治療に当たっているので大丈夫でしょうし)
女勇者「そう、ですか・・・・・・大怪我で、済んだんですか」
侍女「気になさらないで下さい」
女勇者「・・・・・・気になりますよ、それは」
侍女「主様は、貴女に、未来を託したのです。今貴女のやることは、ここで主様を心配することですか?」
女勇者「!!」
侍女「まぁ、主様はタフですから。 後半月もすれば面会できるでしょう」
女勇者「わかり、ました。腕が落ちたら、騎士さんに申し訳立たないですもんね・・・・・・行って来ます!」タタッ
侍女「はい」
側近「・・・・・・」ガチャ
侍女「ぁ、側近様。 魔王様の容態は?」
側近「峠は越えました。 ただ、大魔王との面会に間に合うかどうかは分かりません。 女勇者は?」
侍女「素振りです」
側近「焚きつけたの?」
侍女「ええ、まぁ」
側近「・・・・・・」スタスタ
侍女「・・・・・・御気をつけて」
側近「女勇者殿」
女勇者「あ・・・・・・側近さん」
側近「今日は訓練しなくていいですよ。 早く寝たほうが良いです」
女勇者「・・・・・・側近さん」
側近「はい」
女勇者「ごめ、なさい・・・・・・」ポロポロ
側近「! ・・・・・・」
女勇者「私、私、剣を止められなくて、私っ・・・・・・」
側近「いいです。もう。生きてるんですから。 簡単には死なない。 そう、主殿がいった通りでしょう?」
女勇者「ぅっ、うっ、ひっ、うぅ・・・・・・」
側近「一緒にお風呂に入って、明日、一緒に訓練しましょう? 私と」
女勇者「はい、はいっ・・・・・・!」
魔王「・・・・・・」
側近「まだ、目覚めませんね・・・・・・」
女勇者「・・・・・・騎士さん・・・・・・」
側近「約束の日時まで、後三日。 起きられなければ、貴女一人で行かねばなりません」
女勇者「はい、覚悟は、出来ています」
側近「・・・・・・いいのですか、貴方の愛した人は一人でいってしまいますよ・・・・・・?」
魔王「・・・・・・」
女勇者「・・・・・・側近さん、話があります」
側近「え?」
女勇者「来て下さい」
側近「は、はぁ・・・・・・」
側近「なんでしょうか、女勇者殿」
女勇者「・・・・・・何で、卑屈なんですか? 側近さん」
側近「な・・・・・・!?」
女勇者「何で、私に騎士さんを譲ろうとするんですか。 何で。 諦めたんですか」
側近「・・・女勇者殿には、関係ありませぬ」
女勇者「ライバルだ、っていったじゃないですか!!」
側近「私は! 負けたんです・・・・・・想いが、違うんです。 私と、貴女と・・・・・・」
女勇者「聞いたんですか!? それを!」
側近「ええ、ええ、聞きました。答えることは出来ない、って! 私は」
女勇者「違います! 嫌いだって、言われたんですか!!?」
側近「! そ、それは・・・・・・」
女勇者「実は、私が騎士さんを斬った時、騎士さんは呟いたんです。 側近、すまない。って!」
側近「そ、そんな・・・・・・」
女勇者「側近さんは言いましたね! 目が違うって! そうです、違います! 騎士さんが側近さんを見つめる目は!」
女勇者「私が鏡を見て騎士さんを思う時の目・・・・・・それと、同じ目をしてたんですっ!」
側近「・・・・・・」
女勇者「でも! 私諦めません! 側近さんがそんな事言ってると、攫っちゃいますよ!!」
側近「ぅ、ぅう・・・・・・」ポタポタ
女勇者「だから、そんな、悲しい、顔、しないで・・・・・・ぅう、ぐす」
側近「は・・・・・・い、ご、めん、なさい・・・・・・」
女勇者「う、うえええええええええん」ガシッ
側近「うわあああああんっ、うわああああああん」