勇者「魔王倒すまで何度でも蘇る」 5/8

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盗賊「あ、兄貴! これも作戦か!」

勇者「殺してやる、貴様ら一匹残らずぶっ殺してやる!!覚悟しろ!!」

ボストロール「威勢だけは誉めてやろう。だが貴様のようなゴミクズがこの私に敵うとでも?」

ボストロール「マヌケにほどがあったな! ここは魔物の巣窟! 再びあの時と同じ屈辱を貴様にあじあわせてくれようぞ!」

勇者「うっ……くそおおおぉぉぉーーーーーーっ!!」

勇者は ひのきのぼうを かまえた !

僧侶「勇者様どうしたのですか!ここで暴れたら私たちに勝ち目はありません!」

盗賊「だ、だからってもう取り返しつかないような気もするぜ……」

勇者は 怒声をあげて ボストロールへ たちむかった !

勇者「うおおおおぉぉぉぉ!!! ……ひ、ひぃっ」

ボストロール「どうした? 何をしている。何もしないのならば、こちらから行くぞ」

ボストロールのこうげき! 僧侶はマヌーサをとなえた! ボストロールはこうげきをはずした!

ボストロール「むぅ!?」

僧侶「盗賊さん! 勇者様を引っぱってきて!」

盗賊「ほい来た! 兄貴、逃げようぜ! ぼーっとしてる場合じゃねぇよ!?」グイッ

勇者「う、ううっ……くそ、くそぉ……!」ガタガタ

僧侶はフバーハをとなえた! 僧侶はマホトーンをとなえた!

しかし、MPがたりない!

僧侶「くそっ……一体どこから外へ出れば」

盗賊「魔物たちがいっぱい追ってきやがってんぜ! スゲー数の多さだよぉ!」

盗賊「兄貴今こそしっかりしろよな! どうすんだよこれさぁー!?」

勇者「ころしてやる、ころしてやる……」ブツブツ

盗賊「兄貴ってばぁー!?」

僧侶「今は話しかけても無駄そうです。私たちでこの状況を切り抜けなければ」

盗賊「何にも思いつかねぇんだよぉ~! 俺バカでごめんなぁ……!」

僧侶「それでも考えてください! じゃないと……」

「ウオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォ」

僧侶「ひ、ひいぃ……もうダメなのね……」

いきなり ホイミスライムが あらわれた!

ホイミン「こっち、こっち」ヒョイヒョイ

盗賊「うわぁ、ホイミスライムが隠れてたぜ!」

僧侶「ああ、私たち死んでしまうのかしら……」

ホイミン「早くこっち、こっち。逃げなきゃ殺されちゃうよ」

ホイミン「こっちに秘密の抜け穴があるの。きてきて」

盗賊「な、何言ってやだんだこの野郎。そう言って俺たちを罠に嵌めるつもりなんだろ!」

ホイミン「違う違う、騙したりしないよ。助けてあげるからついてきて」ヒョイ

ホイミスライムは 穴の中へとびこんだ!

僧侶「……い、行きましょう。もう手段は残されていないんです」

盗賊「マジかー! 死んだら怨むぜ、僧侶姉ちゃん!」

僧侶「その時は、その時ですよ!」

3人もホイミスイムへつづいて穴の中へ とびこんだ!

