側近「す、全ては魔王様のためにおこなったこと。 何も、お気になさらず」
魔王「あ、いや……うん。 まぁ、ありが、とう?」
側近「っ!? も、勿体無きお言葉っ。 私は、感無量でございます!!」 ドキドキ
魔王「そ、そう?」
側近「はい!」
魔王「(どういう事? なんでこんなに素直なのこの娘?)」 ヒソヒソ
賢者「(ふぉっふぉw もしかしたら、魔王が持つ魅了の魔眼に勇者特有のカリスマ補正でも掛かっているんじゃないかの?
さっきからお嬢ちゃん、顔真っ赤じゃww)」 ヒソヒソ
魔王「で、さ……側近。 魔法陣? それ発動してるんだよね?」
側近「はっ! 魔王様が復活なされたとはいえ、オーブの力が失くなったこの好機!
人間共を恐怖のどん底に叩き落とすため、今も発動中です」
魔王「それさ、解除してくれない?」
側近「え!? な、何をおっしゃられますか!? そんな事……」
魔王「ダメか?」 キラリ
側近「……っ!?」 ドックン
側近「い、いえ、ダ、ダメというか……な、何故そのような事を?」
魔王「それを言う必要が、魔王の俺にあるのかい?」 キラキラ
側近「……」ボン!
側近「その、わた、しは……」
魔王「俺は復活したばかりだ。 今は人間どものことより、身近にいる君のことを知りたい」
側近「……っ」 バタリ
―――側近は倒れた!!
魔王「あれ?」
賢者「やりすぎじゃ!! このジゴロww 倒してどうする!!」
魔王「知るか!! 勝手に生き返らされてこっちだってまだテンパってるんだ!!」
賢者「いいから早く起こせ!! ローブのフードを被っておけば目を隠せるじゃろ!」 バサリ
魔王「だぁぁもう!! 俺の死んだ時の覚悟を返せ!!」
―――数分後
側近「分かりました。 これより魔方陣を解除します」
魔王「ああ、頼む」
賢者「ふぉっふぉww」
側近「あの、そこにいる賢者は……」
魔王「今は、君のことしか見えないな」
側近「は、はい! 魔王様!」 ///
賢者「早くせんかww」
―――側近は全身から魔力を解き放つ!!
側近「……あ、あれ?」
魔王「どうした?」
側近「お、おかしいんです。 解呪の念を送ったのに……流星落下の術式が外れません」
魔王「どういうことだ?」
側近「わ、分かりません。 こんなこと初めてで……。 一部でも術式を改ざんしない限り、
誤作動なんて起こるはずないのですが……」
賢者「……あ」
魔王「どうした賢者?」
賢者「……ま、まぁそれはこっちで何とかしよう! ふぉっふぉww」
魔王「何とかって……大丈夫なのか?」
賢者「わしを誰だと思うておる。 問題なしじゃ!!」
魔王「……本当は?」
賢者「……ふぉww」
賢者「(まぁ、せっかく生き返ったんじゃ。 お主は魔族のこと、頼むぞよ。 お主が魔王をやっておれば、そうそう大きな戦も起こらんじゃろう)」 ヒソヒソ
魔王「(ああ、まぁこうなっちまったら仕方ないよな。 やってみるよ。 神や精霊の束縛がないだけまだ自由だし、すぐそばには美人もいるしな)」 ヒソヒソ
賢者「(ふぉw 羨ましいのうww)」 ヒソヒソ
魔王「(これぐらいの特典がないとやってられねぇよ)」 ヒソヒソ
賢者「(……そうじゃな。 わしも、友を二度殺せるほど、タフじゃないわい)」 ヒソヒソ
魔王「爺さん……」
賢者「ふぉっふぉww やっぱり、生きてるってことはいいことじゃてw」
魔王「……そうだな。 ほら、手を出してくれ」 スゥ
賢者「む?」 スゥ
魔王「ちょっと魔力を持て余してるんだ。 分けてやるよ」 ィィィン
賢者「おお! すまんのうww」ィィィン
―――賢者の魔力が回復した!
