勇者「女魔王との結婚生活」 6/7

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勇者「ここで、眠っているのがおかあさんだ」

娘「ほー……」

娘「おかあさん、恐い?」

勇者「……ああ、おとうさんよりずっと恐いぞ」ニコ

娘「……きんちょうしてきた」

勇者「起きないから、緊張せんでも良いぞ」

ガチャ…

『……おぉ、来たか』

勇者「お前っ、もう目が覚めたのか!?」

女魔王「なんだ……早くに目を醒められてはいけい理由でもあったのか」クス

勇者「いや、医者の話だと一週間の間面会謝絶と聞いていたからな…」

勇者「……でも、良かった」

ギュッ

女魔王「……ふふ、随分と久しい気がする………ん?」

娘「…………」ガクブル

女魔王「っ! ……」ウル

スッ…

娘「ゃっ」サッ

スカッ

女魔王「な……っ」ガーンッ

娘「……」ビクッ

勇者「お前に似て美人だろう」

勇者「小さい頃の魔王もこんな感じだったんだろうな」

女魔王「確かに……だが、魔族の匂いが薄いな」

勇者「というか成長スピードがとんでもないんだが…」

勇者「生後一週間で歩いて、言葉も初めからある程度知っていて……人間でいえば6歳くらいか」

女魔王「魔族は一番弱い時期が一番短いからな」フム

女魔王「生後あたりから成長のスピードは緩やかになっていく……」

女魔王「ほら、ここに……おいで」チョイチョイ

娘「……」

娘「……」

テクテク…

女魔王「捕まえたっ」ガバッ

娘「!?」

女魔王「可愛いなぁまったく…」

女魔王「……本当に、涙が出るほどに愛らしい…」グスッ

娘「……」クス

娘「おかあさん、こわくないね」

女魔王「……魔族にしては威厳が足りないようにも見えるな…」

勇者「そこはまあ、半分勇者の血も混ざっているということでさ…」

勇者「……威厳が無いのをそのせいにはしないでくれよ…」ポリ

――…【自宅】

女魔王「久方ぶりの我が家だな」フゥ

ガチャッ

女賢者&女武闘家&女戦士『退院おめでとうございます!!』パンッ パンッ

女魔王「……」キョトン

勇者「本当はもっと大勢で集まる話だったんだが…」

勇者「女戦士が、こういう時に大勢の対応をさせるのもかわいそうだから。ってさ」

女魔王「……そうか」

女魔王「気恥ずかしいな……こういう慣わしは、魔族にはないから慣れておらなんだ」

女戦士「……お帰りなさい…」ニコ

女魔王「……ああ、ただい… 娘『戦士おかあさ~んっ』ピョンッ

ポフッ

女戦士「こら、あまりはしゃぐと、怪我の元ですよ」

女魔王「……? どういうことだ、今のこれは」

娘「戦士おかあさんが一緒の時は"おかあさん"って呼んでいいよって!」ニコッ

女戦士「…………」キョロ…

女魔王「……おい、目を合わせろ…」ニコ

女戦士「だって……赤ん坊の頃に側に母親がいないのは可哀想じゃないですか」キョロ

女魔王「筋の通ってる事を言っている自信があるならば目を反らす必要がどこにある……」

娘「おかあさんが帰ってきても、女賢者さんはおとうさんと同じ部屋で寝るの?」

女魔王「なっ……」キッ

女賢者「この季節はですね……毛布より人肌の方が暖かいんですよ」ニコ

女魔王「……」ピキ

娘「武闘家おねえちゃんも、おとうさんと結婚するんだよねっ」ニコッ

女武闘家「……ええと…」

女武闘家「……うんっ♪」ニコッ

女魔王「いや、そこは気まずそうにするところだ……」ハァ

女魔王「……」チラ

勇者「!」

勇者「……お帰り、魔王」ニッ

ギュッ

女魔王「……ん」

女魔王「ただいま……勇者…」チュッ

――…数年後

娘「お父さん、キラーマジンガにバイキルトをかけたら手がつけられなくなっちゃった……」

勇者「……支度をするから少し待ってなさい」

――…

娘「お母さーん、隣の国の王様が無理矢理、私を誘拐しようとしたから咄嗟にマダンテ使っちゃったんだけど……」

女魔王「またか、よいよい。その場に放っておけ」

勇者「いや死んでしまう死んでしまう」アセ

勇者「……支度をするから、待っていなさい」ハァ

――…

娘「お父さん……戦士おかあ…女戦士さんが修行で手加減してくれなくて…」

勇者「それは仕方がない、アイツも顔は避けてくれている辺り良心的じゃないか」

娘「お母さん~」

女魔王「小娘Cにやられるとは情けない……勝つまで負けてこい」

娘「~っ」

娘「このバトルばか夫婦っ!」ハァ

――…

娘「お父さんっ、はい! チョコレートっ」ニコッ

勇者「おう、ありがとうな」ナデ

娘「へへ……」

――…翌年

娘「お父さんっ今年のチョコっ」ニコッ

勇者「ありがとう」ニコ

女魔王「娘がなついてくれるとは喜ばしい限りじゃないか」クス

勇者「それもいつまで続くか……毎年、これが最後のチョコだと思って食べてるよ」ポリ

――…翌年

娘「お父さん……? これ、チョコ」スッ

――…翌年

娘「お、お父さん……こ、これ」カァ

――…翌年

娘「あの……チョコだけじゃなく、セーターも、あ、編んだの…………」カアァ

勇者「うちの娘はグレずに育ってくれて嬉しい限りだよ……」パクッ

女魔王「勇者と魔王の子は、常識には当てはまらないのかもしれぬな」フム

――…

