女武闘家「それで、再びルイーダの酒場に……」ハハ
女魔王「どれだけ男が欲しかったのだ……よほどの執着力だぞ」ハァ
勇者「……言い訳する言葉も無い」ハハ
―――――……………
勇者『掲示板の前に立っていた戦士を勧誘してきました!』
女賢者「……ええと、どこにもいないですけど…」キョロ
勇者「ほら……後ろに隠れてないで…」
戦士『は、はい……』ヒョコッ
戦士「あの……年は規定の年齢に達していませんが、実力は人並み以上の自信があります」
戦士「よ、よろしくお願いします」ペコッ
女武闘家「またかわいい子を連れてきて…」ナデ
女武闘家「ぼく、お姉さんは武闘家で……」
女賢者「…………違う」
女武闘家「え?」
女賢者「同性の匂いがします……」キッ
勇者「……もしかして、だけど…君って……」
女戦士「? 私、女……ですけど」キョトン
勇者「 」
―――――……………
女武闘家「今さらパーティから出ていけなんて言えるはずもなく……」タラ
女魔王「はは……苦笑いしか出てこぬわ」フゥ
女魔王「貴様らの馴れ初めはわかった…」
女魔王「それで、トントン拍子で魔王城まで辿りついたと。」
女武闘家「そんなに順調にはいきませんでしたよ…」
女武闘家「……戦士ちゃんが加入して5年かかりましたから」
女魔王「パーティ完成から5年で魔王討伐をほぼ完遂したのならすさまじいな」ホォ
女武闘家「戦士ちゃんが入った時はまだ10歳でしたから」ハハ
女魔王「15? あの小娘、あのナリで15なのか??」
女武闘家「すごい美人さんになりましたよねー……正直、私よりもスタイル良いですし」ガク
女魔王「貴様ら三人供、似たようなサイズではないか」ジー
女武闘家「胸の話はしていませんっ!」イーッ
女武闘家「魔王城に到着する頃には暗黙の了解が出来ていて……」
女魔王「……続けろ」
女武闘家「魔王を倒すまでは抜け駆け無し、という不文律が……」カァ
女魔王「ほう……それは…」
女武闘家「そうして、魔王を倒すか倒されるかとなった時に――」
女魔王「……その、なんと言えばいいのだろうか」
女武闘家「魔王さんは気にしないでください」クス
女武闘家「私たちも同じように驚きましたから」ハハ
女武闘家「ひんし状態の女戦士ちゃんも起き上がったくらいですし」クスクス
女魔王「ああ……アレには…悔しいが笑わされた」クックッ
勇者「(よくわからんが、また女戦士をネタに笑ってるのは理解した)」
――…
女武闘家「えっ、今日は泊まっていってもいいんですか??」
女魔王「ああ……良いだろう? 勇者」
勇者「俺に反対する理由は無いな」
女武闘家「本当ですかっ?」
女武闘家「わ~いっ! 久しぶりに勇者様とお泊まりお泊まり♪」
女魔王「喜んでくれたのならこちらも嬉しい」フフ
勇者「……」
女魔王「……どうした?」
勇者「出産が近いから合わせて優しくなってるのかな、と思っていたんだが…」
勇者「……お前ら二人は相性が良さそうだな」ニコ
女魔王「そうか? ……」チラ
女武闘家「寝間着はどうしよう……お風呂上がりはいつもと違う髪型になんかしたりして…」エヘヘ
女魔王「妹……というより娘に近い感覚だな」クス
勇者「俺には仲の良い姉妹に見えるぞ」
――…
勇者「"今日は別の部屋で寝ろ"?」
女魔王「ああ、今日は一人で寝たい気分なのだ」
勇者「いつもは『一緒にいられるだけくっついていたい』って言うのに……」
女魔王「……き、今日は特別なんだ」
女魔王「寝室は女武闘家と二人で使え、あとは知らん」
勇者「うーん……お前がそう言うなら」
女魔王「(まあ、女武闘家にはそうする機会くらい与えてやってもいいだろう……)」
――…チュンチュン
女武闘家「ふぁ~あ、おはようございます」フワァ
女魔王「眠たそうだな……」クス
女武闘家「はっはい! 実は昨日……勇者様が…」
女魔王「ああ……」
女武闘家「寝ぼけていたのか、私を抱き枕みたいに抱き締めてくれて~っ!」キャー
女魔王「……は?」
女武闘家「もう、勇者様分満タンですよ~」ツヤツヤ
女魔王「まぁ……いらぬ世話だったか」
女魔王「そいつは……良かったな」ニコッ
ナデナデ
――…
女武闘家『元気な赤ちゃんを産んでくださいね~』パタパタ
ガチャンッ!!
扉の外<扉を閉める勢い強すぎじゃないですか!? もしかして早く出ていって欲しかったとか!?
