カンダダは 魔法使いを けとばし 勇者のまえに ころがした
勇者「魔法使い! 僧侶、回復を!」
僧侶「はい!」
僧侶は 魔法使いのきずを いやしはじめた!
勇者「……切り刻んでも足りないくらいだ、お前は」
勇者は つるぎを かまえた!
カンダダ「カッコイイねえ勇者様は」
カンダダは へらへらとわらっている!
盗賊「……おかあさん……おとうさん……どこ?」
勇者「盗賊……俺が、すぐ終わらせてやる」
勇者の こうげき!
カンダダに 194のダメージ!
カンダダ「げへっ」
勇者の こうげき!
カンダダに 215のダメージ!
勇者の こうげき!
カンダダに 261のダメージ!
カンダダ「げへへへへっ」
カンダダは へらへらと わらっている
勇者の こうげき!
カンダダに 372のダメージ!
勇者の こうげき!
カンダダに 401のダメージ!
カンダダ「いてぇなーいてぇなー」
勇者「なぜ、倒れない!」
カンダダ「魔物だから」
勇者「納得できるか!」
勇者の こうげき!
カンダダに 569のダメージ!
勇者の こうげき!
カンダダに 699のダメージ!
勇者の こうげき!
カンダダに 738のダメージ!
カンダダ「ぐっ……」
勇者「効いた!?」
勇者の こうげき!
カンダダに 977のダメージ!
カンダダ「がっは!」
勇者の こうげき!
カンダダに 1012のダメージ!
カンダダ「待て! ま、待ってくれ!」
勇者「あ?」
カンダダ「と、盗賊! 助けてくれ! お前の父さんが死にそうだ!」
勇者「な、なにを」
カンダダ「俺様は本当はお前を愛していたんだ!」
勇者の こうげき!
カンダダに 1070のダメージ!
盗賊「……?」
カンダダ「本当だ! お前は、花のように可愛かった! 何度も何度も、抱っこしたさ!」
勇者「もう喋るなよお前は!」
勇者の こうげき!
カンダダに 1200のダメージ!
盗賊「……」
勇者の こうげき!
カンダダに 1251のダメージ!
カンダダ「盗賊、頼む! 勇者とそこの女を殺してくれ! お前の“父さん”が死にそうなんだ! げへっ!」
勇者の こうげき!
カンダダに 1346のダメージ!
カンダダ「が……盗賊! た、助けてくれ! 盗賊!」
勇者「聞くなっ! 盗賊!」
勇者の こうげき!
カンダダに 1346のダメージ!
勇者「……盗賊?」
勇者が ふと ふりかえると
盗賊「あ……あああああ」
盗賊が てにしたナイフで 僧侶の せなかを つきさしていた
僧侶「――」
こえもなく 僧侶は くずれおちた
カンダダ「げへ、げへへへへげへへへへへへへへへへ!」
勇者「僧侶!」
カンダダ「やりやがったぜコイツ! さすがは俺の娘だあ!」
盗賊「あああああああああああああああああああああああああああ!」
盗賊は くるったようにさけび 勇者に きりかかった!
勇者「やめろっ! やめてくれっ!」
カンダダ「ぎゃはははははは! いけねえ、笑い方忘れちまった。もういいや、シメといこうか」
勇者「え?」
カンダダ「おう、我が娘よ」
盗賊「あああああ……あ?」
カンダダ「僕ちんはお前なんかのパパじゃないですよーだ! べろべろばーのおしりぺんぺーん! ペンダントはあとで美味しくいただきます!」
盗賊「あ……あああああああああああああああああああああああああああ!!」
盗賊は てにした ナイフを みずからのくびに つきさした!
勇者「――ッッッ!」
カンダダ「ぎゃはははははは!! 完全勝利だぜえ! これでお前の仲間はもう――」
勇者の こうげき!
カンダダに 8648のダメージ!
カンダダを やっつけた!
勇者「……ちくしょう! みんな!」
勇者は 仲間のもとへ かけよった!
勇者「今、回復を!」
僧侶「……だ、だめ……です」
勇者「僧侶?」
僧侶「この先には……魔王が。魔王が……いるんです。倒して……魔王……を」
勇者「僧侶!」
僧侶は しんでしまった!
勇者は はいごにある おおきなとびらを みた
勇者「魔王……」
魔王使いの なきがらが ある
勇者「魔法使い……」
盗賊の なきがらも
勇者「盗賊……」
勇者は ふっと いきをはいた
勇者「仲間が死んで平和になる世界なんて、俺はいらない!」
勇者は ザオラルのじゅもんを となえた!
しかし 僧侶は いきかえらなかった
勇者は ザオラルのじゅもんを となえた!
しかし 魔法使いは いきかえらなかった
勇者は ザオラルのじゅもんを となえた!
しかし 盗賊は いきかえらなかった
勇者「な、なんで」
勇者は ザオラルのじゅもんを となえた!
勇者は ザオラルのじゅもんを となえた!
勇者は ザオラルのじゅもんを となえた!
勇者は ザオラルのじゅもんを となえた!
勇者は ザオラルのじゅもんを となえた!
勇者は ザオラルのじゅもんを となえた!
しかし だれも いきかえらなかった
勇者「なんでだなんでだなんでだ!」
勇者は ザオラルのじゅもんを となえた!
