魔王「夢と現実、お前の選択はどっちだ」 2/8

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鴉「快く死んで、向こうの現実でまたいつものように楽しい日々を過ごすのだ」

勇者「ふざけるな!」

勇者「あんなの幻に決まっている!」

勇者「ここが現実だ」

勇者「俺と魔王が結婚することが現実であるわけがない!」

勇者「しかも…こ、子供まで居るだと!」

鴉「なら、ここが現実というのか」

鴉「魔王に負け、人間ども滅亡を目前としているこの世界を現実と思うのなら」

鴉「それもまた一興だな」

カーカー

勇者「ほざけ!」

勇者「うっ…、また…眠くなって…」

勇者「くそ…早く、なんとか…しないと……」

勇者「!!」

勇者「…どんどんわけが分からなくなってくる」

勇者「…魔王?」

勇者「居ない。どこへ」

魔王「貴方様、お食事の準備が出来ています」

勇者「あ」

魔王「…申し訳ありません、急に居なくなってしまって」

魔王「ですが、そろそろ食事にしないといけないと思いまして…」

勇者「あ、いや、別に良いさ」

勇者「良いよ。一緒に食べよう」

魔王「はいっ」ハート

勇者「……」

魔王「…どうですか?」

勇者「うん?あ、美味しいよ」

勇者「(やっぱ、ここが現実だ)」

勇者「(こんな幸せな日々、しかも、妻と子が居る生活…)」

勇者「(否定することなんて出来ない)」

魔王「………」

勇者「ほんとに美味しいよ。魔王が作る料理はいつも美味しい」

魔王「…ほんと、ですよね?」

勇者「嘘ついてるような顔に見える?」

魔王「……」

魔王「いいえ」

魔王「美味しく食べて頂いて良かったです」ニッコリ

勇者「ふぅ…食った、食った」

魔王「ふふっ、片付けますね」

勇者「…幸せだな」

魔王「?…いつものことですよ?」

勇者「だからだよ」

勇者「勇者と魔王で、戦いあったお前と俺が…」

勇者「こうして二人で普通の生活をしている」

勇者「お前と一緒に居られる俺は、この余で一番幸せな人間だ」

魔王「……」

魔王「私も貴方様のものになれて幸せです」

ドンドンドン

勇者「?この音は」

魔王「外に誰か来ているみたいですね」

勇者「俺が行こう」

カー…

勇者「っ!」

魔王「大丈夫ですか!?」

勇者「あ、あぁ…」

魔王「私が行ってきますね」

勇者「うっ…あの鴉……」

勇者「…!」

勇者「またこっちか」

勇者「ダメだ。あっちではあっちが現実だと完全に思い込んでいる」

勇者「こっちでもそれは同じ」

勇者「どっちでも夢であるならどこかおかしな所があるはずだ」

勇者「向こうでは魔王を結婚してる。しかも魔王が俺の子を孕んでる」

勇者「こっちでは…俺が魔王に負けてる」

勇者「夢としては両端を走ってるな」

勇者「とにかく、どっちが現実でどっちが夢か確信するまで、どっちも時間を有効に使わなければならない」

勇者「最小限でも、明日の朝俺が処刑されるまでまだ時間がある」

勇者「それまでなんとか脱出しなければ…」

看守「飯だ!」

勇者「!」ネテルフリ

看守「ちっ、寝てるのか。こんな人間に俺たち魔族が手こずるとはな……」鍵ヲ開ケル

勇者「(今だ!)」

勇者「はあああっ!!」ユウシャパンチ

看守「うっ!」ガクッ

勇者「よし、他の連中が来る前に……」

勇者「看守を中に入れて外から鍵を閉めた」

勇者「しばらくは時間を稼げるだろう」

看守2「なっ!勇者が脱獄したぞ!」

勇者「っ!もうバレたか」

看守3「囲め!囲め!!」

勇者「武器も道具も無しで大勢を相手するわけにはいかない。逃げなければ…」

カー……カー……

勇者「なっ…!」

勇者「駄目だ!ここで寝ちまったらおしまいだ!」ニゲル

鴉「ほう、呪いの力に逆らうつもりか?その度胸は良いな」

カー

勇者「っ!!」

鴉「耳を塞ぐか。いい考えだな。効くかは別だが…」

勇者「黙れ!」

勇者「どこか時間を稼げるような場所が……」

勇者「あっちだ!取り敢えずあの部屋に入ろう」

ガチャ カー

勇者「な……何か門を塞ぐものを置いておかないと……」

カー

勇者「も、もう無理か」

勇者「せめて…鍵でも……」

勇者「はっ!」

魔王「貴方様!良かった…!」

勇者「魔王…?」

勇者「どうしたんだ?」

