勇者「女魔王との結婚生活」 4/7

1 2 3 4 5 6 7

勇者「合図があるまでしばらく二人きりにしてほしいとな……」フゥ

女戦士「"境目の街"である噂を耳にしまして……」

女魔王「魔物領と人間領の唯一の境……土産話を聞かせてくれる…という表情ではないな」フフ

女戦士「あそこは人間領に踏み入ようとする魔物を相手に、修行にうってつけの地なので…」

女戦士「……"魔王は、勇者の子を産むだけのために今の生活に身を投じている"と断末魔代わりに教えてくれた魔物がいましてね」

女魔王「ほう……それは、穏やかではないな」クス

女戦士「私は真面目な話をしに来ているんです」

女魔王「それで、勇者を外に出したわけか……」

女戦士「……事実確認をしに来たんです」

女魔王「そうだな…」

女魔王「確かに、そう告げた」

女戦士「っ! 」キッ

スチャ

女魔王「物騒だな。魔物でも身重の時分なのだが……」

女戦士「覚悟して、ここに来ているんです」チャキ

女戦士「……お腹の子には悪いですが、全ての怨恨は私が引き受けます…」

女戦士「……勇者様にも二度と会う事は無いでしょう」

女魔王「……今の状態でも我は一人で人間を根絶やしに出来るであろう」クク

女戦士「……それが、最後の言葉ですか」

女魔王「だが、貴様は強くなった」

女戦士「……貴方が残虐な魔王のままでいてくれて、あの玉座に座していてくれたならば……今、この瞬間を楽しめていたはずです」スゥ…

女魔王「ああ、勇者…とまではいかないが、勇者を名乗るに値する力だ……」

女魔王「……どうだ? それだけ強くなって」

女戦士「……惑わそうとしても…」

女魔王「いま、その身体を包むのは幸福感か? いや、違うだろうな……」

女戦士「私に貴方を刺す気が無いとでも思っているのなら、それはとんだ無謀、とんだ楽観です……」

ズサッ

女戦士「……っ」

女魔王「おっと、枕が破れてしまったわ」

女戦士「この初撃を枕で軽々と受けきるなんて……余裕みたいじゃないですか」

女魔王「今の動きが最後の抵抗だ」

女魔王「まあ、言っても信じはせんだろうが…」

女魔王「……その噂話は事実であり、事実ではない」

女戦士「……くだらない問答で時間稼ぎですか…」

女魔王「あの場ではああ言うしか他の魔族を納得させる事が出来なくてのう……魔王といえど、一人の魔界を動かす一つの歯車にせんということだ」

女戦士「……勇者様を一人占めにして…」

女魔王「それが本音か?」クス

女戦士「……っ」カアァッ

女魔王「よい……貴様も人間と…勇者を想っての此度の無礼なのだろう…」

女魔王「我は問題にせん、不問に帰すぞ」

女戦士「…………話は終わっていません……」ジャキッ

女戦士「助けを求めないんですね」

女魔王「貴様は賢しい……勇者は良い仲間に恵まれたな」フッ

女戦士「これが愚かな行為だということは百も承知…」

女戦士「……それでも、私は…」

女魔王「誰のために?」

女戦士「人間の……」

女魔王「……」フゥ

女魔王「我はこの数ヶ月、勇者を死なせない…死んでもこの世に残す方法を模索していた」

女戦士「また、時間稼ぎ……」

女魔王「ああ、そのことだが…」

女魔王「……勇者には、貴様が訪れたらこうなるだろう事は告げてある」

女戦士「!」

女魔王「すまぬな……貴様とは腹を割って話をしてみたかったのでな」

女魔王「実際に腹を割かれては困るが」クックック

