~氷の洞窟~
僧侶「エルフさんから借りた防寒具のおかげで、吹雪の中もなんとか進めましたね!」
盗賊「おい、テメーなんで俺の服の中に入ってんだよ。自分で飛べよな」
妖精「この風じゃ私なんか、すぐに飛ばされちゃうわ。それに貴方は妖精の匂いが強いから、安心するのよね」
盗賊「あのクソチビもお前も、俺を乗り物扱いするなっつーの」
賢者「ん~、洞窟にはついたけど……氷の壁で入り口が塞がっているねえ」
妖精「あら?変ね、前に来た時は、そんなものなかったのに」
僧侶「でも、これ……壁というより、扉じゃありませんか?ほ、ほら…これも氷だけど、錠前がついてますよ…?」
賢者「うーん…氷を溶かすにしても骨が折れるな…魔力が空になるだろうし」
妖精「困ったわね。鍵がどこにあるかなんて、検討もつかないわよ」
盗賊「おいおいテメーら。俺を忘れてんじゃねえぞ」
盗賊「盗みならなんでもござれのこの俺に、こんなチンケな鍵で挑もうなんざ、百年早いんだよ」ガチャガチャ
盗賊「…ほらな、開いたぜ」ガチャッ
僧侶「わあ~!盗賊さん、すごーい!鍵いらずですねえ~」
盗賊「…どっかのバカのせいで、矢面に立たされてばかりだったが、俺の本職はこれなんだよ」
妖精「貴方、とっても便利なのね。一家に一台あると良さそうだわ」
盗賊「乗り物の次は道具扱いかコラ。潰すぞテメー」
賢者「うおおぅ……扉を開けたらもっと吹雪が酷くなったよ、さ、寒い…!!気をつけて進むんだよ、みんな~!」
僧侶「床も壁も、天井もみんなツルツルに凍ってますねえ…でも、氷が光を反射していて、中は暗くない……良かった、怖くなさそう…」
魔物「ガアアアア!!」
賢者「火炎魔法っ!!」ゴオオォッ!
僧侶「えい!えいっ!!メイス攻撃ーっ」ポカスカ
妖精「…ねえ、ちょっと。貴方は戦わなくていいの?2人に任せてばかりじゃない」
盗賊「宝箱を開けるのも、戦いのひとつなんだよ。クソオヤジの魔力が尽きたら俺も戦うさ。……お、この宝箱に魔力回復の聖水が。クソオヤジに飲ませよう」
妖精「もう。結局戦う気がないんじゃないの、困った人ね」
盗賊「別に、お前を服から引き摺り出して捨てていってもいいんだが?」
妖精「次の宝箱にまた役立つアイテムがあるといいわね。私の探索能力で宝箱を見つけてあげるわ。宝箱の鍵は貴方にしか開けられないんだもの、期待してる。さあ行きましょ、戦いは彼らに任せて、私達は私達にできる事
盗賊「…お前の性格、そんなに嫌いじゃないぜ、俺」
僧侶「盗賊さーん!盗賊さんも戦闘に参加してくださいよう!魔物が多くて大変なんですからっ」
賢者「あっ、お嬢ちゃん!走ったら危ないよ、転……」
僧侶「ふぎゃ!」ツル スッテーン
賢者「…転ぶよー、と言うのも間に合わなかったな…」
盗賊「まったく、期待を裏切らないクソアマめ」
僧侶「痛たたた……あ、あれ?あれっ?か、勝手に滑っていく……」ツルルルル
賢者「ちょっと、お嬢ちゃん!?どこに行くの、一人じゃ危ないよ!」
妖精「いやだ、氷の床で滑っていくんだわ。…ねえっ落とし穴があるわよ!?踏ん張って止まらないと、あの子、穴に落ちちゃうわ!」
僧侶「はわわわわ!!」ツルルルー
盗賊「何やってんだバカ!クソアマ!!止まれっ!!」
賢者「氷柱魔法!!」バキン バキン
賢者「ダメだ、氷柱を立てて止めようと思ったけど…滑っていくのが早い!」
僧侶「きゃーっ!?」
盗賊「クソアマ!!うわあっ!?」
賢者「2人とも穴に落ちたー!?…も、もう、オッサン高いところ苦手なんだけどなあ…!!」バッ
僧侶「きゃーああああー!!」
妖精「この高さから落ちて、どうする気?人間の貴方達は空を飛べないでしょうに」
盗賊「てめっ!なに一人だけ服から出て、飛んでんだよ!!あとで潰すからな!」
賢者「兄ちゃん、お嬢ちゃんの事をしっかり掴んでなよ~?ちょっと勢いキツいと思うから」
盗賊「おいっ、何する気だ?オッサン!」ギュッ
僧侶「あわわわわ……だ、だだ抱き締められ…あわわわ」
賢者「上手くいくといいんだがね~。よし、あの氷の塊でいいか……一点集中、爆炎魔法!!」
ドゴォォンン!!
