勇者「狙撃しろ、魔法使い」 11/11

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

魔王「グギャアアアア!!」

勇者「……ぐっ」

魔法使い「勇者さまっ!」

魔王「オオ、オオオ……」

勇者「……魔王、これまでだ」

魔王「ま、待て! 何を望む、なんでも叶えてやろうではないか!」

勇者「……」

魔王「見えぬ、何も見えない……。そうだ、世界の半分をくれてやろう! それでわしを見逃せ!」

勇者「……俺が望むのは、世界の平和だ」

魔法使い「……勇者さま」

魔王「な、ならば我らは引こう! 全世界から軍を引き上げよう!」

勇者「……」

魔王「それでよかろう!」

勇者「……魔王。もう遅いんだ」

魔王「なっ」

魔法使い「……」

勇者「もう一度、狙撃しろ魔法使い」

魔法使い「……はい。流石にゼロ距離なら、貫けますよね」

魔王「き、貴様らああああ!!!!」

パァンッ!!

勇者「……」

魔法使い「……」

勇者「……これで、よかったのかな」

魔法使い「判りません」

勇者「……そっか」

魔法使い「あ、勇者さま! その腕!」

勇者「ああ……。食われてしまった」

魔法使い「止血しなければ!」

勇者「頼む……。流石に疲れたよ……」

魔法使い「……はい」

勇者「……」

魔法使い「……こんなになるまで」

勇者「はは。二度と剣は持てないかもな」

魔法使い「それでいいです」

勇者「え」

魔法使い「もう……、戦わなくていいんです……」

勇者「魔法使い……」

魔法使い「……終わりました。二人のもとへ行きましょう」

勇者「……ああ、そうだね」

………

女戦士「勇者さま!!……え」

僧侶「魔法使いさんも! よくぞご無事で! 魔王はどうなりまし……たか……?」

勇者「倒したよ」

魔法使い「……うん」

女戦士「……その腕」

僧侶「片手が……」

勇者「あはは、食われちゃった」

魔法使い「……」

女戦士「……くそ」

僧侶「回復魔法も使えない私なんて……」

勇者「魔王を倒せたからいいじゃないか」

僧侶「勇者さま……」

勇者「とにかく、帰ろう!」

魔法使い「……はい」

――その後――

勇者「……やっと、落ち着いたな」

勇者「王様による連日のパレード、パーティ、つらかった……」

僧侶「ふふふ……」

女戦士「……さてと、故郷に帰るかな」

僧侶「皆さん、本当にいいんですか? せっかく貴族になれそうだったのに」

勇者「俺はゆっくり暮らせればそれでいい」

魔法使い「……私も」

女戦士「私はそういう堅苦しいのは苦手だね」

僧侶「皆さんやっぱりそうなるんですね」

勇者「僧侶さんは、中央都の司祭さまなんだっけ? すごいよ」

僧侶「すいみません……私だけ」

勇者「いいよいいよ。また会いに行くからさ」

僧侶「では、わたくしはこちらなので」

女戦士「そっか。途中まで同じ道だから、いっしょに行こう」

僧侶「お願いします」

女戦士「……じゃあ、うちらはこれでお別れだ。じゃあね」

僧侶「はい。今までお世話になりましたっ!」

勇者「ああ。じゃあな。気をつけて」

魔法使い「さようなら」

勇者「んー、これからどうするかなぁ」

魔法使い「どうするんですか?」

勇者「腕も片方ないし……。戦うこともできないから、故郷にでも帰るかな」

魔法使い「……あ、あの!」

勇者「どうした?」

魔法使い「じゃあ、私もいっしょに……その」

勇者「別にいいけど……。学院の人たちを見返すんじゃないのか?」

勇者「魔王討伐の御触れは学院にも届いているし、きっと英雄扱いだと思うけど」

魔法使い「……でも」

勇者「……」

魔法使い「だ、だって!」

勇者「えっと……。いいよ、いっしょに行こうか」

魔法使い「は、はい! いつまでもいっしょです!」

勇者「そうか。そう言って貰えると嬉しいよ」

魔法使い「……ふふ」

終わり

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11