女僧侶「あ、あの勇者様・・・」 7/7

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僧侶「血統……?」

魔王「この地からは15歳未満の幼女、少女だけとなり、男は勇者のみになる!!」

勇者「え……」

魔王「分かるか?お前だけが幼女を孕ませ、子孫を産ませることができるのだ」

勇者「……・そ、うなのか……?だが、少女や幼女には手を出しては……」

魔王「ははは!!この世に女は幼女と少女しかおらん。たった独りのアダムと幾億のイブなのだよ」

勇者「おぉ……そ、そうなのか……」

魔王「つまり、神だ」

勇者「神……」

盗賊「魔王!!やめてよ!!私だって、ナイスバディになりたんだ!!」

遊び人「魔王……!!」

魔王「さあ、勇者。何を迷う?世界の半分はお前の手の内だ」

勇者「世界の半分……」

魔王「そうだ……そして、世界の幼女はお前の、も、の、だ」

勇者「…………」

戦士「ゆうしゃ、目を覚ませ!!」

魔法使い「勇者、魔王の言葉にのせられちゃだめ!!」

僧侶「勇者様!!」

商人「ぐぅ……ぐぅ……」

魔王「さあ……勇者よ……何も迷わなくてよい。私と共に理想に生きようではないか」

勇者「理想に……」

魔王「そう……闘争も競争もない。花畑で戯れる蝶を眺めるだけの日々がお前を待っているのだぞ?」

勇者「ぬぅぅぅぅぅ………!!!!」

魔王「私を倒せば貴様が垣間見た後ろの者たちの醜態を見ることになるぞ?」

勇者「はぁ……はぁ……」

武道家「まさか……勇者……」

戦士「わたしたちの元の姿を……?」

僧侶「それで態度が……急に……」

魔王「元の生活に戻りたいと願う者もいるだろう。だが、人間として生きることが出来、そして勇者という優性種の種を分けてもらうことが出来る」

勇者「やめろ……やめてくれぇ……」

魔王「大多数の者は喜んでお前に抱かれることだろう」

勇者「はぁ……はぁ……世界の幼女が……俺に……?」

魔王「そうだ。ハーレムなどいう言葉では表現できん、浄土のような世界へと一変するのだ」

勇者「はぁ……はぁ……」

魔王「さあ、勇者。こちらへこい。共に理想へと歩んで行こう。お前とならすぐだ」

勇者「はぁ……はぁ……」

勇者「そ、そうだ……あんな醜い姿に戻るくらいなら……みんな、みんな幼女のままでいいじゃないか……」

盗賊「うそ!?ゆうしゃー!!!」

遊び人「このインポ野郎!!!何をしようとしてるのかわかってるの!?」

勇者「黙れ!!!」

戦士「……っ!?」

勇者「決めた……俺は……魔王と手を組む!!」

武道家「勇者……!!」

魔王「ふはははははは!!!!!それでいい!!!勇者、そうだ!!何もお前は間違ってなどいない!!!」

勇者「みんなだって醜い姿になるよりも、可愛い姿でいたほうがいいって思ってるだろ!?」

僧侶「……!?」

戦士「そ、れは……」

勇者「そうだ……そうだよ……元の生活が奪われるから……元の自分を失うから……そんなの嘘だ。誤魔化しだ!!」

魔王「そうだ!!永遠の若さを欲しぬ者などいない!!」

勇者「なら……みんなで幸せになろうじゃないか……!!!」

武道家「勇者……嘘……だろ?」

勇者「みんな幼女になればいい……そうしたら……みんな幸せじゃないか……そうだろ!?」

戦士「……」

魔法使い「……くそ……何かが違うのに……何も言葉が……」

僧侶「……うぅ……」

商人「ぐぅ……ぐぅ……」

盗賊「くっそー!!!」

遊び人「魔王……!!!」

勇者「魔王……俺はどうしたらいいんだ?」

魔王「ふふ……お前は気が向いたときだけ好きな女を抱いていればよい。衣食住、その他諸々全て保障しよう」

勇者「そうか……分かった」

魔王「さあ、新たな世界の幕開けだ!!!ふはははははは!!!!!」

勇者「ああ……そうだ……これで―――」

武道家「―――勇者!!!」

勇者「え……」

武道家「俺は……永遠の若さなんていらない……!!」

勇者「……なにを言ってるんだ?」

武道家「……いらないよ……勇者」

勇者「武道家……?」

魔王「耳を傾けるな、勇者。戯言だ」

武道家「確かにみんなはきっと永遠の若さが欲しいって思ってる……だけど……その……」

魔王「ふん。主張するならもっと自分の意思を明確にするのだな。いくぞ、勇者」

勇者「……」

武道家「でも……成長はしたい」

勇者「武道家……?」

魔王「小娘、黙れ」

武道家「子どものままじゃ、分からないことだってあるし、知らないままで終わることもある」

勇者「……」

武道家「みんなを見てよ。―――いい歳したひとが精神年齢を退化させて、物の道理すらよくわかんなくなってるんだぞ?」

魔王「黙れ!!」

武道家「……それじゃあ、きっと勇者のこと本当に……愛せない。――俺は勇者のことを本当に愛したい」

勇者「武道家……!!」

魔法使い「そ、そうだ……ダークトロルだって言ってじゃない!!」

僧侶「愛を説くことが大事だって言ってました!!それは少女のままじゃ分からないって!!」

勇者「あ……」

