勇者「俺にはこの鉄の拳があればいい!」ドヤァ 僧侶「……」イラッ 8/8

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側近「魔王様は戦い大好きですからねー、あはははは」ケラケラ

僧侶「しかしなんだって王様と勇者様戦わせたりしてるんです?」

側近「私はただ面白いからですよー。あなたこそどうなんです?」

僧侶「勇者様ったら私に黙ってどこかに雲隠れしちゃったんですよ」

僧侶「これはお仕置きしないといけませんよね。あんなに心配させて……もう……死んじゃったかと思いました」ブツブツ

側近「嫉妬ですか?勇者のこと好きなんですかー?」ニヤニヤ

僧侶「べ、別にそういうわけじゃ……///」プイッ

側近「あははー照れてる照れてる」ツンツン

僧侶「からかわないでください」

側近「私は魔王様のこと好きですけどねー」

僧侶「え?」

側近「でも全然私に興味ないみたいなんですよねー」

側近「王座争って戦ってたときも魔王様だけには私の魅了魔法が効きませんでしたし、はぁ……」

ズイッ

黒龍「わしにだって魅了は効かなかったであろう?側近」

側近「黒龍さんは魅了魔法を使う隙さえ与えてくれなかっただけでしょ……っていつから?」

黒龍「何やら魔王城のまわりで魔力がざわついておったからの」

黒龍「おっ、うまそうなものを食っておるのぅ。どれっ」ヒョイパクパクパク

僧侶「あー!全部ケーキ食べた!」

側近「何してるんですかー。女子会に入ってくるなんてもう」

黒龍「ぐはははは。ハムエッグの恨みじゃ」

側近「まだ覚えてたんですかー、しつこいなぁ」

黒龍「どれ、わしもここで見物させてくれい。おっ、魔王が押されておるぞ」

側近「え!?」クルッ

黒龍「冗談じゃ。ぐははははは」

僧侶「ケーキが……」シュン

黒龍「泣くな泣くな。差し入れを持ってきてやったぞ。ほれっ、食うが良い」ドンッ

僧侶「なんですか?これ」

黒龍「肉じゃ。うまいぞ、ほれっ、食え食え」バクバクッ

僧侶「女子会で肉って……」

黒龍「ところでお主らこんなところで何をしておるんじゃ。そんな仲じゃったのか?」

側近「ケーキ屋さんで知り合ったんですよ、ねーっ」

僧侶「ねーっ」

キャッキャ

側近「それでお互い協力してこの場を作ったんですよー」

黒龍「確かにこれは見ものだの」

黒龍「おっ、また魔王があぶないぞ」

側近「あはは、そんな同じ手に何度もひっかかりませんよ」

僧侶「いえ、本当ですよ。押されてます」

側近「え、魔王様!?」クルッ

僧侶「これで終わりでしょうか。やっぱあの細身の王様が不利なんじゃないですか?」

黒龍「確かにあの肉体は大して強くないのぅ」

側近「いえ、それでも魔王様は負けませんよ」

僧侶「でも……」

側近「力が弱くても魔王様は勇者にはないものを持ってますから」

黒龍「じゃろうなぁ、あやつはなぁ。それでわしは負けたようなものじゃ」

僧侶「何を持ってるって言うんですか」

側近「魔王様は負けませんよ。何度倒れても必ず向かっていく『鉄の意志』を持っていますから」

魔王「ぜい……ぜい……どうした。鉄の拳とやらは使わんのか」

勇者「うらああ!とどめだ!魔人斬り!」ズバッ

魔王「甘いわ!」バシッ

勇者「はぁ……はぁ……白羽取りだと……何なんだよお前は……その強さは……」

魔王「私は絶対に負けん!食らえ!奥義!暗黒吸魂輪掌破!」バギーン

勇者「ぎゃああああああああああ!俺の光の剣が折れた!折れたあああああ!」

魔王「ど、どうだ……ぜぃぜぃ……もう素手で戦うしかあるまい」

勇者「全財産をつぎ込んだ剣がああああああああ」ボタボタ

魔王「泣くな!みみっちい!」

勇者「許さない……許さないぞ……マオ王!」ジャッ

魔王「なっ、まだ剣を持っておるのか」

勇者「このいわく付きの魔剣を使うことになるとはな……」

魔王「なに……呪いでもあるのか!?」

勇者「これはな……この俺が50年ローンの呪縛を受けたいわくのある魔剣……マサムネだ!」

魔王「そんないわくは嫌だな……」

勇者「黙れ!借金の恨みを思いしれ!」ギィン

魔王「くっ……」ビリビリッ

勇者「そろそろ腕がしびれてきたか?」ズバッ

魔王「おおおおおおおお!」ガシッ

勇者「なっ……口で受け……」

バキーン

勇者「NOOOOOOOOOOOOO!また折りやがったあああああああ」ガックリ

魔王「ぺっ……いい加減に素手でむかってこんか」

勇者「俺のレアアイテムが……ううっならば虎の子のこの剣で……」ジャッ

魔王「まだ剣を持っておるのか……」

勇者「これは3代前の魔王を討伐したといわれる雷神の……」

魔王「とう!」バキーンッ

勇者「ぎゃああああああああ!」

魔王「いい加減にしろ!」

勇者「解説くらいさせてくれ……ううっ、これも30年ローンだったのに……」ブルブル

勇者「許さん……」

魔王「おお、やっとやる気になったか!」

勇者「許さんぞおおおおおおお!爆裂魔法!」ドゴオオオオン!

