魔王「なに?!勇者がまだハジマリの村にいるだと?!」 3/10

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-謁見の間-

勇者「お久しぶりです。王女様」

王女「……」

大臣「よくぞ参ったと、王女様はおっしゃっています」

勇者「え?ああ、そうですが…貴方は?」

大臣「私はこの国の大臣です。王が不在の今、王に代わりこの国を治める王女様の補佐をしております」

勇者「王様が不在?一体どうして?」

大臣「それは貴方の所為ですよ。勇者どの」

大臣「貴方がいつまで経っても勇者の剣を取りに来ないから、王は魔族との戦争の前線立ち、直々に指揮を取っておいでです」

大臣「あと数年は遠征から戻られそうにありませんから、勇者の剣はお渡しはできませんな」

勇者「そんな…」

魔王「…おい、王女」

大臣「何だ?お前っ!王女様に向かって馴れ馴れしい口をきいてっ」

魔王「王女。そなたは王の代理であろう。そなたが勇者を真の勇者と認めて、剣を授けてやらんか?」

魔王「話を聞くに、そなたと勇者は知り合いなのであろう?」

大臣「ええい!勇者どののお供と言えども、それ以上の無礼な口の聞き方は許さぬぞ!」

王女「……」

魔王「だからっ貴様になんぞ聞いてはおらん!我輩は王女に言っておるのだ!」ムッ

魔王「少しは黙ってろ!ハゲ!」

大臣「なっ!」

大臣「勇者どの!供の者はもっと選んでいただかなければ!」ワナワナッ

勇者「…王女様、無礼を承知で申し上げます。俺との約束を覚えていらっしゃいますか?」

大臣「勇者どの!ですからっ」

勇者「王様は魔王を倒した者の願いを何でも叶えて下さるとおっしゃった」

勇者「幼い頃、俺が魔王を倒したら、王女様は王女様と結婚して、この国の王になると願っても良いとおっしゃいましたね?」

大臣「勇者どの!王女様に対して、何と言う事をおっしゃるんですか!」

王女「……」

大臣「くっ…」

大臣「誰か!勇者ご一行がお帰りだ!城外まで皆でお見送りをいたせ!」

兵士達「は!」

勇者「なんだ君達…」

魔王「無礼者!放せ!」

勇者「王女様!どうして一言も口をきいて下さらないんですか?!」

王女「……」

大臣「勇者どの。王女様は緊張しておられるんです」

大臣「何と言っても、明日は…」

大臣「王女様の結婚式でいらっしゃいますから」ニヤリ

勇者「?!」

大臣「ぷぷっ、振られてしまわれましたね。勇者どの」

-宿屋-

魔王「何なんだ!あの王女も大臣も!」

勇者(おかしい)

勇者(最後に王女に会ったのは10年以上も前だが、いくら緊張していたって、あそこで何か反応はあるはずだ)

勇者「魔王」

魔王「なんだ?」

勇者「俺、もう一度王女と話してみる」

魔王「…正気か?」

勇者「確かめたい事があるんだ」

魔王「無駄だ。あの女の態度見ただろ?いくらそなたが気にかけたって、望みなしだぞ」

勇者「違う。昔見た時と随分印象が違う」

魔王「…何かあるんじゃないかって?」

勇者「ああ」

魔王「分かった。でも明日は王女の結婚式だし、恐らく門前払いを食うぞ」

勇者「そんな事は承知だよ」ニコッ

魔王「……」

-城の門前-

兵士C「ふああ…眠い」

兵士D「おい、欠伸なんかしてるところを見られたら、減給じゃ済まないぞ!」

兵C「…あー…王様がいなくなってから色々やり辛くなったな」

兵D「バカ!誰が聞いてるか分からないんだぞ!」

兵C「でもさぁ、本当の事じゃん…」

兵C「今回の王女様の結婚も、大臣が裏で糸を引いてるって噂だぜ?」

勇者「ほう?詳しく聞かせて貰えないかな?」

兵士「!」ビクッ

兵D「誰か…ぐはっ」

勇者「君はちょっと眠っていてくれ」

兵C「!」ガタガタッ

勇者「さて、邪魔者は消えたし、王女様と大臣の話を聞かせて貰おうか?いいよね?」

兵C「はっはい?!」

魔王(…こやつ、勇者の癖にめちゃくちゃ怖い…)