盗賊「ここは、俺たち外に出たのか? ていうかここ何処だよ?」

僧侶「森の中みたいですね。まさか洞窟こんなところに通じていたとは」

ホイミン「もう安心していいよ。あの抜け穴は僕だけで掘ったから僕しか知らないの」

盗賊「ふん、どうだか」

勇者「……」グッタリ

ホイミン「勇者くん、勇者くん」ペタペタ

勇者「あっ……ひぃ!?」

勇者「来るなあぁぁぁ!! 魔物は俺に近づくなあぁぁぁ!!」

ホイミン「勇者くん。僕だよ、ホイミンだよ。忘れてしまったの……?」

勇者「そんな奴俺は知らな……ほ、ホイミン」

勇者「ホイミンなのか、お前……元気だったのか……」

盗賊「兄貴、魔物の知り合いとかいるのか! ほぇぇ、やっぱ兄貴は違うなぁー!」

ホイミン「昔、僕が足を怪我して動けなくなってたところを、勇者くんたちが助けてくれたの」

ホイミン「MPも丁度切らしてたときだったから、すごく助かったんだ。僕とっても嬉しかったよ~」

僧侶「勇者様があなたを助けた? 人間でさえ放っておこうとした勇者様が、魔物を」

勇者「ただの気まぐれだ。ホイミン今はこんなところにいたのか……人間になりたかったんじゃなかったのか?」

ホイミン「うん。でもね、魔物が人間に憧れても、なれるわけなかったの。だから今は怪我した仲間を基地で回復するお仕事してるよ」

ホイミン「勇者くんにまた会えて嬉しいよぉ~。いつかきっと恩返ししたいなって、思ってたしさ」

ホイミン「僕、ちゃんとお役に立てたー?」

僧侶「とてもですよ。あなたがいなければ私たちは今頃全員あの世行きでしたもん」

ホイミン「わーい」

盗賊「俺さ、魔物とこんな仲良く話するのって初体験だぜ~……兄貴と一緒いると暇しなくて済むなぁ」

勇者「……さっきは危険な目に合わせて悪かった。つい頭に血が昇ってしまった」

僧侶「あのボストロールとは過去の因縁があるみたいでしたね。仲間を殺されてしまったのですか」

勇者「あいつだけじゃない。だが、あんな言い方されてキレない奴は人間じゃねぇ!」

勇者「奴だけは絶対に許さない。倒す」

盗賊「でも、兄貴攻撃の直前でやっぱり止まっちゃったじゃないか。あの調子じゃ無理だぜ……それに俺らでも流石に敵わないよっ」

僧侶「ええ、他の魔物とは明らかに何かが違って見えましたね。恐らく強敵中の強敵ですよ」

勇者「そんなのわかってんだよ! でも俺はみんなの仇を取らなきゃ……」

ホイミン「ボストロール様へケンカ売るつもりなの? 無理だよぉ、あの人最近ヤマタノオロチくんを一人で倒しちゃったんだよ?」

勇者「えっ!?」

盗賊「そのタニマノうんたらって強いのか?」

勇者「ヤマタノ、ヤマタノ。強かった。退けるだけでも精一杯なぐらいだ」

勇者「それを一人で倒したって、本当に強くなってるのか……!」

ホイミン「悪い事言わないから早くこの地域から立ち去った方がいいよ。たぶんすぐに追ってくると思う」

ホイミン「そしたら、今度こそ殺されちゃう。僕もそこまで助けてあげられないよ~……」

勇者「奴を諦めてさっさと先へ進めだと。そんなのできるわけないだろう!?」

僧侶「ですが、敵いませんよ!」

勇者「や、やってみなきゃ分からないだろ……」

僧侶「そんな安易に考えていては、また危ない目に合いますよ。どうしたんですか勇者様らしくもない」

盗賊「とりあえず疲れたからさぁ、俺どっかで寝たいよぉー。兄貴ぃ」

勇者「……い、移動しよう。一旦この場から離れて町へ」

ホイミン「それじゃあ僕はそろそろ戻らないと。怒られちゃうもんね」

盗賊「おーっ、ホイミンじゃあなぁ! 良い魔物もいるって分かって嬉しかったぜ」

僧侶「助けていただいて本当にありがとうございました。感謝し切れません」

ホイミン「勇者くん! 僕こんなにいっぱい誉められたよ! 嬉しいなぁ~!」

勇者「お前も魔王側にいなければいいものを。いつか、俺たちのところに来いよ」

ホイミン「え?」

勇者「人間にはなれなくても、人間と一緒に暮らす事はできるぜ。俺がなんとかするからな」

ホイミン「ほ、本当に!? 僕一緒に暮らしていいの? こわがられない?」

僧侶「こんなに可愛らしいんですもん、きっと受け入れてくれますよ」

盗賊「わりと良い奴だしな! 触手あっけど!」

ホイミン「ゆ、勇者くーん……僕、感激だよぉ……」

ホイミン「いつか、僕魔王軍を抜けて、きっと君たちのところへ行くね! 一緒に暮らそうね!」

勇者「ああ、約束しよう」

ホイミン「えへへっ、それじゃあ名残惜しいけれど、また会える日までバイバイだよ」

ホイミンは魔物の巣窟へ かえっていった!

