魔王「……来ちゃったっ」 勇者「えっ」 4/8

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勇者「」ダキッ

魔王「な、な、何してるの!?」

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魔王「……」ゴクリ

魔王「……そーっと、そーっと」ソロソロ

魔王「……メダパn」

勇者「あ、そういえば」ムクリ

魔王「」ビクゥ!!

勇者「……ん? なんか近くない?」

魔王「え~? な、何が~? おいっちに、さっんし!」キビキビ

勇者「……」ジトッ

魔王「ほ、ほらほら! 早く寝ないと!」

勇者「いや、あの見習いの子はどうなったのか聞いてなかったから」

魔王「あ、ああ、まほちゃんなら明日お礼しに来ると言ってたけど」

勇者「まほちゃん?」

魔王「長くて呼びづらいから」

勇者「そっか、まほちゃん明日来るのか」

魔王「何なれなれしく呼んでるの?」

勇者「えぇえ……」

魔王「ほらほら! 寝ないと! 私も寝るからもうちょっとそっちに寄って!」モソッ

勇者「わ、わかったよ……」

魔王「……はぁ」

魔王(やっぱりメダパニはやめとこう……どうせ、記憶残らないんだし……)

見習い魔法使い「お、おはようございます!」

勇者「あっ、おはよう」

魔王「来たかまほちゃん、待ってたよ」

見習い魔法使い「す、すみません!! それで……お礼なんですけど」

勇者「別に無理してお礼しなくてもいいからね? そんなの望んで助けた訳じゃないし」

見習い魔法使い「い、いえ! 無理はしてません! ただ、どうしてもお礼がしたくて……」

勇者「そ、そう? それなら遠慮なく受け取ろうかな……」

見習い魔法使い「そ、それじゃあ! ついてきて下さい!」

魔王「ん? ここじゃ渡せないの?」

見習い魔法使い「あ、あの……物じゃないので……」

魔王「まいっか、ゴーゴー!」

見習い魔法使い「それでは、あの、服を脱いで代わりにこれを巻いて下さい……」

勇者「えっ?」

魔王「ぬ、脱ぐのっ?」

見習い魔法使い「は、はい、よろしくお願いします……」ヌギッ

勇者「ちょ、ちょ!!」

魔王「な、何するの!? なんで脱ぐの!?」

見習い魔法使い「あっ、す、すみません! その、これから師匠自慢の温泉に入っていただくので……」

魔王「お、温泉?」

見習い魔法使い「はい。その、不満でしたか? 旅の疲れを癒していただけると思ったんですけど……」

勇者「やったー!! 温泉だー!!」ヌギヌギ

魔王「……物凄く嬉しそうだね」

見習い魔法使い「よ、よかったー!」

見習い魔法使い「皆さん、準備はできましたか?」

勇者「……」ジッ

魔王「」バコッ

勇者「いたっ!!!!」

魔王「早速入らせて貰おうかな!」

見習い魔法使い「あ、その前に」

勇者「ん?」

見習い魔法使い「ここは師匠の温泉です、そして私はその師匠の下で修業の身……つまり」

魔王「何か障害物があるってこと?」

見習い魔法使い「い、いえ、そんな大したものではないですが、魔法を使う機会が2度ほどあるので……」

勇者「わかった、まほty……魔法使いさんの修行だし、俺と魔王は見守っとくよ」

見習い魔法使い「ありがとうございます!」

見習い魔法使い「では早速……」ガラッ

勇者「うわ、なんだこれ!」

魔王「す、すごい湯気だね」

見習い魔法使い「……バギ!!」ブワァァァ

勇者「おおおっ!」

見習い魔法使い「す、すごいすごーい!! い、一回で成功しちゃいました!!」

魔王「おめでとー!」

見習い魔法使い「なんだか今日は調子良いみたいです!! これなら2つとも一回で……」

勇者「お! お湯発見!」タッタッタッタ

見習い魔法使い「あっ!」

勇者「それーっ!」ザブーン

勇者「冷てえええええ!!!!!!」ピョーン

魔王「一人でコントを繰り広げてる……」

見習い魔法使い「2、2度目の魔法を使う機会はそのお湯なんですよ!」

魔王「まったくもう、子供みたいにはしゃぐからだよ?」

勇者「ごべんばばい、びざじぶりばっばから」ブルブルガタガタ

魔王「で、魔法でそのお湯をあっためるってこと?」

見習い魔法使い「そ、そうです! これは今まで一度も最初から成功したことはないので……今日はがんばります!」

魔王「がんばれがんばれまほちゃん! ファイトだファイトだまほちゃん!」

勇者「ううっ……」ガタガタ

見習い魔法使い「……それでは」ゴクリ

見習い魔法使い「ベギラマ!!!!」

勇者「……えっ?」ピュゥゥン

魔王「えっ?」

ゆうしゃ はこんらんした!

勇者「……」ニヘラ

魔王「え!? ちょっと!? 何したの!?」

見習い魔法使い「あ、ま、間違ってメダパニ唱えちゃったみたいです!!

ど、どうしよう!! どうしよう!! ホ、ホイミ!!」

魔王「い、意味ないって!!」

勇者「」ピュゥゥン

ゆうしゃ はさらにこんらんした!