娘「そういえば……」

娘「弟か妹って出来ないの?」

勇者「っ」ゴホッ、ゴホッ

女魔王「なにを焦っておる……」

女魔王「そうだな……勇者次第だな」ニコ

勇者「娘一人でも体力的にキツい現状だからな……」

女魔王「まあ、我は毎日相手をしてもらっているからな……不満は無い」

娘「そっかー」

娘「で、どうして弟妹が出来るのにお父さんの了承が必要なの?」

勇者「っ」ブフォッ

女魔王「まったく……ほれ、顔をこっちに向けろ」

フキ… フキ

娘「結局、どうしてかわからないままだよう……」

――…

女魔王「最近は、『おおききなったらお父さんと結婚するーっ』と言わなくなったな」

勇者「そうだな……仕方がないよそれは」ハハ

勇者「娘がいつか俺を邪険に扱う日がくるのさ……」ウル

娘「? 私、お父さん好きだよ??」

勇者「優しいなあ、娘は」ウンウン

娘「だって、お父さんはお母さんのものだから」ニコ

娘「結婚出来なくても私はお父さんの事、好きだよっ」ニコッ

勇者「……魔王」

女魔王「……?」

勇者「お前といい娘といい、魔族の血が流れている者は、割りきりがしっかりしているというか…」

勇者「……大物だよな」

女魔王「我なら愛した者に相手がいようが関係ないだろうが…」

女魔王「……身をひくあたり、やはり人間の血も混ざっているということだろうな」

勇者「やっぱり……二人の子なんだな、って思うよ」ニコ

――…

娘「戦士おかあさんは、結婚しないの?」

女戦士「っ……まだ、良い」

娘「私がいま11歳で…私が産まれた時に戦士おかあさんは15歳だから……」

娘「25、6歳? まだ若いねえ」

女戦士「鍛錬が足りないという事です」

娘「好きな人はいるの?」

娘「戦士おかあさんすっごく美人だから、お母さんと同じくらい綺麗なの、戦士おかあさんだけだよっ」ニコ

女戦士「……誉めてくれるのは嬉しいですが…」チラ

女戦士「正直、容姿よりも…戦闘の方で貴方に追い抜かれた事の方がショックです……」ハァ

娘「大丈夫だよっ、お父さんを抜かせば人間で一番強いからっ!」ニッ

女戦士「……勇者様と同等が貴方の母、その下に貴方…」

女戦士「私の現目標は娘さん、貴方という事になりますね……」スチャ

娘「いや……でも戦士おかあさんより強いって自覚ないし…戦士おかあさんに勝てる気がしないし……」タラ

女戦士「そうですね……」

女戦士「では、ハンデ無しのマジバトル。いきましょうか」ニコッ

娘「ううぅ……親に匹敵する戦闘バカだよぉ女戦士さん…」グスッ

娘「痛た……」ヨロ

娘「どんな体さばきをすれば、あの人みたく空中で変化出来るのかな……」イタタ

『お疲れのようね、娘ちゃん』

娘「この声はっ!」パアァッ

女武闘家「どうも、"はじまりの村に吹く一陣の風"女武闘家ですっ」キリッ

娘「わーかっこいい~」パチパチ

女武闘家「一部始終は見させてもらったよ」ニコッ

娘「見てました? …丁度よかった」

娘「女戦士さん、教会に連れていってあげてください……たぶん自力じゃ動けないと思います」

女武闘家「娘ちゃん、私も20代じゃなくなるから……」

娘「?」

女武闘家「手合わせお願いしますっ♪」ニコッ

娘「えぇ~っ!」ガーン

娘「あの……出来れば、日を改めて…」

娘「というかどうして私なんですか?」

女武闘家「私には心残りが一つあってね…」

女武闘家「……本当は、旅が終わったからはその人に戦闘で勝てたら告白しようと思っていたんだけど……」

女武闘家「いよいよ無理そうで……」ハハ

娘「ふむふむ……」

女武闘家「なので、悔いを残さぬよう、勝っても負けてもあの人を吹っ切ろうと思うの」ニッ

娘「わー素敵っ」

娘「……私が相手じゃなければ…」ズーン

娘「お父さんやお母さんじゃ駄目なんですか?」

女武闘家「勇者様は無理だし、魔王さんは本当に無理っ」ニコッ

女武闘家「それじゃあ……よろしくお願いしますっ!」スゥッ…

娘「もう……勇者パーティの鬼ぃ~っ!」グスッ

――…

娘「……ん…」チラ

娘「ここ…は?」ガバッ

『まだ安静にしてなきゃ駄目よー』

娘「この甘ったるい声は…」

娘「……女賢者さん!」

女賢者「正解ー♪」パチパチ

女賢者「それより……女武闘家ちゃんが痛々しい姿で貴方を運んできたんだけど……事情を教えてくれないかしら?」

娘「実は……」

――…

娘「女武闘家さん、お母さんの言っていたとおり、狡猾な人なのかもしれません……」

女賢者「というか、私にはあの戦士ちゃんと戦った後の連戦で武闘家ちゃんをメタメタにした貴方に感心するわ」タラ

娘「親に鍛えられてますから…」

娘「……女賢者さんは結婚しないんですか?」

女賢者「どうかしら……」ウーン

娘「どうしてみんな美人なのに結婚しないんだろう……」フム

女賢者「でも、娘ちゃんも勇者様が好きでも結婚しないでしょう?」

娘「それは……お母さんがいるし…」

女賢者「皆も一緒よ」クス

娘「……そうかわかった」

娘「みんなも好きな相手が結婚してるんだ……っ!」ポンッ

女賢者「う……ん、当たりといえば当たりね」ニコ

娘「そっかー……」

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