娘「……?」
娘「ここはどこでしょう?」
娘「吹雪いてるのに全く寒くありませんが……」
娘「はやく帰らないと……」
神「待て……」
娘「?」キョロキョロ
神「」
娘「!」
娘「……えーと、あなたは?」
神「私は神と呼ばれる存在。世界の力を調停するもの」
神「神の山の頂を見た者よ、これを授けよう」
娘「! これは……(ドラゴンキラー!)」
神「その剣は、ひとかすりしただけで竜の魂を削り取り絶命させる」
娘「……ま、まさか、ドラゴンキラーを作ったのは」
神「私だ」
娘「(なるほど、一本だけじゃなく何本もあったわけですか)」
神「かつて愚かなる竜は私に戦いを挑んだ
私はこのまま竜の力が増せば、世界にとって大いなる脅威になると感じた……
だから、これを再び人間に託そう」
娘「……このドラゴンキラー、世界にただ一つなのですか?」
神「それが三本め……!!」
娘「」ムスメクロー!
神「な……」急所を突かれた!
ドサ!
娘「これでもう、新しいドラゴンキラーができる心配はありませんね」
ドラゴンキラー
娘「こんな面倒なものを作らなければ、竜さんは悲しまず済んだものを……!!」
バキメキバキバキ!!
魔王領・魔王城・客間寝室
娘「はっ!」
娘「……なんだ、夢か」
娘「……」
真っ赤な手と、枕元に置いてある粉々の剣。
娘「……ま、いいか」
会議室
幹部A「近隣に海が面しているのなら、海中に引きずり込んでクラーケン様や海の魔族たちに……」
幹部B「竜は海中でもそれなりに戦える。むしろ豊富な陸上の魔族を使えなくなるほうが厳しいのでは?」
魔王「いえ、多くの数に陸上を移動させることはできません。人間の領地に侵入せねばならないのですから」
幹部B「なら、海中策しかないということですか」
魔王「……どれだけ通用するか……」
竜「」ドラゴンクロー!
娘「」サッ
娘「」ムスメバイト!
竜「」! ハタキオトシ!
娘「」シッポヲ ツカンデ……
竜「」!
娘「」ナゲル!
ドスン!
娘「竜さん! 本気で来てくれなきゃ特訓になりませんよ!」
僧侶「致命傷でもここでならすぐに治せるわ、遠慮なく戦って」
竜「ぬう……」
竜「」ファイアブレス!
娘「」ファイアブレス!
娘「」ホノオニ マギレテ パンチ!
竜「」ムリヤリ アシデ オサエコミ!
娘「」! ミシミシ!
竜「」シッポデ ツカンデ……タタキツケ!
娘「」クハ!
僧侶「(実力が伯仲した者同士のほうが特訓は効果があるとはいえ……どれだけレベルアップできるものかしら)」
戦士「……」
僧侶「どうだった?」
戦士「討伐隊の編成が決まった……一週間後だそうだ」
僧侶「……どういう交渉したのあんた」
戦士「国はあの竜を甘く見ている……っていうか竜将軍がトアル山に住んでたとき、実質被害が無いのに物流がすごく激しくなったろ?」
僧侶「賞金もあるけど、竜を倒すことは最高のステイタス、戦士たちにとっては夢みたいなものでもあるからね……冒険者がガンガンやってきてたわ
それに、キッチリ身包みはぐもんだから新しく装備整えるために物買ったり、臨時の仕事に就く冒険者が増えたのよね」
戦士「同様の効果を期待してるらしい……とりあえず討伐隊を送って竜を確認の後、賞金をかけるってな」
僧侶「私たち「勇者パーティ」を討伐隊に置く事はできなかったの?」
戦士「俺たちはまだ「魔王軍討伐任務」中だ、他にはまわせないってことだ」
僧侶「そんなお役所仕事な」
戦士「今竜を倒されたら困るからだろ……俺たちじゃあ万が一にもありえないが」
魔王「これなら、互角の戦いにできると思います」
竜「……たしかに、勝てるかも知れん」
魔王「あの話を聞いて、この魔法を思い出したのですが……失うものも大きい」
竜「かまわん、竜族の不始末は竜族がつける、当たり前のことだ」
娘「なんとも久々ですが……」
トアル山。
看板「かつてこの山に住んだ竜は村に疫病をもたらし、満月の夜が来る度に村の娘を生贄として食い荒らした」
娘「……妙な観光名所にしているとは」
看板「」バメキャ!
村人「ち、ちょっと困りますよ! 看板壊しちゃって……」
娘「さっさと撤去したほうがいいですよ? 人間の降伏が決まれば、こんな商売しててどうなるか」
村人「降伏ってあんた何言って……!? お、おまえは……」
娘「人違いでしょう」スタスタ
ガサガサ
娘「えーと、この辺だと……あった」
ドラゴンキラー(へし折れ)
娘「このくらいなら直せるかもしれませんからね」
バキバキバキバキバキ!
ドラゴンキラー(粉々)
娘「これでよし、と」ポイ!
バサバサ!
竜「……とんでもないことを」
娘「あ、竜さん」
竜「もっとも安全な策だぞ、それは」
娘「竜さん、この剣嫌いじゃないですか?」
竜「……見たくもない」ファイアブレス!
