魔王「ふはは、小さいからといって甘く見ていたな!」 6/12

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魔王「…お前はいつもそうだ」

勇者「?」

魔王「私になにも教えてくれない」

勇者「教えてるだろ? お前こそ、何も教えてくれないじゃないか」

魔王「ふん」プイッ

勇者「…ほら、ついたぞ」

魔王「……ここは…」

勇者「夜になると、光を放つ花だ、綺麗だろ?」

魔王「すごいな…とても、綺麗だ」

勇者「そうだろ? お前に見せてやりたかったんだ」

魔王「そ、そうか」

勇者「女の子って、こういうところ、好きだろ?」

魔王「そ、そうかもな」

勇者「…」

魔王「…」

勇者「…」

魔王「ど、どした? 勇者…」

勇者「…」ガバッ

魔王「ひゃあぁ!? な、何をするっ!」

勇者「…」

魔王「…や、やめろ! いきなり押し倒したりして、気が狂ったか!?」

勇者「黙れ」

魔王「むぐぅ…んむふむっ!?」

勇者「静かにしろって」

魔王「…」

勇者「…」

魔王(…勇者…私は…)ドキドキ

勇者「…」

魔王「…ん」

勇者「ふう、危なかった…」

魔王「?」

勇者「盗賊だ、見つかってたらまずかったぜ」

魔王「と、盗賊がこんなところに一体?」

勇者「たぶん、この花を摘んでいったんだろう」

魔王「!」

勇者「お、おい!」

魔王「おい! そこの貴様ら!」

「ああ?」

魔王「その花を返せ!」

盗賊A「なんだこのカワイコちゃんは?」

盗賊B「へへ、やっちまうか?」

魔王「ほう? 私に勝てると思っているのか?」

盗賊A「おお、気が強いねぇ!」

魔王「ふん…くらえぇ!」

MPが足りません。

魔王「え?」

盗賊A「ふはははは! 可愛いねぇ!」

魔王「ひっ! さ、触るな! ゲテモノ!」

盗賊B「ゲテモノなんてひどいなぁ、ぐひひっ」

魔王(な、なんで、魔法が使えない!?)

盗賊A「可愛いお尻だねぇ!」

魔王「や、やめろぉ...!」

勇者「くっそ!」

勇者「あいつ、いきなり走りだしやがって…」

勇者「…ん?」

?「…」

勇者「おい、こんなところで、どうしたんだ?」

?「…」ヒュン

勇者「うおっ!」

?「死んでもらう」

勇者「はぁ!?」

勇者「ぐおっ! やめ、ろ!」

?「…」ヒュッヒュッ

勇者「やめろっつってんだろ!」キィン

?「…!」

勇者「お前…何もんだ…?」

?「…」ダッ

勇者「…! 畜生、なんなんだったんだ?」

勇者(顔も隠してたし…。んなことより、あいつを探さねぇと!)

魔王「うぅう…」

盗賊A「さて、まずは何をして遊ぼうか~?」

盗賊B「よしよし、とりあえず、一発いくか?」

?「おい、待て」

盗賊A「ん? お前は、女盗賊じゃねぇか」

女盗賊(以下、盗賊)「女子供は狙うなと言っただろう」

盗賊B「でもよ、こいつからやってきたんだぞ? 一回痛い目にあわないとキリないぜ?」

魔王「この縄をほどけー!」

盗賊B「そう簡単に解くかよ!」

勇者「うおい!」

盗賊「! くっ、追いつかれたか」

盗賊A「なんだおめぇは?」

魔王「ゆ、ゆーしゃ!」

勇者「そいつをはなせ!」

盗賊「A、B、お前らは先に行け」

盗賊A・B「お、おう」

盗賊「…」チャキン

勇者「お前も盗賊だったのか。ゆるせねぇ」

盗賊「女子供は狙わん」

勇者「何いってやがる、現にそれはどういうことだ…?」

盗賊「これは…」

勇者「許さん!」

盗賊(す、すごい気迫…気圧される…!)

