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魔王「なに?!勇者がまだハジマリの村にいるだと?!」 5/10

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翌日・

-水の神殿-

魔王「ここに水の石があるのか?」

勇者「ああ。そして巫女がそれを守っているんだ」

魔王「魔王退治の為と言っても、持ち出す事を巫女は許すのか?」

勇者「まず、試しに聞いてみよう」

??「あら?もしかして勇者?」

勇者「あ、僧侶じゃないか。久しぶりだな」

魔王「知り合いか?」

勇者「こいつは俺の幼馴染で、最初のパーティのメンバーだよ」

巫女「今はこの水の神殿で巫女をしているけどね」

巫女「ハジマリの村から出たという噂は本当だったのね?」

勇者「魔王退治の為に水の石が欲しいんだが、それを貰えるのか?」

巫女「勿論、いいわよ。こちらへどうぞ」

巫女「ここの中に水の石はあるわ」

勇者「…この中?」

巫女「ええ、この中よ」

魔王「…随分と広く深そうな湖だな」

勇者「湖のどこにあるかは分からないのか?」

巫女「私が知ってる訳ないじゃない?」クスクス

勇者「おい!」

魔王「では見つける方法は?」

巫女「火の石があれば簡単に見付かるそうよ」

魔王「火の石はどこにあるんだ?」

巫女「古文書によると…」ペラペラ

巫女「サカイ町にあるわ」

勇者「?!」

魔王「サカイ町とは?」

巫女「ここからずっと西の、魔界と人間界の境にある町よ」

-勇者の家-

魔王「良かったじゃないか。火の石のありかも分かったようだし」

勇者「そうだな」

魔王「では明朝出発でよいな?」

勇者「…ああ」

-翌朝-

どんどんっ

魔王「勇者ー!起きろー!」

魔王「起きないなら開けるぞー!」

どんどんっ

魔王「開けるからなー!」

ばたんっ

魔王「勇者ー…いない?これは手紙?」

魔王「魔王へ。サカイ町には俺一人でいる。お前は大人しく待っていろ、だと?!」カチンッ

魔王「あやつ…勝手な事を!」

友人「あ、あんたはこの間、勇者といた…」

魔王「サカイ町はどこにある?」

友人「え?何ですか突然…」

魔王「サカイ町はどこだ?!」

友人「えー…サカイ町はですね。魔界と人間界の境の町です」

魔王「それは知ってる」イラッ

友人「…長い歴史の間、人間界や魔界の領土になったりを繰り返している町です。現在は人間界の領土ですが」

友人「とても治安の悪い町です」

友人「だからあんたを連れて行きたくなかったんじゃないですか?」

魔王「…分かった。そなたサカイ町の場所は分かるんだな?」

友人「え?ちょっと俺の話を聞いていましたか?」

友人「サカイ町はとっても危険な土地なんですよ?」

魔王「さっき聞いた」

友人「いやいや。それにここから遠いし、魔物や獣も出ると言うし…」

魔王「いいから、そなたは黙って吾輩を案内しろ!」

友人「!!」

-サカイ町―

友人「ようやくついた…死ぬかと思った」

魔王「何を言う。戦闘中もただ見ているだけだったくせに」

魔王「第一、お前に合わせて進んだせいで、大分時間がかかってしまった」

友人「俺はあんた達とは違って、鍛練もした事がない素人なんだ。見ていてどれほど怖かったことか…」

魔王「…軟弱な奴」

友人「それに何度も言いますが、サカイ町はとても治安が悪いんです」コソッ

