勇者「魔王倒すまで何度でも蘇る」 3/8

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盗賊「何だか同じ所をぐるぐる周ってる気がするんだぞ。迷路みてぇでおもしれーなっ」

僧侶「あ、あれ!?本当だ!この辺りさっきも通った気が……」

盗賊「兄貴はもう外出れたのかなぁ。だとすれば流石の勇者兄貴って感じだ!」

僧侶「確か、勇者様は以前何度もこの洞窟を通ったとか仰っていたから、道は分かるのかと」

僧侶「完全に道に迷ってしまいました……ゆ、勇者様ぁ~……」

盗賊「お、俺たち迷子になっちゃったのか!?やべぇよ、僧侶姉ちゃん!」

僧侶「ええ!やばいです!勇者様を頑張って呼び続けましょう、もしかしたら戻ってきてくれるかも!」

僧侶「勇者様ぁー……道に迷いましたぁー……助けてー……!」

盗賊「兄貴ぃー! 兄貴はどこだぁー……俺、おしっこ漏れそうなんだよぉー……」

僧侶「えっ!?」

盗賊「ぐすんっ……」

「がるるるる」

ベビーサタンのむれがあらわれた!

僧侶「ま、魔物!こんな時に!」

盗賊「僧侶姉ちゃん!後ろにもいっぱいいるぜ!」

ベビーサタン「ヒヒッ」

ベビーサタンはザラキをとなえた!

僧侶・盗賊「!?」

しかし、なにもおこらなかった

僧侶「油断はできません。強敵ですよ、強力な魔法をいくつも使ってくる魔物ですから……」

ベビーサタンはイオナズンをとなえた!

ドォーン

僧侶「きゃああああぁぁぁ!!」盗賊「うぎゃあぁ~~~!?」

ベビーサタン「キキッ

僧侶「う、ううっ……」

盗賊「やばい、やばすぎるぜ……しんじゃうかも……」

盗賊「僧侶姉ちゃん……おれ、もう無理……」

僧侶「あ、諦めないで……私がベホイミを唱えますから……そしたらすぐに逃げ」

ベビーサタンのむれが いっせいにおそいかかってきた!

僧侶・盗賊「!?」

ベビーサタン「キキーッ」

勇者「うわああああああああぁぁぁぁぁ~~~~~~!!」

ベビーサタン「?」

勇者「こ、ここ、こっちだ魔物どもめ! そっ、そんな雑魚は放って俺に全員かかって来い!」

僧侶「勇者様……?」

ベビーサタンのむれは 勇者へ ちゅういがむいた!

ベビーサタン「キーッ!」

勇者「っ……!」ガタガタ

ベビーサタンのこうげき!

勇者「次は217度目だっけな……」

ベビーサタン「ギェっ…」

盗賊のこうげき! 盗賊はベビーサンタをたおした!

勇者「えっ」

盗賊「僧侶姉ちゃんの魔法で全回復した!兄貴のお陰だぜ!」

盗賊「あとは、兄貴。俺たちに任せときなぁ~……」シャキーン

僧侶はマホトーンをとなえた!

僧侶「敵の魔法は封じました!盗賊さん今のうちに魔物を!」

盗賊「全部やっつけてやるぜ。兄貴、俺の勇士を見届けてくれぇー!」

ぼかすか、ぼかすか

勇者「……」

勇者はレベルがあがった!

