勇者「俺にはこの鉄の拳があればいい!」ドヤァ 僧侶「……」イラッ 1/8

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王様「では勇者殿、魔王討伐の件たのみましたぞ」

勇者(♂)「おっけーおっけー!この俺にドーンと任せておいてください!」

王様「これは旅の資金じゃ」チャリン

勇者「あ、どうもどうも。お金なんてなくても大丈夫なんですけどねー、ははは」

勇者(うわっ、すくなっ)チラッ

王様「期待しておりますぞ。勇者殿」

勇者「大丈夫大丈夫!俺って神に選ばれし者ものですから。魔王など一捻りですよ」

王様「ははは、さすが勇者殿。その強さで毎日の鍛錬も怠らないとか」

勇者「まぁね!天賦の才があって努力もしてるからね」

王様「ここから勇者殿の走ってる姿毎日見ておりましたぞ」

勇者「あ、見られてたんですか、へへっ。毎日20キロは走ってるからね」

王様「ほほぅ!20キロも。さすが勇者殿」

勇者「まぁ、俺にかかれば余裕だから」エヘンッ

王様「わはは、流石ですな」

王様「ところで、勇者殿。お主ほどではないが旅の仲間も用意させてもらいましたぞ」

勇者「仲間?」

王様「ああ、酒場で待っておる」

勇者「それは色々とどうも。まぁ俺にドーンと任せておいてよ!」

王様「その調子で魔王討伐も頼みましたぞ?」

勇者「おっけーおっけー、ははは」ドンッ

勇者「じゃ、いってきまーす」スタスタ

勇者(また調子に乗っていらないことを言ってしまった……)ズーン

勇者「いやいや!勇者といえば英雄!イメージが大事!)

勇者(俺のイメージが崩れないように期待に期待にこたえないとな)

勇者(酒場に仲間がいる話だけど、最初が肝心だ)

勇者(よし、行くか)ザッ

―――酒場

勇者「どうも俺があの勇者です。よろしく」

魔法使い(♀)「きゃー!勇者よ!本物よー!きゃー!」キャイキャイ

戦士(♂)「おおおおー!すげー!本物だ!お、俺戦士!よろしく!」ガシッ

僧侶(♀)「……」

勇者(あ、この僧侶かわいい……美人さんだなぁ。よし、いいとこ見せないと)ドキドキ

勇者「ははは、そんなに騒がないでよ、困ったなぁ」

魔法使い「神に選ばれたんだよねー?ねっねっ!?」

勇者「まぁね!」エヘン

戦士「あ、握手!握手してもらってもいいか!?」

勇者「今日は特別だよ」ギュッ

戦士「すげー!勇者と握手しちゃったぜ俺!」

魔法使い「強いのよね!勇者って!」

戦士「馬鹿!何言ってんだ!当たり前だろ!なっ」

勇者「まぁ、強いかな。最強といってもいいかも」

魔法使い「目からビームが出るのよ!ビームが!」

戦士「まじかよ!すっげーどうやるんだ。こうか?」バシッ

勇者「あいたっ」

魔法使い「違うでしょ、こうよこう」バシバシッ

勇者「ちょっ、頭叩かないで」

戦士「いやいや、じゃあこうやって」グリグリッ

勇者「痛てーよ!出ないから!ビームとか!」

魔法使い「えーないのー?」

戦士「なんかがっかりだよなぁ」

魔法使い「ねーっ」

勇者「ま、まぁ俺も君達と同じ人間だし?ははは」

戦士「俺、勇者に憧れて努力してたんだぜ!?毎日20キロは走ってな!勇者にはかなわないだろうけど」

勇者「20キロ!?」

戦士「どうかしたか?」

勇者「え゛……あ、うん。えーっと……俺は毎日30キロは走ってたかなぁ」キョロキョロ

戦士「マジかよ!すっげー!」

僧侶「目が泳いでますね……嘘っぽい」ボソッ

勇者「え?」

僧侶「嘘みたいにお強いんですね。すごいです」ニコッ

勇者(聞き間違いかな?でも可愛い……)

魔法使い「ねっねっ、サイン頂戴サイン!私友達から頼まれてるの」

戦士「あ、俺も俺も!」

勇者「いやぁ、参ったなぁ、ははは」

魔法使い「えっと、弟と、叔父さんと、村人君と……」

戦士「俺は父ちゃんとじいちゃんに!」

勇者「しょうがないなぁ。特別だぞ」サラサラッ

僧侶「男ばっかですね……」ボソッ

勇者「え?」

僧侶「男らしくて素敵です!勇者様♪」ニコッ

勇者「そ、そうかなぁ、へへっ」

戦士「でさ!勇者ってどのくらい強いんだよ。なぁ!」

魔法使い「あ、それあたしも知りたい!」

勇者「ははは、まぁ魔王なんて片手で捻っちゃうくらい強いかなぁ」

戦士「マジかよ!魔物の王様だぞ!?」

魔法使い「すっごーい!」

キャイキャイ

僧侶「調子こいてますね……」ボソッ

勇者「え?」

僧侶「調子がよろしいんですね♪絶好調ですね」ニコッ

勇者「まぁね!魔王なんてもう素手で十分だよ素手で!」

僧侶「武器なんていらないと?」

勇者「ああ、俺にはこの鉄の拳があればいい!」

僧侶「……」イラッ

勇者「なーんちゃっ……」

戦士「おおおおおおおおお!勇者かっけええええ!」

魔法使い「素手でいくの!?本当に!?すっごーい!」

勇者「……て……え!?」

勇者「あ、いやっ……今のは冗だ……」

僧侶「冗談ではなく本当に素手でいいなんて、かっこいいです勇者様♪」ニコッ

勇者「あ……う……お、おう……」

魔法使い「じゃあ、この王様からの軍資金はあたしたちの装備に使っちゃっていいのね」

戦士「あ、俺剣が欲しい!剣」

僧侶「勇者様はここでお待ちください。ではみなさん買い物にいきましょう」ニコッ

魔法使い「わーい、おっかいものー」

戦士「防具は何にしようかなぁ」

スタスタ

勇者「……」ポツーン

勇者(どーしよ……丸腰って……)