キャーキャー
勇者「……今のでいいのか?」
女魔王「ああ……あやつを弄るのはまこと、愉快だ」クス
勇者「ほどほどにな……」ハァ
ガチャッ
勇者「忘れ物か……?」
女魔王「いや……違うな…」
『勇者様~(ハァト』
勇者「この声は……」
女魔王「すぐに追い返すのだ」ジト
勇者「そう言うなよ……」ハハ
コトッ
女賢者「あっ、お構い無く」ニコ
女魔王「……なんの用だ」
女賢者「知人と話がしたいだけ……じゃ、駄目でしょうか」フフ
女魔王『駄目だ。』
勇者「どんだけ嫌いなんだよ……」
女魔王「それに、聞いたぞ小娘……」
女賢者「……はい?」ニコ
女魔王「ルイーダの酒場を出会いの場として使用していた、勇者のパーティにあるまじきその性魂。穢らわしい……魔物以上に欲求に忠実な女よ…」
女賢者「なっ、なにをおっしゃって……」チラ
勇者「?」
女賢者「良いじゃないですか別に!」ドンッ
勇者「なにかしらんが開き直ったのは理解したぞ」
女魔王「良いか勇者、人間・魔族に問わず、猫をかぶって男の機嫌を伺う雌を、雌は一番嫌うのだ」キッ
勇者「身体に響くぞ……あまりハッスルしないようにな…」
女賢者「確かに、初めはごく微量に下心があったかもしれません……」
女魔王「なにがごく微量だ。隣の商屋比120%増しに見え見えだわ」
女賢者「でも、一緒に旅を続けるにつれ……パーティの皆との連帯感も生まれ、仲間意識が強まり…」
勇者「うんうん……」
女賢者「勇者様も私の予想以上に、逞しく…素敵になられて……」ホゥ
女賢者「旅の最中でも、綺麗だね。とか、賢者の髪は今まで見た中で一番美しいよ、とか」クネクネ
女魔王「腰をくねらせるな。毒イモムシか貴様は」チッ
女賢者「それに、前にもおヘソが綺麗だって……やですよもうー」テレテレ
女魔王「自分語りが終わったのならすぐに帰れ」
女賢者「過去の話をぶり出したのは魔王さんの方ですよ」
女魔王「もう話をする事はない」
女賢者「あら、勇者様とまだ話してませんよ」フフ
女魔王「」ブチッ
女魔王「それなら家の外でも話せるであろう……あまり苛立たせるな」ゴゴゴゴゴ
女賢者「わ、わかりましたから……そこまで本気にならないでください…」
――…
勇者「おい……」
コツン
女賢者「ぃたっ」
勇者「そろそろ産気付いてもおかしくない時期なんだから……あまり興奮させるな」ハァ
女賢者「つい……猫をかぶっていると言われましたが、私からすると向こうの方がよっぽど泥棒猫ですよ……」ツンツン
女賢者「あと……これ」ガサ
勇者「ん? 土産か??」
女賢者「私が祷りを込めた、安産間違いなしのお守りです」
勇者「これを持ってきたなら始めに出せば……」
女賢者「だから……あの人の前だと、つい感情的になってしまって……」ハハ
――…
ガチャ…
勇者「……気分はどうだ?」
女魔王「あやつのせいで、せっかく上機嫌だったものが台無しだ」ムゥ
勇者「賢者なりに元気付けようとしたんだよ」
女魔王「そうか? ……そうだろうか…」
女魔王「……ちがうな」ウム
勇者「あと……これ、あいつが祷りを込めたっていう安産祈願というか、安産確定のお守りらしい」
スッ
女魔王「……」
女魔王「……受け取っておく」ギュッ
――…
女魔王「勇者ー」
勇者「どうした?」
女魔王「このお守りだが…」
女魔王「ロザリオのようにとはいかんが、身に付けられるように出来ないだろうか……」テレ
勇者「……」ニッ
勇者「問題無い。賢者も喜ぶぞっ」ニコ
――…
勇者「待ってろ! いま女賢者を呼んでくる!!」
――…
女賢者「はぁっ……はあっ」
女賢者「今さらだけど、人間の出産方法と同じでいいのかしら……?」
勇者「ここまで一緒だったんだっ、とにかく頼むぞ……」
女賢者「……わかりました」コクッ
――…
女賢者「……おそらく、人間と同じでしょう」
勇者「……魔王」
女賢者「勇者さんに出来る事は事前にお教えしましたよね」
女魔王「……なにを慌てておる…」
女魔王「……我は魔王だ、お前ら人の基準と一緒にす…」
女賢者「はい強がりですねわかりますーまずは息を吸って~……吐いてー…」
勇者「……」バク…バク…
ギュッ
――…先日
勇者「生まれてくる子は……人型、だよな?」
女魔王「そうは断言出来ぬ…」
女魔王「……過去には人型ではない魔王もいたと聞いておる」
勇者「……そうか」
勇者「性別は……?」
女魔王「……わからぬ」
女魔王「人型でもあれば魔物の姿をしていたり、雌雄が有ればどちらでも無かったり」
女魔王「絶対というものは無いのだ」
勇者「……そうか」
女魔王「我はどちらの形をしていようが気にせぬが……」
勇者「……考えるだけ無駄かもな…」
勇者「その時になればわかるだろう」
女魔王「……そういうものか」
女魔王「我は、はやくその姿を拝みたいところだ」ニッ
――…
女賢者「もう少しですよーっ魔王さん!」
スッ…
勇者「……っ!」
――…
勇王(娘)『おとうさーん』
勇者「……元気だなー、お前は」
娘「おかあさんの?」
勇者「……ああ、お前は写真でしか見たことないからな」
勇者「……魔王の、ロザリオ。届けに行くんだ」
娘「またお留守番ー?」
勇者「いや、今日はお前も連れていく…」
勇者「……大事な日だからな」ニコ
娘「おー、大事……?」
勇者「おかあさん似だな、お前は」
勇者「……行くか」
娘「女戦士さんは?」
勇者「あいつはお留守番だ」
娘「そっか……」
テク、テク…