勇者「行くぞっ!」

盗賊「ま、待て」

勇者「あ?」

盗賊「私には、お前を倒すことは、できそうにない」

勇者「…」

盗賊「こいつを開放する。それで、いいか?」

勇者「いいや、ダメだ」

勇者「あの花も、返してもらう」

盗賊「それは…できない」

勇者「なら、ダメだ」

盗賊「…私の母が、病気なのだ」

勇者「…?」

盗賊「あの花は、高値で売れる。それで、薬を買えば…」

勇者「…そんな金で買った薬で、お前の母さんがよろこぶとでも思ってんのか?」

盗賊「うるさい…お前に何がわかる!」

ギィン

勇者「わかんねえよ。俺にはもう、看病する母親もいねぇんだから」

盗賊「!」

勇者「お前のそこ舐めきった根性、たたき直してやる!」

盗賊(くっ、強い…)

ギャン

盗賊「…殺せ」

勇者「…立て」

盗賊「?」

勇者「俺の言う事を聞けるか?」

盗賊「…私はすでにお前に負けを認めた身、なんでも言う事を聞こう」

勇者「じゃあ、まず、一つ目は、あいつを開放しろ」

盗賊「わかった」

勇者「二つ目、俺と一緒に町に行くこと」

盗賊「…わかった」

勇者「あと、三つ目。その口に巻いてる、バンダナを外せ」

盗賊「…何故だ?」

勇者「俺がオマエのことを知りたいからだ」

盗賊「…わかった。まず、一つ目の命令に従おう」

魔王「ゆーしゃー!」ギュッ

勇者「大丈夫か? ケガはないか?」

魔王「ああ、大丈夫だ…」

魔王「あ」カァァ

勇者「?」

魔王「は、離れろ、バカ!」

勇者「お前が抱きついたんだろうが!」

盗賊「…二つ目に従おう、それと、三つ目も…」

勇者「ああ」

盗賊「…」スルリ

勇者「なんだ、可愛いじゃねぇか、なんで隠してんだよ」

盗賊「なっ、な…!?」カァァ

魔王「…」ムッ

勇者「それじゃあ、ついてこい」

盗賊「…花は、いいのか?」

勇者「ああ、あの花は全部摘んでも、無くならないから」

盗賊「え?」

勇者「どんな環境でも生えるんだよあの花は。それに、あんまり高値で売れないしな」

盗賊「そ、そうなのか…」

魔王『おい、勇者!』

勇者『あん?』

魔王『なんであの女を連れて行くのだ?』

勇者『あとでわかるさ』

魔王(またそれか)ジロッ

盗賊「?」

勇者「女盗賊、お前はどこの生まれだ?」

盗賊「…砂漠地帯だ」

勇者「…そうか」(この褐色の肌…やっぱりそうか)

勇者「それじゃあ、お前の母さんの病気は、砂漠病か」

盗賊「…ああ」

魔王「さばくびょう?」

勇者「お前には関係ない話さ」

魔王「仲間はずれにするなー!」

勇者「そりゃ、大変だったな」

盗賊「…」

勇者「到着」

魔王「さばくびょうってなにー!?」

勇者「あとで教えてやる」

魔王「お前はそれしか言えんのか!」

盗賊「…私はどうすればいいのだ?」

勇者「ちょっと待ってろ」

盗賊「…わかった」

勇者「見張っとけ」

魔王「さ、指図するな!」

勇者「見張っといてください」

魔王「わ、わかった、見張ってやろう!」

盗賊「…」

魔王「…」

盗賊「…」

魔王「…」ジロッ

盗賊「?」ボイーン

魔王(くそうぅ…)

盗賊「お前は…」

魔王「む、なんだ?」

盗賊「あいつと、どういう関係だ?」

魔王「ふんっ、知るか。私だってわからんわ」

盗賊「…そうか」

勇者「おまたせ」

魔王「遅いぞ! む、何を持っておる?」

勇者「砂漠病の薬だ。これでお前の母さん、助けてやれよ」

盗賊「…私のために…?」

勇者「ああ、けっこう値段だったぜ、ほらよ」

勇者「俺の財布はもうスッカラカンだぜ」

盗賊「…」ポロポロ

勇者「はは、泣くことないだろ。早く、これで母さんに孝行しろよ」

盗賊「ちがう…」

勇者「え?」

盗賊「…あれは、嘘だ」

勇者「!」

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