―――前線
将軍「か、勝った!?」
側近「……」
将軍「おい、何をそんなにフードを目深にかぶっている」
側近「余り敵に顔を見られたくないもので」
将軍「ふっ、すごいのか臆病なのか分からないやつだな」
側近「これで私は魔族の敵か……」
将軍「何か言ったか?」
側近「いえ、何も。クビにならない限り任務は遂行する」
将軍「?」
軍曹「すっげー。私は信じてましたよ!王国が私達を見捨ててないってね!」
将軍「どうにでもなれとか言ってなかったか?」
軍曹「え?なに?聞こえませんー」
―――魔王城作戦室
土「やばいっすよー。何か前線がどんどん後退してるっす」
炎「ああ、分かっている」
風「くそー。側近殿がいないと俺達じゃこうなのかよ!くそっ!くそっ!」
ドガッ
水「イラついても仕方ありません。これからどうするかです」
炎「そうだな。側近殿のマニュアルを変えるか……」
風「何言ってんだよ!その通りだからこの程度で済んでんだぞ!わかってんのか?」
炎「だが……」
魔王「ねぇ、何やってるんだ?」
水「側近殿のマニュアルだけでは全てに対応できないのも事実です」
土「そっすよねー」
炎「運用は柔軟に対応していかなくてはな。前線の後退の報告から、人間は知恵をつけてきたと見るべきだ」
魔王「ねぇ、暇なんだけど」
風「やっぱ側近殿を探そうぜ!俺達でさ!」
魔王「ねぇねぇ」
炎「捜索はさせてみよう。だが、期待するなよ。側近殿は一度言ったことを違えたことはない」
風「わぁってるよ」
水「我々は試されてるのかもしれませんね。側近殿なしでやっていけるのか」
土「腕力ない分、頭はよかったっすからねー」
風「てめぇ……側近殿ディスってんのか!?あぁ!」
土「ち、違うっすよ」
魔王「暇だって言ってるでしょ!!」
ドガンッ
パラパラッ……
土ああ……会議机が……」
風「会議邪魔すんじゃねーよ!」
魔王「むっ……」
メラ……
炎「ちょっ!魔王様!暇ならすごいもの差し上げますから!今日のところはお帰りください!」
魔王「すごいもの?」
炎「ええ、すっごいいいものです」
魔王「分かった。待ってる……」
スタスタッ
炎「ふぅ……風が私より熱くなってどうするんだ」
風「わりぃ……」
水「あんな約束しちゃっていいんですか?」
炎「魔王様が我々の邪魔をしにくることなど側近殿はお見通しだった」
水「なんと」
炎「ちゃんと対策は書いてあった。任せておけ」
風「さすが側近殿……」
土「じゃ、会議再開するっす」
―――王国
王様「側近は期待通りの活躍をしているようだな」
大臣「え、ええ」
王様「どうした?顔色が悪いぞ」
大臣「いえ、何でもありません」
王様「ふふふっ、お前が側近の態度の腹いせに最前線に送り込んだことなど分かったおる」
大臣「なっ……」
王様「側近の鍛えた軍は強い。認めてもいいのではないか?」
大臣「くっ……そ、そうですね」
王様「しばらくしたら王国に戻ってくるらしい。その時に謝っておけ」
大臣「は?」
王様「仲良くしておけ。今度はお前の首が飛ばされるかもしれんぞ?」
大臣「わ、分かりました」
ギリッ
大臣「くそー!これでは私の立場がないではないか」
ドンドンッ
兵士長「大臣、壁ドンやめてください」
大臣「うるさい!」
ドンッ
ガチャ
姫「うるさい!」
大臣「ごめんなさい」
姫「ふんっ」
バタンッ
大臣「はぁ……どうしよ」
兵士長「誤って仲良くすればいいんじゃないですか?」
大臣「だが……ん?そうだ!」
兵士長「?」
大臣「勇者が国についたらしい。あの魔王を討伐に向かうということだ」
兵士長「それが何か?」
大臣「参謀としてあいつをそこにくっつけてやろう」
兵士「なっ……ですが軍事関係は……」
大臣「それはあいつから兵錬を受けた士官達がしっかりやっている。問題ない」