盗賊「っ!爆風で…煽って、落ちる勢いを殺したのか」ドサッ
賢者「あだっ!!……いたたたた、ケツが割れた!絶対割れたあ!いたたたた!!」ドスッ
妖精「無茶をするわね、人間って」
盗賊「このクソチビ2号!いつのまに、また服の中に逃げ込んで!調子がいいな、テメーはよ!」ギュー
妖精「待って待って待って、私を潰すのは気が早いわよ。本当よ。私も役に立つから、……全体回復魔法!」パアアァァッ
賢者「…っは…?あ、ケツが痛くない……おぉー、やるじゃないの、妖精ちゃん!」
盗賊「ほう?こりゃスゲーが……なんで今の今まで使わなかった、本当に調子いいな、お前」ギュギュウー
妖精「待って待って待って待って。潰れるわ。妖精の搾り汁ができちゃうわ。ほら、私を搾るよりも、その女の子をどうにかした方がよくないかしら?」ギュー
僧侶「」アウアウ
賢者「お嬢ちゃん……乙女なんだねえ…」
賢者「しかし、随分深いところに落ちたもんだなあ…どうやって帰ろうね?」
妖精「…この先。この先から、魔力の強い流れを感じる。吹雪を生む媒介があるかもしれないわ」
盗賊「一本道のようだしな…仕方ない、行くか。おらっ起きろクソアマ、寝てんじゃねーぞ」バシバシ
僧侶「痛い!痛たた!!…も、もうっ!もっと優しく起こしてくださいよう~」
賢者「んー……魔物の気配もないね…あ、まーた扉だ。兄ちゃん、鍵開けてくれる?」
盗賊「へいへい…」ガチャガチャ
ギイイィィ…
賢者「……おぉ~…これは、これは……」
僧侶「うわあ~…すっごい、綺麗……氷の柱に、光のカーテンが掛かっているみたい…」
賢者「これはオーロラっていうんだよ。でも何故こんな場所に……この空間だけ、人為的に作られたようだ…天井は吹き抜けだけど、高すぎるね」
盗賊「…台座に何か乗っているぞ。なんだ?こりゃ。宝玉か……真っ青でスゲー綺麗だな…売ったら高そうだ」
妖精「貴方、罰当たりね。…それよ、吹雪を起こす媒介!その宝玉を中心に、魔力が渦巻いているもの」
僧侶「じ、じゃあ、これを壊せば吹雪は止むんですか、ね?」
賢者「や、別に壊さなくていいと思うよ。こういうのは、場所も大事だからね。宝玉の位置を動かすだけでも、吹雪は止むはずさ」
僧侶「じゃあ、じゃあ転がすだけでも……あ痛!」ポカッ
盗賊「お宝に素手で触るなっつーの、クソアマが。動かすだけでいいなら、持って帰って売り飛ばしてもいいわけだな?いくらになるかねぇ~」
僧侶「声をかけてくれるだけでいいのに、すぐぶつんだから~…」
賢者「手のひらに乗るくらいの大きさか…いや~、こんな小さなもので、あれだけの吹雪を起こす魔力を込めるとは…実に興味深いなあ」
妖精「…宝玉を取り上げたら、魔力の流れが途切れたわ。これで吹雪も止んだはずよ」
僧侶「やったあー!…って、手放しで喜べないんですよねえ……ど、どうやって帰りましょうか…」
妖精「私、移動魔法も使えるわよ?天井がないここからなら、村までひとっ飛びで帰れるわ」
盗賊「ほほう、そいつは便利だな。……それを使えば、あんな吹雪の中を歩かずに、この洞窟まで飛べたんじゃねーか?」ギュウウウウ
妖精「待って待って待って待って待って。私を潰したら貴方達、一生ここに閉じ込められるわよ。最後の晩餐は妖精の搾り汁?あらあら、グルメなのね」ギュウウウ
賢者「結局さあ、この宝玉は持って帰るわけかい?いや、できれば研究したいけど…なんか、下手したら部屋の中でも吹雪いたりしそう」
妖精「それは大丈夫じゃないかしら。もう魔力反応を感じないもの。さあ、早く帰りましょう。私の体があちこちクビれないうちに」
~エルフの村~
村長「あはは、これが魔の吹雪を生んでいた宝玉かあ~。うん、確かに魔力の匂いがするね~」
盗賊「外を見たら、あの吹雪が嘘のように止んでいたしな。これで任務完了、ってわけだ」
