魔王「世界の半分をお前にやろう」側近「全部ください」 8/9

123456789

―――魔界

勇者「ここか?」

水の将魔「人間!?」

土の将魔「人間っすよ!てめぇらなんのようっすか!」

勇者「いや、あの……ほらっ、これっ」

フリフリッ

僧侶「白旗!これ白旗ですよ!負けの合図です!攻撃しちゃだめな合図です!逃げていい合図ですよ!」

水「白旗?人間が降伏するとでも?」

魔法使い「話をしにきたの」

土「ですよねー。魔界は今人間のほうが優勢っすもんねー」

水「白旗を揚げるなら武器を捨てなさい」

勇者「うっ……」

水「話し合いはそれからです」

勇者「わあったよ」

魔法使い「はいはい」

カシャン

僧侶「えっえっ!?武器手放したら誰が私を守ってくれるんですか!?」

ブルブル

僧侶「怖い……怖い……帰りたい……」

土「こっちのお嬢ちゃんなんなんすか?」

僧侶「私にはまだ勇者バリアーがあります……」

ギュッ

勇者「こいつは……」

水「それでどうしてここが分かりました?」

魔法使い「ここって?」

土「魔王軍の臨時本部っすよ。もしもの時はここで落ち合うっす」

水「あ、こらっ、軍の秘密ですよ!」

土「あっ、しまったっす。てへっ」

ペロッ

水「可愛くないですよ」

魔法使い「……というわけなのよ」

水「そうですか……炎と風は逝きましたか」

土「うおおおおおおおん!寂しいっすよーー!」

水「そして魔王様と側近殿が捕まっているとは……」

土「でも側近殿のマニュアルだと……」

水「ええ、見捨てないといけないですね」

勇者「なんだよそれ!」

僧侶「酷い……」

魔法使い「で、見捨てる気!?」

土「……」

水「……」

土「魔王様はどうでもいいっすけど、側近殿は……なぁ」

水「魔王様は死んでくれていいですけど、側近殿は必要な方ですね」

魔王の立場って…

勇者「魔王……お前って……」

僧侶「あ……なんか泣けてきました」

ホロリッ

魔法使い「じゃあ……」

土「よっしゃ!いっちょ魔王軍を再召集するっすよ!」

水「ええ!側近殿を助けるためなら皆が力を助けてくれるでしょう!」

土「ぎゃは!それじゃ側近軍っすねー」

水「側近殿にしごかれた兵の指揮……今こそ見せる時です!」

土「あいあいさー!」

勇者「なんか俺達部外者っぽくね?」

魔法使い「言わないで……泣けてくるから」

―――王国

大臣「王様!国境に魔王軍の残党が集結しつつあると情報が」

王様「来たか。意外と早かったな」

大臣「どどどどどどうします?」

アワアワ

王様「慌てるな。みっともない。どれ、私が行こう」

大臣「え?」

王様「ふふふっ、自分達の王がこちらの手のうちにあると知った時……どのような顔をするのか楽しみだ」

大臣「え?え?」

王様「兵を招集せよ!親征だ!」

―――国境

水「来ましたか!人間の王よ!」

王様「ふん、魔物風情が開戦の挨拶とは笑わせる」

土「風情ってなんすか!風情って!」

王様「人間の言葉を話すな。不愉快だ」

水「私は水の将魔。あなたの命、貰い受ける!」

王様「くくっ、魔王はどうした」

「!?」

王様「はーっはっは。魔王は我々の手にある!降伏しろ」

「魔王様?」

「あー、あのわがまま大王か」

「あいつ嫌いー」

「どうでもよくね?」

王様「ど、どうした!?お前たちの王が我が手にあるのだぞ!」

魔王蔑ろとかwww

水「お好きにどうぞ?」

王様「な、なにを……はったりか!?」

水「行きますよ!」

王様「側近とかいうやつも捕らえておるのだぞ!!」

「!!!」

ザワザワッ

王様「どうだ、分かったか」

「側近殿!人間に捕まっていたのか!」

「側近様……」

「俺子供のころ頑張れってアメちゃんもらったことあるぞ」

「俺、側近殿に名前をつけてもらったんだ」

「俺のじいちゃんも名前もらったっていってた!」

「あの野郎……私の側近殿を……」

ザッザッ

王様「な、なんだ!?」

水「側近殿を取り返しますよ!!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

ドドドドドドッ

王様「くっ……援軍を呼べ!」

―――牢獄