女戦士「魔王ジョークですか、笑えませんね……」

女戦士「愛する貴方が窮地に立たされているのを見過ごす勇者様じゃありません……」

女魔王「アイツは信じているからな……」

女戦士「仲の良いことで……羨ましいです」

女魔王「なにを勘違いしておる。勇者が信じているのは貴様の方だ……女戦士」

女戦士「っ」

女戦士「今日はよく舌が回るみたいですね……」

女魔王「そう誉めるな」クク

女魔王「話せばわかり合えると思ったからこそ、二人で会う事を認めているのだ」

女魔王「信頼されているのだ、貴様も」

女魔王「長い旅を連れ添った仲間なのだろう……無理に我を信じろとは言わん…」

女魔王「だが……我を信じる、勇者を信じる事は出来るのではないか?」

女戦士「っ……」

女戦士「……卑怯ですね、やっぱり……貴方は魔王です」ウル

女魔王「ああ……我は魔王だ」ニィ

女戦士「私は……まだ未熟です」

女戦士「もしかしたら、ここで貴方を手にかけなかった事を後悔するかもしれません」

女魔王「勇者に対する信頼の、何分の一くらいは我を信じてみてはどうだ」ニコ

女戦士「無理ですね」

女魔王「随分とハッキリと言うものだな……」

女戦士「だって……」

女戦士「勇者様は私の……初めての人ですから」ポウッ

女魔王「……」ピキッ

――…

勇者「話は終わったようだな……」

女魔王「勇者。ちょいと、我の前に顔を近づけてくれ」ニコ

勇者「……おいおい、客の前でなにをするんだ?」テレ

女魔王「我としては優秀な遺伝子を他にばらまくのに魔族として否定はしないが…」

勇者「んー?」スッ

バキッ!!

勇者「ぶべらっ!?」バゴーンッ

女魔王「なぜだか……えにも言えぬ苛立ちが生じてな…………」ニコッ

女戦士「……おっかないです…」サアァ

勇者「誤解でふ……」

女魔王「まったく……紛らわしい言い方を…」

女魔王「……すまん」ペコッ

勇者「いや、俺も油断していたからな……」

勇者「……女戦士も」

女戦士「は、はい……」モジ

勇者「その……あのキスは事故で…」

女戦士「わかってますよ」ニコ

女戦士「でも……私にとっては大事なことなんです……」カァ

勇者「そうか……」チラ

女魔王「……」ニコ

勇者「……」タラ

勇者「……お前は、可愛い妹のような存在だからな…可愛い後輩でもあるし……」

女戦士「わかってます」クス

女戦士「まだ、始まったばかりですから」ニコッ

勇者「……なにが?」チラ

女魔王「……我に聞くな」ジト

――…

女戦士「はい、飲みものです」

女魔王「……すまぬな」

――…

女戦士「着替え、ここに置いていきますね」ニコ

女魔王「…………ああ」

――…

女魔王「おい、勇者」

勇者「どうかしたか?」

女魔王「あの小娘C、どうしてあれから良くするのだ」

勇者「よくわからないんだけどな……自分の時のために色々出産について知っておきたいらしいぞ」

勇者「さっきも『まるで勇者様と子育てをしているみたいで嬉しい』って、なにが嬉しいかはわからないが良い子じゃないか」ウンウン

女魔王「……あの小娘め…」

女戦士「勇者様っ、今日の夕飯の献立はなにが宜しいですか?」ニコッ

女魔王「出ていけ!!」

勇者「家事もやってくれてるんだし……そう邪険にするなよ…な?」タラ

――…コンコン

ガチャッ

女武闘家「こんにちわっす!」

バタン

コンコン!!

