勇者「狙撃しろ、魔法使い」 10/11

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魔王「ふん、喰らえよ我が爪を」

勇者「くっそっ」

魔王「ほほう。ちょこまかとゴキブリのようだな」

勇者「……ちっ」

魔王「……何故草を食う?」

勇者「薬草だよ! 知らないのか!」

魔王「はっ、そんなものわしには必要ないからなぁ!」

勇者「……よし! もっと行くぞ!」

魔法使い「……すぅー……んっ」

パァンッ!

魔王「ハエのような鉄砲が、邪魔だ!!」

魔法使い「え?」

勇者「魔法使いっ!!」

勇者「ぐああ!!」

魔法使い「勇者さま!?」

魔王「……庇ったか。フハハハ、勇者よ……血まみれではないか!」

勇者「……はっ、こんなの薬草食えば治る! 塗るもんでも、食えばいっしょだ!」

魔王「強がりを……くくく」

魔法使い「……勇者さま、勇者さまぁ!!」

勇者「はは、大丈夫だから。そう泣き叫ぶなって」

魔法使い「でもっ」

勇者「でも、だっては禁止だって」

魔法使い「うぅ……」

魔王「ハーッハハハ、泣かしてくれるじゃないか!」

魔法使い「魔王ーーー!!」

勇者「魔法使い……」

魔王「なんだ、震えて弾も上手く装填できていないじゃないか! 滑稽だな!」

魔法使い「ぐぅ……っ!」

勇者「落ち着け魔法使い!!」

魔王「もうよい、興が冷めた……死ね」

勇者「くそが、……逃げろ、魔法使い!!」

魔王「ふん、魔法使いだけ突き飛ばしたか」

勇者「がっ……ぐは……」

魔法使い「勇者さま……勇者さまぁっ……!」

魔法使い「許さない、絶対に許さないっ!!」

魔王「それがどうした」

勇者「お、落ち着くんだ……」

魔法使い「……すぅー……はぁはぁ、すぅー……」

勇者「落ち着け魔法使い!!」

魔法使い「え?」

勇者「手元がぶれている、落ち着け! 呼吸を整えろ、心を落ち着かせて、敵にだけ集中しろ!」

魔法使い「……」

勇者「……はぁはぁ」

魔法使い「……はい。ごめんなさい」

魔王「ほほう。落ち着きを取り戻したのか。いいだろう、貴様も喰らってやろう! 我が血肉となれ!!」

魔法使い「……すぅー……んっ」

魔王「そんな鉄砲でわしを貫けるものかっ!!」

魔法使い「(ああ、グリフォンと戦ったときを思い出すなぁ。あのときも、食べられそうだったな)」

魔王「フーーハハハハ!!」

勇者「ま、魔法使い!!」

パァンッ!!

魔王「ぐぎゃあああああ!!!!」

勇者「な、何が起きた!?」

魔法使い「……目を、狙った。目だけは、そんな生物でも鍛えられない」

勇者「なっ、あんな狭い的を……」

魔王「ぐおおおおお、このわしに、傷を……」

魔王「ぐぅううう、おおお……」

勇者「流石に効いてる」

魔法使い「……次弾、装填」

魔王「許さぬ、許さぬ……。殺す、殺す、惨く殺す」

勇者「……やってみろ」

魔法使い「……」

魔王「ぬかすか、小童どもが!!」

勇者「ガキじゃねぇよ!!」

魔王「小癪な!!」

魔法使い「……」

魔王「小癪、小癪だ下衆どもが!!」

勇者「ふんっ。魔王、お前は人を舐め過ぎなんだよ!!」

魔王「がぁあ!」

勇者「くっ……」

魔王「わしの爪を、牙を避けるか!!」

勇者「片目で当たるかよ!」

魔王「ならば、これでどうだ! はぁぁ、すぅぅーー」

魔王「火炎の息吹!!」

勇者「ぐおおお!」

魔王「フハハハハ、燃えろ、燃えて消え去れ!!」

魔法使い「勇者さま……!」

勇者「まだ、まだぁああ!!」

魔王「諦めろ、下等種族が!!

パァンッ!

魔王「がっ……。残った目を狙うなど、小賢しい!!」

魔王「貴様から消え去れ!! すぅぅう、火炎の息吹!!」

魔法使い「あ……」

勇者「魔法使いーー!!」

勇者「あ、ああ……そんな……」

魔王「燃え尽きろ! 貴様らなど、我らが魔族に劣る! 遥かに劣る!!」

勇者「魔王、貴様!!」

パァンッ!!

魔王「なっ!?」

魔法使い「……こんな私でも、火炎系魔法の使い手」

魔法使い「けほけほっ……。一発くらい、耐えられる」

勇者「魔法使い!!」

魔王「この下等種族が!! ならばもう一度だ!!」

勇者「魔王、貴様!」

魔王「ぐっ、勇者の剣など効かぬわ!!」

勇者「知っている! 俺は魔法使いを守りたいだけだ!」

魔王「邪魔だああ!!」

魔法使い「……勇者さま」

魔王「すぅぅうう、燃え尽きろぉ! 火炎の息吹!」

勇者「させるかーーー!!」

魔王「ぐがっ! き、貴様……わしの口に直接剣を……」

勇者「ふん、これじゃあ火は吹けないだろ」

魔王「ならば、そのまま噛み千切ってやる!!」

勇者「上等だ……」

魔王「……なに?」

勇者「狙撃しろ、魔法使い」

魔王「なんだと!!」

魔法使い「……はい。すぅー……んっ」

パァンッ!!

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