魔王「……来ちゃったっ」 勇者「えっ」 5/8

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魔王「ベホマラー!」

魔物1&2「」パアァ

勇者「くそっ!!」ズバァ

魔王「スクルト!」

魔物1&2「」パァァ

勇者「な、なんかいつもより厳しくない!?」

魔王「ほらほら! 無駄口叩いてるとやられるよ!」

勇者「クッ……やばい……さすがに疲れてきた……」

魔王「もう少し! 後4体倒したら終わりにしよ?」

勇者「あ、あと4体……果てしなく遠く感じる……」

魔王「限界の先に成長が待っている!!」

勇者「……う、うおおおおおおっ!!!!!」

魔王「お、かっくいー!」

勇者「おりゃああ!!!」ズバッ

魔物「ぎぇー!!」

勇者「よっしゃ!! お、終わったー!!」

魔王「2体相手によくがんばった! 感動した!」

勇者「や、宿屋探そう! 早く!」

魔王「そだね、さすがに疲れたね」

勇者「よし、そんじゃあ町の中に……」

女商人「……」

勇者「って、うわっ!!」ビクッ

魔王「な、なになに!?」

女商人「あなた達は、有名になってる」

勇者「ゆ、有名? なんで?」

女商人「そんなにメチャクチャな修行をこんなに目立つ所でやっているから」

魔王「私は視線感じてたけど、だから何?」

女商人「この町で有名になるのは避けるべきだと思う」

勇者「……あー、魔法使いさんが言ってたな。悪い商人に目をつけられないようにって」

女商人「その通り。危険を回避したいなら、私と一緒に行動をした方がいい」

魔王「嫌だよ」

女商人「なぜ?」

魔王「私達、強いから」

女商人「……この町は肉体的な強さでは回避できない危険の方が多く存在してる。

商人は頭の切れる人間しか生き残れないから」

勇者「……」

魔王「気づいてないかもだけど、あなたが一番怪しく見えてるの、私達」

女商人「……」

魔王「唐突な優しさをぶつけてくる人間は、どうしても裏に何かを隠し持ってるように映るの」

女商人「……」

女商人(どうする私。なんか強いからお金持ってるだろうな、とか単純に思って適当なこと言って

近づいてみたけど、思ったより賢い人たちだった)

女商人(なんか怪しまれちゃったどうしよう。こんな目立つところで修行なんてしてるからおつむの弱い人達だと思ったのに。

なんなんだろう、そこまで強さに自信があるのかな)

女商人(……まあいっか。売らないと死んじゃうし、売れるまで勝手に付きまとおう。

私って意外と行動的なとこあるよね。よく表情ないねとか言われるけど)

女商人(心の中ではあなた達が聞いたことないくらいしゃべってるんだよね私、ふふっ)

女商人「……」

魔王「さっ、行こ? 勇者」トコトコ

勇者「う、うん」スタスタ

女商人「……」スタスタ

勇者(……なんかついてきてる……)

女商人(今勇者って言った。今勇者って言ったよね。ビンゴ、やっぱお金持ってるじゃん。どこ行くのかな。

お父さんの自慢の武器売りたいな。質は良いけど見た目が地味だからあんまり売れないんだよね)

魔王「……あの」

女商人「なに?」

魔王「ついてきて欲しくないんだけど」

女商人「……それは賢明な判断とは言えない。商人の敵は商人っていう言葉を聞いたことあるならその理由が分かると思う。

商人のずる賢いやり口は同じ商人の方が鋭く感知できるから」

勇者「……結局、ここで何も買わなかったらいい話なんじゃ……」

女商人「……しょ、商人の町で何も買わないなんてそんなのおかしいと思う」

魔王「……」

勇者「……」

女商人「……コホン」

勇者(……恥ずかしそう)

魔王「怪しい! 怪しすぎる!」ズビシッ

勇者「ちょ、ちょっと」

魔王「だって怪しいじゃん!」

勇者「た、確かにそうだけど……」

魔王「何を企んでるの?」

女商人「何も企んでない」

魔王「嘘だ嘘だー、じゃあなんでついてくるの?」

女商人「……商品を売りたいから」

魔王「はい出た! 本音出たよ!」

女商人「ち、ちがっ、そんなにやらしい考えとかは持ってない」

勇者「……でも買う意思のない客に買わせようとするのって、押し売りって言うんじゃなかったっけ……」

女商人「……」

女商人(……根気よく、根気よくだよ私。商人に大事なのは頭のキレと根気よさってお父さんが言ってた)

女商人「……あなた達が買うという意思表示をしない限り無理に売ることはしないと約束する」

魔王「信用できません!」

女商人「信用して欲しい」

魔王「というかあなたが付きまとう事実は変わらないので関係ありません!」

女商人「つきまとわせてほしい」

勇者「な、なんて頑固な子なんだ……!」

女商人(……根気よく、根気よくだよ私)