魔王「大変です。王国の騎士団が家を囲んでます」

勇者「…は?」

魔王「今は私の力で周りに結界を張っていますけど」

魔王「ここは人間のする世界」

魔王「私の力も半減されています」

魔王「教会の僧侶の部隊も来ていて、結界が破られるのも時間の問題です」

勇者「…な…ぜ」

魔王「はっきりは判りませんが…おおよそ検討はつきます」

勇者「何?」

魔王「あなたと私は、この世界で一番強い者たちです」

魔王「平和になったとは言え、私たちがその気になれば、この国を乗っ取ることは容易いこと」

魔王「人間の王はそれを恐れ、我々を殺そうとしているのでしょう」

勇者「馬鹿な…!!」

魔王「今日も貴方様がお城に言っていたら、途中で貴方様を暗殺しようとしたかも知れません」

魔王「そして、家に居る私も……」

勇者「……」カジッ

勇者「ここに居ろ」

魔王「貴方様」

勇者「寝室に行って、そこだけまた小さく結界を張っておいてくれ」

勇者「あと、念のために移動魔法の準備も」

魔王「…ここは人間の国です。しかも向こうは、私に対抗する術を全て準備しています。移動魔法も、時間稼ぎぐらいにしかならないでしょう」

魔王「せめて貴方様だけでも逃げてください。私さえ居なくなれば、流石に貴方様にまでは手を出してこないはずです」

魔王「王も勇者の名声を知っていますから、コレほどの軍を持ちかけて勇者を殺したとなると民たちの反乱が起きる可能性もあります」

魔王「私さえこの首を差し出せば……」

勇者「ふざけんな!!」

魔王「!!」

勇者「俺と戦っていた頃は違うんだ!」

勇者「魔族と人間と存亡を賭けて戦っていた時と違うんだよ!」

勇者「お前は魔王以前に俺の妻だ!」

勇者「俺の子を身ごもった母親だ!」

勇者「夫として、父としてそんな真似できるか」

勇者「国が何だ!俺がお前と戦ってる時に王は何も出来ず城に引きこもってやがった」

勇者「なのに今更俺とお前の力を恐れてこんな大軍を連れて俺に俺の妻の首を捧げろというのか?」

勇者「俺が屍になる前に俺の妻に指一本も触れられると思うな!」

魔王「…貴方様……」ジワッ

ガチャ<<扉を開く音

騎士長「………」

勇者「何の真似だ」

騎士長「王の命令だ。魔王を殺し、そして魔王を殺さずに人間の国に入らせ、人々を危地に追い込んだ勇者を捕縛せよとのことだ」

勇者「話にならねー」

勇者「お前ら俺がこんな軍勢で来ればはいそうですかと首差し出すと思ったのか?」

騎士長「そんなことはしらない。国の安寧のためだ」

勇者「王の安寧のための間違いだろ」

騎士長「王こそが国だ」

勇者「民こそが国だ」

ペチャッ

騎士長だったもの「」

勇者「そしてお前らはもう俺が守るべき民じゃねえ」

>>騎士長が一瞬で!

>>勇者ともあろう方が人を殺したぞ!

勇者「今からこの家に入り込もうとする奴らは憶えておけ!」

勇者「貴様らが自分たちが正義だと思うかはどうで良い」

勇者「だがな、かつてこの世のどの人間も恐れていた魔王」

勇者「そして、その魔王を倒した勇者がここに居る」

勇者「その二人に立ち向かう度胸がある者だけこの家に足を踏み入れろ」

勇者「後、王に首洗って待ってろって伝えろ」

ガチャッ

魔王「貴方様!」

勇者「連中をビビらせた」

勇者「しばらくは誰も近づけないだろう」

魔王「…貴方様」

勇者「気にするな」

勇者「俺は勇者以前にお前の夫だ」

勇者「家族を守るためなら、それがどんな外道だろうが歩き抜いて見せる」

魔王「……はい」

カー…カー…

勇者「っ…!こんな時に……」

勇者「!!」

??「あ、起きた」

勇者「なっ!」

勇者「誰だ、貴様は!」

??「それはこっちのセリフよ」

??「あんた誰?」

??「ここ、私の部屋なんだけど」

勇者「へ?」

勇者「(そういえば、さっきは眠気で周りを見る余裕なんてなかったけど)」

勇者「(ここ、誰かの部屋だったのか)」

勇者「(そして、目の前には魔族の女の子が一人)」

??「ちょっと、私を無視するつもり?」

勇者「え?」

??「あんたが誰か聞いてるじゃないの」

??「無礼な奴ね」

コンコン

勇者「!!」

??「何者?」

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