女僧侶「勇者様にプロポーズされました」 2/8

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男「あは、あははは///」

幼馴染「えへへ///」

青年「……」ジャキン

父「落ち着け」

男「だああ!」キィン

青年「むっ」ギン!

男「てあ!」キン!

青年「ふむ」ガギン

青年(なかなか筋がいい。この1年で成長したな)

青年(しかし、まだ甘い。……それにだな)

幼馴染「男!頑張って~!」

青年「これは親として負けられんな!」ガギン!!

男「うあっ!」カキン!

キン……カタンッ

青年「ふっ」チャキ

男「くっそ~……」

幼馴染「!」タタタ

青年「やあ、幼。どうだ、パパの勇姿を見

幼馴染「男!!」

青年「」

幼馴染「だだ、大丈夫?」

男「へーき、へーき!こんなのいつものことだって…悔しいけど」

幼馴染「あんまり無茶しないでね」ウルウル

男「大げさなんだよ、お前はさ。泣き虫か」

幼馴染「うぅ……」ウルウル

男「おじさん!次は絶対に勝つからな!!」

青年「……ふっ」

青年「ああ。楽しみにしてるよ。……またな」

男「…?う、うん」

青年(……)

―――

――

兵士「では一週間後、お迎えに参ります」

青年「ああ。それと約束は忘れてないな」

兵士「はい。村の減税および食料支援、並びに周辺地域の警戒強化。すべて王より承っております」

兵士「こちらがその確約書です」

青年「うん…ありがとう。すまないね、我が儘を言わせてしまって」

青年「ああ。それと、例の剣は?」

兵士「こちらです」

兵士「隼の剣…どうぞ。お返しいたします」

青年「……うん」

青年「またこれを持つことになるなんてなあ」チャキ

兵士「全ての兵と民が待ち望んでいます。必ずや魔王討伐を成し遂げましょう」

青年「……ああ」

―――

――

幼馴染「……え?」

青年「聞いた通りだ。パパは一週間後、お城へ戻る。そしたら幼は男くんたちと住むんだ。父には話をしてあるから」

幼馴染「………嘘」

青年「突然ですまないね。けど、パパは決めたんだ」

幼馴染「そんな……そんなのっ!」

青年「だから……」

青年「……」

青年「男と、仲良くな」

~10年前~

幼馴染「……ん」

幼馴染「こんなものかな」

男「おーい、幼。まだ洗濯かかる?」

幼馴染「ううん。いま終わったとこだよ」

男「そっか。じゃあ行こうぜ。父さん待ってる」

幼馴染「うん」

幼馴染(もう……1年か。早いなあ)

男「っと、大事なこと忘れてた」

男「おじさんから手紙きてたぞ」

幼馴染「!本当!?」

男「ほらこれだ。読んだら来いよ?」

幼馴染「うん。ありがとう!」

男(嬉しそうな顔しちゃってまあ)タタタ

幼馴染「……」ドキドキ

幼馴染「……」パラッ

『やあ、幼!!元気かい?パパだよ。

10才の誕生日おめでとう!

ぼくはいま、とある火山の近くの街にいる。

心配はしなくていい。順調に魔物の討伐は進んでる。心強い兵士たちも一緒だしね。

なあに、かすり傷ひとつない。パパを誰だと思ってるのかな?はっはっは。

仮に死んでも化けて出るのがパパさ!

ああ、男くんは元気かい?仲良くやってる?

……いいかい。彼は素直でいい子だが、簡単に心を許したらいけないよ!!

少なくともパパが戻るまでは絶対にね!!!

そうそう、そう言えば…』

~9年前~

男「っと」サクッ

男「よっ」サクッ

男「ふぃ~」

幼馴染「畑、頑張ってるみたいだね」トテトテ

男「ん?うん。土の匂いって落ち着くしね」

幼馴染「ふふっ。でも少し休憩したほうがいいよ。さあ、お弁当たべよ。こっち来てね」

男「おう」

幼馴染「あ、下に敷くからそっち持って……うん、ありがとう」

男「おじさんは元気?また手紙きてたろ」

幼馴染「うん。……危ない地域に入るから、しばらく連絡とれないかもって」

男「そっか。まあおじさんなら大丈夫だろ……と」ポフッ

男「さ~て、腹へった。くおうぜ」

幼馴染「う……うん」

男「いっただきま~……」

男「……んあ?」

幼馴染「え?どどど、どうしたの?」

男「いや……なんか父さんの弁当にしては色が、こう……とりどり」

幼馴染「あはは?お、おじさん頑張ったんじゃないかな」

男「かな~。まあいいや、いただきまーす」

ぱくっ。

男「……」モグモグ

幼馴染「…………」ゴクリ

男「まずっ」

幼馴染「」

~9年前~

幼馴染(……お父さんから手紙がこなくなって、もう1年以上になる……)

幼馴染(お父さん。元気にしてるよね……?)