魔王「早速まほちゃんの言うとおりやっかいなのに見つかっちゃったね……」

女商人「私が付きまとって何か怪しい行動をとったとしてもあなた達ならなんなく危機回避できるはず。

あなた達の強さは本物。恐らくこのあたりの魔物ならもう手こずらない」

魔王「……はあ」

勇者「ま、まあまあ。この子の言うとおり、付きまとうだけで害は無さそうだし、そこまで邪険にすることはないんじゃないかな?」

魔王「付きまとうこと自体が害なんだけど」

女商人(かばってくれた。勇者くんはいい人)

魔王「結局宿屋までついてきちゃったよ……」

宿主「たびびとの やどやへ ようこそ。 ひとばん 260ゴールドですが おとまりに なりますか?」

魔王「うん、ふたr」

女商人「3人部屋でお願いします」

勇者「えっ!?」

魔王「ちょっとちょっと!! 何言ってんの!!」

宿主「りょうかいしました では おやすみなさいませ。」

魔王「了解しちゃった!!」

女商人「○号室です。行きましょう。あ、ちゃんと自分の分のお金は自分で出しますので」

勇者「……」

魔王「……」

女商人「よいしょ」

勇者「……えーっと」

魔王「どういうつもりなの?」

女商人「あなた達が何かを買いたくなった時、物凄く身近に商人がいたらとても便利だと思うんです」

魔王「ちょ、ちょっと勇者……この子なんか頭のネジ一本外れてるよ」ボソッ

勇者「冷静なドジっ子なんて初めて見た……」ボソッ

勇者「でも、悪い人って感じは受けないんだよなあ……」

魔王「そ、それはなんとなく分かるけど……」

勇者「ある意味素直すぎる性格なんじゃ……」

魔王「どうやって商人の世界で生きてきたんだろう……」

勇者「さっぱりわからん」

女商人「ベッドが3つありますが、勇者くんはどこに寝ますか?」

勇者「え!? あ、ああ! えーっと……じゃ、じゃあ一番扉に近い右端で」

女商人「では私も右端で」

魔王「ちょっとちょっと!! え!?」

勇者「えっと、えーっと、じゃあ俺は真ん中にしようかな」

勇者(どうしても扉側じゃないと落ち着かないのかな?)

女商人「そうですか。それでは私も真ん中に変えます」

魔王「いやいやいやいや!! ダメだから!! 勇者と一緒に寝るのは私なの!!」

女商人「えっ?」

魔王「あっ……」

勇者「……何故か俺がすごく恥ずかしいんだけど」

女商人「では勇者くんが真ん中で、あなたも真ん中で」

魔王「う、うんうん! そ、それでいいの!」

女商人「一つのベッドに3人……少し狭いかもしれない」

魔王「わざとなの? ねえわざとなの?」

勇者「ま、まあまあ!」

魔王「だめこの問題は見過ごせない! というかなんでそんなに勇者と一緒に寝たいの!?」

女商人「……いつもはお父さんと寝ているから。勇者くんは私をかばってくれる優しいところがお父さんに似てる」

勇者「え、えぇぇ!?」

魔王「し、知らないよそんなの!」

勇者(魔王も人のこと言えないんじゃ……口には出せないけど)

女商人「大丈夫。寝相はいいとお父さんがいつも言ってくれるし」

勇者「こ、公平に!! 一人一つのベッドで寝よう!? ね!? ね!? 今日暑いし!!」

魔王「でも……」

勇者「だ、大丈夫だから! きっと寝れる寝れる!」

勇者「ふ、二人とも掛け布団抱いて眠ればいいんじゃないかな!?」

女商人「……勇者くんがそう言うなら、そうします」

魔王「……むー」

勇者「……はあ」

勇者(3人で眠れたらどんなに嬉しいか……でもこのままだと魔王がまたイオナズンを……)

勇者「はあ……」

勇者「グガー……グガー」

魔王「……」スッ

魔王「……」トコトコ

魔王「……やっぱり勇者の布団じゃないと眠れない……」

魔王「……いつもだし、いいよね」ペラッ

女商人「スー……スー」

魔王(先客がいた!! なにこれ!! 悔しい!!)

魔王「……」

魔王「……」モソッ

魔王「……」

魔王「スー……スー」

勇者「んっ……う、腕が痛い……なんだ……?」

女商人「スー……スー」

魔王「スー……スー」

勇者(えぇっ!? 何これどうしたの!! 結局3人で一つかよ!! でも嬉しいいいい!!!!)ヒャッホウ

勇者「……ゴクリ」

勇者「……今ならなんでもできる」ボソッ

勇者「……今ならなんでもできる」

勇者「……今ならなんでもできるッ!!」

女商人「んっ……」モゾ

魔王「……な……に……」

勇者「!!」

勇者「…………セーーーーフ」

勇者(と思ったけど二人の重みで腕が一切動きませんでした)

勇者(まあそうだよね。世の中そんなにうまくできてないよね。最初から魔王来ちゃうくらいだもんね)

勇者「……」

魔王「スー……スー」

勇者(俺……いつかこの魔王と闘わなきゃいけないのか…………嫌だな)

勇者(…………甘ったれるなとか言われるのかな。でももう……仲間みたいな感覚になっちゃってるんだ、俺)

勇者(……なあ魔王。……運命ってのは、どうしても逃れられないのかな)

魔王「スー……スー」

勇者(かわいい、寝顔だなあ……)

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