友人「人浚いや強○、強盗、奴隷売買が盛んに行われていると聞きます」コソッ

友人「ほら!怖そうな連中がチラチラあんたの事を見ているじゃないですか?!」

魔王「じゃあここから別行動をとるか?」

友人「嫌ですよ!怖い!」

男1「よう兄ちゃん。そのお嬢ちゃんは妹か?」

友人「いっいえ!全くの他人です!」ガタガタ

魔王「…」

男1「まだガキだが、もう商品に出来るな」コソッ

男2「ああ…この間、せっかく捕まえた旅人を何者かに逃がされるし」コソッ

男2「早く大勢集めなければ、ボスに殺される」コソッ

友人「あ…うぅ…」ガタガタ

魔王「お兄ちゃん!お腹減ったー」

友人「?!」

男1「腹が減ったのか?俺達いい店知ってるんだ」

魔王「本当?お兄ちゃん、案内して貰おうよ?」

友人「え?!でもっ」ガタガタ

男2「ほら、妹も腹減ったってさ」

男2「俺達は妹さんだけ案内してもいいんだぜ?」

友人(うっ怖い…でも…この子強いし、離れた方が多分もっと危ないかも…)

友人「はい!ついて行きますっ」ガタガタ

友人(うぅ…何だか人通りが少なくなってきた…)

友人(頼むよ。勇者のお供の子…)

魔王「お兄さん達、ちょっと待って…足早くて、ついていくのが大変だよ」ハアハア…

男1「仕方ない奴だな」

魔王「それに靴ずれがとっても痛いの。ほら、見てよ?」

男1「ん?どれどれ?」

どすっ

男1「ぐはっ…」フラッ

どさっ…

男2「な、何だお前?!」

男2(こいつ…ガキの癖に、大の男を一発で沈めやがった…)

魔王「死にたくなければ、奴隷を逃がしている奴の事を話せ」

男2「このクソガキが!」

魔王「そろそろ素直に話す気になったか?」

男2「はっ話します!話しますから殺さないで下さい!!」ガタガタ

魔王「そうだな。そなたの話がどれだけ、我輩に有益な情報かによる」

魔王「心して話せ」

男2「はっはいー!」ガタガタ

男2「二週間前、旅人を捕まえていた倉庫が襲撃された」

男2「目撃者の話じゃ、犯人は男。一人だけだったそうだ」

魔王「その男の特徴は?」

男2「何やらボロい剣を持っていたそうで、それから火の石っていう石を探しているようだ」

魔王(やはり勇者か…)

男2「それから頻繁に何人も逃がされた。これじゃあ商売あがったりだ」

男2「これ以上逃がされるようなら、俺達はボスに殺されちまう」

魔王「…次にその男が現れそうな場所は?」

男2「そうだな…今夜、奴隷オークションがあるから、もしかしたらそこに出るかもしれない」

魔王「そうか。我輩をそこへ連れて行け」

友人「?!」

男2「いや、そんな事をしたら、本当にボスに殺されちまう!」ガタガタ

魔王「どうせ死ぬなら、数時間でも長く生きられる方がよいだろう?」

男2「!」ビクッ

魔王「ならば我輩を、そなたが捕まえた奴隷という事にすればよいだろう」

友人「え?!そんな!そのまま売られちゃったらどうするんですか?!」

魔王「心配無用だ。もしそうなっても逃げればよい」

魔王「男よ。それでよいな?」

男2「はっはい!」ガタガタ

友人「うぅ…でも」

魔王「そなたは来なくてもよいぞ」

友人「行きますよ!お供させて下さい!」

-奴隷オークション会場-

勇者(…ここに捕まった人達が閉じ込められているんだな)

ガャチガチャ……カチリ

勇者(よし。開いた)

カッ!

勇者(な?!眩しい?何だこの光は?!)

