勇者「黒髪クソ女に続いて普通に酷い客だった」
僧侶「そうですか?コーヒー褒めていただいたんでまったく気になりませんでしたけど」
勇者「また褒められる点がコーヒーだけか……」
僧侶「いっそランチメニュー全部なくしてコーヒー専門店にした方が人気出るんじゃないでしょうか」
勇者「俺の存在意義まったくなくなるよねそれ」
僧侶「美味しくないパスタショップ続けるよりは未来は明るいです」
――――――
―――
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鎧少女「"紛らわしい言い方をしていたね"」
鎧少女「ま、誤魔化す言い訳の出始めとしては普通だな」
仮面男「"魔物狩り"キミもその後すぐに話を合わせてくれたのはホッとしたよ」
鎧少女「流石に人間の生首を持ってきているのがバレるのはショッキングだからな」
仮面男「狩ったのは魔物以下に堕ちた人間……山賊共、殺されて当然の事をしてきた連中だ」
鎧少女「住民被害もなくなって私たちは金を貰う、一石二鳥だな」
仮面男「女神の言うことじゃないね」
鎧少女「そんなもん人が勝手に連想した偶像だ、女神は残酷なの」
仮面男「知ってる、いつものキミを見てたら私のイメージした女神とは程遠いからね」
仮面男「それより……なぜ彼の料理が美味しくないと評価したんだい?」
鎧少女「お前、相槌打ってただけなのかよ……一応教えておいてやるが」
鎧少女「あいつの料理はどうもワザと自分の味を出そうとしてないように感じた」
鎧少女「なんというか……無理やり他の誰かの味にしようとしてるというか」
仮面男「慣れ親しんだ味を出すのを拒んでる?」
鎧少女「そうそれ!基本的な作り方でさえもなってないんだろうけど、その味から一歩引いて薄くしてる感じ」
仮面男「味が薄いと思ったらそういうことか……」
鎧少女「ま、しばらく村の方に滞在するし気が向いたらまた行ってみるか」
仮面男「そうだね、コーヒーは美味しかったし」
――――――
―――
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勇者「1日で客が二組来ただけでも奇跡なようなものだよなぁ」
僧侶「ホントですね。どうやってここの店、維持費払ってるんでしょうね?」
勇者「まだ生きてる父さん、莫大な仕送りありがとう。この店は今日も立派に構えてるよ」
僧侶「勇者さんホントにクズですね」
勇者「いいんだよ、あの金持ちもう他人だけど搾り取るだけ搾り取るよ」
僧侶「両親の離婚という絶望をバネにし過ぎです」
僧侶「それにお父様は私が勇者さんと巡り合うきっかけを作ってくれた人なんですよ?」
僧侶「奴隷市場で売られるのを待つだけだった私を使用人として雇って頂いて……」
勇者「まぁちょこちょこ感謝はしてる、離婚のことも俺が首を突っ込むべきではないことも理解してる」
勇者「だが金の話は別だ」
僧侶「それは借金なんですからいつかちゃんと返しましょうね」
勇者「片づけも終わったしそろそろ店閉めようか」
僧侶「そうですね。今度はきちんと店内も綺麗にしましたし」
勇者「スマン、客が来ないと思って怠ってた」
僧侶「私もまったく気にかけてなかったので何も言えませんけどね」
勇者「適当に飯作るからテレビでも見て待っててよ」
勇者「冷蔵庫冷蔵庫……あ、しまったな……いろいろ切らしてるや」
勇者「しゃあない、店の食材使うか。どうせ誰も来ないだろうし」
僧侶「どうしました?困った顔して」
勇者「悪いけど今日パスタな」
僧侶「え」
勇者「パスタな」
僧侶「え」
勇者「露骨に嫌そうな顔しないでくれよ」
僧侶「まぁいつも勇者さんの美味しくない料理食べてるのでそれ以上は文句は言いませんが」
勇者「頼むから美味しくないって言わないでくれ。今日だけでも心に傷ができるくらい言われてるんだから」
僧侶「私は料理できないので作ってくれるのはありがたいですけどね」
僧侶「あー昔食べた勇者さんの卵焼き美味しかったなー」
勇者「はいはい、もう母さんのレシピで作る気はないから諦めてくれ」
僧侶「それですよそれ!」
勇者「ん?」
僧侶「なんでそのレシピとやらを使わないんですか?今の勇者さんの料理よりは絶対美味しいものができるはずですよ」
勇者「うるせー、使わないものは使わないの。理由もいうつもり無し」
