魔王「世界の半分をお前にやろう」側近「全部ください」 6/9

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―――魔王城

勇者「意外とすんなり来れたな」

僧侶「魔王城……敵がいっぱい……死んじゃう……逃げる……捕まる……殺してでも逃げろ」

魔法使い「物騒な事言わないの!」

ペシッ

僧侶「痛いです」

側近「すんなりどころか人の気配がない……これは……」

風の将魔「よう……側近殿……」

勇者「敵!?」

風「消えっちまう前にあえてよかったぜ」

ブスブスッ

側近「風……お前……」

風「ちっと熱くなりすぎてヘマこいちまった……まぁしゃーねーわな」

風「その様子じゃ人間に捕まったわけじゃねーみてーだな。安心したぜ」

側近「まぁな」

風「人間従えて乗り込んでくるたぁ流石側近殿だぜ」

側近「何があったんだ」

風「中にはもう誰もいないぜ?魔王様以外はな」

側近「……」

風「さすがにみんな愛想を尽かして逃げた。当然っちゃ当然だな」

側近「ならばなぜお前はここに……」

風「けっ……あんなんでも魔王様だからな」

風「それに言ってただろ?側近殿。上が間違ったら命を賭してでも正せってな」

側近「なっ……」

風「俺じゃあ力が及ばなかったからよ。任せていいよな」

側近「ああ」

風「糞ったれな人生だったけどよ、側近殿のおかげでなかなか味があったぜ……」

側近「そうか」

風「あばよ」

ヒュー

側近「……」

魔法使い「話は終った?」

側近「ああ」

魔法使い「泣いてるの?」

側近「私にはもったいない部下だった……」

魔法使い「慕われてたのね」

側近「違う、職務に忠実だっただけだ」

魔法使い「負けられないね」

側近「ああ」

勇者「おい、早く行くぞ!」

僧侶「敵はいない……魔王はいる……強い……逃げる……捕まる……殺してでも逃げろ」

勇者「おい」

チョップ

―――魔王の間

勇者「こ、ここか……なんか緊張してきた」

ギュッ

僧侶「離してくださいー!怖いです」

勇者「絶対お前を離さねぇ!」

僧侶「うわぁ……なんか勇者様に言われると引きます……」

勇者「俺泣いてもいい?」

魔法使い「馬鹿な事言ってないでいくわよ。準備はいい?」

側近「ああ。魔王様は強い。油断するなよ」

魔法使い「わかった」

ギュッ

側近「おい、私は逃げたりしないぞ」

魔法使い「お願い……」

ブルブルッ

側近「……」

魔王「ううっ……みんな嫌いだ……」

魔王「なぁ、スラリン」

スライム「ピキー?」

ギギィ

魔王「誰か来た!?」

ガタッ

側近「……」

魔王「側近!側近!側近だ!」

ダダダッ

魔王「ま、まったくどこにいっていたのだ!ふ、ふんっ!謝ったって許してやらんぞ」

プイッ

勇者「お前が魔王か……って女!?」

僧侶「あら可愛い」

勇者「だが……この魔力……」

ゴゴゴゴゴゴッ

魔王「なんだ?こいつらは……」

魔法使い「……」

ギュッ

側近「魔王様……」

魔王「なんだ、その女は!なんで人間と手なんて繋いでいる!」

側近「残念です。魔王様。すべて私の不徳の致すところ……」

魔王「答えないか!」

ドガッ

スライム「ピキキー」

ピョンピョンッ

側近「部下に教えられました。私は魔王様から逃げただけだったらしい」

魔王「何をいっている」

側近「命を懸けてでも教えて差し上げるべきでした」

魔王「だから何を!」

側近「王たるものがなんたるかを!」

魔王「なっ……」

側近「魔王様……お仕置きの時間です」

ザッ

魔王「ま、待って」

側近「なんです?」

魔王「わ、私の物になれ!そうすれば世界の半分をお前にやろう!」

