魔王「世界の半分をお前にやろう」側近「全部ください」 2/9

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―――病院

側近「ここは……」

側近「ベッド……眠ってしまったのか私は」

魔法使い「あっ!」

側近「ん?お前は?」

魔法使い「よかった!」

ギュッ

側近「抱きつくな」

魔法使い「3日も目を覚まさないんだから!心配させないでよ!」

側近「3日……そうか。まぁ気が緩んだからな」

魔法使い「体調悪いなら悪いっていいなさいよ!ばっかじゃないの!」

ギュッ

側近「お前の怪我は?」

魔法使い「ん?もう治療終ったから大丈夫だけど」

側近「ならなんでまだここにいるんだ?」

魔法使い「はぁ!?」

側近「怪我が治ったなら病院などにいる必要ないだろう」

魔法使い「あんたをほうって行けるわけないでしょ!」

側近「そういうものか?」

魔法使い「そういうものなの!それにお礼……言ってなかったし……」

側近「礼?」

魔法使い「そうよ」

側近「困ってる人は助けるのが決まりではないのか?なぜ礼がいる」

魔法使い「そうだけど!あ、ありがと!」

側近「……」

魔法使い「どうしたのよ」

側近「いや、最近人から礼を言われたことなどなかったような気がしてな」

魔法使い「そうなの?」

側近「いや、自分では頑張っているつもりだったんだが……礼を言われるのは気分の悪いものではないな」

魔法使い「ふふっ、なにそれ」

側近「お前には関係ない話だったな。よし、もう行こう」

スタッ

魔法使い「え?行っちゃうの?」

側近「ああ、眠気もなくなった」

スタスタッ

魔法使い「どこ……行くの?」

側近「別に決めてはいないが、お前に教える必要はないだろう」

魔法使い「またそういうこと言う!袖触れあるも多少の縁って言うでしょ」

側近「人間のことわざか?」

魔法使い「私はね。王国に向かってるの。勇者が仲間を集めてるんだって」

側近「ほう!王国!勇者!?」

グイッ

魔法使い「何かいきなり話に食いついたわね……」

側近「王国とは人間達の中心都市か!?勇者とはあの伝説の勇者か!?」

魔法使い「そうよ。魔王討伐に向かうらしいの」

側近「ほう。しかし怖くはないのか?お前のような若い娘が……」

魔法使い「あんただって若いでしょ。怖いけど……あたしは人のために力を使いたい」

側近「そういうものか」

魔法使い「そういうものよ」

魔法使い「で……でさ。あんたも、その……一緒に戦わない?///」

側近「人間の国家か……面白そうだな……」

ブツブツ

魔法使い「聞いてる?」

側近「その国で働けるだろうか?」

魔法使い「え?」

―――王国

側近「ほほぅ……王国仕官募集試験か」

魔法使い「はぁ……あんたフラグ折り過ぎ……」

側近「お前から教えられたこと色々ためになったぞ。ありがとう!」

ガシッ

魔法使い「あー、はいはい」

側近「とりあえずこの試験を受けてみようと思う」

魔法使い「勇者様はまだ着いてないみたいだからあたしはしばらく酒場にいるわ」

側近「そうか。魔王は強いぞ。命を大事にな」

魔法使い「うん、あんたも気が向いたら来てよ」

側近「ああ」

魔法使い「あ……そういえば名前聞いてなかったけど……あたしは魔法使い、覚えておいて」

側近「私は側近だ。さらば」

バッ

―――王室

大臣「今年の仕官募集試験が終了しました」

王様「ふむ、して、結果は」

大臣「芳しくありませんね。どんぐりの背比べといったところで……」

王様「うーむ」

大臣「在り来たりの解答ばかりで……ん?一人いました」

王様「何!?」

大臣「な……これは……」

王様「どうした」

大臣「このような成績のものは今までいなかったんですが……」

王様「だからどうした」

大臣「満点です……しかも戦術に関するこの解答……新しい……」

王様「ほう、名は?」

大臣「側近という者です」

王様「側近?聞かん名だな」

大臣「今年初めて試験を受けたようですから」

王様「一度話をしてみたい。つれてまいれ」

大臣「はっ」

王様「お前が側近か」

側近「はい」

王様「試験の解答。見事であった」

側近「いえ、あの程度ではまだまだです。この国の戦術レベルはまだまだ低い」

王様「何!?」

側近「私にお任せくだされば兵錬を重ね、一流の部隊にしてごらんに入れます」

大臣「口が過ぎるぞ!側近!」

側近「失礼」

王様「ふふふふ……はーっはっは!余にそのような口を利く者は今までおらなんだ!」

大臣「王様?」

王様「いいではないか!はいはい言ってる者だけではつまらん!側近、軍師をやってみるか?」

側近「御意」

王様「ふふふ、だが、それだけでかい口を叩いたのだ。失敗した時は分かっておるな?」

側近「お任せください」

王様「くくくっ……はーっはっは!面白いやつだ!」

大臣「気に入らん……気に入らんな。あいつ」

