――麓の町――
村人A「ようこそ、ここは麓の町だ!」
魔法使い「……」
勇者「やぁこんにちわ。さっそくだけど、酒場があるって聞いたんだが」
村人A「ああ、それならこっちさ!」
勇者「ありがとう」
魔法使い「……ねぇ」
勇者「ん、なんだ?」
魔法使い「……あの人、前の村に」
村人A「あいつは俺の従兄弟さ!」
魔法使い「……そう」
村人A「それにしても、君って可愛いね!」
魔法使い「……ども」
村人A「……えっと、すまない。警戒させてしまったかな」
勇者「いやいや。こいつ実はひとみし」
魔法使い「……」
勇者「い、痛い。蹴らないで」
村人A「ははは、仲が宜しいんですね!」
勇者「そ、そういうことにしておいて……あはは」
魔法使い「……」
――酒場――
マスター「やぁこんにちわ」
勇者「こんにちわ」
マスター「今日はどのような用件で?」
勇者「えっと。傭兵を一人、できれば前衛向けがいいんだけど」
マスター「ああ。それなら、ちょうど一人ここに泊まっている戦士がいるよ」
勇者「本当か。その人はどちらに?」
マスター「ほら、あそこに座っている人だよ」
勇者「感謝する。魔法使い、行くぞ」
魔法使い「……はい」
勇者「やぁ初めまして」
??「誰、あんた」
勇者「俺は勇者。君は戦士かな」
女戦士「ああ、そうだよ。私は女戦士。まさかこんな所で勇者さまに出会うなんてね」
勇者「実は、君を雇いたいと思っているんだよ」
女戦士「傭兵を? またそれは何で」
勇者「あの山を越えたいんだけど、前衛が俺一人じゃどうも頼りなくて」
女戦士「ふーん。そっちの女はなんなの?」
魔法使い「……魔法使い」
女戦士「なるほど。二人じゃそりゃあ傭兵も雇いたくなるか」
勇者「そうなんだ。だから頼まれてくれないかな」
女戦士「金さえ積んでくれるなら」
勇者「お金なら、これくらいでどうだろう」
女戦士「……なるほどね」
魔法使い「……」
女戦士「でも、今の山を越えるとなりゃ話しは別だ。だってキマイラが住み着いてるんだからね」
勇者「知ってる。じゃあ、山を越えれれば追加としてこれくらいはどうかな」
女戦士「ふむ。……ぎり及第点かな。いいよ、いっしょに行こう」
勇者「それは助かった」
魔法使い「……よ、宜しく」
女戦士「ああ、こちらこそ宜しく」
女戦士「んで、回復はどうすんのさ」
勇者「それが困ってるんだよ。僧侶とかいないかな」
女戦士「教会も無いこんな僻地に僧侶なんているはずないだろ」
勇者「……じゃあやっぱり薬草かぁ」
魔法使い「……」
女戦士「今まではどうしてたんだよ」
勇者「ん、薬草とかいろいろ」
女戦士「結局薬草かよ! よくここまで旅が出来たな……」
勇者「自分でもそう思う……」
??「あ、あのー。僧侶を探しているんですかぁ?」
勇者「えっと、君は……」
女僧侶「わたくし、僧侶と申します」
魔法使い「……っ!」
勇者「おお!?」
僧侶「実は……。この山を越えたいと思っていたんですが、仲間もいないし、傭兵を雇うお金もなくて」
僧侶「お、お邪魔でなければ是非……山を越えるまででいいので、仲間にして頂けないでしょうか?」
勇者「えっと、でも俺君を雇うお金なんて」
僧侶「そんなの、いりません。きっとこれも神のお導き、さぁさぁ!」
魔法使い「……勇者さま」
勇者「じゃあ……、こっちからも宜しくお願いするよ!」
僧侶「本当ですか!? よかったぁー……」
僧侶「では、これから宜しくお願いします。改めて、女僧侶と申します」
女戦士「私は女戦士だ。この山を越えるまでは、僧侶と同じだね」
魔法使い「……ども、魔法使いです」
勇者「勇者だ。これから、山を越えるまでの短い間だけど、宜しく!」
勇者「じゃあ、さっそく山越えに!」
魔法使い「……あ」
勇者「ん?」
僧侶「今日はもう夕刻です。明日の朝にしませんか?」
魔法使い「……そう」
女戦士「私もその意見に同意だね」
勇者「そ、そっか……。じゃあ今日は記念に上手いの食って、寝て、そっから行くか!」
戦士「いいねぇ!」
――夜――
コンコン
勇者「はい、どうぞ」
魔法使い「……」
勇者「あ、魔法使い。どうした? あの人たちといっしょの部屋じゃなかったっけ?
