――隣の大陸――
女戦士「船旅もあっという間だったな!」
僧侶「これからどうするんですか?」
勇者「もちろん、魔王城を目指す」
魔法使い「帰ろう」
勇者「だからおい」
魔法使い「……うぅ」
僧侶「あれ? なんか急に魔法使いさんが可愛い……ような……」
魔法使い「……」
僧侶「あら、戻ってしまいました」
女戦士「確か、この大陸の北に魔王の城があったんだっけ?」
勇者「そう。まずは北の最後の砦に向かおうと思う。もう此処からはかなりの激戦区になるから、気を引き締めていこう」
勇者「女戦士や僧侶とは、最近いっしょになったばっかりだからかもしれないけど」
勇者「俺と魔法使いはずっと旅を続けてきた」
勇者「やっとって気持ちがいっぱいだ」
魔法使い「船に乗ろう」
勇者「しれっと帰ろうとするな」
女戦士「決まらないなー」
僧侶「でも、二人で旅なんてすごいです……」
勇者「魔法使いのおかげさ」
魔法使い「……」
女戦士「んだよ、照れんなよ」
僧侶「うふふ」
魔法使い「あ、う……」
勇者「あはは。さてと、どう移動すっかなぁ」
女戦士「あ、あのさ」
勇者「どうした?」
女戦士「い、以前に、私に報酬として渡してくれた金があるだろ」
勇者「そういえば」
女戦士「勇者さまは、返さなくてもいいって言ってたけど」
女戦士「あの港町での稼ぎも合わせたら、馬車を買えるんじゃないかなと思ってさ」
勇者「確かにそうだけど……」
僧侶「いいんですか? それは勇者さまも仰ったように、あなたのお金です」
女戦士「わ、私の金をどう使おうと私の勝手だろ!? どうすんのさ、勇者さま!!」
勇者「……よし、じゃあお金をかしてくれるか?」
女戦士「かすんじゃないよ、いっしょに買うのさ! むしろ、私がかりるようなもんだよ」
魔法使い「……ふふ」
僧侶「まぁ、うふふ」
女戦士「うっせー! 笑うんじゃねぇ!」
勇者「じゃあ、ちょっと大きめの馬車を買わなくちゃな」
女戦士「ん、なんでだ?」
僧侶「……ああ、なるほど」
魔法使い「……うん」
店長「馬車かい? まぁ、この辺りじゃ魔物がうじゃうじゃいるから、物価が上がってるんだけどねぇ」
勇者「これくらいじゃ、足りませんか?」
店長「……足りなくはないけど、グリフォンが多いよー? この辺」
勇者「それならなんとかなります」
店長「そうかい?」
勇者「じゃあ、この一番大きいのを。人が寝そべっても十分で、周囲がよく見える」
店長「あいよ。まいどあり」
――荒野――
女戦士「ったく、道が最悪だな」
僧侶「そうですね。それに、魔物もかなり強くなってきました」
勇者「うん。でも、こういう時こそ敵が襲ってくるから」
魔法使い「くる」
勇者「そうさ。だから注意を払わないとね」
魔法使い「払え」
勇者「もちろん、休憩も大事さ」
魔法使い「そんな暇はない」
勇者「いやいや。見張り以外は休めるときに休まないと」
魔法使い「……だ、だから」
僧侶「……んー、揺れが気持ちいい」
女戦士「お、寝とくか?」
魔法使い「聞いて」
勇者「どうした?」
魔法使い「来てる」
勇者「うん、何がだい?」
僧侶「むにゃむにゃ」
女戦士「おお、ほっぺぷにぷにだ」
僧侶「ううー」
魔法使い「……グリフォン」
勇者「え?」
勇者「て、て、敵襲ーーー!!!」
僧侶「ふえ!? ななな、何事ですか!?」
勇者「グリフォンが来ているみたいだ! 魔法使い、どれくらい来てる!?」
魔法使い「肉眼で、およそ8体確認した」
勇者「どうしてもっと早く言わなかった!」
魔法使い「え? い、言った……」
勇者「ごめん! とにかく、馬を守れ!」
女戦士「了解! うぉんどりゃー!」
僧侶「えっとえっと、えっと!!」
勇者「僧侶、支援だ! 先に防御力上昇の魔法!」
僧侶「はは、はいっ! 防御力上昇の魔法!!」
魔法使い「……」
パァンッ!
女戦士「うっせぇ!!」
僧侶「うわひゃぁ! あ、防御力上昇のまおう!」
勇者「僧侶噛んでる! まおうの防御力上げちゃだめ!」
――馬車の中――
魔法使い「……私、役に立ててる……」
魔法使い「この馬車、いいっ。組み立てた状態で、銃を保存できる」
魔法使い「……あっ、次を装填しないと……」
―― ――
勇者「とにかく、後方支援は魔法使いの狙撃がある! 俺たちはただ馬を守ればいい!」
女戦士「あいよ! どぉおおりゃーーーー! 死にさらせぇー!」
僧侶「すごい、あのグリフォンすらも脳天一撃……」
グリフォン「キシャー!」
勇者「な、馬車を直接狙ってきやがった!」
女戦士「任せろーーーー!! 勇者は馬を!!」
勇者「おう!」
僧侶「攻撃力2倍の魔法! 女戦士さん、頑張って!」
魔法使い「ひっ……。こ、怖い……」
魔法使い「でも……すぅー、んっ」
パァンッ!
魔法使い「……よし」
女戦士「うちらの馬車の屋根は、私の特等席だーーー!!」
グリフォン「ギャアアア」
女戦士「よっし、一匹取った!」
勇者「俺も、なんとか取ったよ!」
僧侶「魔法使いさんが、一匹落としました。これで、残り四匹です!」
勇者「……ん、あいつら急に上昇しやがった」
女戦士「なんだなんだ、私らにびびって逃げ出したのか?」
僧侶「そうだといいんですが……」
魔法使い「違う。あれはきっと」
勇者「……なんだ」
魔法使い「狩りの体制を変えただけ」
勇者「……来るぞ、女戦士」
女戦士「あいよ……」
グリフォン「キシャーー」
勇者「あ、あいつら一気に急降下してきやがった!」
女戦士「私は一匹抑える! 勇者も一匹頼んだ!」
勇者「おう、任せろ!」
魔法使い「私も、一匹は確実に仕留める」
僧侶「え、でもそれじゃああと一匹は……」
勇者「ファイトだ、僧侶さん!」
僧侶「……わ、私だって神に仕える者です。これくらいっ!」
魔法使い「……」
魔法使い「(……でも、僧侶さんにグリフォンを仕留められるはずない)」
勇者「……くっ」
魔法使い「(それは勇者さまもわかっているみたい)」
女戦士「うおぉおおおおおおっ!」
僧侶「く、来るなら来いです!」
魔法使い「……あまり、見ないで」
僧侶「え、どうして寝そべって……って、魔法使いさん、そんな足を上げてはしたないです!」
女戦士「なんかL字になってるな」
勇者「対空中姿勢だな」
魔法使い「だから、見ないで……」
勇者「……来た」
女戦士「今から来るのかよ! さっき叫んじまったじゃないか!」
僧侶「コントはそこまでです」
魔法使い「……すぅー……――んっ」