賢者「…うーん、オッサンも話に混ざりたいなー、なー」
妖精「私が話し相手になってあげるから、いじけないで」
僧侶「私と盗賊さん、2人入ったらいっぱいいっぱいですもんね、このおうち…」
村長「本当に本当にありがとう~!これで外に出かけられるよ~。残っている雪もやがて溶けるだろうしね~」
村長「よ~し、じゃあお礼に、君達に勇者の事を教えてあげる~。…じゃじゃ~ん、占いの水晶玉~」コロン
盗賊「…俺には少しでかいビー玉にしか見えないんだが」
村長「僕はこう見えて占いが得意なんだ~。これで勇者が今いる場所から、会い方まで占ってあげるね~百発百中だよ~」
僧侶「…やっと……やっと、勇者様にお会いできるんだあ…」
盗賊「ああ……」
村長「ん~むむむ~……は~い、出ましたあ~」
村長「えっとね~、勇者は今、聖騎士の王国にいるよ~。聖騎士の証でも取りたいのかな~?あはは、それから、勇者と一緒にもう一人…魔法使いがいるね~」
僧侶「…え?聖騎士の王国、って…す、すぐそこじゃないですか!つい2、3日前に立ち寄ったばかりですよう!?」
盗賊「………」
村長「何か理由があるみたい~、それまではわからないけど…勇者は今、別の名前を騙っているね~。魔法使いもそう、2人して変装しているよ~」
盗賊「……聖騎士の王国…2人………変装……」
盗賊「………ま、まさか……?」
僧侶「じ、じゃあ!じゃあ、今からでも、聖騎士の王国に行けば、勇者様に会えるんですね!?」
村長「うん~、暫く滞在するみたいだからね~。……でも~…」
村長「今、王国に行ったら…君達は一生勇者に会えなくなるよ~?」
僧侶「えっ!?な、なんで?なんでですか?」
村長「運命。運命がそうさせるんだよ~、勇者と会うには、鍵が足りない…そう言えばわかるかな~?何度も機会はあったのに、すれ違いもしたのに…互いに気づかなかったのは、運命の仕業なんだね~」
村長「君達は勇者に会う前に、ここから先にある魔法の街に行かなきゃならない…そこには大きな塔があって…2人だけで昇らなきゃいけない。そしてそこで、君達は重要な選択を迫られるでしょう~」
村長「どの答えを選ぶかは、君達の判断に委ねられるけど…それを乗り越えた時にこそ、勇者と合流を果たせる。そして、勇者の悩みを、葛藤を打ち砕き、彼の力となり刃となり…魔王を倒す事が叶うだろう…」
村長「………と、占いに出ました~。あはは、どうだったかな~?」
盗賊「……悩み、か……」
僧侶「で、で、でも!その塔に、私と盗賊さんだけで昇って…選択っていうのもクリアしたら……勇者様に会えるんですね!?今度こそ!」
村長「うん~。あはは、順番を間違えずに行けば、必ず会えるよ~。勇者はね、今すごく悩んでいるんだ~。…だから、早く力になってあげて。君達にしか助けられないから……お願い」
僧侶「わ…わかりましたっ…!盗賊さん!魔法の街に行きましょうっ?」
盗賊「ああ。魔法の街はクソオヤジの故郷っつってたしな。あいつに話を聞けば、その塔とやらもわかるだろう」
村長「あ、そうそう~。吹雪を止めてくれた、あのオジサンにも、お礼をしなくちゃね~。さあ、僕を肩に乗せて~?外まで、れっつらご~」
盗賊「だから俺を乗り物扱いするんじゃねえッ!!このクソチビ初号機が!!」
賢者「あー、やっと出てきた。おかえり~、寂しかったよオジサンはさあー」
村長「こんにちは~、僕、この村の村長で~す。この度は吹雪を止めてくれて、どうもありがとう~」
賢者「わ、小人族!?いやはや……やっぱり文献だけじゃ得られないもんだな、知識ってのは…。いやいや、どういたしましてー。こちらこそ、防寒具を貸してもらったり、ありがとうございました」
村長「それでね~?君にもお礼がしたいなあって思うんだ~。急ぎたいだろうけど、吹雪を止めて村を救ってくれた君達に、ささやかながら宴の用意もしたんだよ~」
