魔王「世界の半分をお前にやろう」側近「全部ください」 1/9

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魔王「ふはははは……は?」

側近「全部ください」

魔王「え?いや……でも私が支配したらって話で……全部はちょっと……」

側近「全部です」

魔王「私の力あっての支配であって……その……」

側近「魔王様の支配?魔王様が何かしましたか?」

魔王「え」

側近「玉座で高笑いしていただけではないですか」

魔王「そ、それは……だって……魔王ってそういうものだし……私には支配する権利が……」

側近「権利?でしたらそれは私にあるのではないですか?」

魔王「え」

側近「いつも魔王様を起こしたり、ご飯用意したり、お世話をしてるのは誰ですか?」

魔王「それは側近だけど……でも……」

側近「高笑いしてるのが魔王?違います。政治も軍事も全部部下に押し付けてるだけじゃないですか」

魔王「あう……」

側近「いつもいつも仕事してくださいと言っているでしょう」

魔王「え?あれって冗談じゃなかったの!?」

ブチッ

側近「冗談だと……思っていたんですか……あれほど……あれほど何度も忠言したことを……」

魔王「いや、あの、何となく暇だなーっとは思って……」

側近「魔王様に世界を支配する資格などない!世界は私が貰います!」

ビシッ

魔王「あうっあうっ……ど、どうしても?」

側近「ええ」

魔王「ちょっ、ちょっとくらい私にも……」

側近「駄目です」

魔王「ううっ、わ、分かった。あげる」

側近「……」

ブルブル

魔王「側近?」

側近「嘘ですよ……」

魔王「え、嘘?」

側近「ええ」

魔王「あー、もう、側近も冗談がすぎるなぁ……ははは」

側近「カマをかけただけです。しかし何ですか!分かった!?世界の全部をやる!?それでも魔王ですか!」

魔王「ええ!?」

側近「そんなことを言う私に黙って従って!力ずくででも黙らせようと言う気概はないのですか!」

魔王「そ、そんなこと側近に出来ない……」

側近「今度こそはっきり言います!あなたに魔王を名乗る資格はない!」

ビシッ

魔王「な、何だよ!いつもいつもー!だったら出て行けばいいだろ!」

側近「!?」

魔王「側近なんてクビだ!」

プイッ

側近「本気……なんですか?」

魔王「ふんっ」

プイッ

側近「分かりました。今までお世話になりました」

ザッ

側近「この側近の力至らずこのような結果になり残念です。さらばっ」

スタスタッ

魔王「あ……」

バタンッ

魔王「なんだよ、もう……私の部下のくせに……」

魔王「あ……半分やろうの前に『私のものになれ』って言い忘れた」

魔王「ううー……」

グーッ

魔王「お腹すいたなぁ……側近!……はもういないか……」

バターン!