盗賊「ひー、ひー、疲れたぁ。ていうか兄貴!今レベル上がったぞ!」

僧侶「今日初めてのレベルアップですね。おめでとうございます」

勇者「お、おう……」

勇者「お前ら、何も言わないのか。怒らないのか」

僧侶「怒る必要があればそうしますが、全くその心当たりはありませんよ?」

僧侶「むしろ、お礼を言わなければいけません。助けてくれてありがとうございました。そして、さっきはすみません」

盗賊「俺もありがとうだぞ兄貴!!さっきは滅茶苦茶かっこ良かったぜ、やっぱり俺の兄貴は兄貴だぁー!」

僧侶「それどういう意味ですかね?」

勇者「……置き去りにしようとしたのに、何で「ありがとう」なんだよ」

僧侶「だって、結局は助けに戻って来てくれたではありませんか。勇敢でしたよ」

勇者「……」

盗賊「結局兄貴が勇敢だったのはあの一回だけだったなー。あとは全部僧侶姉ちゃんの後ろに隠れてるんだもん」

僧侶「まぁ、完全に克服できたわけではありませんし、仕方がないですよね?」

勇者「ガキに慰められたくない」

僧侶「次は魔物と戦闘できるぐらいになれれば良いですねっ」

盗賊「戦うのいいけどさぁ……兄貴の装備じゃだいぶ苦戦しちゃうと思うんだよねぇ~」

僧侶「あっ、まだひのきのぼう!」

勇者「へ、へへ……どうせ俺戦ってないし、武器も初期のままで十分だろうよ……」

盗賊「でもそんな棒っ切れで魔王倒せんのか?いや、兄貴なら本気出したらそいつで十分なんだろーな!すげー!」

勇者「あんまり持ち上げられても困るんだが。常識的に考えて木の棒じゃ太刀打ちできん」

僧侶「でしたら、丁度町の中ですし、勇者様の装備を整えましょうか。お金も魔物からいっぱい巻き上げましたからね!」

盗賊「せっかくだから兄貴らしく超カッコいい剣とか買っちゃおうぜぇ~!」

勇者「らしくって何だ。せめて勇者らしくと言えよ。大体お前……」

?「勇者……? お前、あの勇者か? 生きていたのか!」

勇者「!」

盗賊「僧侶姉ちゃん。あの商人の兄ちゃん兄貴の知り合いなのかなぁ?」

僧侶「さぁ……。でもそんな様子ではありましたよね。もしかしたら昔の仲間の人かも」

盗賊「昔ってー、兄貴いつから勇者やってんだよ? ぶっちゃけ俺と歳変わらないだろー」

僧侶「えっと~」

盗賊「むぅ、まだ俺にだけ隠してる話あるんだな!? そういうのずるいぜ!」

僧侶「いやずるいって……」

僧侶「ほらほら、そんな事よりどれが勇者様に合う防具か見てくださいよ」

盗賊「それならコレだなっ!」

僧侶「あら、盗賊さんセンスありませんね」

盗賊「えぇー? わっかんねーなぁ……」

商人「久しぶりだな。もうあの頃から3年は経つのかな」

勇者「そんな実感は俺にはないな。だけど、お前が生きてて良かったよ」

勇者「町の再建はしっかりいったのか?」

商人「ああ、お陰様で。だけど悪いな、俺の我儘でお前たちから勝手に離れちゃってよ」

勇者「気にする事はないよ。こっちこそ俺の勝手でお前には付き合って貰っていたんだからな」