側近「?」

魔王「お、お願い……」

側近「何を言ってるのかわかりませんね」

勇者「うわあ……」

僧侶「ちょっとかわいそうかも……」

魔法使い「……」

ゴゴゴゴゴゴッ

魔王「だ、だったら……」

ゴゴゴゴゴゴッ

魔王「だったらいらないよ!!世界もなにもかも!」

側近「離れて!固まってると一気にやられますよ!」

ババッ

勇者「ちっ……なんて魔力だよ」

僧侶「にげ……うわっ」

グイッ

勇者「一緒に来い」

魔法使い「まったく……ただの子供ね」

ダッ

魔王「爆裂呪文!!」

側近「伏せろ!」

ドゴオオオオオオオオオン!

勇者「いつつ……」

魔法使い「伏せなかったら危なかったわね」

勇者「ほれっ、さっさと回復を……」

僧侶「///」

勇者「おい、こらっ」

僧侶「ど、どこ掴んでるんですか///」

勇者「そりゃお前が逃げるから……」

ムニュムニュ

勇者「あ」

僧侶「は、離して……」

側近「次が来るぞ!」

勇者「早く回復!」

モミモミ

僧侶「わ、分かりましたよ!回復呪文!(主に私を中心に)」

パァァ

勇者「おいこら」

僧侶「なんですか!痴漢盾!」

勇者「ぐぬぬ……」

側近「魔法使い!氷結呪文を!」

ゴゴゴゴゴッ

魔王「火炎魔法!」

ゴゴゥ!

魔法使い「氷結呪文!」

ジュワッ

魔王「なっ……」

魔法使い「なんで分かるの!?」

側近「手に動き、魔力の流れ、そして感……でな」

勇者「すげぇ」

モミッ

僧侶「もう……離してー」

魔王「うー!もう!うるさいうるさい!」

ダンッ

魔法使い「側近に狙いが!」

僧侶「勇者様!バリアーの出番ですよ」

勇者「うっさい!まにあわねーよ!」

側近「おっと!」

タタタッ

魔王「逃げるなー!」

側近「あ!逃げました!ずるい!私には逃げるなって言ったくせにー!」

僧侶「あ!逃げました!ずるい!私には逃げるなって言ったくせにー!」

側近「勇者!」

ダダダッ

魔王「待て!」

ダダダッ

勇者「後ろががら空きだ!魔王!」

ズバッ

魔王「にゃあっ!」

バタッ

魔王「……痛い」

側近「戦いのいろはも教えたはずなのに情けない。一人の敵しか見えないとは」

魔王「痛い……痛いよう……」

魔王「側近にもぶたれたことないのに!」

ガバッ

勇者「うわっ来た!」

ギィン

魔王「このこのこのおおおおお!」

ガンガンガンッ

勇者「わっ……たっ……つよっ……」

ギンギィン

僧侶「こ、この隙に……」

コソコソ

魔王「そこ!」

僧侶「!?」

グサッ

僧侶「あ……死にしました。これ完全に死にましたね」

僧侶「ああ……思えば神父様にいい話があると言われたときに疑うべきでした」

僧侶「噛み付いてでもあの時逃げてればこんなことには……」

僧侶「オシャレしてイケメンと結婚して主婦ニートになりたかったです……」

僧侶「神様……次に生まれ変わったら……セレブに……」

僧侶「……」

僧侶「痛くない……?」

勇者「ぐぬぬ……」

ボタボタッ

勇者「馬鹿……早く逃げろ……」

僧侶「勇者様!?」

勇者「はやく……しろ」

ボタボタッ

僧侶「逃げていいんですね!ほんとにいいんですね!きゃっほー!あ、きゃっほーなんて言っちゃいました」

僧侶「恥ずかしいです。それでは失礼して……」

こんな鬼畜な僧侶初めて見たww

グイッ

ズルル

勇者「なっ……」

僧侶「回復魔法!」

パァァ

勇者「治った……。逃げるんじゃなかったのかよ」

僧侶「ここで逃げたら悪役じゃないですか」

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