賢者「それじゃ、わしは戻るかの。魔力も回復したしww」
魔王「わかった。 たまには顔出してくれよ」
賢者「うむ!! またの!」 ブゥン
―――賢者は転送魔法を発動した!!
側近「魔王様は、あの賢者とお知り合いなのですか?」
魔王「……ああ。 前世でな」
―――大結界の間
賢者「ふぉっふぉっふぉww ただいまじゃ!」
魔法使い「お、お師匠様!!」 ポロポロ
賢者「おお、若い子のハグは最高じゃのww」
勇者「ふん、何の心配もしていなかったがな」
魔法使い「お怪我は?」
賢者「五体満足、五臓六腑問題無し!!」
魔法使い「よかった……」
盗賊「それで爺さん、魔王はどうなったんだい?」
魔法使い「そ、そうです! 復活してしまったのですか?」
賢者「復活はしたが、問題はない。 わしがなんとかしておいたww ふぉっふぉっふぉっふぉww」
盗賊「冗談だろ!? 爺さんどんだけだよ!?」
魔法使い「す、凄いですお師匠様!!」
勇者「……」
賢者「ふぉっふぉっふぉ……。 しかしの、まだ問題は残っておる」
魔法使い「どうしたんです? 急に真面目な顔になって」
賢者「わしはいつでも真面目じゃww」 キリッ
勇者「いいから続けろ爺ぃ」
賢者「うむ。 魔王復活の方は確かになんとかなった。 しかしじゃ、流星の方はどうにもならんかった」
魔法使い「え、ええぇぇぇぇ!?」
盗賊「ダメじゃん!! ヤバすぎるじゃん!!」
大臣「……っ」
賢者「……そこでじゃ、魔法使いよ」
魔法使い「え!? あ、はい!」
賢者「お主なら、どうする?」
勇者「ほう……」
魔法使い「わ、私ですか!? 私にはとても……」
賢者「お主の万物を読み解く能力なら、この先のより良き未来をも読めるはずじゃ。
その知恵を、貸してくれんかのう?」
魔法使い「私の……能力」
賢者「頭の回転だけなら、お主はわし以上じゃ。 自信を持ってよい」
魔法使い「お師匠様……」
賢者「ふぉっふぉww」
魔法使い「……十分程、時間を下さい。 私に出来うる最高の策を考えてみせます」
賢者「うむ。 期待しておるぞ」
勇者「(賢者)」 ヒソヒソ
賢者「(なんじゃ?)」 ヒソヒソ
勇者「(復活した魔王はどんな奴だった)」 ヒソヒソ
賢者「(ふぉっふぉw そんなに知りたいか?)」 ヒソヒソ
勇者「(元魔王として、興味はある)」 ヒソヒソ
賢者「(なら、今の問題を解決したら、会わしてやるわい)」 ヒソヒソ
勇者「(いや、我は別に……)」 ヒソヒソ
賢者「(遠慮するでないわいww)」 ヒソヒソ
―――十分後
魔法使い「お待たせしました」
勇者「それ程でもない」
大臣「そろそろ、王城の人々が目覚める頃だ」
賢者「皆が眠っている間に事を終わらせられたらいいんじゃがのw」
盗賊「で、どんな作戦なのさ?」
魔法使い「はい……。 色々と考えたのですが、私にはこの方法しか思いつきませんでした」
賢者「お主がそこまで考えて出した答えなら。 それ以上のモノを思いつける人間はどこにもおらんよ」
魔法使い「……はい」
勇者「時間も限られている。 言ってくれ」