兵士「なるほど」
大臣「魔王は神を超える強さと聞く。生きては帰れまい」
―――魔王城
魔王「まだかなー。暇だなー」
ブラブラッ
ガチャッ
炎「お待たせしました」
魔王「待っていたぞ!何を持ってきたのだ!」
ガタッ
炎「こちらでございます」
スライム「ピー」
プルプルッ
魔王「お……おお……」
炎「暇つぶしに……」
魔王「よし!お前の名前はスラリンだ!」
スライム「ピキー!」
ピョンピョンッ
魔王「よし!ご飯を食べに行くぞー!」
スライム「ピーピー!」
ダダダッ
炎「さすが側近殿の作戦……」
―――王国
側近「勇者と一緒に魔王を倒す?」
王様「ああ、頼めるか?」」
側近「アレを倒しても魔界に何の影響もないと思いますが……」
王様「何か言ったか?」
側近「いえ、何も……」
王様「お前のおかげで我が軍も精鋭揃いとなった」
王様「お前の教えた士官達もよくやってくれている」
側近「それは何より」
王様「だが、長引く戦いを終らせるには敵の大将をたたくしかない」
側近「それは命令ですか?」
王様「ああ、そうだ」
側近「御意」
ザッ
―――酒場
勇者「ここか」
ガシャ
女主人「いらっしゃーい」
勇者「あ、あの、勇者だけど」
女主人「へ?あんたが?ガキじゃん」
勇者「ガキじゃねーよ!」
女主人「あーはいはい」
勇者「ここに仲間が集まるって聞いてきたんだけど」
女主人「んー、あそこの子だけ」
勇者「え?」
女主人「ま、頑張って」
勇者「あのー」
魔法使い「ん?」
勇者「勇者だけど……」
魔法使い「は?」
勇者「いや、だから俺勇者ですけど」
魔法使い「遅い!!」
ダンッ
勇者「へ!?」
魔法使い「いったいいつまで待たせんのよ!遅すぎてもうここの常連よ!あたしは!」
勇者「いやぁ……村からここまで遠くて……」
魔法使い「言い訳しない!」
勇者「すんません」
魔法使い「よし!はいっ、握手」
ギュッ
勇者「え///」
魔法使い「これからよろしく!」
勇者「手……柔らかい……」
魔法使い「は?」
勇者「い、いやなんでもない!」
ブンブンッ
魔法使い「でも結局あたしたちだけかー」
勇者「やっぱそうなのか」
魔法使い「まーしょうがない。魔法のことは頼りにしてくれていいからね」
ニコッ
勇者「……///」
ギィ
側近「ここか」
女主人「いらっしゃい!」
側近「いや、客じゃない。勇者はどこだ」
女主人「あら、いい男……」
側近「おい」
女主人「あ、勇者ね。勇者さーん。お呼びよ!」
勇者「ん?」
魔法使い「あ!」
側近「あれか。なるほど強い力を感じる」
魔法使い「来てくれたんだ!」
ダダッ
勇者「むっ」
カチンッ
側近「まだいたのか。暇だな」
魔法使い「ふふっ、相変わらず口が悪いわね」
勇者「何コイツ?誰?俺の時と全然態度違うんだけど」
魔法使い「ああ、こっちは……」
側近「人間の軍師、側近だ!」
勇者「軍師?何ができんの?」
側近「多少の剣の扱いはできる。戦士とでも思ってくれ」
勇者「あーそう。へー」
魔法使い「でもホントに来てくれるとは思わなかったな」
勇者「うれしそうだな」
魔法使い「うん!」
側近「国からの派遣だ。私の意志は関係ない」
勇者「いやいやなら俺と魔法使いだけでも……」
側近「王様からの直々の命令だ。最後まで一緒に戦う。よろしく」
魔法使い「よろしくね」
勇者「……よろしく」
側近「あと一人教会側から派遣があると聞いているが……」
勇者「教会から?」
側近「余りにも集まりが悪いので手配したそうだ。回復役がいないと戦略も厳しいからな」
勇者「俺の人望そんなにないの……?」
魔法使い「命がけなんだから仕方ないよ」
勇者「そっか。そうだな」
側近「来たみたいだな」
バタンッ
ズルズルッ
僧侶「いやあああああああ!死にたくない!死にたくないですー!」