魔王「ふん、喰らえよ我が爪を」
勇者「くっそっ」
魔王「ほほう。ちょこまかとゴキブリのようだな」
勇者「……ちっ」
魔王「……何故草を食う?」
勇者「薬草だよ! 知らないのか!」
魔王「はっ、そんなものわしには必要ないからなぁ!」
勇者「……よし! もっと行くぞ!」
魔法使い「……すぅー……んっ」
パァンッ!
魔王「ハエのような鉄砲が、邪魔だ!!」
魔法使い「え?」
勇者「魔法使いっ!!」
勇者「ぐああ!!」
魔法使い「勇者さま!?」
魔王「……庇ったか。フハハハ、勇者よ……血まみれではないか!」
勇者「……はっ、こんなの薬草食えば治る! 塗るもんでも、食えばいっしょだ!」
魔王「強がりを……くくく」
魔法使い「……勇者さま、勇者さまぁ!!」
勇者「はは、大丈夫だから。そう泣き叫ぶなって」
魔法使い「でもっ」
勇者「でも、だっては禁止だって」
魔法使い「うぅ……」
魔王「ハーッハハハ、泣かしてくれるじゃないか!」
魔法使い「魔王ーーー!!」
勇者「魔法使い……」
魔王「なんだ、震えて弾も上手く装填できていないじゃないか! 滑稽だな!」
魔法使い「ぐぅ……っ!」
勇者「落ち着け魔法使い!!」
魔王「もうよい、興が冷めた……死ね」
勇者「くそが、……逃げろ、魔法使い!!」
魔王「ふん、魔法使いだけ突き飛ばしたか」
勇者「がっ……ぐは……」
魔法使い「勇者さま……勇者さまぁっ……!」
魔法使い「許さない、絶対に許さないっ!!」
魔王「それがどうした」
勇者「お、落ち着くんだ……」
魔法使い「……すぅー……はぁはぁ、すぅー……」
勇者「落ち着け魔法使い!!」
魔法使い「え?」
勇者「手元がぶれている、落ち着け! 呼吸を整えろ、心を落ち着かせて、敵にだけ集中しろ!」
魔法使い「……」
勇者「……はぁはぁ」
魔法使い「……はい。ごめんなさい」
魔王「ほほう。落ち着きを取り戻したのか。いいだろう、貴様も喰らってやろう! 我が血肉となれ!!」
魔法使い「……すぅー……んっ」
魔王「そんな鉄砲でわしを貫けるものかっ!!」
魔法使い「(ああ、グリフォンと戦ったときを思い出すなぁ。あのときも、食べられそうだったな)」
魔王「フーーハハハハ!!」
勇者「ま、魔法使い!!」
パァンッ!!
魔王「ぐぎゃあああああ!!!!」
勇者「な、何が起きた!?」
魔法使い「……目を、狙った。目だけは、そんな生物でも鍛えられない」
勇者「なっ、あんな狭い的を……」
魔王「ぐおおおおお、このわしに、傷を……」
魔王「ぐぅううう、おおお……」
勇者「流石に効いてる」
魔法使い「……次弾、装填」
魔王「許さぬ、許さぬ……。殺す、殺す、惨く殺す」
勇者「……やってみろ」
魔法使い「……」
魔王「ぬかすか、小童どもが!!」
勇者「ガキじゃねぇよ!!」
魔王「小癪な!!」
魔法使い「……」
魔王「小癪、小癪だ下衆どもが!!」
勇者「ふんっ。魔王、お前は人を舐め過ぎなんだよ!!」
魔王「がぁあ!」
勇者「くっ……」
魔王「わしの爪を、牙を避けるか!!」
勇者「片目で当たるかよ!」
魔王「ならば、これでどうだ! はぁぁ、すぅぅーー」
魔王「火炎の息吹!!」
勇者「ぐおおお!」
魔王「フハハハハ、燃えろ、燃えて消え去れ!!」
魔法使い「勇者さま……!」
勇者「まだ、まだぁああ!!」
魔王「諦めろ、下等種族が!!
パァンッ!
魔王「がっ……。残った目を狙うなど、小賢しい!!」
魔王「貴様から消え去れ!! すぅぅう、火炎の息吹!!」
魔法使い「あ……」
勇者「魔法使いーー!!」
勇者「あ、ああ……そんな……」
魔王「燃え尽きろ! 貴様らなど、我らが魔族に劣る! 遥かに劣る!!」
勇者「魔王、貴様!!」
パァンッ!!
魔王「なっ!?」
魔法使い「……こんな私でも、火炎系魔法の使い手」
魔法使い「けほけほっ……。一発くらい、耐えられる」
勇者「魔法使い!!」
魔王「この下等種族が!! ならばもう一度だ!!」
勇者「魔王、貴様!」
魔王「ぐっ、勇者の剣など効かぬわ!!」
勇者「知っている! 俺は魔法使いを守りたいだけだ!」
魔王「邪魔だああ!!」
魔法使い「……勇者さま」
魔王「すぅぅうう、燃え尽きろぉ! 火炎の息吹!」
勇者「させるかーーー!!」
魔王「ぐがっ! き、貴様……わしの口に直接剣を……」
勇者「ふん、これじゃあ火は吹けないだろ」
魔王「ならば、そのまま噛み千切ってやる!!」
勇者「上等だ……」
魔王「……なに?」
勇者「狙撃しろ、魔法使い」
魔王「なんだと!!」
魔法使い「……はい。すぅー……んっ」
パァンッ!!