魔王「むっ?どこに向かって魔法を撃っておる……」

ガラガラガラガラ

魔王「なっ……魔王城が……」

勇者「お前の大事な城もつぶれてしまえー!爆裂爆裂!」ドガーンドガーン

魔王「やめんかー!」ガシッ

勇者「お前こんなピンクの城嫌だとかいってただろう!」

魔王「いいからやめろ」

勇者「うっさい!ばーかばーか!爆裂爆裂!」ドカーンドカーン

―――丘の上

僧侶「ああ……城が崩れちゃいましたね、残念です」

側近「あはははははー」

黒龍「二人ともなかなかやるのぅ」

僧侶「あ、今度は取っ組み合いになった」

側近「うーん、腕力じゃ魔王様がふりかなー、あはははは」

僧侶「あなた好きな相手がやられそうなのに良く笑ってられますね」

側近「だから魔王様は私なんかに興味ないんですってばー」

黒龍「側近、お主何か勘違いしておらんか?」

側近「はぁ?何がですか?」ケラケラ

黒龍「魔王がお主を嫌いじゃから魅了の魔法が効かなかったと思っておるのか?」

側近「だってそうでしょ?鉄の意志で私の魅了を破ったんですよー」

黒龍「いや、お主の魅了は最強じゃ。誰もやぶれはせんわ」

側近「じゃあ、なんでです?」

黒龍「昔魔王と戦ったとき言っておったぞ。すごく強い女に惚れたとな、絶対に次は勝って側に置いてやるとな」

側近「それって……」

黒龍「最初から自分のことが好きな相手に魅了魔法を使っても効果があるかの?側近」

側近「あ……」

黒龍「惚れた女というのはお主のことじゃろ?だから側近にしたんじゃろう?わしは封印しおったくせに」

側近「でも……そんな……まさか……」

僧侶「あ、今度こそ王様負けそうですよ」

側近「魔王様!」バサッ

ヒュー

僧侶「飛んでいっちゃいました……っていうかあの翼は?」キョトン

黒龍「ぐはははははは」

―――魔王城跡

魔王「ぐぅ……もう体が……」ガクガクッ

勇者「はぁはぁ……これで終わりだ!食らえ!極大雷撃魔法!」ゴゴゴゴゴッ

魔王「おおおおおおお!動け……我が肉体よ……」ガクガクッ

側近「魔王様!」バッ

ヒュー

勇者「おおおおおおお!」ドガガーン

勇者「っていない!?んっ?あれ誰だ?」チラッ

ヒューン

勇者「おいこら!にげるな!」

勇者「って……行ってしまった……」ポツーン

―――丘の上

僧侶「なんかあの子王様を掴んでどっかに飛んで行っちゃいましたけど……」

黒龍「しばらく帰ってはこまい。二人で何百年でもイチャイチャしておるがいいわ。ぐはははははは」

戦士「王様ー、いつまで待ってればいいんすか?」スタスタ

僧侶「戦士!?」

魔法使い「あ、僧侶じゃーん。おひさー」フリフリ

僧侶「魔法使いまで!二人ともどうしてここに?王殺しの罪で地下牢に捕まっていたんじゃ?」

戦士「俺たちは無実だっての!」

