勇者「な、なんだこれ……」
勇者「ってことはなんだ……今、魔王はそこにいるってことなのか?」
勇者「俺に何も言わずに!? か、勝手に行っちまったのか……?」
勇者「…………くそっ!!」
カサッ ヒラ、ヒラ
勇者「……ん? あれっ? もう一枚あるのか……?」
勇者「……」
勇者「……」カサッ
『なんて、まあ、1枚目が魔王の表の顔ってことにしておいて欲しいな。
そしてこれが、魔王の裏の顔。1枚目に書いてあることは、本当だよ。
私は今、その町の隣にある私の家にいる。そこで、勇者を待ってる。
この手紙の訳は、勇者に1つのお願いと2つの謝りたいことがあったから。
謝りたいことの1つ目は、こんな形で勝手に行ってごめんなさい。どうしても、顔を合わせて言うことができなかったから。
そして2つ目は、逃げ出してごめんなさい、私は、ある時気付いたの。勇者は、どんどん強くなっていってる。
そしてその強さが、多分、もう私を超えてるってことに』
勇者「な、なんだって!?」
『それでね、怖くなったの。私が負けるとかそういうことじゃなくて、
勇者との闘いが、本当に間近に迫ってるんだって思って。
あのね、こんなこと言うと魔王失格かもしれないけど、裏の顔だから許して下さい。
私ね、もう勇者のことをただの勇者として見れなくなってるんだ。
きっとね、私には勇者を本気で倒そうとか、そういうのはできないと思う。
もう、闘うことはできないと思う。だからね……これが、お願いしたいことなんだけどね、
勇者の方から、私を倒しに来てほしい。私は勇気が無くて、勇者の元へは行けそうにないから、
勇者の方から私のところへ来て欲しい。そして……私の命を、奪って欲しい。
それが、勇者にお願いしたいこと。……じゃね、一方的でごめんね、旅、すごい楽しかったよ。
魔王より 』
勇者「は? ……何言ってんだよ……」
勇者「……ふざけんなよ!! ……」グシャッ
勇者「……そんなの……そんなの俺だって同じなんだよ……」
勇者「勝手なこと言ってんじゃねぇよ!!」
勇者「俺だって……俺だって……」
勇者「くそおおおおおおおっ!!!!!!」ダッ
宿主「あ、お客s」
勇者「ふざけんなああああああ!!!!!!」タッタッタッタ
宿主「あっ……ふう、これでやっと掃除できるよ」
宿主「……ん?」
宿主「……なんか、床に水滴が落ちてるな……」
宿主「……ま、いいか、サッと拭いておこう」
勇者「おおおおおおおっ!!!!!!」ズバッ
魔物「ぎゃああ!」
勇者「」ヒュッ クルッ
勇者「どけええええ!!!!!!」ザシュッ
魔物「ぎえええっ!」
魔物「ガァァッ!」ザシュッ
勇者「ぐっ!! いってえ……」
魔物「グガアアアッ!!!」
勇者「くそっ……くそおおおおお!!!!!!!」ザシュザシュッ
魔物「グフッ!!」
勇者「ふう……ふう……」タッタッタッタ
勇者「おりゃあああ!!!!!」ザシュザシュザシュ
魔物「がはっ!!」
勇者「……もうちょっとだ……もうちょっとのはずだ……!!」タッタッタッタ
『魔王「ザオリク!」』
勇者「くっ……なんなんだよ……ちくしょう……」タッタッタッタ
『魔王「メラミ!!」』
勇者「うおおおおおおおおおお!!!!!」ズバァッ
魔物「ぎっ!!」
勇者「……ぜえ……ぜえ……」タッタッタッタッタッタッタッタ
ッバーン!!