魔法使い「すぅ……ふぅ……。 では、流星をどうするかですが」
盗賊「まずはそこよね」
魔法使い「端的に言ってしまえば、受け止めるしかありません」
盗賊「……は?」
勇者「受け止める、か」
魔法使い「現実的に考えれば、大質量の流星を受け止めるのは不可能です。 しかし、それを可能とするアイテムが、偶然にもこの城には眠っています」
大臣「……まさか」
魔法使い「はい。 あらゆる攻撃を跳ね返す“伝説の盾”。 これがこの作戦の要です」
大臣「しかしあれは、王族のものにしか所在を明かされていないアイテム……」
盗賊「はぁ……。 いっくら宝物庫を漁っても見つからないわけよね」
魔法使い「私は、伝説の盾が保管されている場所を知っています」
盗賊「えぇ!?」
大臣「なんと……」
魔法使い「いえ、正確には、分かってしまったというか。 ここで働いていた時に、古い文献や王城の見取りで……」
勇者「天才を通り越しているな」
賢者「さすが愛弟子ww」
魔法使い「そして、盾を手に入れたら……」 チラ
勇者「……何だ? どうした?」
魔法使い「……今、この中で流星を受け止め、跳ね返せるだけの能力があるとしたら……」
勇者「まぁ、我であろうな」
魔法使い「……はい。 勇者様に、装備していただき、流星を受け止めていただきます」
勇者「分かった」
魔法使い「……っ 即答、なんですね」
勇者「ふ、それしかないのであろう?」
魔法使い「……はい」
勇者「ならば、作戦立案者が胸を張らずにいてどうする。 そんな事では、周りが不安になるであろう」
盗賊「そうよ! あんたがビビッてちゃしょうがないでしょうが」
魔法使い「……」 コクリ
賢者「わしはどうするかの?」
魔法使い「お師匠様は、流星と勇者様の衝突の余波から、お城を出来る限り守ってください。
かなりの被害が出るでしょうが、まるごと吹き飛ぶよりはましかと。 まだお城には人が沢山いますし」
賢者「ふぉっふぉww 了解じゃ」
魔法使い「盗賊さんは、私と一緒に伝説の盾を取りに行きますよ」
盗賊「え、私も!?」
魔法使い「この作戦がうまくいかなかったら、盗賊さんも死んじゃうんですよ?」
盗賊「うぅ、もう! 分かったよ!! やりゃあいいんでしょ!!」
大臣「……」
魔法使い「大臣さんは退避していてください。 きっと、ここは危ないですから」
大臣「私は……」
魔法使い「もう、それほど時間は残されていないでしょう。 皆さん、自分に出来ることを精一杯やりましょう!!」
勇者「うむ」
賢者「ふぉっふぉww」
盗賊「よぉっし!!」
魔法使い「……では、行動、開始です!!」
―――魔法使い 盗賊 は大結界の間から飛び出した!!
賢者「ふぉw 待機組は時間を持て余すわい」
勇者「賢者、天井を壊しておいてくれるか?」
賢者「ほう、なぜじゃ?」
勇者「なに、これから我が弾き飛ばす小石がどこから来るのか、方角と距離だけでも目視しておこうと思ってな」
賢者「ふぉっふぉっふぉww おまかせじゃww それ!」 ドォン!!
―――賢者は天井に向けて魔力を解き放った!! 天井は瓦解し、白み始めた空が見えた!!
