魔王「夢と現実、お前の選択はどっちだ」 5/8

1 2 3 4 5 6 7 8

勇者「くっ…!!」

勇者「…っ」王から剣を放した

王「くくくっ、そう来なくちゃな」

勇者「解毒剤を出せ」

王「……これだ。持っていけ。早くしないと魔王が死ぬぞ」

勇者「……魔王、大丈夫か。直ぐに解毒剤を」

魔王「…貴方様………罠です…」

勇者「え?」

魔王「私たちを殺すために使った毒です。解毒剤なんて用意したはずがありません」

王「今更気づいても遅い」

勇者「!!」

魔王「貴方様…!」

勇者「なっ!!」

グサッ

勇者「魔王!!!」

魔王「………ぁ」

王「ちっ、化物め。最後まで邪魔しやがって」

魔王「赤ちゃん……」

魔王「私と…貴方様の…赤ちゃんが……」

王「直ぐにお前も子の側に送ってやろう」

勇者「王、貴様ーーー!!!」

王「なっ、しまっ!!」

ペチャッ

王「」

勇者「魔王!!」

魔王「………ぅ」

勇者「……ぁ……ぁぁ」

勇者「魔王…」

勇者「俺のせいだ……俺が……俺がはっきりしていれば…」

魔王「…ぁ…貴方様…」

勇者「…ま…おう……」

魔王「……あ」

魔王「愛して…いました」

勇者「まおおおお!!!!」

勇者「………」

魔王「」

勇者「……」

魔王「」

勇者「……もう…未練は…ない」

勇者「…」グサッ

勇者「」

・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・・・

パーティーは全滅しました。▼

・・・・・・

・・・・・・

勇者「……」

勇者「(……生きてる)」

鴉「……守るべき相手に守られ、その守るべき者を失って」

鴉「だからこそその存在がアレほど否定しないで欲しいと言っていたその『現実』から逃げたか」

鴉「で、結局この世界を選んだ……」

鴉「正解だ」

鴉「しかしどうする」

鴉「牢屋にぶち込まれ」

鴉「体は魔王に負けてボロボロ」

鴉「この現実を覆すことはできるのか?」

鴉「……」

鴉「まあ、私が負けたんだ」

鴉「これぐらいの補償はしてやろう」

カーカー

看守「うっ、急に眠く……」バタン

鴉「牢屋周りのものを眠らせておいた」

鴉「傷ついた体も回復してやろう」ベホマ

勇者「…!」

鴉「さあ、もう一度魔王に挑むのだ」

鴉「今度は正々堂々と、お前の力で」

鴉「今のお前なら勝てるだろう」

鴉「お前の武器は看守長が居る部屋に保管されてある」

勇者「……お前は…」

鴉「それでは、負けた私は去るとしよう」

鴉「せいぜい頑張ることだな、勇者」

勇者「…分かった」

勇者「…分かったぞ、お前の正体が…」

鴉「…!」カー

鴉「……そんなはずがない」

勇者「失せろ」

勇者「次に会った時…丸焼きにしてやる」

鴉「……」

カーカー

勇者「……さて」

勇者「行くか」

勇者「守るべき者を守るために」

一方、魔王の部屋

魔娘「きゃっ!」

魔王「良くも…余の邪魔をしたな」

魔娘「…目を覚ましてよ、パパ」

魔娘「今のパパについていける魔物なんてほんのちょっとよ」

魔娘「ほとんどがパパのその凶悪な政治に喚いている」

魔娘「人間たちだけでなく、魔族まで滅ぼすつもりなの?」

魔王「黙れ!」

魔娘「痛い!」

魔王「最初からお前という奴が居たから余に逆らう連中が現れたのだ」

魔王「お前さえ居なければ、また余の世界になる」

魔娘「パパ…!」

勇者「その娘から離れろ!」

魔王「!!」

勇者「……」

魔娘「勇者!!」

勇者「…魔王、もう一勝負だ」

魔王「ちっ、どうやって牢屋から出たのかは知らんが」

魔王「貴様など余の相手ではない!!」メラゾーマ

勇者「…ふん!」切り裂く

魔王「なぬっ!」

勇者「守るべき者が居る勇者の力を……ナメるな」

勇者「その腕でどれだけの人間と魔族の血を浴びた」ズシャッ

勇者「その脚で、どれだけの街と畑を塵に変えた」ズシャッ

勇者「その心で、どれだけの人々の心を凍てつかせた」グサッ

魔王「ふぐぉ……ば、馬鹿な……こんな力が…どこから……」

勇者「お前の前には殺すべき相手、自分の欲望を満たすべきものしか見えなかっただろう」

勇者「お前に映ったその世界」

勇者「俺には全て守るべきものにしか見えない」

勇者「ソレがお前と俺に力の差だ」

魔王「……余が……」

魔王「これから…全て余のものになるというのに……」

魔王「ぅぁ…」

魔王「」

勇者「……虚しい奴め」

魔娘「勇者!」ダキッ

勇者「!」

魔娘「勇者!良かった!…良かった…」

勇者「…魔娘」

勇者「……あっちの魔王は死んだ」

魔娘「……そっか…」

魔娘「でも、これで…やっと言える」

魔娘「勇者、あんたのこと、暇で助けたって実は嘘よ」

魔娘「実は最初に見た時に…あなたを見て惚れてたの」

魔娘「今更こんなこと言ったら胡散臭いかもしれないけど、でも……」

勇者「もう言わなくて良い」

勇者「分かってるから……」ダキッ

魔娘「…勇者…」

魔娘「じゃあ、じゃあ、こ、これからどうしよう」

魔娘「パパ死んじゃったから…取り敢えず、勇者の、つまりに人間の勝ちだよね」

魔娘「これから魔王の後継者の権利を持って、魔族は人間に降伏します」

魔娘「そして、あの…良かったら」

勇者「魔娘」

魔娘「うん、何?」

勇者「……『夢』だよ」

魔娘「……え?」

勇者「……」

魔娘「ちょ、ちょっと待って!」

魔娘「なんで剣で自分の首を斬ろうとするの?」

勇者「痛みは一瞬だ」

魔娘「そういう問題じゃないよ!」

魔娘「なんで!どうして」

魔娘「向こうの夢で辛かったことは分かるよ」

魔娘「でも、これから幸せになれるよ」

魔娘「私と…私と一緒にいてよ」

勇者「……あの鴉は、最初から俺に選択強要した」

勇者「でも、実はあの鴉は夢の中でしか力を使えない」

勇者「つまり、『どっちも夢』だったんだよ」

魔娘「どうして…どうしてそんな事言うの?」

魔娘「どうして、私が『夢』だって言うの?」

魔娘「なんでさっきまではあんなに悩んでたのに、どうしてやっと選んだ後こんなにあっさりと」

勇者「なぜなら」

勇者「この夢が何かやっと分かったからだよ」

「でも…あなたに生きていて欲しい」

「この全ての幸せ…全部貴方様が居たから得られたのです」

勇者「お前のせいじゃない」

勇者「俺のせいだ」グサッ

・・・・・・

・・・・・・

・・・・・・

・・・・・・

・・・・・・

パーティーは全滅しました。▼

1 2 3 4 5 6 7 8