勇者「……それより、話は聞いていないのか」

商人「ん? 何の話さ。戦士や魔法使い、それに武闘家ちゃんのことかい?」

勇者「うっ……」

商人「仲間は皆死んでいるのに、お前だけは生きてる。だから責めないかと」

商人「責めるわけねーだろ。お前はみんなの分まで今もこうして旅を続けてるんだろう?」

商人「気にするなよ!」ニコ

勇者「商人、お前……」

商人「ていうか勇者、あの頃と見た目まったく変わってないじゃないか」

勇者「あ、ああ。お前は老けたな……」

商人「まだこれでも三十路前半なんですけどね。いや、十分老けたと言っていいか」

勇者「雰囲気もどこか落ち着いた気がする。あの頃はムードメーカーみたいな奴だったから」

勇者「武闘家とバカばっかりやっててさぁ、それでいつも戦士に怒られて。懐かしいなぁ……」

勇者「……でも、もうみんなは俺のせいでいなくなっちまった。商人だけだよ、生きてるの」

勇者「本当にすまない」

商人「だ、だから気にするなって話しただろ?お前は悪くないんだよ~」

商人「それに例えみんなが生きてても、所詮は他人だ。どうってことねーよ……あはは」

勇者「……本当にそう思ってるのか?」

商人「ん?」

勇者「悪い、そろそろ宿屋へ帰るよ。ガキどもが待ってるかもしれない」

勇者「じゃあ、また明日にでも……」

商人「……ああ、また明日。勇者」

がちゃり

盗賊「おっ、勇者の兄貴。もっと遅い帰りになるかもと思ってたぞー?」

僧侶「おかえりなさい。あの方は昔の知人ですよね? 久しぶりに知り合いと会えてどうでしたか?」

勇者「……すぐに村を出るぞ。荷物まとめておけ」

僧侶「えっ」

盗賊「兄貴ぃー、気が早すぎだぜぇー! まだ飯も食ってねーのにさぁ……」

勇者「ここの飯も食うな。いいか、こっそり出て行く。誰にも気づかれるなよ」

僧侶「本当にどうなされたのですか?様子が変です。焦ってるようにも見えますし……」

勇者「こんな村、来るんじゃなかった……!」

勇者「行くぞ」

盗賊「兄貴どうしちゃったわけぇ?」

僧侶「さ、さぁ?」

盗賊「ちょっと兄貴ぃー!いくら何でもコソコソしすぎじゃねぇのかー?これじゃあ泥棒みたいだぜ」

勇者「静かにしろ。ここまで来たら一気に村の外れまで逃げるぞ」

僧侶「本当に今村を出るおつもりなのですか?夜は魔物も活発になっていて、危ないですよ?」

勇者「人間を相手にするよりましだ。行くぞ」

盗賊「なんかよくわかんねー。けど、兄貴がそうしたいなら俺は付き合うまでだぜ!地獄の果てまででも行けるし!」

僧侶「あっ、お二人とも待っ―――」

がしっ

僧侶「むぐぅ!?」

僧侶「ゆ、ゆうしゃさまっ!!」

傭兵「大人していろ、女。そして勇者お前も大人しくこちらへ来るんだ、武器は下におけよ」

盗賊「僧侶姉ちゃん! 兄貴、あいつら何だよ! なんかいっぱい出てきたぜー……!?」

傭兵たちに かこまれてしまった !

