娘「ここに竜が……」竜「Zzz..........?」 3/9

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竜「一つ聞きたい」

魔王「何でしょう」

竜「私のように強力な種族を集めれば、当然人間も黙ってはいないだろう。

  最悪、全人類を相手にした戦になる可能性もある。 そういった危険をどう避けるつもりかを聞きたい」

娘「(竜さん難しい話ができたんですね)」

竜「(どういう意味だ)」

娘「(なんか竜さんにとっていい話っぽく聞こえてたのでほいほいついていっちゃうんじゃないかと)」

竜「(自分の力にそこまで無責任ではないわ)」

魔王「我々は人間を超えた力を持っている、邪魔立てするものはなぎ払えばよし」

娘「」ビク

竜「……」ギロ

魔王「……という選択をしないから、こんなところに隠れ住んでいる」

竜「……」

魔王「魔王領は人間の未踏の地、人が来る事はありません。

   ここで連日、火の粉を払うよりは静かになりますよ」

竜「それは楽観が過ぎるのではないか?」

魔王「強い魔族が集まれば、それだけで人間に対する抑止力となります。

   好き好んで蜂の巣をつつく者はいない、そしてそれを行うほど愚かな者なら相手にもならない」

竜「だが、命を奪う毒蜂が軒先に巣を作れば、愚かでない者も黙ってはいまい」

魔王「……ふむ」

娘「(なんかいい話っぽくないですか?)」

竜「(まあそうだな)」

娘「(なんでOKしないんです?)」

竜「(相手の国に住むということは私もその国に属すると言うことだ

   その地に人間が攻め入れば私も戦わなければならない、逃げ隠れると言う選択は無くなる)」

娘「(はあ……よくわかりません)」

娘「(まあ、基本ノーだと)」

竜「(戦争で戦うことになるくらいなら、今のほうがはるかにいいからな)」

魔王「……実は、すでにドラゴンを一人我が所領に招いてあるのです」

竜「」ピク

娘「」!

竜「それは……」

魔王「雌です」

竜「」ピクピクピク!

娘「(な、なんですこの反応……)」

魔王「ちょうど竜さんの話を聞き、これは運命ではないかと思い、参上したのです」

竜「……」

魔王「そう、運命ではないかと……」

娘「か、顔を不必要に竜さんに近づけないでください!」

魔王「立派な角を持った女性で……」

竜「」ドキーン

娘「それが色気の基準なんですか!?」

魔王「ニヤリ)お返事はすぐにとは言いません。 明日、また」フッ

娘「消えた……」

竜「どうしたものだろう」オロオロ

娘「私に聞かれても……」

竜「結婚とかまだ考える時期ではないだろう……だがこれを逃すのもなんともな」オロオロ

娘「……マイナスが見えるんなら遠慮したらどうですか」イラッ

竜「だが、顔も見ず断るのも相手に失礼だとは思わないか」

娘「つまり行く気まんまんだと……さっきは基本ノーとか言ってたくせに」イライラ

竜「いやまんまんというわけではないが、私も父さんと母さん以外の竜を見たことがないからな、とりあえず顔くらい会わせるべきだろう……それに雌……」ウキウキ

娘「(重要なのは雌の一点でしょうによ……)」イライライラ

娘「なんでしょうね竜さんは」

娘「長湯したかのごとく顔をふやけさてますが、相手が竜さんを気に入るとでも?」

娘「世間知らずの上こうやって洞窟に引きこもってばっかりの竜さんでは無理無理」

娘「……私は誰に言っているのか……」

竜「いや、すべて聞こえているんだが……」

竜「そういう欠点ばかりでなく長所もあげてくれんか」

娘「長所ですか……」

娘「キリッとした目と男らしい二本の角とか、太陽でギラギラ輝き月で妖しく光る黒い鱗とかはまあかっこいいと思いますし、

  体が大きくて包容力あるところとか、ぎゅっと締まっていながらなだらかなラインを描く体はセクシーさとかっこよさが備わってますよね」

娘「子供っぽいところもむしろ母性をくすぐられると言うか、でもしっかり者ですし……」

娘「……」

娘「……」

娘「えーと……あ、でも犯罪者として賞金かかっててしかも盗賊行為してるのは大きなマイナスですよ!!」

竜「犯罪はしとらんし盗賊行為はお前だ」

洞窟から離れた娘

娘「はあ……恋に悩むと溜め息がでるのか溜め息をするから恋に悩むのか……いや、完全に前者ですね」

娘「恋……そうです、これは恋としか」

娘「でもどうすれば……そもそも竜さんとは種が」

娘「……いや、弱気になっちゃ駄目だ! 女ならやってやれ!」バサッ

娘「竜さん! アイラブユー!」

竜「ど、どうした……服は」

娘「愛を語るのに服は要らないと判断しました!」

竜「は、はぁ……」

娘「で……どうですか!」

竜「え?」

娘「さっきの返事ですよ!」

竜「……すまん」

娘「」グハッ

竜「お前と私ではそもそも種が」

娘「じ、じゃあ、私が竜だったとしたらどうですか!」

竜「……まあアリだが」

娘「よし!」

娘「じゃあたとえば、クワガタムシのツノをもぎ取って雄竜の鼻に突っ込むのが趣味の雌竜と人間の私だったらどうですか!」

竜「え…………ま、まあ二択ならお前だが」

娘「ならOKと言うことですね!」

竜「何が!?」

竜「むちゃくちゃを言うんじゃない」

娘「うー……だ、だいたい、裸で乗り込んだ私を見て何も思うところは無いと!?」

竜「まあ、珍しく裸だな、とは思うが」

娘「こ、興奮とか!」

竜「別に」

娘「」グサザクゥ!

