勇者「狙撃しろ、魔法使い」 6/11

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――隣の大陸――

女戦士「船旅もあっという間だったな!」

僧侶「これからどうするんですか?」

勇者「もちろん、魔王城を目指す」

魔法使い「帰ろう」

勇者「だからおい」

魔法使い「……うぅ」

僧侶「あれ? なんか急に魔法使いさんが可愛い……ような……」

魔法使い「……」

僧侶「あら、戻ってしまいました」

女戦士「確か、この大陸の北に魔王の城があったんだっけ?」

勇者「そう。まずは北の最後の砦に向かおうと思う。もう此処からはかなりの激戦区になるから、気を引き締めていこう」

勇者「女戦士や僧侶とは、最近いっしょになったばっかりだからかもしれないけど」

勇者「俺と魔法使いはずっと旅を続けてきた」

勇者「やっとって気持ちがいっぱいだ」

魔法使い「船に乗ろう」

勇者「しれっと帰ろうとするな」

女戦士「決まらないなー」

僧侶「でも、二人で旅なんてすごいです……」

勇者「魔法使いのおかげさ」

魔法使い「……」

女戦士「んだよ、照れんなよ」

僧侶「うふふ」

魔法使い「あ、う……」

勇者「あはは。さてと、どう移動すっかなぁ」

女戦士「あ、あのさ」

勇者「どうした?」

女戦士「い、以前に、私に報酬として渡してくれた金があるだろ」

勇者「そういえば」

女戦士「勇者さまは、返さなくてもいいって言ってたけど」

女戦士「あの港町での稼ぎも合わせたら、馬車を買えるんじゃないかなと思ってさ」

勇者「確かにそうだけど……」

僧侶「いいんですか? それは勇者さまも仰ったように、あなたのお金です」

女戦士「わ、私の金をどう使おうと私の勝手だろ!? どうすんのさ、勇者さま!!」

勇者「……よし、じゃあお金をかしてくれるか?」

女戦士「かすんじゃないよ、いっしょに買うのさ! むしろ、私がかりるようなもんだよ」

魔法使い「……ふふ」

僧侶「まぁ、うふふ」

女戦士「うっせー! 笑うんじゃねぇ!」

勇者「じゃあ、ちょっと大きめの馬車を買わなくちゃな」

女戦士「ん、なんでだ?」

僧侶「……ああ、なるほど」

魔法使い「……うん」

店長「馬車かい? まぁ、この辺りじゃ魔物がうじゃうじゃいるから、物価が上がってるんだけどねぇ」

勇者「これくらいじゃ、足りませんか?」

店長「……足りなくはないけど、グリフォンが多いよー? この辺」

勇者「それならなんとかなります」

店長「そうかい?」

勇者「じゃあ、この一番大きいのを。人が寝そべっても十分で、周囲がよく見える」

店長「あいよ。まいどあり」

――荒野――

女戦士「ったく、道が最悪だな」

僧侶「そうですね。それに、魔物もかなり強くなってきました」

勇者「うん。でも、こういう時こそ敵が襲ってくるから」

魔法使い「くる」

勇者「そうさ。だから注意を払わないとね」

魔法使い「払え」

勇者「もちろん、休憩も大事さ」

魔法使い「そんな暇はない」

勇者「いやいや。見張り以外は休めるときに休まないと」

魔法使い「……だ、だから」

僧侶「……んー、揺れが気持ちいい」

女戦士「お、寝とくか?」

魔法使い「聞いて」

勇者「どうした?」

魔法使い「来てる」

勇者「うん、何がだい?」

僧侶「むにゃむにゃ」

女戦士「おお、ほっぺぷにぷにだ」

僧侶「ううー」

魔法使い「……グリフォン」

勇者「え?」

勇者「て、て、敵襲ーーー!!!」

僧侶「ふえ!? ななな、何事ですか!?」

勇者「グリフォンが来ているみたいだ! 魔法使い、どれくらい来てる!?」

魔法使い「肉眼で、およそ8体確認した」

勇者「どうしてもっと早く言わなかった!」

魔法使い「え? い、言った……」

勇者「ごめん! とにかく、馬を守れ!」

女戦士「了解! うぉんどりゃー!」

僧侶「えっとえっと、えっと!!」

勇者「僧侶、支援だ! 先に防御力上昇の魔法!」

僧侶「はは、はいっ! 防御力上昇の魔法!!」

魔法使い「……」

パァンッ!

女戦士「うっせぇ!!」

僧侶「うわひゃぁ! あ、防御力上昇のまおう!」

勇者「僧侶噛んでる! まおうの防御力上げちゃだめ!」

――馬車の中――

魔法使い「……私、役に立ててる……」

魔法使い「この馬車、いいっ。組み立てた状態で、銃を保存できる」

魔法使い「……あっ、次を装填しないと……」

――    ――

勇者「とにかく、後方支援は魔法使いの狙撃がある! 俺たちはただ馬を守ればいい!」

女戦士「あいよ! どぉおおりゃーーーー! 死にさらせぇー!」

僧侶「すごい、あのグリフォンすらも脳天一撃……」

グリフォン「キシャー!」

勇者「な、馬車を直接狙ってきやがった!」

女戦士「任せろーーーー!! 勇者は馬を!!」

勇者「おう!」

僧侶「攻撃力2倍の魔法! 女戦士さん、頑張って!」

魔法使い「ひっ……。こ、怖い……」

魔法使い「でも……すぅー、んっ」

パァンッ!

魔法使い「……よし」

女戦士「うちらの馬車の屋根は、私の特等席だーーー!!」

グリフォン「ギャアアア」

女戦士「よっし、一匹取った!」

勇者「俺も、なんとか取ったよ!」

僧侶「魔法使いさんが、一匹落としました。これで、残り四匹です!」

勇者「……ん、あいつら急に上昇しやがった」

女戦士「なんだなんだ、私らにびびって逃げ出したのか?」

僧侶「そうだといいんですが……」

魔法使い「違う。あれはきっと」

勇者「……なんだ」

魔法使い「狩りの体制を変えただけ」

勇者「……来るぞ、女戦士」

女戦士「あいよ……」

グリフォン「キシャーー」

勇者「あ、あいつら一気に急降下してきやがった!」

女戦士「私は一匹抑える! 勇者も一匹頼んだ!」

勇者「おう、任せろ!」

魔法使い「私も、一匹は確実に仕留める」

僧侶「え、でもそれじゃああと一匹は……」

勇者「ファイトだ、僧侶さん!」

僧侶「……わ、私だって神に仕える者です。これくらいっ!」

魔法使い「……」

魔法使い「(……でも、僧侶さんにグリフォンを仕留められるはずない)」

勇者「……くっ」

魔法使い「(それは勇者さまもわかっているみたい)」

女戦士「うおぉおおおおおおっ!」

僧侶「く、来るなら来いです!」

魔法使い「……あまり、見ないで」

僧侶「え、どうして寝そべって……って、魔法使いさん、そんな足を上げてはしたないです!」

女戦士「なんかL字になってるな」

勇者「対空中姿勢だな」

魔法使い「だから、見ないで……」

勇者「……来た」

女戦士「今から来るのかよ! さっき叫んじまったじゃないか!」

僧侶「コントはそこまでです」

魔法使い「……すぅー……――んっ」

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