炎の将魔「魔王様!!側近殿を解任させたというのは本当ですか!!」

魔王「うわっ!突然入ってくるな」

炎の将魔「本当ですか!!」

ズイッ

魔王「ほ、本当だ!わ、私に逆らったんだ!」

炎の将魔「何と言うことを!!側近殿を解任させるなど正気ですか!」

魔王「え」

炎の将魔「あの方がどれだけこの魔界に必要な方か知らないのですか!」

魔王「え、私のご飯作ってくれたりする人じゃないの?」

炎の将魔「何を言ってるんですか!側近殿は10代前の魔王様から仕える国家の大元老ですぞ!!」

魔王「え?でも見た目私と同じくらい……」

炎の将魔「魔族の年齢を見た目で判断しないでください!」

魔王「そっか」

炎の将魔「側近殿はこの国の政治の中心なんですよ!法律から軍事まで全て手がけてます」

炎の将魔「国の細々した法律作成、部族間の対立の調停、人間との駆け引きや作戦の指示など全て側近殿の指示です」

魔王「え?じゃあ側近はいつ寝たり食べたりしてるの?」

炎の将魔「魔王様にお仕えしてからは寝てるところなど見たことがありません」

魔王「私は夜8時には寝むくなる」

炎の将魔「どうするんですか!国が混乱しますよ」

魔王「うーん……」

炎の将魔「側近殿を連れ戻してください!」

魔王「え?」

炎の諸魔「我々の説得では無理です。魔王様が謝ればもしかしたら戻ってくださるかも……」

魔王「でも……クビっていっちゃったし……」

炎の将魔「魔王様!」

魔王「側近に頭なんて下げれるか!」

炎の将魔「お願いします!魔王様!」

グイッ

魔王「あっつ!近づくな!」

グーッ

魔王「そういえばお腹すいた。ご飯ちょうだい」

炎の将魔「話にならん!」

魔王「ご飯……」

炎の将魔「勝手に食堂にでも行ってください!」

ドスドスドスッ

魔王「ああ……行っちゃった……」

―――作戦室

炎の将魔「まったく!魔王様は……しかしどうする」

水の将魔「側近殿はもう行ってしまいました……」

炎の将魔「そうか……」

ダダダッ

風「はぁはぁ……側近殿がやめたって本当かよ!」

炎「風……お前も来たか」

風「魔王様がクビにしたって!?」

炎「ああ」

風「あの女……どれだけ側近殿の世話になったと思ってやがんだ……くそが!」

ガンッ

水「そう言わないでください。魔王様には魔王様の考えが……」

風「あの馬鹿王にそんな考えあるわけねーだろ!くっそ。俺がぶん殴ってくる!」

ダッ

炎「やめておけ」

ガシッ

風「離せよ!俺も小さい頃から側近殿の世話になってんだ!許せねぇよ!」

炎「死ぬぞ、お前」

風「は?」

炎「私がなんでこんな鎧に身を包んでいると思っている」

ガシャンガシャン

風「まさか……」

炎「魔王様は強いぞ。私も以前我慢できず魔王様に挑んだ。その結果、私は肉体を失った」

風「だ、だったら側近殿を誘って反旗を……」

水「それ以上言わないでください」

ジャキンッ

風「だ、だってよ!側近殿が呼びかければ国の半分は側近殿につくぜ!」

水「そんな場合ではありません」

炎「そうだ。人間どもとも争っている今、国を二つに割ることなどできん」

風「じゃあどうすんだよ!政治とか軍事とか!」

炎「それは……」

バタンッ

土の将魔「ちぃーっす!」

炎「どうだ、あったか?」

土「あったっすよー。ほら、これ『困ったら?もしものための側近マニュアル』!」

風「なんだそりゃ?」

土「ふふふ、それはっすねー」

炎「側近殿は自分に何かあった時のために対応マニュアルを残していってくださってたのだ」

土「あー!俺が言おうと思ったのに!」

ペラペラ

炎「ふむ……なるほど」

水「なんて?」

炎「とりあえず数ある法律は数を基本的な10に絞る。絶対に犯してはならない10禁だ」

水「なるほど。あれだけの細かい法律は我々では手に余りますからね、さすが側近殿」

炎「それから魔界は4つにわけ、我々で分割統治する。人間界への対策から将の配置まで書かれているな……」

風「側近殿……我々を思って……くそ!」

ガンッ

炎「とりあえずこれで行こう」

土「魔王様はどうするっすか?」

炎「ほうっておけ。一人では何も出来ん」

―――草原

側近「まったく、魔王様が私の話をまったく聞いていなかったとは……」

スタスタッ

側近「ふんっ、もう忘れよう。ふぅ……しばらく働きづめだったからな……」

フラッ

側近「くっ……気を抜いたら眠気が……寝るのも忘れてたな……」

側近「さて、どうするかな」

スタスタッ

側近「変装して、人間界を見て回るのもいいかもな。今の人間の実体については報告でしか読んだことがないからな」

側近「って、また仕事として考えてしまったな」

スタスタッ

側近「んっ?あれは?」

魔法使い「ううっ……」

側近「人間の雌か?」

魔法使い「ちょっと、あんた!」

側近「ん?足を怪我してるのか?」

側近「崖の崩れ方からすると上から落ちたのか」

魔法使い「ブツブツ言ってないで助けてよ!」

側近「っと言うことは落ちてきたあそこの先に町があると言うことだな。いってみるか」

スタスタッ

魔法使い「ちょっとーーーーーー!」

側近「ん?」

クルッ

魔法使い「助けてっていってるでしょ!」

側近「なぜ?」

魔法使い「なんでって、困ってる人がいたら助けるのが当然でしょ!」

側近「そうなのか?ふぁ……ふああああーあ」

魔法使い「何あくびしてんのよ」

側近「すまん、少し眠くてな」

側近「それで……なんだった?」

魔法使い「歩けないから助けてって!」

側近「ふむ……困ってる人を助けるか。それが人間か」

魔法使い「そうよ!」

側近「分かった」

ヒョイッ

魔法使い「ちょっ!お姫様だっこって……」

側近「何か問題あるか?」

魔法使い「いや……別に///」

―――辺境の町

「おい……あれ」

「ひゅーひゅー、見せ付けやがって。お二人さん!」

「ママー?あの人たち何ー?」

「あれはね、バカップルって言うのよ」

魔法使い「~~~~~!!」

ジタバタッ

側近「どうした、暴れるな」

魔法使い「も、もういいから離して!」

スタスタッ

側近「もうすぐ病院だぞ?」

魔法使い「いいから!」

ジタバタッ

側近「うっ……眠気が……もう……限界……だ」

バターンッ

魔法使い「え!?」

側近「……」

魔法使い「ねぇ、ちょっと!大丈夫!?ねぇってば!」

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