兵士長「ほんとですよ。ちょっと頭がよかったからってなんですか、あの態度」

大臣「我々のレベルが低い?何様だ」

兵士長「まったくです。しめてやりますか」

大臣「いや……一応王様の命令もある、それはまずい」

兵士長「そうですか、くっそー。馬鹿にしやがって……」

大臣「だが、破滅させることはできるかもな」

兵士長「へ?」

大臣「あいつの赴任先の選定は私に任されている」

兵士長「おお!」

大臣「兵力も少なく、敵の攻撃の激しい大激戦区に送りつけてやろう!」

兵士長「失敗すれば……」

大臣「首が飛ぶ」

―――酒場

魔法使い「誰もいない……」

女主人「どこ見てんだい?結構客いるでしょ?」

魔法使い「いや、勇者と一緒に戦う人たちがいっぱい来てるかと思ってたから」

女主人「あー、そういえば随分前にお触れが出てたね」

魔法使い「今何人くらいいるの?」

女主人「あんただけ」

魔法使い「え!?」

女主人「命がけの仕事にそんなほいほい人が集まるわけないでしょ?」

魔法使い「そ、そうだけど……なんだかなぁ……」

女主人「あんたも帰る?」

魔法使い「帰らない。あたしは戦う」

女主人「あっそ。ご立派」

魔法使い「困ってる人は助けるものってあいつに言っちゃったし……」

―――兵錬場

側近「縦四方陣!」

ビー

「はっ!」

ザザザザッ

側近「右翼陣!展開!」

「はっ!」

ザザッ

大臣「ご苦労さん、側近」

側近「兵錬中です!お静かに!」

大臣「なっ……この……」

側近「何か?」

大臣「辞令だ」

側近「やめ!30分休憩だ!」

「はっ!」

ザッ

大臣「見事なものだ」

側近「まだまだです」

大臣「お前の行き先と部隊の編成だ」

サッ

側近「ふむ……」

ペラペラッ

側近「随分、兵が少ないですね」

大臣「不満か?出来んと言ってもいいのだぞ?」

側近「「いえ、十分です。では私の鍛えた兵達を連れて行きましょう」

大臣「失敗したら分かっているな?」

側近「期待していてください」

大臣「ぐぬぬ」

―――前線

軍曹「将軍!増援が来ました!」

将軍「やっと来たか!王国は俺達を見捨ててなかった!」

軍曹「そ、それはどうだか……」

将軍「どうした?」

軍曹「それが……」

側近「この度こちらに赴任する側近だ。よろしく」

将軍「なっ……こんな若造が……」

将軍「増援は!?」

側近「これだけです」

将軍「なっ……こんな人数で……見捨てられたか……」

側近「将軍がそんなことを言ってはいけない!士気にかかわる」

将軍「何を!?大軍を相手にこんな砦一つでいつまでも持ちこたえられるわけがないだろう!」

側近「そのために私が来たのだ」

将軍「この人数で何を……」

側近「窮鼠猫を噛むというところを見せてやりましょう」

将軍「背水の陣でもしくきか」

側近「それも一つの手だな」

軍曹「そんな!死ぬより逃げましょうよ!」

側近「敵前逃亡は死刑だ」

軍曹「ひっ!」

将軍「逃げて臆病者の謗りを受けるよりは、戦って名を残すか……」

側近「無謀と勇気を履き誓えてはいけない」

―――前線魔王軍

魔将軍「動かないな」

魔兵「そりゃそうでしょう。出てきたら負けるのは分かってますからね」

魔将軍「油断するな。追い詰めた相手は何をするか分からん。増援が砦に入ったという情報もある」

魔兵「そんな大軍入った様子はありませんよ。はったりですよ、はったり」

魔将軍「まぁ、そうだろうな。だが、側近殿はいつも言っておられた。油断が一番の敵だと」

魔兵「ですけどねぇ、もう逆転のしようがないでしょう」

魔兵「ん?」

ザザザッ

魔兵「で、出てきた!?」

魔将軍「どういうつもりだ!?まさか!」

ドドドドッ

魔兵「向かってきた!」

魔将軍「特攻か!馬鹿め!こちらも行くぞ!」

将軍「来た!右翼に回り込め!」

ザザザッ

軍曹「あーもう!どうにでもなーれ!」

魔将軍「さすがに正面衝突は避けたか。だが……砦への逃げ道を放棄するとは、本当に捨て身か!?」

魔兵「いけいけ!」

ドドドッ

将軍「敵に背面を見せるな!回り込むのだ!」

ザザザッ

魔将軍「これは……なんだ?戦う気がない?逃げるのか!?」

魔兵「じゃあ砦落としちゃいましょうよ!」

魔将軍「待て!敵の狙いが……」

ドドドドッ

将軍「射てい!」

ヒュンヒュンッ

魔将軍「弓!?何を考えている」

ドドドッ

バターン

側近「今だ!」

「はっ!」

ザザザッ

魔将軍「なっ!?やはり増援がいたのか!?」

側近「甘いな。マニュアル通りの戦い方しか出来ていない」

側近「敵の陣形が伸びきったぞ!薄いところから叩いていけ!」

「はっ!」

ドガガガガッ

魔将軍「なっ……なんだ、この戦い方は……人間にこんな戦い方ができるわけが……」

ズバッ

魔兵「ぐはっ!」

魔将軍「なぜだ……なぜだあああああああ!」

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