大臣「(何という攻撃力!? 地下のココから地上にかけて、何メートルあると思っているんだ……)」
勇者「……まったく。 勇者となってまだ一日も経っていないのに、大した仕事量だな」
大臣「え?」
賢者「ふぉっふぉww 気にするでないわいw」
―――王城 深部
盗賊「ねぇ、魔法使い」 タッタッタ
魔法使い「はい? なんですか?」 タッタッタ
盗賊「あんたさ、この一件が片づいたらあたしと組まない?」 タッタッタ
魔法使い「え、どうしてですか?」 タッタッタ
盗賊「だって、あんたの能力とあたしの鍵があれば、どんな場所にあるお宝でもイージーモードでゲットできるじゃない」 タッタッタ
魔法使い「……確かに、そこにはきっと、誰も見たこともないような太古の文献とかも眠ってそうですね」 タッタッタ
盗賊「そうよ! あたし達二人なら、この世に手には入らないアイテムはないわよ!!」 タッタッタ
魔法使い「けど、お断りします。 先約がいるので」 タッタッタ
盗賊「え!? 誰よそれ! あたしよりもすごい奴なの!?」 タッタッタ
魔法使い「すごいも何も、これからこの国を救って頂く方ですよ。 あ、そこ左です」 タッタッタ
盗賊「まさか、それって……」 タッタッタ
―――王城 廊下
兵士「う、うぅ……」
兵士長「む、……これは、どうしたことだ?」
兵士「突然、急激な眠気が……」
兵士見習い「……ふぁ。 おふぁようございまふ」
兵士「っく、ほら、見習い! しゃきっとしろ!!」バシン
兵士見習い「は、はいぃぃぃ!!」
兵士長「皆同時に、という事は……外部からの攻撃かっ」
兵士「一体、どれ位寝ていたのでしょう?」
兵士見習い「へ、へ……へっくち!!」
兵士長「こんな廊下で……まだ、だるさが……む?」
兵士「どうしました?」
兵士見習い「……zzz」ゴロリン
兵士長「……」
兵士長「……兵士、人を集めろ」
―――王城 深部
盗賊「いや~、人ん家のタンスから薬草盗むより簡単にゲット出来ちゃったなぁ……ちょっと拍子抜け」
魔法使い「トラップの有りそうなポイントは全部回避してきましたからね。
最後の扉も、盗賊さんの鍵で簡単に開きましたし。 って、それより大事に扱ってくださいよ」
盗賊「分かってるって。 にしてもさ」
魔法使い「……?」
盗賊「う~ん、やっぱり欲しいなぁ。 その能力」
魔法使い「他をあたってください」
盗賊「ねぇ、ちょっとマジで考えない?」
魔法使い「だから、もう先約がいるんですってば」
盗賊「お願い!」
魔法使い「ダメです」
盗賊「そこをなんとか!!」
魔法使い「できません」
盗賊「それを曲げて!!」
魔法使い「曲がりません」
盗賊「もう!! こんなに頼んでるのに!!」
魔法使い「だから!!いくら頼まれてもダメなんです!! 私は勇者様と行くんです!!」
盗賊「どうしてよ!! 絶対私のほうが……」
兵士長「貴様ら!! そこで何をしているーーーーーーっ!!」
兵士「大人しくその場で両手を頭の上に組んで伏せるんだ!!」
兵士見習い「早くしろ~!」
―――兵士長、兵士、兵士見習いが現れた!!
兵士長「城内の異変……貴様らが元凶か!!」
兵士「一体何が目的だ!!」
兵士見習い「へっくしゅん!!」
盗賊「あ、あんたが煩くしてるから見つかっちゃったじゃない!!」
魔法使い「それは盗賊さんのせいです!!」
兵士長「っ!? おい、貴様が抱えているものは何だ!?」
兵士「ゆっくり下におろすんだ!!」
兵士見習い「妙な真似はするな~!!」
盗賊「ど、どうすんのよ!! このままじゃ捕まっちゃうわよ」
魔法使い「……やむを得ません」
―――魔法使いはマジックボウに魔石を装填した!
兵士長「なんだそれは!?」
盗賊「ちょっとあんた!?」
魔法使い「行ってください……盗賊さん」
兵士「各所に兵を配備している。 無駄な抵抗はやめろ!!」
魔法使い「……っ!」 ダァン!!
―――魔法使いは兵士長の足元にマジックボウを放った!
兵士長「!? 奇っ怪な魔法を使う!?」
魔法使い「盗賊さん!!」
盗賊「……もう!! 簡単に捕まるんじゃないわよ!!」 シュン!
兵士「は、早い!?」
兵士見習い「き、消えました!?」