―――草原

戦士「うおりゃあああ!結構斬れるなこの剣」ズバッ

魔法使い「火炎魔法!この杖もいい感じよ」ゴゴゥ

魔物「グオオオオオ」ダッ

僧侶「勇者様!そっちにいきましたよ!」

勇者「え?いや、あの……やっぱ武器を……」

魔物「ガアア!」バッ

勇者「え、えっと……うりゃああ!」ゴスッ

魔物「フーッフーッ!フシャー!」

戦士「おおー!やるじゃん!さすが勇者!」

魔物「グルルルル」

勇者「……」ジンジン

勇者(いっ……ってーーーーーー!手がいてえ!)

戦士「ふぅー。全部片付いたか」

魔法使い「勇者ってすごいねっ。まさか本当に素手で倒しちゃうなんて!」

勇者「……」ブルブル

僧侶「勇者様?どうかなさいましたか?」

勇者(ううっ……いてぇ……今声を出したら絶対うめき声か叫び声しかでねぇ……)

戦士「勇者?」

勇者「……」ビシガシグッグッ

戦士「ん?ジェスチャー?何々?あそこの岩影で?なんだ、トイレ我慢してたのか、いってこいよ」

勇者「……」ダッ

戦士「しかしほんとスゲーなぁ、勇者ってのは。魔物を殴り倒しちまうなんてな」

魔法使い「サイン貰っておいてよかったねー」

戦士「そういえば勇者って紙持ってったか?」

僧侶「あ、私が持っていきますよ」

戦士「わりいな」

僧侶「いえいえ」ニコッ

―――岩影

勇者「うおおおおおおおおおおおお!いてえええええええええええ」ジタバタ

勇者「手が……手がああああああああああああ」バタバタ

勇者「ふーっふーっ!これはいかん、なんとか……何とか武器を使える方向にもっていかないと俺の拳が死んでしまう……」

勇者「何とか勇者の威厳を失わずに武器を手に入れることはできないか……」

勇者「うーん……」

僧侶「これは……」コソコソ

勇者「どうしよう……」

僧侶「どうしてやりましょう」ニヤリッ

魔法使い「あ、勇者が戻ってきたわ」

戦士「おせーよ。がはははは。おっきいほうか?」

勇者「違うよ!手が……」

勇者「手がどうかしたのか?」

勇者「……なんでもない」

僧侶「勇者様!先ほどの戦い素敵でした♪」ニコッ

勇者「あ……///」

僧侶「鉄の拳だなんて尊敬しちゃいます♪」

戦士「だよなー。俺の剣より硬いんじゃねーか?」

勇者「あはは。いやぁ……」テレテレ

僧侶「でも余り無理はしないでくださいね」

勇者「僧侶……」

僧侶「早いところ次の町に着いたほうがよさそうですね」

戦士「ああ、確かに戦い続きだったからな」

魔法使い「そうね」

僧侶「ではみなさんも疲れているようですしこちらの道で行きましょう」

戦士「おっ、そっちなら確かに近道だな」

魔法使い「夜までには着けるかも」

―――沼地

チャプチャプ

勇者「こっち沼地なんだけど……」

僧侶「こっちが近道なんですよ」ニコッ

魔法使い「な、なんか嫌な気配がするんだけど……」

戦士「うおっ!」サッ

リザードマン「フシャー!」

戦士「これは……リザードマン!?」

魔法使い「もしかして……ここってリザードマンの巣!?」

リザードマン「ぐるるるる」

戦士「って言ってる場合じゃねー!」ズバッ

リザードマン「しゃー!」ギィーン

戦士「おおおっ!」ジンジン

戦士「硬ってー!」

僧侶「リーザードマンの鱗といえば鉄の強度を誇ると言われてますからね」

戦士「マジかよ。勇者!お前も一緒に頼む!」ザッ

勇者「えっ」

リザードマン「ぐあうっ!」バッ

戦士「おりゃああ!」バッ

勇者「す、素手で!?こいつらを!?」

僧侶「勇者様、いまこそ鉄の拳を見せるときですよ!」

勇者「えっ……」

勇者「そ、そうだね!任せとけ!」

勇者「だあ!」ガチーン

勇者(~~~~~~~~~~~!)

戦士「どうした勇者!?」

勇者「んぐぐぐぐ」

勇者(いてえええええええええええ!硬すぎる)

僧侶「まさか痛いんですか?」ニコッ

勇者「ぐぐっ……そんなまさか……だろ?」ブルブル

戦士「どりゃああああああ!」ドスッ

戦士「なんとか……全力なら斬れるな。勇者!お前もはやく!」

勇者(どうする……ここで弱みを見せては俺のイメージが崩れてしまう……)

魔法使い「勇者!」

勇者(くそ!やるしかねえ!)

勇者「おおおおおおおおおおおおお!」ゴゴゴゴゴ

勇者(俺の中の全魔力を拳に集中させるんだ)

勇者「おおおおおおおおおおおおあああああああ!」ゴゴゴゴゴ

勇者「くらえええええええええええ!」

ゴゴゴーン!

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