宿屋

僧侶「ここまで離れれば少しは安心ですね、勇者様」

勇者「明日になったら俺はもう一度奴のいる場所へ戻る」

僧侶「は!?」

勇者「勝ち目がなくても、男にはやらなきゃいけない時ってのがあるんだよ……!」

盗賊「その台詞は滅茶苦茶兄貴っぽい感じだぜ! ひゅーひゅー!」

勇者「やかましい、茶化すなバカ垂れ。俺は本気で言ってるんだよ」

しーーーん

盗賊「……あー、えっと。そういや兄貴ホイミンは怖がらなかったな!良い奴だからか?」

僧侶「ああ、そういえばそうでしたね。いつもなら魔物を前にするだけで蕁麻疹が出てきたりしたのに」

勇者「こいつの言う通り、良い奴だったからかな」

盗賊「兄貴言ってたもんなー。誰であろうと危害を加えてくる奴は俺にとっては魔物だって」

盗賊「それの逆って感じかぁ?」

勇者「うるさい。何だっていいだろ別に」

盗賊「兄貴もう寝ちゃったぜぇー。ちぇ、もっと話聞いてたかったのにさ……そうだ」

盗賊「僧侶姉ちゃん! この本で俺に勉強してくれよな!約束したんだぜ!」

僧侶「ああ、そう言えばそんな約束をしましたね。わかりました。少しだけなら」

盗賊「この本は何て本だ? 俺、こんな難しそうな本初めて見たぞ。絵がどこにも描いてねーんだよこれぇ」

僧侶「絵本ではありませんからね……。えっと、『さとりのしょ』という題名ですかね」

盗賊「何それ、まずそうだなぁ……」

僧侶「いえ、食べ物ではありませんからね。それにしてもこの本の内容、私でも少し読むのが大変です」

盗賊「は? 僧侶姉ちゃんは文字読めるんだろ? 何で?」

僧侶「文字が読めても、その文章を理解する力がなければ意味がありません。これはちょっと盗賊さん向きではないかも」

盗賊「えぇー……何だよそれぇ……」

僧侶「ですが、せっかく頂いた本です。大事にしましょうね」

盗賊「こんなの持ってたって、どうせ読めねーし仕方がないよぉ」

盗賊「僧侶姉ちゃんにくれてやる!」

僧侶「結構です。ダメですよ頂いた物は大切にしないと!」

僧侶「その本は盗賊さんの宝物です。大事に持っていてあげてください」

盗賊「た、宝かぁー……いいな、そういうの! なんか気に入ってきたよ!」

盗賊「じゃあ俺勉強覚えて頭良くなったら、僧侶姉ちゃんに本の中身読んでやるぜ~!」

僧侶「ええ、お願いしますね。きっと楽しみに待っていますから」

盗賊「へへ~っ♪」ニコニコ

勇者「この洞窟を通れば、また魔物の巣窟付近へ出られる」

勇者「初めに言っておこう。これは俺の私怨でお前たちは全く関係がない」

勇者「引き返すなら今のうちだぞ。どうしたい?」

僧侶「私は、勇者様にどこまでも付き添うだけです。守るという役目がありますから」

盗賊「俺は兄貴の弟分だかんな。同じくどこまでも着いて行ってやるぜぇー!」

盗賊「ていうか、兄貴は一人で何でもしたがりすぎるんだよ。ちょっとは俺らを頼りにしてもいいじゃんさ?」

勇者「うるさい……来るならさっさと行くからな、モタモタしてんなよ」

僧侶「……う~ん」

盗賊「僧侶姉ちゃんどったのさぁ?」

僧侶「胸がもやもやするというか、虫の知らせってやつでしょうか」

僧侶「とても嫌な予感がするんです。ちょっと不安かな……」

盗賊「だいじょーぶ! だって兄貴も俺も着いてるんだぜ、百人力だぁ! へへへっ」

僧侶「杞憂で済めばいいんですけどね」

勇者「おい、モタモタするなって言ったぞ! 奴らを逃がしたらどうす―――」

?「奴らってのはどんな顔をしているのだろうかなぁ。もしかして~」

ボストロール「こんな顔だったりしないかな!?」バァーン

勇者「えっ!?」

ボストロールと魔物のむれが 勇者たちのうしろからあらわれた!

盗賊「な、何でこいつらがここにいるんだよぉ~!?」

僧侶「すごい数の魔物ですよ……これだけいたのに全く気付けなかったなんて」

魔物「げへへ、やっぱりコイツらここを通りやがりましたねぇ~!!」

魔物「さすがボストロールの旦那だ! 読み通りっすー!」

ボストロール「昨日の勇者の様子を観察すれば、かならず私のもとへ現れると分かっていたからな」

ボストロール「そして裏切り者の証言も取れているわけだ。確実だったわけなのだ」ぐい

ホイミン「う、うう……」ボロボロ

勇者「ほ、ホイミン!!」

ホイミン「勇者くん、ごめんなさい……僕痛くて痛くて、つい喋っちゃた……」

盗賊「何でバレちゃったんだよ!抜け穴はお前しか知らないはずだろ!」

ボストロール「人間と一緒にいたのなら独特の匂いがつく。幸い私の部下には鼻が効く者がいてな」

ボストロール「人間どもへ加担するとは魔物の風上にも置けぬ奴だ!この脳無しスライムめが!」

ボストロールは ホイミンを力いっぱい握りしめた !