盗賊「宴……飯か?」ピク
僧侶「盗賊さん…」
村長「あははっ、勿論ご飯もたくさん作ったよ~、食べてって?一晩くらいはいいよね~、休んでいってほしいんだ~」
村長「なにより、オジサンへのお礼は宴と別にも用意してあるからさ~是非参加してね~」
賢者「なんだ?なんだろ、そこまでしてもらっていいのかな?」
~御礼の宴~
盗賊「旨い旨い旨い飯旨い」ガツガツムシャムシャ
妖精「あ、その木の実のスープは私が作ったのよ。美味しいでしょう?ふふふ…これでいっそう妖精の匂いが強くなるわね、居心地も更に良くなるでしょうね」
盗賊「叩き潰すぞクソチビ2号。俺はテメーらの乗り物じゃねえっ!」
エルフ「さあ、たくさん食べてね。栄養もばっちり、体力がつくわよ」
僧侶「ありがとうございます、とっても美味しいです…!ヘルシーなのに、コクがあったり深い味わいだったり……不思議なお料理ですねえ…」
賢者「いや~この果実酒も旨いっ!こんなにも甘いのに、爽やかな口当たりで、いくらでも飲めそうだ…ひっく」
村長「あはは、喜んでもらえて良かった~。でもまだ酔い潰れないでね~?本番はこれからなんだからさ~」
賢者「本番?…そういや、オッサンにはまだ別のお礼があるんだっけ。これ以上、よくしてもらうとか、なんだか申し訳ないなあ」
村長「いいんだよ~。君の為だけでもないからね~、…あ、来た来た、お~い、こっちだよ~」
賢者「………ッ!!」
僧侶「…わあ、素敵……なんて綺麗な花嫁さんなんでしょう!」
盗賊「…確かに綺麗だが…エルフでも妖精でもねーぞ?人間…?いや、なんか透けてねーか……?なんだ?ありゃあ…」
武道家「……賢者…」
賢者「…あ……あ、あれは…彼女は……お…俺の、親友…だ……」
盗賊「!! …テメーを庇って死んだって奴、か?なら…ありゃ、亡霊か…?」
村長「彼女はね~死んだ時に、故郷のある、この地へ魂が飛ばされたんだけど……あの魔の吹雪のせいで、この村に閉じ込められちゃってたんだよね~」
村長「ねえ?彼女を天に、故郷に帰してあげて~?君の心の奥底に隠した本音を、彼女に渡して…送ってあげて」
賢者「………」
賢者「……なんつー礼を用意してくれたのかねぇ…年甲斐もなく照れちまうじゃんよ、オジサンは…」
武道家「賢者……ご、ごめんね。こんな格好で、似合わないよね。なんだか笑っちゃいそう、賢者とはいつも、ふざけあってたから…今更こんな…」
武道家「で、でも……私…私、どうしても、心残りがあって……吹雪のこともあったけど、その心残りが…私をこの世に繋ぎ止めていて…」
武道家「わ、私…私、……本当はね、…小さい頃から、ずっと、」
賢者「言うな」
武道家「………っ…、…そ、そうだよ、ね…ごめん、変な事、言いそうになっちゃった」
賢者「違うよ、武道家。…俺に格好つけさせてくれよ。その言葉は、俺が先に言うもんだ」
武道家「け、賢者…?」
賢者「俺はお前が好きだ。小さい頃からずっと、一緒にいたお前が大好きだ」
賢者「魔法を勉強する俺の邪魔をしてくる意地悪なお前も。魔法の才能がないからって、それを補おうと武の道に進んだ、努力家なお前も…そのくせ、俺の前でだけは泣き虫なお前も。みんなみんな、お前の全部が好きだ」
賢者「…守ってやれなくて、ごめん。痛かったよな…苦しかったよな…迎えに来るのが遅くなって、本当にすまなかった」
武道家「賢者…!」
賢者「お前が好きだ。俺と結婚してくれ」
武道家「………わ…私も、私も!賢者が好き!大好き!!でも、いいの?私…もう死んじゃってるのに……」
賢者「最初から決めていたんだよ。俺の嫁はお前、って。生涯でただ一人だけだ。結婚しよう、武道家」
武道家「賢者ぁっ……!あ、あ、…ありがとう……ありが、と…うわあああ~ん!!」
妖精「おめでとう、オジサン!武道家!結婚おめでとう!」
村長「あはは、2人の門出に乾杯~」
