魔王「夢と現実、お前の選択はどっちだ」 8/8

1 2 3 4 5 6 7 8

勇者「俺が向いたら所々皮が残っちゃって食べる時に苦味するんだよ」

勇者「それに、ジャガイモは芯の方がもっと美味しいんだから」

魔王「…ジャガイモに芯とかあるの?」

勇者「あ、あるさ!」

勇者「ご馳走様でした!」

魔王「…ご馳走様」

勇者「さて…」

魔王「ま、待って」

勇者「?」

魔王「あ、あの…今回は私一人でやってみる」

勇者「……」

魔王「だ、大丈夫だから。貴方様は部屋で休んでて」

勇者「…そうだな」

勇者「じゃあ、そうしてもらおうか」

魔王「…うん、私、今日は三枚までに抑えてみる」

勇者「う、うん、その意気だな」

勇者「はぁ……」

勇者「……」スッ

勇者「ったく」

勇者「こんなん使えるか」

勇者「つか、まだ一度もやってないっての」

勇者「まだ体も弱いのに、無理にやらせて何が起こるか知ったこっちゃないし」

勇者「……はぁ…」

ガシャーン

勇者「まず一個目…」

勇者「はぁ……取り敢えず、どっかにしまっとこうか」

魔王「…貴方様」

勇者「!!」

勇者「ど、どうしたの?」

魔王「…お湯、沸かしといた。先に入って」

勇者「そ、そうか。じゃあ、先に入らせてもらおうかな」

魔王「……」

魔王「…貴方様、今ここになんか隠したね」

魔王「……これ…って…」

勇者「ふぅ……魔王、お風呂空いたぞ」

魔王「!…うん…背中流そうと思ったのに」

勇者「良いよ。また今度で」

魔王「…うん、じゃあ私も入ってくる」

勇者「ああ」

魔王「……」

勇者「さて、寝る準備するか」

魔王「……ふぅ。温かい」

勇者「風呂終わったか」

魔王「うん…あ、あのコレ…飲んで」

勇者「うん?なんだコレ」

魔王「ハーブティー…村長さんの奥さんに寝る前に飲むと良いってもらってた」

勇者「お、いつそんなものを…ありがとう」

勇者「……ん?」

魔王「!…ど、どうしたの?」

勇者「いや、ちょっとな…変な味だなぁって」

魔王「ちょ、ちょっと、入れすぎたかも知れない…ごめんなさい」

勇者「あやまんなくても良いって」ガブッ

魔王「……」

勇者「じゃあ、お休み」

魔王「…お休みなさい」

勇者(…アレ?)

勇者(眠れない)

勇者(というか、昼時よりなんか……え?)

ハァ……ハァ……

勇者「……魔王」

魔王「……はぁ……はぁ…」

勇者「お、おい、魔王、まさか…」

魔王「…あなた、様……」ヌギッ

勇者「ちょ、ちょっと待て、魔王」

魔王「……どうして?」

魔王「…私じゃやっぱり駄目?」

魔王「こんな貧相な体なんて、抱きたくない?」

勇者「そんなんじゃ…ないっ」

勇者「お前、もしかしたあの媚薬をお茶に…」

魔王「……うん」

勇者(マジかよ)

魔王「ね……貴方様」

勇者「ま、待て、魔王」

魔王「……駄目」

魔王「もう待てない」

魔王「私だって、夢の時みたいに、貴方様の赤ちゃん、欲しい」

勇者「魔王……」

魔王「だから……お願い、抱いて」

魔王「貴方様には会った時から迷惑ばかりかけた」

魔王「私の勝手な思いで幻覚見させて」

魔王「夢の中で私に永遠に付き合わせようとして」

魔王「なのにそんな私を許してくれたばかりか」

魔王「こうして現実の私を娶ってくれた」

魔王「貴方様が素敵な人で、私、こんなに沢山幸せになれた」

魔王「だから、貴方様にも私から何かしてあげたい」

魔王「だから、お願い…貴方様の子…身篭らせて」

勇者「…俺だって、お前が嫌いで抱かなかったわけじゃない」

勇者「むしろ出来るものなら今まで何度もお前のことを愛したかった」

勇者「でも、今のお前の体じゃ、子供を産むなんて到底ムリだ」

勇者「産む途中で死ぬかもしれないんだぞ」

魔王「………」

魔王「私…頑張るから」

勇者「……」

魔王「もう嫌なの」

魔王「弱くて、何も出来なくて、大切な人に何の力にもなれないなんてもう嫌なの」

勇者「…あ」

勇者「…そうか」

勇者「お前だって、できるものなら守りたかったんだよな」

勇者「家族のように親しかった魔族たちを……あんな風に失いたくなかっただろうな」

魔王「……」

魔王「……貴方様…お願い」

魔王「一度だけ、今回だけで良いから」

魔王「私の我侭……聞いて」

勇者「……分かった」

魔王「…」パァーッ

勇者「でも、これだけはわかっとけよ」

勇者「お前が飲ませた薬のせいで、俺は今正気じゃないんだ」

勇者「しかも、今までだってお前を抱きたくなかったわけじゃない」

勇者「……今までみたいに優しい俺だろうとは思うなよ」

魔王「……はい」

勇者「……ちゅっ…」

魔王「!!」

魔王「……あなた…さま……」

十ヶ月後

魔王「……ぅん……ああぁぁぁあ!!」

勇者「頑張れ!もうちょっとだから」

村長の奥さん「…このままだと産婦も子も危険だ」

魔王「…大丈夫…ですから……」

魔王「私……貴方様のために…頑張りますから」

勇者「……お前…」

魔王「貴方様…」

勇者「頑張れ、もうちょっとだから。もうちょっとだけ頑張って」

エーーオエーー!!

奥さん「出たわよ、お嫁さん、かわいいお姫様よ」

勇者「……頑張ったな」

魔王「…はい…貴方様…」

魔王「私…今とても幸せです」

勇者「ああ、俺もだ」

勇者「これからも、ずっと幸せに居よう」

魔王「…はい」

おわり

1 2 3 4 5 6 7 8