幼馴染「……はぁ」

男「どうした?ため息なんかついて」

幼馴染「あ……ううん。何でもない」

男「おじさんのことか?」

幼馴染「……うん」

男「心配するなって。あれだけ強かった人が、そんな簡単にどうにかなるかよ」

幼馴染「……うん」

男(まじ上の空じゃん。こりゃ重症だなあ)

男「……」

男(うん)

男「なあ、幼。遊びにいかないか?」

幼馴染「……」

幼馴染「ふぇっ?」

―――

――

男「つうわけで」

幼馴染「あわわわわ」

男「来たぜ地下水道!」

幼馴染「あ、遊びに行くっていったのに!」

男「え?遊びじゃん」

幼馴染(oh...男の子)

男「ほら、剣だってあるしな」キラッ

幼馴染「わたしは……?」

男「はいこれ。ひのきのぼう」

幼馴染「えっ」

男「っしゃー!いくぞおおおおお!!」ダダダダダ

幼馴染「あ、あっ!待ってよ~!!そんなに急いだら怪我するよ~!!」トテテテテ

男「……痛い……」

幼馴染「だから言ったのに……だから言ったのに」

男「ちょっ、怒るなよ。転んだだけだろ」

幼馴染「むうぅ。……ほら脱いで」

男「え///」

幼馴染「ちち、違うよ!?変な勘違いやめて///」

幼馴染「怪我したとこ見せてって言ってるの!」

男「んだよ、最初からそう言えよ」メクリ

幼馴染「……け、けっこう痛そうだね」

男「まあ地味に」

幼馴染「……すぐ治すよ」

幼馴染「一番やさしい魔法だから、安心して」……

男(あ……)

幼馴染「……」パァァ

男(傷が…)

幼馴染「……」パァァ

男(ふさがってく……)

幼馴染「……んっ。これでいいかな。痛くない?」

男「うん」

幼馴染「えへへ。よかった……ちょっと自信なかったんだ」

男「お前、治癒魔法なんて使えたのか…」

幼馴染「うん。お父さんに教えてもらってたの」

幼馴染「お父さん……剣だけじゃなくて、魔法も凄く勉強してた」

男「へぇ…」

幼馴染「男はお父さんから剣を教えてもらってたし」

幼馴染「私も……何か覚えないとって思って。でも、私は剣はわかんないし」

幼馴染「だから、魔法かなあ……って」

幼馴染「それに、治癒魔法なら何かあったとき治してあげられるし」

幼馴染「今みたいにね?」エヘヘ

男「……そっか」

幼馴染「うん」

男「ありがとな」

幼馴染「見直した?」

男「見直した見直した。割とマジで」

幼馴染「え……えへへ//」

幼馴染「……」

幼馴染「うん。役に立ってよかったよ。さあ、もう上に戻ろ?」

男「だな」

幼馴染「うん!」

~8年前~

その日は雨が降っていた。

幼馴染「……」

男「………」

幼馴染は、家の軒先でぼんやりと外を眺めている

幼馴染「……」

男はそっと彼女の横に座った。

幼馴染「…ねえ、男」

男「……」

幼馴染「……」

幼馴染「もしかしたら……って、覚悟はしてたつもりだったのに」

彼女が握りつぶしている手紙。そこには淡々と、こう綴ってあった

『討伐隊、破れる』

『青年、死す』

『――遺族へ』

幼馴染「……つらいよ」

彼女は、泣いていた。

そして噂は国中を駆け巡る

『剣聖、堕つ』

~7年前~

父「……教会に、入る?」

幼馴染「はい。城下町の教会に入って、僧侶になろうと思うんです」

男「なんで急に……」

幼馴染「急じゃないよ。…お父さんが死んだって聞かされたあの日から、ずっと考えてた」

幼馴染「いつまでも、おじさんたちに甘えるわけにはいかない」

幼馴染「自立しなきゃって思った」

幼馴染「私には治癒魔法があるし」

幼馴染「それなら教会かなって――」

父「幼」

幼馴染「は、はい」

父「俺はお前を預かったあの日から、ずっとお前のことを……

息子以上に可愛いがってきた」

男「えっ」

父「そんなお前のことだ。考えぬいた末の決断だろう…まだ若いのに大したものだよ。

息子とは大違いだ」

男「えっ」

幼馴染「はい。わかっています」

男「えっ……」

幼馴染「だから」

父「ダメだ」

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