僧侶「そーですかそーですか。ま、いいですけど?そのうち話してくれれば」
勇者「聞きたいには聞きたいんだな。いいよ、俺の中で区切りがついたらいくらでも話してやる」
僧侶「ふふ、その日が来るのを期待してます」
勇者「嬉しそうに笑うなよ、ったく……」
――――――
―――
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勇者「ふぁぁ、よく寝た」
勇者「開店時間少し過ぎてるな……。あいつも起こしてこなかったし今日も客はいないんだな」
勇者「ま、いっか。買い出し行って来よう」
勇者「おはよう」
僧侶「おはようございます勇者さん」
黒髪少女「おはようございます、開店時間過ぎてるのにまだ寝てたなんて店主にあるまじき行為ですね」
勇者「」
黒髪少女「うん、やっぱりコーヒーは美味しい」
僧侶「えへへ~、おかわりは無料ですので好きなだけ飲んでくださいね!」
黒髪少女「ええ、そうさせてもらいます」
勇者「いや、なんで居るの?え?」
黒髪少女「どう考えても客です。それ以外になにか?」
勇者「また飲みに来るとか言ってたな。次の日にいきなり来るとは」
黒髪少女「社長出勤してなおかつ客にその態度……同業者としては無性に腹が立ちますね」
僧侶「あら?あなたも飲食店を?」
黒髪少女「ええ、青空真下の草原に……綺麗な場所にカフェを」
僧侶「わぁ!素敵ですね!ここらへん見渡すとそこらじゅうに木しか生えてなくて」
黒髪少女「静かでいいじゃないですか。隠れた店という感じが気に入ったんで」
黒髪少女「コーヒーが美味しいですしね」
勇者「あーそう……。食事は?」
黒髪少女「いりません」
勇者「……はい」
勇者「あ、スマン。買い出し言ってくるから店の方頼めるか?」
僧侶「困りますよ、昨日みたいにお客さん来たら私じゃ対応できないですし」
勇者「来やしないって、それに近くで魔物の騒ぎだってあった聞いただろ?」
僧侶「それは解決したって昨日のお客さんが言ってたじゃないですか」
黒髪少女(私たち以外にも客がいたんだ)
僧侶「私が代わりに行ってきますので店番お願いしますね!それじゃあ車お借りします」ダダッ
勇者「おいまてコンチクショウ」
勇者「行っちゃったよ……」
黒髪少女「……」ズズ
勇者「……」
勇者(気まずいな)
黒髪少女「……ちょっといいですか?」
勇者「は、はい!なんでしょう?」
黒髪少女「そこどいてください、邪魔です、テレビが見えません」
勇者「お、おう……」
黒髪少女「……」
勇者(まずいな、キッチンに引っ込んでもいいがそれだと負けた気がする)
勇者(俺の食事のことで関係最悪だしこっちから話題切り出して挽回してみるか)
勇者「あの」
黒髪少女「そういえば」
勇者「あ、はい」(クソガッ)
黒髪少女「テレビも車も持っているなんて相当お金持ちなんですね」
勇者「どっちも魔動型だからそう高くはないよ」
勇者「動かすのに魔力が必要だから普通に電力や燃料使うやつよりは維持も安上がりだ」
黒髪少女「あまり進んでない辺境国の割には、といった方がよかったですね」
黒髪少女「どのみち魔動型は魔法を使えない一般家庭が持っててもしょうがないですし」
黒髪少女「そのお金はどこから出てくるんでしょうね?」
勇者(ニヤニヤしやがって、あいつ喋ったな……)
勇者「あいつから何か聞いたのか?」
黒髪少女「さて?聞きたいことを聞いて素直に感想述べただけですよ。気に障ったならごめんなさい」
勇者「それじゃあ俺からもいいか?今日はなんで一人なんだ?」
黒髪少女「顔が怒りで引きつってますよ?まぁ四六時中固まって行動してるわけないじゃないですか」
黒髪少女「それが何か?」
勇者「ふ、フハハ!ボッチか!ボッチになったって事か!」
黒髪少女「言ってて悲しくなってきません?」
勇者「申し訳ない」
――――――
―――
―
僧侶「やっぱり車の運転はいいなぁ」
僧侶「こういう時のために一応免許取っておいてよかったです」
僧侶「流石に自分で車が買えるほどお金は持ってませんけど」
僧侶(でも勇者さんのお父様からお小遣いを貰っているのは黙っておこう)
僧侶「でもいずれは勇者さんと一緒になって地位も!名誉も!財産も!!……じゃなくて」
僧侶「子供も出来て、みんなでちょっと離れた町までドライブなんて……」
僧侶「キャッ!考えただけでも赤面ものですね……」
ドスン!