魔法使い「そうよ!それをこの王様に助けもらったの」

僧侶「王様?」

黒龍「そう、わしよ!ぐはははは。人間の国を落とすなど簡単なことであったわ」

黒龍「魔王のやつは魔王城だの勇者だのにうつつを抜かしておったからの」

黒龍「わしが支配してやったわい」

戦士「命の恩人だからな!どこまでもついていきますぜ!王様!」

魔法使い「じゃ、私は王妃の座でも狙っちゃおうかなー」キャッキャ

黒龍(っというかこいつらが捕まったのはわしのせいなんじゃがな。黙っておこう)

黒龍「さて、行くか!次は北方の国を支配してやる」

戦士「うぃっす!」

魔法使い「王様、一生ついて行きます!」

―――魔王城跡

勇者「俺は……勝ったのか……?」ポツーン

勇者「いや、あいつは女の子に助けてもらってどこかへ飛んでいった……」

勇者「これは逆に俺の負けなんじゃないのか……」

勇者「名声も失った……財産も失った……」

勇者「はぁ……」バタッ

勇者「もうだめだ……死にたい……」

勇者「ああ……僧侶の言うこと聞いておけばよかったなぁ」

僧侶「本当にそう思っていますか?」スッ

勇者「ああ……僧侶の幻が……幻でもかわいいなぁ……」

グリグリッ

勇者「むぎゅ」

僧侶「……」グリグリッ

勇者「この心地よい足の感触は……僧侶?」

僧侶「足の感触で人を判断しないでください!」フミッ

勇者「うぐぐっ……あの……僧侶さん、俺今すっごい疲れてるんですけど」

僧侶「でも勇者様はそんな状態でもこうされるのが好きでしたよね」グリグリッ

勇者「まぁ……好きだけど全部」

僧侶「……」

勇者「僧侶……」

僧侶「なんですか?」

勇者「意地張ってごめんなさい」

僧侶「それだけですか?」

勇者「心配させてごめん……」

僧侶「よろしい」ニコッ

―――魔界上空

側近「うっ……うっ……魔王様魔王様魔王様」ギュッ

魔王「貴様、何をする離せ!まだ勇者との決着はついておらんぞ!」

ヒュー

側近「魔王様ぁ」ポタポタッ

魔王「……泣いて……おるのか?普段ヘラヘラしておるばかりのお前がどうした」

側近「ううっ……ぐすっ……魔王様ぁ」

魔王「なんだ、言ってみろ」

側近「魔王様魔王様ぁ」ギュッ

魔王「いいから何があった。勇者のことなどあとでよいから言ってみろ」

側近「魔王様好きです///」

魔王「なっ……」

側近「魔王様……」ジー

魔王「むぅ……しかし世界征服をせねば……」

側近「……」ジー

魔王「ああ!わかったわかった!」

魔王「い、一度しか言わんからな///」

魔王「本当は世界征服などどうでもよかった……」

魔王「私にはお前がいればそれでいい」

おしまい

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