勇者「はぁ……はぁ……やっと……着いたか……」
魔王の城
勇者「……魔王は、どこにいるんだ……」
勇者「やっぱり……最深部だよな」
勇者「……行くしかないか……」
勇者「……」
勇者「」タッタッタッタ
最深部
魔王「勇者は……きっと勇者は今ここに向かって来てくれてる……」
魔王「あの手紙を読んで……私の……私の命を奪いに……」
魔王「……ぐすっ……あっ、ダメ……ぜ、絶対……」
魔王「泣がないっで……決めだんだから……」ウルウル
魔王「うぅっ……勇者ぁ……私……私……」
魔王(ダメだ……私……今更、あの手紙に書いたことを……後悔し始めちゃってる……)
魔王(殺してなんて……そんなの……いや、嫌だっ……嫌だよ……勇者ぁ)
勇者「はぁ……はぁ……」タッタッタッタ
勇者「もうちょっとだ……あと少しで魔王に……!」タッタッタッタ
勇者「くっ……さすがに……疲れてきたな……」タッタッタッタ
勇者「ん? ……あの扉は……」タッタッタッタ
勇者「おりゃああっ!!」
バーンッ
魔王「……ゆ、勇者……」
勇者「ハァ……ハァ……」
勇者「ぐっ……ハァ……ハァ……やっと……やっと見つけたぞ……魔王!!」
魔王「ゆ、勇者!」
勇者「お前を……お前の望み通り!!」
魔王「ま、待って!!」
勇者「俺は……お前を……倒しに来たんだ!!!!」
魔王「待って!! 待って勇者!!」
勇者「待てるかよ!!!! せっかく決めた覚悟を!!!! 揺さぶるつもりか!!!!」
魔王「でも!! でもっ!! わた、私!! やっぱり……!!」
勇者「うおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!!」
勇者「まおおおおおおおおおおおおおおおおおおうっ!!!!」タッタッタッタ
ザシュッ!!
魔王「!! ゆ……勇……者……」
勇者「ハァー……ハァー……」ヒュー
魔王「……」
勇者「……」ジャキッ
魔王「……ゆ、勇、者?」
魔王(あ、あれ……? 私……斬られてない……?)
勇者「今こそ魔王は死んだ!!!!! そして我が目的は達成された!!!!! 今、この瞬間に!!!!!」
勇者「しかし!!!!! まだ終わっていない!!!!!」
魔王「えっ……?」
勇者「我の言葉を聞け!!!! 屍と化した魔王よ!!!!!」
魔王「ゆ、勇者?」
勇者「我は!!!!! 一つだけ魔王に言い忘れていたことがある!!!!」
勇者「……」スタスタ
魔王「えっ? ちょ、ちょっと、何?」
勇者「……魔王」
魔王「……な、何?」
勇者「……好きだ」ニコッ
魔王「……えっ!?」
勇者「……俺は、魔王が、好きだ」
魔王「……ゆ、勇者……?」
勇者「だから、ずっと俺の側にいてくれないか。魔王」
魔王「……そ、そんなの……無理……無理だよっ!!」
勇者「……無理じゃないさ」
魔王「む、無理無理!! 無理だよ!!」
勇者「どうして?」
魔王「わ、私と勇者は、魔王と勇者で!! 勇者が魔王の城に辿り着いたら!! 魔王を倒さなくちゃいけなくて!!」
勇者「……」
魔王「そういう風に運命が決まっていて!! それは誰にも覆せなくて!! だから、だから……!!」
勇者「それがどうした!!!!!!!!」
魔王「」ビクッ
勇者「……忘れたのか!!!!! 少なくとも!!!!!! 俺はその『普通』とやらを!!!!! 威風堂々と侵したやつを知っている!!!!!!!」
魔王「えっ? えっ?」
勇者「お前のことじゃないか!!!!! 魔王よ!!!!!!!!」
勇者「……だから、俺は確認しなければならないことと、行動しなければならないことが一つずつある」
勇者「魔王よ、……貴様は、勇者に負けた!! しかしその因果関係は断ち切れまい!!
幾千幾万と倒し倒されの関係が続いてきたのだ!! ここで終わりな訳がない!!」
勇者「そこで魔王に問う!! 魔王は、勇者より弱いか!!」
魔王「……な、なにを」
勇者「弱いのか!!!!」
魔王「……よ、弱いよ!! 私は勇者に負けたんだもん!!」
勇者「…………そうか」フッ
魔王「な、なに!? なんなの!?」
勇者「ではお前のすべきことはただ一つだろう!!!!」
魔王「す、すべきことって…………ハッ!!」
勇者「そうだ!! この俺を倒す!! その目的を持って!! 旅に出ろ!!
弱き者が強き者を打ち砕き、世の支配層を覆すこの戦争を!! 再び魔王の手により、復活させてみせろ!!!!」
魔王「……ゆ、勇者……」ブワッ
魔王「勇者……!!」
勇者「これで確認は終えた!!!! 残るは、行動のみ!!」
勇者「……魔王、そこで、待っててくれ」
魔王「うん! ……うんっ!!」
ガチャッ
勇者「……来ちゃったっ」
魔王「……勇者ぁっ!!!!」ダキッ
終わり