ガチャッ

女武闘家「どうして閉めたんですか!?」

勇者「魔王がな……女武闘家が来た時には一度ドアを閉めろって」

女武闘家「ただの嫌がらせじゃないですか!?」

女武闘家「あっれー? もしかして私、嫌われてます??」

勇者「いや、そんなことないと思うぞ…」

勇者「……パーティの中ではお前が一番お気に入りだと思う…俺の目から見てだがな」

女武闘家「本当ですかー?」アセ

――…

女魔王「来たか、さあ、座れ」ポンポン

女武闘家「……子供扱いされてるの?」ジト

勇者「それは…………否定は出来ん」タラ

女武闘家「お腹も大きくなりましたね~」

女魔王「そうだな……」

女武闘家「あれ? 体調すぐれません??」

女魔王「今日は良い方だ……貴様も見舞いに来てくれたことだしな」

女武闘家「……」

女武闘家「(勇者様~っなんか優しいですー!)」パチパチ<アイコンタクト

勇者「(だろう? ちょっと良ければ理由を聞いてみてくれないか)」パチ、パチ

女武闘家「あのぉ~、魔王さん?」

女魔王「……どうした?」クス

女武闘家「私のこと、どう思います?」ドキドキ

女魔王「ふむ……」

女魔王「産まれてくる子が貴様のようだったら良いなと思ってな」ニコ

女武闘家「(勇者様~っ! 不意の笑顔に惚れちゃいそうですー!!)」パチパチ<アイコンタクト

勇者「(安心しろ、俺も惚れ直したっ)」グッ

女武闘家「それは……評価していただきありがたきなんたらです」ヘコヘコ

女魔王「なにをかしこまっておる」フフ

女魔王「頭も良く、人当たりも良い。おまけに最高クラスの戦闘力を持つときた」

女魔王「人間の世界で暮らしていくに、この上ない要素ではないか」

ナデ

女武闘家「はは……頭を撫でられるのって久しぶりですね」クシャクシャ

女魔王「ほう、そうなのか」

女武闘家「勇者様は最近かまってくれませんし…」

女武闘家「前なら一緒にお風呂にも入ったのに……」シュン

女魔王「それは……寂しいな」

女武闘家「はい……」

女魔王「…………」ニコ

勇者「(目を合わせずとも怒気が伝わってくる……)」ブルッ

女武闘家「実は、私が勇者様のパーティに一番に入ったんですよ」ニコッ

女魔王「そうなのか……そういえば旅の馴れ初めを聞くのは初めてだな…」

女武闘家「初めは二人でLV上げとかして……」

女魔王「当然のことだが、勇者にも弱い時期があったのだな」フム

女武闘家「3つ目の町くらいまでは二人でやっていったんですよ」エヘヘ

女魔王「それは……すごいのか?」チラ

勇者「まあ……二人パーティも珍しいからな」

女武闘家「でも、二人では限界が来て……新しい仲間を加入させようって話になって…」

女武闘家「私、正直、少し嫌だったんです」

女武闘家「勇者様と二人きりだったパーティに知らない人が入ってくるのが……」ハハ

勇者「……俺がいる事を忘れているのか?」

勇者「(なんなら出て行…)」チラ

女魔王「(……聞け、その方がお前と武闘家、両方のためになる)」パチ

女武闘家「それで……ルイーダの酒場に行ったんです。あそこ、興信所の役割もあるので」

女魔王「そうなのか……ただの酒場ではなかったのだな」

女武闘家「すぐにパーティに入ってもらえそうな人をリストから探していたんですけど…」

女武闘家「……子供二人のパーティに入ってくれる人も中々いなくて…」

女魔王「それは……確かにな」ムゥ

女武闘家「でも、そこで逆に話しかけてくれた人がいたんです」ニコ

女魔王「ほう」

女武闘家「それが女賢者さんなんですよ」ニッ

女魔王「……」ジトー

勇者「(露骨にイヤそうな顔をするなよ)」タラ

女武闘家「なんか、勇者様って、お姉さんから好かれる顔してるって」ニコニコ

女魔王「あの女……魔王討伐を出会いの大義名分にしておったのか…」カチン

女武闘家「あの時は私も14歳で、勇者様も一つ上でしたから」ニコ

女武闘家「賢者さん、初めから賢者だったので即戦力でしたっ」

女武闘家「そして三人で冒険をしていた時に……」

―――――……………

勇者『このパーティに足りないのは男だと思う』グッ

女武闘家「えー、今でも十分やっていけてるよ?」

女賢者「男なんて入れたら勇者様の身体が危険にさらされますよ」ウル

勇者「どうしてボクが危険になるんだ…」

勇者「……とにかくっ、無性に男同士でバカやりたくなる時があるんだっ」

女武闘家「稽古相手なら私がしますし……」

女賢者「女の子に話しずらい話なら私が聞きますよー」

勇者「賢者の言い分は支離滅裂すぎて意味がわからない…」

勇者「でも男分が足りないんだ!」

1 2 3 4 5 6 7