ドラゴンキラー(灰)
魔王「一週間後ですか……ならば、その前日に何とかしなければ」
戦士「討伐隊を見捨てる、という選択肢もあるぞ?」
魔王「いまさら試すようなことを言わなくとも。
それに、時間を多少延ばしたところで今以上の有効な対策を練られるとは思えませんからね」
僧侶「対策? なにかあるの?」
魔王「ええ、とっておきです」
魔方陣の上に乗った竜。
娘「パワーアップできる魔法があるんですか」
僧侶「そんなのがあったらとっくに使ってるでしょ……ていうか、どう見ても呪いの類としか……」
バチバチ!
竜「オォオオオオオオ!!」HP240000→5200000!
二周りも大きくなった竜。
魔王「……無事、成功ですね」
娘「こ、これは!?」
魔王「呪いの一種でね、相手を老いさせるのが目的のものなのですが、まだ幼体である竜さんなら、うまく調整すれば成長させることができる
これなら成竜とも互角に戦えるはず」
娘「成長させるって……竜さんの体は大丈夫なんですか?」
魔王「当然、成長した年月分の寿命は失います」
娘「!」
竜「私も承知の上だ。 ……竜に勝てるのは竜しか居ない」
娘「……」
戦士「老いさせる……、そっちをあの竜に試せばよかったんじゃないのか?」
僧侶「人を呪わば穴二つ、呪いは失敗すれば術者にそのまま効果が返ってしまうの。 メジャーな攻撃手段になれない一因ね。
見たところ相手に動かれちゃ困るものみたいだし、こんな使い方しかできそうに無いわ」
竜、成体へ
急激な変化は想像以上に負担があったらしく、残された時間、竜は療養に専念するしかなかった。
そして一週間後。
コーソアド。
灰と化した大地の上に、父竜。
娘「一週間何やってたんでしょうね」
僧侶「ちょっと黙ってなさい」
僧侶(でも言われてみると少し気になる)
父竜「来たか」
竜「……よく私だとわかったな」
父竜「手段は知らん。だが、たかだか私に勝つために愚かなことをしたものだ」
竜「……」
父竜「……あの日、私はあの後、右腕と翼を失った
その傷を癒すには、地中にて百年の眠りを要した」
竜「……? たしか、一突きで動かなくなったあなたを見て、あの剣士は立ち去ったはず……」
父竜「はっきり言っておこう。私はあの剣士を恨んではいない。
ドラゴンキラーがあるとはいえ、竜に挑み勝利した、そのことに変わりは無い」
竜「なら、何故」
父竜「……思い出すだに忌々しい、この国の人間どもだ」
父竜「あの後、私は右腕と翼を切り落とされた所で目が覚めた……赤い血溜まり、小さなカケラ……最初はわけがわからなかったがな
数秒のち、その血だまりが! ばらばらになった肉が! 剥がれた皮が妻と知った!」
父竜「解体されていた。 家畜のようにな!
そこに居た人間どもは血をすすり、肉を貪り食った!」
竜「!」
父竜「その行為がすべてだ、人間にとって我々は物に過ぎん、己の利に反すれば殺し、死には尊厳も与えられぬ!
知性の有無も無い、ただ都合のいいときだけ生かしているに過ぎん!」
竜「……人間すべてが、そういうわけではあるまい」
父竜「お前が人間の何を知る?
私は土の底で眠りながら、バラバラになったお前と母さんの夢ばかり見ていた
ただバラバラなのではない、まるで肉屋にでも並べられるように解体された姿でな」
竜「黙れ……!」
娘「……」
娘「竜さん、本当はどう思ってるんですか?」
竜「……?」
戦士「あいつ何言って……」
娘「人間はみんな悪い人じゃない、そのとおりです。
でも、人間の内一人でも誰かを殺そうと思ったなら。竜さんたちを殺そうと思ったなら。
その一人のせいで、死んでしまうかもしれないんですよ?」
竜「……」
戦士「極端な話だ」
僧侶「……でも、それが竜さんの家族に起こったことなのよ?」
竜「……(そうだ、私は人間のことなど良く知りはしない
ただ昔、父や母から、弱きものを慈しめと、自らのために力は振るうなと……それが強き種である竜だと、そういわれてきただけだった
だが……人間は知らないが、よく知っている人間は、いる)」
竜「その「人間」とやらに、お前は入っているのか?」
娘「え……」
竜「ならば守ろう。お前以外の誰かに殺されようとかまわん」
竜「」バンッ! ツバサヲ ツカッタ カソク!
竜「」カソクヲ リヨウシテ ドラゴンクロー!
父竜「」ザグ! HP6760000/6800000!
父竜「この……愚か者が!!」ドラゴンバイト!
竜「」! バキミシミシ!
父竜「」クワエコンダママ ヒキタオシ! フミツケ!
竜「ガ・・・カッ!」 HP4800000/5200000!
父竜「竜とは長い年月をかけ己の力を増していく!
ただ体が大きくなっただけのお前が私に勝てるか!!」ヒュウウ……
父竜「」ファイアブレ……