ホイミン「痛いよぉぉぉぉ……」

僧侶「やめて! 彼は何も悪くありません、私たちが脅して脱走を」

ボストロール「なんとそのような情けない失態を犯していたか。ますます許せんな」

ボストロール「私に忠実で優秀な部下たちよ! この使えぬゴミを私はどうしたらいいと思うかね!」

魔物たち「死刑!死刑!死刑!死刑!」

勇者「や、やめろ」

ボストロール「ふむ、死を持って償わせるべきだそうだ。私直々に手をくだされる事を誇りに思えよ、ホイミスライム」

ホイミン「……」ガタガタ

僧侶「やめて!ダメです、殺さないで!」

盗賊「仲間を殺すのかよお前らぁー!! 正気じゃねぇぞ!?」

勇者「ほ、ホイミン……!」

ホイミン「……ご、ごめんね勇者くん。約束、ダメになっちゃった」

ボストロール「おっと手が滑った!」

ボストロールのこうげき! ホイミンはいきたえてしまった!

僧侶「うそ……」

盗賊「マジで殺しやがった……!」

ボストロール「」ニタァ

勇者「ホイミン……ほ、ホイミン……」

勇者「う、うわあああぁぁぁ……」

ボストロール「聞け!裏切り者は死んだ!人間どもは我々の敵なのだ!」

ボストロール「人間を滅ぼせ!我らの主君、魔王様へ栄光あれーっ!!」

魔物たち「ウオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ」

ボストロール「手始めにそこの雌豚2人を殺す。勇者、貴様は魔王様への手土産だ」

ボストロール「良かったな、当初の目的通り、我らの仲間に加われるかもしれんぞ?」

勇者「……」

僧侶「勇者様、逃げましょう。分が悪いです」

勇者「……」

僧侶「勇者様!! 盗賊さん、洞窟の中へ急いでください!!」

盗賊「わ、わかったよ」

3人はボストロールたちにせをむけて 洞窟のなかへにげた!

僧侶「はぁ、はぁ……!」

盗賊「僧侶姉ちゃん、大丈夫か! 兄貴俺の手の方に掴まれ! このままじゃ姉ちゃんが!」

勇者「……もういやだ」

勇者「俺が何か悪いことしたのか、何でいつもこんな目に合うんだ」

勇者「やだよ……いやだぁ……」

盗賊「兄貴! はっ」

盗賊は勇者をかかえてとんだ! かんいっぱつのところで 魔物の こうげきがくる!

魔物「へへ、こいつら逃げ足遅いな。リンチにしてやるぜー」

魔物のむれが うしろから おしよせてきている!

盗賊「兄貴しっかりしろぉ! ショックなのは分かるけど、逃げなきゃ!」

勇者「……」

僧侶はバギをとなえた!

魔物「ぎゃん!!」

僧侶「い、今のうちですよ。早く勇者様を連れて……」

僧侶「えっ!?」

なんと まえからも 魔物のむれが おしよせてきた!

ボストロール「無駄だ無駄ぁ。私が何も考えずに貴様らの後ろから現れたとでも思っていたのか?」

ボストロール「挟み込んで一気に潰してしまえ! 好きに暴れるがいい!」

魔物たち「うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」

僧侶「ま、魔法じゃもう抑えきれない……」

盗賊「……」

盗賊「僧侶姉ちゃん、兄貴を頼むぜぇ」

僧侶「盗賊さん!? いきなり何を」

盗賊「俺があいつらの注意を引きつけるから、ほら、そこの少しスペースがあるでしょ。そこから2人で逃げろよ!」

僧侶「あ、あなたはどうするのですか!! 冗談はやめてくださいよ!!」

盗賊は僧侶へ さとりのしょ を なげわたした

盗賊「俺の宝物。ボロボロになんの嫌だかよぉ~、僧侶姉ちゃんが預かっててくれないかなぁ」

僧侶「いやです! やめてくださいっ、何考えてるの!?」

盗賊「早く行けよ……早くしろッ」

ボストロール「一匹も逃すな! 皆殺しだ!」

僧侶「……と、盗賊さん。ごめんなさい……っ」タタタ…

勇者「……えっ、盗賊?」

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