魔法使い「……勇者さま、もう……無理です」
勇者「……も、もしかして」
魔法使い「人見知りの私にもう……。今日はこっちで寝てもいいですか?」
勇者「俺は別にいいけど……」
魔法使い「うぅ、人見知りな私が憎い……」
勇者「そんなに恥ずべき事じゃないと思うんだけどなぁ」
魔法使い「で、でも勇者さま! 私、この旅に出ようと思ったのは……色んな意味で強くなりたくて」
勇者「いや、今でも十分魔法使いは強いよ」
魔法使い「……ありがとうございます」
勇者「大丈夫だから。ほら、そっちのベッドは空いてるから、休みなさい」
魔法使い「……い、いっしょに」
勇者「どうした?」
魔法使い「な、なんでもないです……。おやすみなさい」
勇者「はい、おやすみなさい」
――翌日、山――
魔物が現れた
魔法使い「……えい」
プシュン
僧侶「ふえ、何それっ!? あ、えと、筋力上昇の魔法!」
女戦士「どりゃー!」
勇者「おんどりゃー!」
魔物は倒れた
女戦士「いやぁ、すごいね僧侶ちゃん」
僧侶「ちゃん!? えっと、ありがとうございます」
女戦士「……んで」
魔法使い「……」
女戦士「あんた、さっきのアレはお遊びかい? 何の魔法を使ったのかすら判んないぞ」
僧侶「女戦士さん……」
勇者「……すまん」
女戦士「なんで勇者さまが謝るんだよ」
勇者「こいつ、あれでも本気なんだよ」
女戦士「……お、おいおい嘘だろ? あんなの、初心者レベルじゃねぇか」
魔法使い「……」
女戦士「おい、なんとか言えよ」
魔法使い「……ほんと」
女戦士「ほ、本当って……。それでも栄えある勇者一向の魔法使いかよ」
魔法使い「……」
僧侶「女戦士さん、もうそれくらいで」
女戦士「……くっそ。あんたみたいな奴がなんで」
勇者「頼む、それくらいにしてくれ」
女戦士「……ああもう! すまん、ちょっと頭冷やしてくる!」
魔法使い「……ごめんなさい」
女戦士「っ!……ちっ」
勇者「魔法使い……」
僧侶「あ、あうう……」
魔法使い「……」
僧侶「女戦士さん、どこ行っちゃったんでしょう……」
勇者「すぐに帰ってくるよ。傭兵はお金を貰った分、しっかりと働くからね」
魔法使い「……」
僧侶「それにしても、魔法使いさんは本当に何も喋らないのですね」
魔法使い「……えと」
僧侶「あの、わたくしは確かに新参者ですが、少しでも仲良くして頂ければ……」
魔法使い「……勇者」
勇者「俺に助けを求めるなよ……。仲良くすればいいんじゃないかな」
魔法使い「……はい」
僧侶「まぁ! では、もっとお喋りしましょうね!」
魔法使い「……」
勇者「おいおい」
勇者「とりあえず、少し休むか」
魔法使い「はい」
僧侶「そうですね」