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魔王「夢と現実、お前の選択はどっちだ」 6/8

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鴉「カーカー」

勇者「……」メラ

鴉の丸焼き「」

勇者「……ここか」

勇者「魔王の玉座の間」

勇者「そこに居るんだろ、魔王」

勇者「いや、魔娘」

シーン

勇者「…出てこないならそれで良い」

勇者「俺が知っている限りで説明しよう」

勇者「最初から全部夢だったんだ」

勇者「魔王に負けた俺も、魔王と結婚した俺も」

勇者「もっとも」

勇者「俺がここに来た時はもう魔王なんて居なかった」

勇者「魔王は……」

魔王の玉座に残っている白骨「」

勇者「既に死んでいた」

勇者「勇者として選ばれてここまで来た俺が魔族の土地で見たのは」

勇者「魔族同士の戦いの末に死んでしまった魔族たちの姿だった」

勇者「人間同士でも良くあることだ」

勇者「あまりにも自分たちの欲望に充実していたせいで、自ら全てを葬ってしまうこと」

勇者「魔族だって、大したことなかったんだ」

勇者「魔族は自分たちの内分の末に、人間たちと戦いもする前に、自分たちで同士討ちしてしまったんだ」

勇者「夢の中でお前もそう言っていたな」

勇者「魔王の凶悪さは魔族さえも反感を覚えるようなものだったって」

勇者「それが原因かどうかは良く知らないけどね」

勇者「と、なにはともあれ俺は慌てた」

勇者「そんな時、お前を見つけたんだ、魔王の娘」

勇者「どうやってお前がここに居たのかは、多分夢の中でお前が話した通りなのだろう」

勇者「全てが消え去ったこの場所で独りだけ生き残ったお前が思った感情は」

勇者「寂しさだった」

勇者「お前は夢の中で何度も俺に言っていた。独りだけだって寂しいって…」

勇者「俺の妻としてのお前も、魔王の娘にしてのお前も俺に一緒に居て欲しいと言っていた」

勇者「お前はただ寂しかったし、それで俺が欲しかったんだ」

勇者「でも勇者の俺が魔族のお前を、しかもこんな惨状を見てただで話を聞いてあげるとは思えない」

勇者「だからお前は罠を仕掛けた」

勇者「この指定された場所にお前は幻覚魔法をかけ」

勇者「俺とお前に同時にその魔法をかけた」

勇者「そして俺がこの幻覚から逃げられないようにするため」

勇者「二つの夢を作ってどちらかは現実であることを俺に刻印させた」

勇者「一人は魔王の娘でずっと一人で居続けたお前」

勇者「一人は俺の妻としてのお前」

勇者「一つはお前の過去の姿」

勇者「一つはお前がなりたかった姿」

勇者「あまりの寂しさにお前は」

勇者「例えそれが夢の中だとしても」

勇者「どっちの夢でも」

勇者「俺と…誰かと幸せになる方を選んだんだ」

勇者「例え偽りの幸せでも、こんな所で一人で死んでいくよりはマシだと」

勇者「でも、お前の予定は外れた」

勇者「お前の魔法に鴉が一匹流れ込んだんだ」

勇者「慌てたお前は、臨機応変その鴉を二つの夢を渡りながら、俺の選択を誘うための道具に使った」

勇者「でも、両方の世界でのお前が同一人物でないことを俺が気付けないようにした一方」

勇者「突然現れた鴉にはそれが出来なかった」

勇者「だから俺と同じく、鴉もまた二つの世界を両方とも意識のあるまま渡っていたんだ」

勇者「そしてその鴉によって、お前は俺に自分の本当の気持ちを教えてしまったんだ」

「牢屋周りのものを眠らせておいた」

「傷ついた体も回復してやろう」

「さあ、もう一度魔王に挑むのだ」

勇者「無意識的にお前は、俺に助けを求めたんだ」