魔王「この浮気物!朴念仁!」

ボコボコッ

側近「ああ……せめて断頭台で死にたかった……」

ザワザワ

魔王「ん?騒がしいな」

側近「助かった!?」

「なんだお前たちは!なにをすくぁwせdrftgyふじこlp」

バタッ

勇者「よう!大丈夫……そうじゃないな?なんだその顔は」

魔法使い「酷い……拷問されたの!?」

僧侶「顔パンパンです」

魔王「お前たちは!?」

側近「お前たち……警備のやつらはどうしたんだ?」

勇者「みんな戦争に借り出されてるよ」

側近「戦争……そうか。はじまったのか」

勇者「で、そっちに気がいってるうちにお前を助けてくれって頼まれてさ」

側近「将魔たちが……くぅ……馬鹿め……」

魔王「私には何か言ってたか?」

勇者「死ねって」

魔王「……」

魔法使い「それにしても酷い顔……大丈夫」

スッ

側近「いつっ」

魔王「そ、そうなんだ。まったく酷い拷問だったなぁ……」

側近「ですね……」

魔法使い「僧侶、回復してあげて」

僧侶「はい、回復魔法(主に私を中心に)」

パァァ

勇者「またそれか」

側近「治った」

魔法使い「あれで周りも直しちゃうのはすごいわね」

魔王「だが、大丈夫なのか?残りの魔王軍は……」

魔法使い「ええ、たぶん王国軍の半分以下じゃないかな」

勇者「しかも、王国軍は側近の最新の戦術を組み入れてんだろ?」

僧侶「も、もしかして魔王軍が負けたら私達お尋ね者ですか?」

勇者「だな」

僧侶「えっと……じゃあ……」

チラッ

魔王「こっちみんな」

魔法使い「今さら魔王を倒しても仕方ないでしょ」

側近「魔王軍が負ける?どうだか」

魔法使い「え?」

側近「土と水は頭脳派だ」

勇者「はぁ?あのチャラ男も?」

側近「見た目に惑わされるな。炎や風は力で将魔になったが、あの二人は私並に弱いぞ」

エヘンッ

勇者「威張るな。そういえばお前戦闘一回も戦ってなかったよな」

側近「今さら気づいたか。馬鹿め」

勇者「口も悪くなってるし!」

魔法使い「でもマニュアル通りにしか戦わないんでしょ?」

側近「それはどうかな?それに……」

魔法使い「それに?」

側近「土と水は相性がいい」

―――国境

王様「右翼に回りこめ!」

「し、しかし敵の展開が早く……」

王様「言い訳するな!ならばこちらもその分早く動けばいい!」

「はっ!」

王様「なぜだ!敵の数が減らん!」

「後ろから伏兵です!!」

王様「何!?そんな馬鹿な!」

「右からも!」

王様「ええい!守りを固めろ!」

土「相手さん、いらついてるっすねー」

水「陣形に魔法が組み込まれてるなんて思ってもみないでしょうね」

土「ぎゃは!また幻影追いかけてるっすよー」

土「俺の土魔法と」

水「私の水魔法で」

水「よし!囲みますよ!」

「うおおおおおおおおおおおおおお!」

ドドドドドッ

土「勝った!勝ったっすよ!白旗揚げてるっす!」

水「うぐっ……はぁはぁ……」

ボタボタッ

土「ちょっ!大丈夫っすか!水さん!」

水「不覚を取りました……」

土「ほらっ、敵が王様突き出してきましたよ。もうすぐっす!」

ズルズルッ

王様「何をする貴様らー!」

ジタバタ

水「……」

土「ほらっ!俺達が側近殿をすくったんすよ!ねぇ水さん!」

チャプンッ

王様「は、はは……馬鹿が、人間に逆らうからだ!」

土「水……さん……」

王様「はははは……」

土「ふんぬううううううう!」

ズバッ

王様「……」

コロコロ

土「うるさいっす……うるさいっすよ……」

大臣「ひぃいいい!」

ザッ

側近「土……お前だけか」

勇者「すっげー。マジで勝った」

僧侶「はぁ……生きているこの幸せ、かみ締めたいです」

魔法使い「これって……」

側近「水は……逝ったのだな」

土「側近殿おおおおおおおおお!」

ガバッ

土「水さんのこと褒めてやってくれっす!側近殿!」

ボタボタッ

側近「ああ、よくやった。私を超えたな。いや、ずっと前から超えていたのかもな」

土「ううっ、どうしたっすか、側近殿、そんな優しいことばらしくねーっす」

側近「そうか?」

土「でも、ありがとうっす……」

ギュッ

魔王「あ、あのぅ……」

123456789