??「お前が奴隷どもを逃がしていた奴か?」

勇者(眩しくて姿が分からない)

勇者「君は誰だ?!」

??「人に名を尋ねるなら、先に自分で名乗るんだな」

勇者「…俺は勇者だ」

??「勇者?あの、10年もハジマリの村にいたという?」

勇者「ああ。お前も名を名乗れ」

ギャングのボス「俺はこの一帯を仕切るギャングのボスだ」

ギャングのボス「お前は奴隷を解放していい気になっているようだけど、俺達にとってはお前は立派な盗人だぜ?」

勇者「…」

勇者「俺は単に捕まった人達を助けていた訳ではない」

勇者「本当の目的はあんたに会う事だ」

勇者「あんたが持つ火の石が必要なんだ」

ボス「?!」

勇者「必要であれば損失分の代金は払う。贅沢もせず、10年分の貯めた金がある」

ボス「へぇ?まさかその為に10年もハジマリの村にいた訳じゃないよな?」

勇者「…」

ボス「この石も金で買いたいと?」

勇者「魔王を倒す為だ。譲ってくれたら嬉しいが、そのつもりはないんだね?」

ボス「当り前だ。見ろ」

手下「ぎゃあ?!熱っ体が燃え…ぎゃあああああああ?!」

勇者「?!」

ボス「凄いだろ?この石の力で何だって簡単に燃やせるんだ。本気になれば、一瞬でケシ炭にも出来るんだぜ」

ボス「こんな石を、いくら積まれたって手放せると思うか?」

勇者「…君は魔王を倒したいとは思わないのか?」

ボス「10年も閉じこもってた奴に言われたくないぜ」

勇者「…」

ボス「まあ、でも考えてやらない事もない」

ボス「こいつでゲームをしないか?」

勇者「トランプ?」

ボス「お前が勝ったら火の石を譲るよ。何だったら奴隷の売買もやめてもいい」

勇者「俺が負けたら?」

ボス「そのボロい剣を寄こせ」

勇者「!」

勇者「これは…」

ボス「噂で聞いたよ。勇者の剣って奴だろ?高く売れそうだよなぁ?」ニヤニヤ

勇者「君っ!」

ボス「おっと、それとも俺を殺して火の石を奪うか?」

勇者「…分かった。トランプをしよう」

ボス「ヒュー、話が分かるな」

勇者「イカサマはなしだからな」

ボス「あはは、そんな卑怯な真似はしない」

ボス「…真剣勝負だ」

魔王「ここが奴隷オークションの会場か」

男2「お願いですから、暴れないで下さいよ」ガタガタ

男2「それに俺は何も知らなかった事にして下さい」ガタガタ

魔王「ん?あちらが騒がしいようだが」タタッ

男2「あ!ちょっと!待って下さい!」

友人「おいて行かないで!」

ボス「約束通り、その勇者の剣を渡して貰おうか」

勇者「くっ…」

魔王「勇者ー!」タタタッ

勇者「え?魔王?!どうしてここに…」

友人「おいて行かないで下さいー!」タタタッ

勇者「友人まで…まさか追いかけて来たのか?」

ばきっ!

勇者「いた…」

魔王「馬鹿者!何があったかは知らないが、何故勇者の剣を他人に渡そうとしている」

ボス「威勢のいいお嬢さん。この勇者はゲームに負けたんだ」

ボス「だから約束通り、勇者の剣を渡さなければいけない」

ボス「勿論、勇者が約束を守らないっていうなら、話は別だがな」

魔王「どうせイカサマに決まっておろう!」

勇者「やめろ魔王。例えイカサマだったとしても、見破れなかった俺が悪い」

魔王「では見す見す剣を手放すと言うのか?!」

ボス「じゃあどうする?」

魔王「…分かった」

魔王「勇者の剣の代わりに、我輩ではどうだ?」

勇者「魔王、何を言っている?!」

ボス「あはははは!本気か?お嬢さん?」

魔王「ああ、本気だ」

ボス「くくっ肝が据わってるな。気に入ったぜ」

ボス「勇者。剣の代わりにこっちのお嬢さんでもいいぜ」

勇者「駄目だ!危険だ!」

魔王「元はそなたが勇者の剣を賭けたのがいけないのだろう」

魔王「大丈夫だ。我輩は強い。いざとなったら簡単に逃げられる」

ボス「まあ、逃がさないがな」

ボス「この娘を返して欲しければ、勝負するんだな?俺には火の石もある。何だって受けてやるぜ」

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