エルフ達「おめでとう!お幸せにねー!」
盗賊「………」ニッ
僧侶「………」
僧侶「…透ける口づけ……でも、永遠の誓い……すごく、すごく…綺麗です、武道家さん。おめでとう…!いいなあ、私もいつか……」
武道家「あ、ありがとう、みんな…あっ、あ、そ、そうだ!えいっ」ポイッ
僧侶「…っ、あ」パサ
妖精「あら、良かったじゃない。花嫁の投げたブーケを受け取れて。次に結婚できるのは貴方ね」
僧侶「わ、わ、私ですか!?………そ、そそ…そうなんですかあ…えへへ」
盗賊「…ふん。まあ、良かったんじゃねーの?オッサンが幸せなら。つーか飯おかわりくれ」
妖精「貴方はもうちょっと色気を出すべきよね、食い気よりも。折角のチャンスなのn ふぎゃ!」ペシッ
妖精「指で弾かれるほどの事を言ったかしら、私…」
賢者「…やあやあ、まいったね~本当。照れるよもう、穴があったらそこに隠れたいくらいだ」
エルフ「その指輪は精霊の指輪。霊体の貴方も身に付ける事ができる特別製よ。……良かったわね、願いが叶って」
武道家「は、はい。ありがとうございます、こんなにも良くして頂いて……、あ」フワァァ
盗賊「…おい、体がさっきよりも透けていくぞ!?」
武道家「吹雪が止んだから、…願いが叶って満足したから、天に帰れるようになったのね」
賢者「…武道家。君に言ったものに偽りはないよ。君のところへ行くのは、まだまだ先になるが……必ず迎えにいくから。すまんな、また、もう少しだけ…待っていてくれ」
武道家「…大丈夫よ、ゆっくりでいいからね?貴方を見守っているわ。…でも浮気したら、貴方の股間に全力で正拳突きを入れるから」
賢者「おおぅ……うちのカミさんは怖すぎる」
僧侶「貴方に安らかな眠りが訪れますよう、祈りを捧げますね…」
武道家「ありがとう…貴方達の旅も、滞りなく進むように、見守っているわ」
武道家「それじゃあ……また、ね…」
……… …… …
賢者「………」
盗賊「…おい、オッサン。どうせこれからも飲むんだろ?朝まで付き合ってやるよ」
僧侶「あ!わ!私も!私もお付き合いしますっ!」
盗賊「テメーはダメだ、クソアマ」
僧侶「ななななんで!なんでえー!?」
賢者「ははは…ありがとうね、2人とも。よっし!!それじゃあ飲むとしますかー!」
村長「やった~、お酒のおかわり持ってきて~」
宴は盛り上がり、遅くまで続いた……
そして、夜が明けた !
賢者「うーん!あんなに飲んだのに、やたらスッキリしているなあ。まったく、何もかも不思議な村だ」
僧侶「何もかもが不思議で、……美しいものがいっぱいの村でした。夢の中ってこんな感じですよね」
村長「魔王を倒すまで、大変な道のりだろうけど、気をつけてね~。癒しが必要になったら、いつでも立ち寄ってよ~」
エルフ「これは私達が調合した妖精の回復薬よ。話を聞くと、既に飲んだ事があるようだから、効果は知っているだろうけど…傷を癒し、力を生んでくれるわ」
盗賊「お、こいつは有り難ぇ。助かるぜ、すまねーな。大事に使うわ」
僧侶「…あの薬を飲んだら、また盗賊さんが鬼に……ひいぃ」ガタガタ
妖精「短かったけど、貴方達と過ごした時間はとても楽しかった。こんな喜びがずっと続くように…魔王討伐、よろしく頼むわね」
妖精「魔王を倒したら、必ずうちの村に遊びに来てね?待っているから」チュッ
盗賊「お、おい。額に…」
妖精「貴方も」チュッ
僧侶「あら、うふふ」
妖精「オジサンにも」チュッ
賢者「はは、照れちゃうな」
村長「妖精のキスは幸運を招くんだよ~。貴重なものなんだからね~」
妖精「絶対、絶対よ?約束ね。私達は約束を何よりも大事にするんだから。必ず帰ってきてね」
僧侶「はい!約束です!」
エルフ「いってらっしゃい、人間達。神と精霊のご加護がありますように…」
村長「いってらっしゃ~い、気をつけてね~」