しかし MPがたりない!
勇者は ザオラルのじゅもんを となえた!
しかし MPがたりない!
勇者は ザオラルのじゅもんを となえた!
しかし MPがたりない!
勇者は ザオラルのじゅもんを となえた!
しかし MPがたりない!
勇者「ちくしょう! ちくしょう!」
????「悔しいか、勇者よ」
勇者「え?」
勇者の はいごの とびらが ゆっくりと ひらいた
そして あらわれた
勇者「お前が……魔王か」
魔王、バラモス!
バラモス「蘇生呪文なんぞ、無駄だ」
勇者「なに?」
とつじょ バラモスのめが まばゆいひかりを はなった!
勇者「――ッ!」
魔王使いの からだは くだけちった!
僧侶の からだは くだけちった!
盗賊の からだは くだけちった!
勇者「……あ……あああ」
バラモス「人間とは、かくも弱き者。どうだ、お前も魔物にならぬか? お前が魔物になれば――」
勇者は こしをひくくおとし かまえたつるぎで まっすぐに バラモスを ついた!
勇者のつるぎは バラモスのノドを つらぬいた!
バラモス「が……あ……」
勇者は そのまま つるぎをねじり バラモスを まっぷたつに ひきさいた!
バラモスをやっつけた!
勇者「……あ」
勇者「……あああああ」
勇者「……………わああああああああああああああああああああああああ!!!!」
勇者は さけび あばれ バラモスのしろを めちゃくちゃに した!
こうして
いくつものぎせいをかさね
勇者の たびは
おわりをつげた――
【アリアハン】
村人A「勇者様だ! 勇者様が帰ってきたぞ!」
勇者「……」
村人B「英雄だ! 彼こそ、この世界の英雄だ!」
勇者「……」
母「ああ、おかえりなさい勇者。こんなにボロボロになって」
勇者「……城」
母「え?」
勇者「城に、行ってくる」
母「そうね、わかったわ。終わったらすぐに帰ってきなさいね」
勇者「……」
勇者は なにもいわずに しろにむかって あるきだした
母「……どうしたのかしら」
爺「無理もない。疲れておるのじゃろう」
母「そうね、何か美味しいものでも――」
勇者「……」
勇者の あゆみはおそく まるで しにんのような それ
【アリアハン城内】
王様「よくぞ、よくぞもどってきた! 勇者よ!」
大臣「勇者さまはこの国の英雄じゃ!」
王様「なんと、一人で魔王を倒したのか?」
勇者「……?」
王様「素晴らしい! そなたにはアリアハンに伝わるこの剣を与え――」
勇者は だまって 王様のかおに ひとふりのナイフを さしだした
王様「な、なんじゃこれは?」
勇者「俺の、仲間だ」
王様「仲間? まさか?」
勇者「……」
大臣「なんと……しかしこれからこの国は」
勇者「あ?」
勇者は こおりつくような つめたいめで 大臣を にらみつけた!
大臣「ひッ!」
勇者「それで終わりか? 俺の仲間に対して、それで、終わりか?」
王様「す、すまぬ勇者よ。そなたにはなんでも褒美を」
勇者「だったら仲間を生き返らせてくれ」
王様「遺体は?」
勇者「無い」
大臣「それでは……」
勇者「ちっ」
勇者は しろを たちさろうとした!
王様「待て! 勇者よ! 宴の準備が!」
勇者「そんなもん、いらない」
勇者は しろから たちさった!
王様「勇者よ、不甲斐なき王を許してくれ」
大臣「難しいものですな。勇者という生き物も」
王様「大臣!」
大臣「しかしですな! 政治というものは――」
王様「黙れと言うとるに! 衛兵にその首をはねさせるぞ!」
大臣「……失礼を」
王様「どうか、勇者の行く道に、悪意無き光が降り注ぎますよう――」
そして そのひ いらい 勇者は アリアハンのまちから すがたをけした
母「勇者ったら、まだかしら」
あさも ひるも よるも
母はずっと 勇者のかえりを まちつづけた
※
【とある村】
戦士「おらぁ!」
戦士の こうげき!
あらくれものを やっつけた!
戦士「ちくしょう次から次へと! この村には何も無いぞ!」
戦士は あれいらい むらを まもっている
戦士「勇者達はそろそろ、魔王城についたころかな?」
勇者たちの しょうりをねがう せんし
そんな せんしの はいごに かげ
勇者「……戦士」
戦士「ん、おお!? 終わったのか?」
勇者「……ああ」
戦士「そうか。よく頑張った。それで、他のみんなは?」
勇者「しんだ」
戦士「え?」
勇者「みんな、みんな、しんだ」
戦士「僧侶も、か?」
勇者「ああ」
戦士の こうげき!
勇者に 1のダメージ!
勇者「いたくないよ」
戦士「……ちくしょう」
戦士の こうげき!
勇者に 1のダメージ!
戦士の こうげき!
勇者に 1のダメージ!
戦士の こうげき!
勇者に 1のダメージ!
戦士の こうげき!
勇者に 1のダメージ!
勇者「もっとほんきでやってくれ。ころしてくれ、おれを」
戦士「――ッ!」
戦士の こうげき!
勇者に 175のダメージ!
戦士「ちくしょう、ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょうちくしょう!」
勇者も 戦士も ただただ なみだをながすばかり だった