勇者「俺に、お前を守って欲しいと言ったんだ」

勇者「俺は勇者だ」

勇者「例え俺自身は地獄を味わっても」

勇者「絶望と痛みが体に染みこんでも」

勇者「諦めることなんて出来ない」

勇者「そこに守るべき者が居るなら」

勇者「例えそこがどこだろうと、誰だろうと、助けに行くのが勇者だ」

勇者「だから、俺はここに来た」

勇者「夢か現実かもはっきりとしないあの世界から」

勇者「『現実のお前』を守ってあげるためにここに来たんだ」

勇者「俺との『夢』は楽しかったか、魔王!」

勇者「さあ、選べ!」

勇者「俺はお前の質問に答えた。今度はお前が俺の質問に答える番だ」

勇者「夢と現実、お前の選択はどっちだ」

………

………

勇者「……」

勇者「……そうか」

勇者「…それが、お前の選択か」

勇者「分かった」

勇者「俺は戻る」

勇者「戻って王に魔王の死を、魔族の滅亡を報告しなければならない」

勇者「…胸糞悪いな。お前のせいで王殺しちまっただろ」

勇者「行って謝っとくか…訳は分からんだろうけど」

??「マ、マッテ」

勇者「!」

??「イ、イカナイデ…」

勇者「…やっと姿を表したか」

??「オネガイ…イッショニ…イテ」

魔王(あるいは魔娘)「独りは…もう嫌…」

勇者「…解っている」

勇者「こっちにおいで」

魔王「……」

スベッ

魔王「あっ!」

勇者「おっと」

勇者「大丈夫か」

魔王「……うん」カァァ

勇者「…夢で見た時よりかなり貧相だな」

魔王「うぅ……だって…『夢』だから」

魔王「……騙して、ごめんなさい」

勇者「良い…とばかりは言えないんだけどな」

勇者「今日俺は二度も地獄を見たんだから」

勇者「一緒に、ココ(現実)で幸せになるか」

魔王「…………うん」ジワッ

おわり

- エピローグ -

勇者「………」スー

魔王「……」

魔王「…あの」

魔王「…ご飯出来たよ」ユサユサ

勇者「……」

魔王「……あの」

魔王「起きないと…お目覚めのちゅーしちゃうよ」

勇者「……」

魔王「……あ」

魔王「あ、貴方様」

勇者「さて、そろそろ食べるか」

魔王「!」ビックリ

焦げた卵焼き

焦げた魚

焦げたサラダ

勇者「」

勇者「…いただきます」

魔王「せ、せめてなんか言って」

勇者「んじゃあどうすればサラダが焦げるかに付いて」

魔王「……ぁぅ」

勇者「ふっ」

勇者「食べようか」

魔王「…うん」♪

勇者「ごちそうさまでした」

魔王「な…」

勇者「ん?」

魔王「なんで全部食べたの?」

勇者「食べ物を粗末にする勇者がいるか」

魔王「こ、焦げたの食べちゃ駄目だよ。健康に悪い」

勇者「俺に健康が心配だったらお前が料理を焦がさないように料理頑張ることだな」

魔王「……ぁぅ」

勇者「片付けるのは俺がやるから」

魔王「わ、私が……あの、やっぱ良い」

勇者「?」

魔王「私がやると…また全部割っちゃうから」

勇者「……」

勇者「俺が食器洗うから、横で布で水拭いてくれるか?」

魔王「!」

魔王「……うん!」

勇者「(あの日、俺は魔王を連れて魔族の地を出た)はいっ」

魔王「うん」こちこち

勇者「(『現実』の魔王は『夢』の中のように綺麗な体を持ってることもなく、強い心持ったわけでもなく、ただ立ってるだけでも危なっかしい、そんな娘だった)はい」

魔王「うん」こちこち

勇者「(『夢』の中では、自分がなりたかった姿になれたけど、『現実』ではそう行かず、体も弱ければ、家事もそう器用じゃない)はい」

魔王「うん…」

スベッ

魔王「あ」

ガシャーン

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