魔王「黙れ!!貴様ら!!何が愛だ!!!そんなもの永遠の若さに比べれば!!!」

武道家「違う……!!違う!!」

魔王「下らぬ競争で無駄な死人を重ね、まだ愛が必要だとぬかすか!!!」

武道家「そうだ!!!」

魔王「……?!」

勇者「武道家……」

武道家「戦うから分かることもある。相手のことを知らないまま、何もしないままただ時を過ぎるのを待つなんて、俺は絶対に嫌だ!!」

魔王「下らん!!ただの自己満足だ!!」

武道家「構わない……俺は……それでも勇者を本当に愛したい」

魔王「その愛が世界を滅ぼすのだ!!!」

勇者「……」

武道家「勇者……俺、頭悪いからこれぐらいしか言えない……俺は勇者のことをもっと愛せるようになりたい……だから、戻ってきて」

魔王「勇者……聡明なお前のことだ。よもや情に流されることはあるまいな?」

勇者「ああ。そんなことはないよ」

武道家「勇者……」

戦士「そ、んな……」

僧侶「……でも、魔王のいうことも……」

商人「ぐぅ……ぐぅ……んあ?……あれ?どうしたの?」

魔王「そうだ、勇者。それでいい」

勇者「……魔王、一つ訊きたい」

魔王「なんだ?」

勇者「気が向いたときにだけ女を抱けばいいっていったな?」

魔王「ああ、そうだ。主導権は全て勇者にある」

勇者「でも、何人か孕ませないといけないんだろ?」

魔王「それはそうだ。お前の子を繁栄させねばならん」

勇者「―――じゃあ、いいや。俺、そんなに体力もたないし」

魔王「勇者……!?!」

勇者「一人の女性を抱ければ、それでいいかなって思えた」

魔王「勇者……!!!おのれ!!!」

商人「ゆうしゃー、どうしたのー」

武道家「ああ、商人、それをもってどこにいくんだ!?」

勇者「悪いな、魔王。その理想郷は、俺が疲れるだけだ」

魔王「悠久の平和を手放すのか?」

勇者「……ダークトロルが言ってた。愛を説き終わると、少女は大人になるって」

魔王「勇者……!!」

勇者「愛もしらない女の子を抱けるほど……俺は鬼畜になれないんだ。ごめん」

魔王「勇者!!おのれ!!」

勇者「……ここで、倒す!!」

魔王「ならば貴様も幼女にしてくれるわ!!!!―――でええい!!!!」

勇者「くっ……!!」

商人「ゆうしゃー、みてみてー、ラーの鏡ー」

勇者「商人、あぶな―――」

魔王「な、呪文が鏡に反射して―――」

商人「きゃ!?」

魔王「あががっがががががっががががが!!!!!!!」

勇者「な?!!」

戦士「あ……!?」

魔法使い「これは……!!」

魔王(8)「―――あれ?」

勇者「魔王が……幼女に……!?」

魔王「うわー!!!なんじゃこりゃー!!」

盗賊「うわぁ……どうするの?」

勇者「……」

魔王「な、なんだー、やるかー?」

武道家「勇者……倒すの?」

勇者「……無理だろ。こんな姿の魔王を倒すなんて……」

武道家「……じゃあ……もしかして……このまま……?」

―――数日後 王城 謁見の間―――

王「おお!!勇者よ、よくぞ戻ってきたな!!」

勇者「は……」

王「辛い旅だったであろう」

勇者「ええ……はい」

王「魔王も消えたことだし、うむ。あっぱれじゃ!!」

勇者「……そうですね」

王「浮かない顔だな?どうかしたのか?」

勇者「いえ……なんでもありません」

王「では、十分な褒美を取らせる」

勇者「は……」

勇者(これから……また新しい旅が始まるな……)

勇者(次はいつ終わるか分からない)

勇者(ゆっくりと準備しよう)

―――ルイーダの酒場―――

戦士「あー、結局このままかぁ」

僧侶「もう元の体がどんなのだったか分からなくなってきましたね」

魔法使い「うん」

盗賊「早くナイスバディになりたいのに……」

遊び人「当分は無理でしょうね」

武道家「お前の所為だぞ」

魔王「私は悪くない!!そこの小娘がしゃしゃり出てくるからだ!!」

商人「……(ウトウト」

勇者「みんな、そろってるな」

武道家「勇者!!」

魔王「これから、どうするつもりだ!!?」

勇者「旅に出よう。魔王を殺さずに呪いを解く方法を探す旅に」

魔王「そんなのあるのか……?」

勇者「だから探すんだろ?ほら、外に馬車を用意した。みんな乗れ」

―――街道―――

戦士「では、私がリーダーです」

魔王「まて、実年齢なら800歳以上の私だ!!」

遊び人「下らない……」

商人「ぐぅ……ぐぅ……」

勇者「―――中は騒がしいみたいだな」

武道家「うん」

勇者「……悪いな付き合ってもらって」

武道家「ううん。いいよ。俺は勇者と一緒に居たかったし」

勇者「そうか」

武道家「もし……呪いが解けなくても……一緒に居てくれるよな?」

勇者「勿論だ」

武道家「ふふ……嬉しい……」

勇者(ああ。このままでずっと……一緒にいよう)

勇者(呪いなんて……解けなくても……いいから……ずっと……ずっと……)

            END

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