僧侶「!」
僧侶「なに!?今のは……?」
山賊「へへ……」
僧侶(……野盗)
山賊1「姉ちゃん可愛いなぁ、ちょっと表に出てきて話でもしないか?」
僧侶(4人か……いきなり車に攻撃を仕掛けてくるなんて友好的では無いですね)
山賊2「おい、黙ってないで出てきてくれよぉ!一緒に遊ぼうぜ?ヘヘ」
僧侶(勇者さんよりは強いつもりですが……正直素直に出て行ったら確実にヤられますね、二重の意味で)
山賊2「おいてめぇ!こっちは集落一つ潰されてイライラしてんだ!どのみち車はもう動かねえんだ、おとなしく出てこい!」
僧侶(実践経験無いですけど……勇者さんごめんない、死ぬ気で突貫します)
山賊3「扉開けてやっとお出ましか」
山賊2「楽しもうぜ!なぁ!グフッ?」
山賊1「仕込み杖!?」
僧侶(しまった、浅い!)
山賊3「手の内すぐにバラしたなガキが!」
山賊2「ガ……グ!!」
僧侶「きゃっ!」
山賊1「捕まえちまえばこっちのもんだな」
山賊4「所詮女の力なんてこんなもんだ」
山賊4「車ン中漁れ、盗るもん盗ったらコイツ連れて帰るぞ」
山賊3「あいよ」
山賊2「ググ……が、ガ!?」
山賊1「まだ痛がってんのかよ……いい加減に……」
ザシュ
騎士「クソ共が居るな」
?少女「妙ちくりんな恰好をしておるのぅ。どこかの行き遅れた蛮族か?」
僧侶「!?」
山賊1「く、首を刎ねやがった!?」
騎士「女性一人に男が寄ってたかって見苦しいんだよ蛮族ども」
山賊4「クソっ、逃げるぞ!」
山賊3「へ、へい!邪魔だどけ!」
僧侶「きゃぁ!」
?少女「チームプレイを心得ておるな、被害が出たら即退散。人員が割けないのが理由だろうがいい引き際じゃ、だが……」
山賊1「てめぇのら顔覚えたからな!いつか報復してやる!!」
騎士「不良みたいな捨て台詞どうも。こっちはプロなんだ、そう容易くはやられるつもりはないぞ」
騎士「あと、お前らもう生きて帰れない……ってもう聞こえないか」
僧侶「あ、あの……」
騎士「あ、大丈夫か?怪我は?一発いい蹴り貰ったみたいだが」
僧侶「大丈夫ですこれでも回復魔法は心得てますから」
僧侶「助けていただき……ありがとうございます」
騎士「いいよ、性分だし」
騎士(震えてる……)
騎士「怖かった……よな?」
僧侶「……はい」
騎士「少し休んでいくといい、落ち着いたら家まで送ってくよ」
騎士「車は……ダメだなこりゃ」
僧侶(偶然のめぐり合わせ……神様、ご加護をありがとうございます)
僧侶「あ、ところで」
騎士「ん?」
僧侶「お連れの方はどちらへ?姿が見当たりませんが」
騎士「あー、火遊びでもしてるんじゃないか?」
騎士「いや、こんな森林でブレスはマズイか……人形遊び?」
僧侶(火遊び?人形?)