勇者「お前たちは雇われ兵か。何故こんな真似をする?その女は俺とは関係ないぞ」

?「それならこの娘の首を、お前の前でへし折っても痛くも痒くもねーのかな?」

盗賊「あっ、あの時の兄ちゃん!!」

勇者「……や、やめてくれ、商人」

商人「どうした? もう少し非情を振舞っていろよ、情けなく見えるぞ~勇者くん」

僧侶「一体これはどういうことですか!」

勇者「復讐のつもりなら、俺だけにしてくれ。こいつらは何も関係ないんだ……」

商人「どうせお前殺しても死なないし、それじゃあ面白味がねぇだろ?」

商人「少しは俺たちの気持ちを勇者サマにも理解いただけるよう、同じ目に合っていただくのもよろしいかと思いましてねぇ」

傭兵「」シャキーン

僧侶「ひっ……」

盗賊「この野郎!! よくわかんねーけど、兄貴の弱みにつけ込みやがって!」

勇者「よせ、いいんだ。俺が悪いんだから」

勇者「……おい、これがお前の目的なのか?」

商人「いや、魔物たちから頼まれてねぇ、お前を暫く拘束しておけと。そしたらこの村は襲わないでいてくれるんだと」

商人「お前みたいなのでも、魔物たちから脅威だと思われるらしいぜ?」

商人「だから勇者!俺たちの犠牲になってくれよ!」

僧侶「そんな勝手を勇者様が?むわけありません。どうか私のことは気にしないで」

傭兵「やかましいぞ!」バキィッ

僧侶「うっ……」

盗賊「僧侶姉ちゃん!! あ、兄貴……俺我慢の限界だぜ……」

商人「攻撃してきたら女は殺すぞ」

盗賊「しなくても殺すつもりだろーがっ!! その前に俺がてめぇら八つ裂きにして殺す!!」

勇者「よ、よせ……ダメだ……」

盗賊「兄貴っ!! ダメなんかじゃない、俺を止めるな!!」

商人「腰ぬけ勇者様は俺を傷つけたくないんだろう? お前のことは手に取るように分かるぞ」

商人「甘い奴だからなぁ。それで何度身を滅ぼしてることか。なぁ?」

勇者「すまない……みんなは、武闘家も、俺の勝手で殺したようなものだ」

勇者「何度謝っても許されないとは分かっているさ。でも、その娘には手を出さないで欲しい」

僧侶「ゆ、勇者様!」

勇者「俺を何度痛めつけても、拷問でも何でもいいから……好きにしてください。だからお願いします」

盗賊「兄貴そんなのカッコ悪ィぞ! こんなゲスどもに頭下げる必要ねぇってば!」

商人「そういう態度が気に食わない。むしろ開き直ってくれた方が清々しいもんだぜ……」

商人「女を殺せ」

傭兵「うっす!」

僧侶「ゆうしゃさま……とうぞくさん……。た、たすけて」ガタガタ

勇者「!」

勇者のこうげき! 傭兵をたおした!

勇者のこうげき! さらに傭兵をたおした!

勇者のこうげき!

傭兵「こ、こいつ! 人質がどうなってもいいのか! 滅茶苦茶なことを」

商人「構うものか、女を殺ればあいつは止まる! 早くしろよ!」

傭兵「は、はい……っ」

勇者はメラをとなえた!

傭兵「ぎゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ…」

僧侶「勇者様!」

盗賊「姉ちゃん無事だったか! 良かったなぁ殺されずに済んで! やっぱ兄貴はサイコーだぜ!」

勇者「下っていろ、僧侶、盗賊。俺はこいつと蹴りをつけなきゃいけないんだ」

商人「その為に俺をわざわざ最後に残したのか……。勇者様がいいのか?傭兵とも言えど、人間を殺したりして」

勇者「見た目はどうあれ、悪意を持って傷つけてきやがる奴は俺にとって魔物同然だ」

商人「なら、俺の大切な女を殺したお前だって、俺にとっては魔物みたいなもんだ。憎くて憎くて堪らない!」

勇者「知ってる。さっきお前と話をした時、ずっと嫌な感じがしていたんだ」

勇者「直感で理解できた。「ああ、こいつは俺が嫌いなんだって」な」

商人「それならどうする? 俺も殺すのか?」

勇者「できるか、そんな事……。お前を殺せないよ……」

盗賊「兄貴!そんな屑に何躊躇してんだよ!」

商人「そうだ。俺はお前の敵だぞ。どこまで甘えてやがるんだよ、ムカつく野郎だぜ!」

僧侶「勇者様、経緯はどうあれ、彼らは魔物へ加担しようとしたのです。それを忘れないでください」

盗賊「そうだ兄貴! このままこいつ放っておいても、魔物に俺たちの情報流されるだけだぜぇ!」

勇者「だからって俺に商人を殺せって?仲間だったんだぞ、仲良かったんだぞ?」

勇者「い、嫌だぁ……」

商人「お前、蹴りをつけるとか言ったのはただのカッコ付けかよ。本当に弱くなったんだなお前」

勇者「うるさい、うるさい……!」

勇者「な、なぁ? 俺たちもう一度やり直せないかな!?」

僧侶・盗賊「!?」

勇者「ほら、またお前が仲間になってくれてさ……ガキの面倒は俺だけじゃ見きれないんだよ!」

勇者「だからお前と俺でさ! なぁ、いいだろ? 少し考えてくれてもいいんじゃないか?」

商人「……お前、俺が死んだらどうなるかな?」

勇者「えっ」

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