見習い魔法使い「あ! あー!! またやっちゃいました!!」

勇者「……まーほちゃんっ」フラフラ

見習い魔法使い「えっ? えっ?」

勇者「……」ダキッ

見習い魔法使い「ちょ、ちょっと勇者さん!?」

魔王「あ! あああっ!」

勇者「冷えちゃった……ちょっとあっためてよ……」ギュゥゥゥ

見習い魔法使い「……ゆ、勇者さんがいいのなら……」ポッ

魔王「いやいやだめだめ!! 何しちゃってんの!? こらーっ!!」

勇者「……まほちゃん」ムチュー

見習い魔法使い「……」スッ

魔王「なんで目を閉じるのっ!? 受け入れないで!! だめだめ絶対!! はな、離れろーっ!!」

魔王「メ、メダパニ!! メダパニメダパニ!!!」

見習い魔法使い「」ピュゥゥン

みならいまほうつかい はこんらんした!

見習い魔法使い「……」フラフラ

勇者「……」ンチュー

見習い魔法使い「……んだコラァ!!!!」バチーン

勇者「ぶへぁっ!!」

魔王「えっ」

見習い魔法使い「なぁぁぁにしてんだテメェコラァ!!! あぁーん!?」

勇者「え!? えぇぇぇぇっ!?」

見習い魔法使い「テメェいい度胸じゃねぇかオォ!? そんな面で私の唇奪おうってのかオイィ!?!?」

勇者「え!? なに!? 何この状況!? くち、唇!?」

見習い魔法使い「うるせェ!!!!」バチーン

勇者「ぶひゃあ!!!!」ピョーン

見習い魔法使い「……チッ」ペッ

魔王「……」

見習い魔法使い「……あ? おっ、……かわいい面してんじゃねぇか」ポッ

魔王「え!?」

見習い魔法使い「ふぅーん……」ジロジロ

魔王「え!? え!?」ゾワッ

見習い魔法使い「ふふっ」ニヤ

魔王「ちょ、……や、やめ……」

見習い魔法使い「……いっただきまーす!!」ガバァ

魔王「ゆ、ゆーうしゃああああ!!!!!」

ああああ…………!!

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勇者「……で、こうなったと」

魔王「あまりの恐怖で加減ができなくて……」

見習い魔法使い「……」グッタリ

勇者「それよりも一体なんで魔法使いさんはあんなに怖く……」

魔王「……」

勇者「どうもお湯を温かくするって話から記憶が……魔王なんか知ってる?」

魔王「……し、知らないっ」フイッ

勇者「えっ? ちょ、ちょっと」

次の日

見習い魔法使い「あのぉ~……」

勇者「あ、ああ! 魔法使いさん!」ビクビク

見習い魔法使い「あ、あれっ?」

見習い魔法使い「な、なんでそんなに引いてるんですか? あの、あの!」

勇者「いやぁ~、えーっと……」

見習い魔法使い「ちょっと!!」

勇者「ひいっ!!」バッ

見習い魔法使い「えっ……」

魔王「うん……ごめんね」

見習い魔法使い「えっ? えっ? なんですか!?」

見習い魔法使い「あの……何故か昨日一部分記憶が飛んでしまってるんですけど、

その、温泉は楽しんでいただけましたか?」

勇者「あ、え~っと」

魔王「う、うんうん! すごく疲れがとれたよ! ありがと!」

勇者「えっ」

見習い魔法使い「そ、そうですか! よかった~! 私しっかりお礼できたのか分からなくって……」

魔王「も、もうそれはしっかりと!」

見習い魔法使い「これで安心して修行の日々に戻れます! ありがとうございました!」

勇者「あっ、ううん、こっちこそありがとう」

見習い魔法使い「そ、そそんな! 恐縮です!」

見習い魔法使い「お二方は、次の町を目指されるのですか?」

勇者「そう……だよな?」

魔王「うん、そだね」

見習い魔法使い「そ、それでは、一つ、忠告があります」

魔王「ん?」

見習い魔法使い「この町の隣の町は、商人の町なのです」

勇者「へぇー、賑わってそうだなぁ」

見習い魔法使い「ええ、それはそれは賑わっています。このあたりでは一番かもしれません。

しかし、だからこそ危険なのです……」

魔王「どういうこと?」

見習い魔法使い「商人の町とは文字通り商人の集う町。つまり商人同士の競争が激しく、

彼らは様々な手法で旅人に商品を売りつけようとしてきます。詐欺とか、押し売りとかですね」

勇者「なるほど……」

見習い魔法使い「も、もちろん良い商人もいますよ? 良い噂と同じくらい悪い噂も聞くってことです。

ですから、そういう方達に出会わないように、気をつけて下さいね!」

勇者「わかったよ! ありがとう!」

魔王「それじゃ、行きますかっ!」

勇者「ああ、そうだな」

魔王「このあたりの魔物はもう余裕だから、魔物との訓練は次の町で行うこととします!」

勇者「するのには変わりはないんですね。わかってますけど」

魔王「づべこべ言わない! はい、じゃあ、今日も元気にぃー」

魔王「走りましょー!!」

勇者「……はい」

魔王「それがんばれがんばれ勇者!」ボウッ

勇者「あつっ!!!」タッタッタッタ

勇者「……なんか、案外近かったな」

魔王「うーん、多分12,3kmくらいかなぁ……物足りない感じだね」

勇者「い、いや? 別に?」

魔王「……体力有り余ってるよね?」

勇者「……ハハッ」

魔王「それでは引き続き魔物との訓練を行いましょー! 暗くなるまで!」

勇者「く、暗くなるまで!?」

魔王「このあたりの魔物は結構強いよ」

勇者「まじかよお……」

魔王「ザオリク! ザオリク!」

魔物1「グアーッ!」

魔物2「キシャーッ!」

勇者「な、なんで2対1なの!?」ズバァ ザシュッ

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