魔王「……来ちゃったっ」 勇者「えっ」 7/8

1 2 3 4 5 6 7 8

宿屋

勇者「うー、疲れたー……」ボフッ

魔王「もう結構暗くなってきたね」

勇者「今日も色々あったな……なんかもう眠くなってきた」

魔王「寝てもいいよ? 私も寝る」

勇者「そ、そう? じゃあ、寝ようかな」

魔王「うん」モソッ

勇者「……」

魔王「……勇者」ギュゥゥゥ

勇者「え!? な、なに!? どうしたの!?」

魔王「ううん……でもちょっと、こうしてていい……?」ギュゥゥゥ

勇者「えっ……う、うん……」

魔王「……ありがと」

ギシ……ギシ……

勇者「……んー? ……」モゾッ

勇者「……ま、魔王? 起きたのか……?」ムクリ

女盗賊「あっ」

勇者「……あっ」

女盗賊「……よ、よォ」

勇者「ああああフゴォッ!」モガモガ

女盗賊「しっ! だ、黙れボケ!」

勇者(ま、また盗みにっ……! ダメだ! 完全に上に乗っかられた! 身動きとれない!!)

勇者「フガフガ!」

女盗賊「し、静かにしやがれこのバカ! くそっ!」

勇者(ど、どうすれば……! でも動けないし……! ……んっ? なんだこの2つのお山は……)

女盗賊「こ、これで! 黙ってくれ!」パフパフ

勇者「ほわあああ!」

勇者(や、柔らかい! でもなんだこれ! 目の前真っ暗で見えない!)

女盗賊「」パフパフ パフパフ

勇者「ほおおおっ!」コォォォ

勇者「ほあっ……!」ピクッ

勇者「……」

女盗賊(……よ、よしっ! なんとか静かになったみてェだな)