最終手段は体で訴える、娘のそんな覚悟と少しばかりの自尊心は、木っ端微塵に砕け散った

日常的に素っ裸である竜は、裸を晒してGOした娘の覚悟を理解できなかったのである(種の違いが二人の間に横たわっているのが大きいが

娘「竜さんの馬鹿! エロ! むっつりスケベ!!」ダッ

竜「ちょ、ちょっと待て!」ノシノシ

竜「ど、どこに行った……おーい、娘!」

賞金稼ぎ「ついに出てきやがったぞ!」

賞金稼ぎ「けりつけようってわけか!」

騎士「良いタイミングだ! 我ら騎士団の力思い知らせてやる!」

騎士「ヤツをこの村から出すな!」

竜「ああもう邪魔だ!」ファイアブレス

ギャー

この戦いで竜は千の賞金稼ぎと一万の兵士たちをなぎ倒し、魔物の脅威を全人類に知らしめることとなった……

人間の魔物に対する恐れは大きなものとなり、大掛かりな魔族の排斥運動が始まる

住処を追われた魔族たちは自然と魔王領に集まり、結果的に魔王の目的は果たされた

竜も娘を見つけることはついにできず、山に住み続けることもできなくなり魔王領に移り住むこととなる

それから5年後、人間と魔族の緊張は極限に達し、種の存亡を賭けた戦いが始まっていた。

魔王領の砦。

部下A「竜様! 勇者たちがこの砦に接近しています!」

竜「早いな。あのクラーケンと戦った後、矢継ぎ早に来るとは」

部下B「部隊の出撃準備完了しております! ご命令を!」

竜「かまわん、ここまで通せ」

部下A「な、何故ですか!?」

竜「ベヒモスやクラーケンを打ち破るほどだ、お前たちが束になって勝てる相手ではない

  ならば私が直接相手をしたほうが被害も少なく済むというものだ」

部下A「そ、そんな……」

竜「お前たちは万一に備え、この城の兵を引き連れ魔王軍本隊と合流する準備を始めろ」

部下B「(竜様……まさか、死を覚悟しておられるのか……)」

戦士「竜はここか!」

竜「……来たか」

勇者「……」

僧侶「戦士、わざわざ通してくれたんだからそんなに荒っぽくしなくてもいいでしょう」

戦士「ふん、私の国の騎士団はヤツに壊滅させられたんだ!

   今すぐ我が魔法剣の錆にしてくれる!」

僧侶「落ち着いてちょうだい。 相手が冷静なら戦わなくても」

戦士「断固戦いしかなし! 勇者、お前からもなにか……」

勇者「」ポロポロ

戦士「!?」

僧侶「!?」

竜「(何故泣く!?)」

勇者「大きく……なりましたね、あのときよりも」グスッ

竜「まさか……娘、なのか?」

カシャン(兜を取ると少し大人びた娘の顔が)

僧侶「……知り合い?」

勇者「ええ……あれは忘れもしない5年前、女の色香に惑わされたあの男は、本能の赴くまま私の前から姿を消したんです!」キッ!

戦士「お前は振られた元カノか」

竜「本能的なものがあったのは事実だが、お前から消えたんだろう」

勇者「その後の私の人生は惨々たるものでしたよ……」

竜「そ、そうだったのか?」

勇者「勢いで剣術道場の門を叩き勢いで奥義を受け取り勢いで出場した武術大会で優勝した勢いで魔王討伐隊に選ばれ勢いで優秀な戦績をおさめたらいつの間にかこんなところですよ!」

僧侶「何度聞いても舐めてるわね……」

勇者「私はあのまま竜さんの威を借りて働かず暮らしているだけで幸せだったのに!」

竜「人生舐めてるな」

戦士「魔王軍への恨みが人一倍強いとは思ってたが」

勇者「あの傷心をバネに私は己を鍛え上げたんです……腕の一振りに怒り、汗の一滴に憎しみを込めて!」

竜「(恐ろしいヤツ)」

勇者「受けてもらいますよ、私の怒りを込めた一撃! まあ半分は逆恨みですが!」

竜「わかっているならやめろ」

勇者「問答無用!」

?「待てッ!」

竜「! 竜子!!」

竜子「お父さんの前に私と戦え!」

戦士「お父さん!?」

僧侶「……竜将軍に子供がいたとはね」

部下A「竜子様! お戻りください!」

竜「お、お前たち! 早く竜子を下がらせろ!!」

竜子「やだ! 私も戦う!」ファイアブレス

勇者「……」 HP249980/250000

竜「棒立ちで喰らった!?」

勇者「オトウサン……?」

勇者「う……」

勇者「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」ダッ

戦士「おい勇者!?」

部下A「さ、流石竜様の子、竜子様! あの勇者を一撃で!!」

竜「ま、待て娘!」ノッシノッシ

部下A「おお、竜様が追撃されるぞ!」

戦士「させるか!」ダッ!

勇者「うう……一人にしてよ!」

戦士・僧侶「え!?」

竜子「よし、お父さんに続くぞ!」

竜「ついてくるな!」

部下・竜子「え!?」

部下「で、では我々はどうすれば!?」

竜「え……適当にやっててくれ!!」

一同「え、ええ~……」

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