勇者「まず大臣が王女様の結婚の糸を引いているという話だが、どういう事だ?」

兵C「はい…実は王女様の結婚相手は大臣の息子なんです」

勇者「!」

兵C「王様が遠征に行かれてから、王女様が代理を務めている…というのは名ばかりで、実際は大臣が国を仕切っています」

兵C「その頃から王女様は以前とは違って、とても無口になられました」

勇者「…そうか。どう思う魔王?」

魔王「どうもこうも、明らかに大臣が怪しいだろう」

兵C「ええ!そうなんですよ!」

兵C「大臣が実権を握ってから、我々兵士の給料は減って、ちょっとした事ですぐに減給だ!」

兵C「カカアにも安月給とどやされるし…何もかもが、大臣の所為…ぐはっ」

勇者「…よし。行こうか」

魔王「なあ、勇者…」コソッ

勇者「なんだ魔王?」コソッ

魔王「そなた、王女の部屋を知っているのか?」

勇者「ああ、俺の祖父も勇者だったんだよ」

魔王「え?」

勇者「でも魔界に足を踏み入れてそれっきり。多分、祖父達は殺されてしまったんだろうね」

勇者「勇者の孫っていうのもあって、俺は城に招かれた事があったんだ」

勇者「そこで俺は、よく幼い王女の遊びお相手をさせられたよ」

勇者「ここが王女の部屋だ」

魔王「何だか、あっさりここまで来てしまったな」

勇者「罠の可能性もあるが」

勇者「あの兵士の話じゃ、特に変わった命令は出ていないようだったし」

カチャ

勇者「…開いた」

-王女の部屋-

王女「すー…」

魔王「…寝てるな」

勇者「…王女様。起きて下さい。王女様?」

王女「う…うーん…」パチリ

魔王「あ、起きた」

王女「!!」

勇者「寝所に忍び込んだ無礼をお許しください。俺はどうしても貴方と話が…え?うわっ?!」

がばっ

王女「ちゅっちゅっ♪」

勇者「?!」///

魔王「なっ?!」///

勇者「おおおおお王女様!おやめ下さい!」///

王女「ペロペロ♪」

魔王「このっ勇者から離れろ!アバズレがあ!!」ゲシッ!

王女「キャウン?!」

勇者「キャウン?」

魔王「キャウン?」

魔王「まさか!」

王女「クーン?」

ぶちりっ

勇者「魔王!王女様のお召し物に何を?!」

魔王「…やはり…この女、王女ではない」

勇者「え?」

魔王「獣の臭いがする」クンクン

魔王「この王女は何か、獣と姿を入れ替えられたのだろう」

魔王「操り人形にする為に…」

王女「ワン!ワンワンワンワオーン!!」

勇者「王女様っちょっと静かに…」

どどどどどどどどど…

大臣「王女様!いかがなさいましたか?!」

兵士「王女様の上着が肌蹴て…?!」

大臣「ええい!勇者ともあろう方が王女に向かって暴行とは何事であろうか!」

大臣「ささっ王女様。こちらにいらっしゃい」

王女「キャンキャン♪」

大臣「よしよし、怖かったですね?」

勇者「大臣よ。よくそんな事を言えるな事が言えるな」

勇者「本物の王女はどこだ!」

大臣「ふん。何の事やら?」

勇者「とぼけるな!」

大臣「兵士達!勇者とクソガキを地下牢へぶち込んでおけ!」

勇者「くっ放せ!」

魔王「勇者!止めろ!抵抗するな!」

ガツン!

-地下牢-

勇者「…」

魔王「本当に抵抗しなかったな」

勇者「魔王が抵抗するなと言ったからだろう。おかげで服がボロボロだ」

魔王「…すまん」

勇者「謝るな。どうせ逃げたとしたら、もう一度忍び込むのは大変だしな」

勇者「それに、魔王には何か考えがあるんだろう?」

魔王「ああ、但しもう一度、王女の傍に行く必要がある」

勇者「分かった」

ぐにゃり

魔王「…素手で…鉄格子を曲げた…だと?」

勇者「レベル100だから、これくらい朝飯前だよ」

魔王(こいつが魔王城に辿り着く前に、力を取り戻さなければ、本気で負けるかもしれない…)

カシャン

魔王・勇者「ん?」

子犬「」ガタガタガタ

魔王「あの時の犬!」

勇者「それ…もしかして牢屋の鍵?助けに来てくれたのか?!」タタッ

子犬「フー…ワン!」ビクビク

勇者「どうして逃げるんだ?」

魔王「当り前だ。牢屋を素手で破る男の腕には抱かれたくないだろう」

勇者「思ったより、兵士が少ないな」

魔王「…王女をどこか別の場所に隠して、そこの警備を固めているのかもしれない」

勇者「このままでは王女が大臣の娘と結婚させられてしまう…」

子犬「ワン!」

勇者「何だ?君も王女が心配なのか?」

魔王「…なるほど」

魔王「犬よ。そなたは王女の居場所を知っているのか?」

子犬「ワン!」

勇者「なに?本当か?」

魔王「行け、犬」

子犬「ワン」トコトコ…

勇者「…ここか」

魔王「教会か。そのまま朝になったら結婚式でもあげるつもりか?」

勇者「そんな事はさせない」スゥ…

ドカン!ガラガラガラ!

大臣「何だ?!くそ!またお前達か!」

勇者「王女様を返して貰う!」

子犬「ウゥー…ワンワンッ!」

大臣「なぜその犬が?!」

大臣「くそっ!兵士ども!こいつらを皆殺しにしろ!」

兵士「しかし相手は勇者様では…」

大臣「ええい!私の命令がきけないと言うのか!」

大臣「貴様も貴様の家族も全員縛り首にするぞ!」

兵士「うっ…勇者様方、お許し下さい!」ジャキッ

兵士「我らの家族為です!お許しを!」ジャキッ

勇者「邪魔をするなら容赦はしないぞ」

子犬「ワン?」

魔王「よいしょっと。犬とは持ってみると意外に重いものだな」

勇者「どうした魔王、犬なんか抱きあげて…」

勇者「それにどうして犬を俺に近付けて…」

ぶちゅー

勇者・犬「?!」

ぼん!

勇者「げほっ!ごほっ!なんだ?これは?」

勇者「俺に犬と口づけをさせて、一体なにをしたい…あ!」

兵士「え?」

兵士「まさか、あれは?」

大臣「チッ…」

「「犬が王女様に?!」」

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