勇者「……」

女盗賊(金目の物……金目の物)ゴソゴソ

勇者「……待ちたまえ」

女盗賊「」ビクッ

女盗賊「な、なんだよテメェ! まだ意識あったのかよ!」

勇者「下らないとは思わないのか? 盗みなど。いやむしろこの世界がくだらないと」

女盗賊「は、はァ? 何言ってんだコラ、頭狂ったのか!?」

勇者「俺は今すごく冷静だ。むしろこんなに冷静な自分が怖い」

女盗賊「な、なななんだよテメェ気色悪ぃ……」

勇者「考えてみて欲しい。そのような下らないことをするより、もっと有意義なことがあると思わんかね?」

女盗賊「……な、なんだよ」ゾワッ

勇者「さ、さっきの……ほら……」

女盗賊「あぁ?」

勇者「……パ、パフパフするやつ! あ、あれは素晴らしい……」

女盗賊「テ、テメェ……中々気持ち悪ぃんだな……」

勇者「い、いいから!! パフパフ! パフパフしてよ!!」

女盗賊「う、うわっ!! なんだよテメェ!! ちょ!! 近づくな!!」

勇者「パフパフしてくれよお!!!!」

女盗賊「う、うわあああ!! 助けて!! 誰か助けて!!!!」

魔王「……そのお望みなら……私が叶えてあげるよ……」フルフル

女盗賊「え?」

勇者「あっ」

魔王「ザキ! ザオリク! ザキ! ザオリク! ザキ! ザオリク!」

勇者「ぐっはぁ! いぇーい! ぐっはぁ! いぇーい! ぐっはぁ! いぇーい!」バタンッ スクッ バタンッ スクッ バタンッ スクッ

女盗賊「お、おい!! や、やりすぎじゃねェか!? 大丈夫なのかそれおいィ!!」

魔王「……ふんっ!!」

勇者「い……いつ……いつから起きてたの……」

魔王「『……待ちたまえ』のあたりから」

勇者「……申し訳ありませんでした」

魔王「あなた!!」

女盗賊「なっ!! えっ!?」ビクッ

魔王「こんな目に会いたくなかったら、今後一切私達を狙わない方がいいよ」

女盗賊「わ、わかってるよ!! こんな目に会うのはもうごめんだ!!」

女盗賊「こ、こんなやつの顔に押し付けられるあたしのスライムがかわいそうだ……」

スライム×2「……」パフパフ

勇者「えっ?」

女盗賊「……じゃ、じゃあなっ!!」ガチャ

魔王「……これが、真実だよ」

勇者「…………か、神様のバッキャロー!!」

魔王「」ツネリ

勇者「あいたたたたたっ!!!!」

勇者「……はぁ、なんかあんまり疲れが取れてない……」

魔王「当たり前でしょっ」

勇者「ううっ……」

勇者「……で、今日はどうする?」

魔王「……そ、だね。ひ、久しぶりに、ゆっくりしよっか! なんて! へへっ」

勇者「え? 特訓は? 次の町までのランニングは?」

魔王「た、たまには無くてもいいんじゃないかなっ? ま、丸一日暇な時があっても!」

勇者「……ど、どうかしたのか? 頭でも打ったか?」

魔王「そんなに私は鬼畜な存在なの?」

勇者「い、いや……いつもと違うから、何かあったのかと思って……」

魔王「べ、別に何もないよっ?」

勇者「そ、そう? ……なら、いいんだけど」

魔王「……」

勇者「……」

魔王「……」

勇者「……な、何もすることがないな」

魔王「そ、そだね!」

勇者「や、やっぱり特訓しようか?」

魔王「……あっ、わ、私! ちょっと宿屋に忘れ物してきちゃった! 取りに行ってくる!」

勇者「えっ?」

魔王「じゃ、じゃあね! そこで待ってて! すぐに戻ってくるから!」

勇者「う、うん……わ、わかったー」

勇者「……なんなんだ?」

宿屋

魔王「……」

魔王「……」カキカキ

ガチャッ

魔王「」ビクッ

宿主「おや? まだいらしたんですか?」

魔王「あ、び、びっくりした……」

宿主「あの、部屋を片づけたいのですが……」

魔王「も、もう少しだけ待ってもらえないかな? それと一つだけ頼みがあって」

宿主「……頼み? なんです?」

魔王「この手紙を……この部屋に置いたままにしておいて欲しいんだけど」

宿主「……手紙? まあ、それくらいなら、別にいいですけど。今日中に受取人は来るんですよね?」

魔王「た、多分」

宿主「……わかりました」

勇者「魔王遅いなー……」

勇者「特訓でもしとこうかなー、暇だな……」

勇者「……」ジャキッ

勇者「やっぱりかっこいいなあ」ニヤリ

勇者「ほっ! そりゃ!」ブンッ

勇者「……ウズウズしてきた」

勇者「特訓……しに行ってもいいよな?」

勇者「町の外なら探せばすぐ見つかるし……魔王なら頭も良いし……俺が特訓したがってたのも知ってるし。

せっかくの新しい武器を持て余すのももったいないし……」

勇者「……」

勇者「……よしっ!」ジャキッ

勇者「」タッタッタッタ

町の外

勇者「ほっ!」ザシュッ

魔物「ぎゃあっ!」グタッ

勇者「魔王がいないと、一回一回魔物を探し出さないといけないから、効率が悪いな」

勇者「なんだか物足りない……」

勇者「おーい! 魔物ー! でてこーい!」タッタッタッタ

勇者「……うーん」

勇者「これは思ったより時間がかかりそうだな」

勇者「……おーい!」タッタッタッタ

勇者「ハァ……ハァ……なんだこれ……効率が悪すぎる……」

勇者「レベル上げって……こんなにも大変だったのか……」

勇者「これは……一旦魔王のところに戻って手伝って貰った方が……」

勇者「って、えっ!? も、もう夕方じゃん!! いつの間に!?」

勇者「やばいやばいやばい……夢中になりすぎてて気付かなかった……」

勇者「ま、魔王はどうしたんだろう……やばい、きっと怒ってるだろうな……」

勇者「町の外って分からなかったんだろうか……」

勇者「……」

勇者「と、とにかく早く戻らないと!!」

勇者「おかしいな……どこにもいない」

勇者「朝いた場所にもいなかったし……もしかして宿屋にいるのか……?」

勇者「……行ってみよう」

勇者「」タッタッタッタ

宿屋

勇者「あの」

宿主「ん?」

勇者「○○号室って、今人います?」

宿主「……ああ、手紙の受取人かい?」

勇者「はい? 手紙?」

宿主「それなら、部屋に置いてあるから勝手に入っていいよ」

勇者「……えっ?」

勇者「……なんだろうあの人。手紙とか何とかよくわからないこと言ってたな」

勇者「おっ、ここか……」ガチャッ

勇者「おーい、魔王ー! いるかー?」

勇者「……っかしいなー」

勇者「……ん?」

勇者「……て、手紙が置いてある……」

勇者「……」

勇者「……」スタスタ ペラッ

『勇者へ』

勇者「!?」

勇者「……な、なんだよこれ……」カサッ

『-果たし状-』

勇者「は? 果たし、果たし状!?」

『よくぞここまで辿り着いた!! 勇者よ!! そのことは褒めてやろう!!

貴様が今いるその町の隣には、何を隠そう魔王の城が建っているのだ!!

つまりは栄えあるラストダンジョンへと貴様は後一歩のところまで来ているのだ!! ふははは!!

そこでだ!! 我はその城にて貴様を待つことにした!! 貴様が真の勇者であると自覚しているのであれば!!

全力で我の城へと辿り着いてみせよ!! 待っておるぞ!!!! ふーっはっはっは!!

魔王より 』

1 2 3 4 5 6 7 8