勇者「狙撃しろ、魔法使い」 9/11

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

側近「ばかなっ!」

勇者「おりゃああ!!」

側近「くっ……。ふん、それでも貴様らに勝ち目などないわ!」

女戦士「おいおい私も忘れんなよ!!」

側近「ぐぅう! 小賢しい奴らめ! しかし、すぐにでも復活の呪文を」

勇者「させるかよ!」

側近「だが既に遅い! もう魔物は復活の準備を始めているっ!」

女戦士「……魔法使いちゃん!」

魔法使い「(……視界の端で、僧侶さんが倒れて行くのがわかる)」

魔法使い「(……魔物は一掃された)」

魔法使い「(側近がいる……。でも、二人が体を張って止めている)」

魔法使い「(少しでも照準を間違えたら……)」

魔法使い「……大丈夫。僧侶さんのためにも……すぅー……んっ」

魔法使い「(狙うは一点、あの眉間だけっ)」

パァンッ!!

側近「かはっ……」

勇者「や、やったか?」

側近「……」

女戦士「どうだ」

側近「ふん、そういうときはやってないフラグなんだろう?」

勇者「くそっ」

女戦士「流石に、このレベルまで来るといくら威力が高くても鉄砲じゃ……」

側近「さぁ、これからが貴様らの血祭りだ!」

勇者「くっ!」

側近「なんだなんだ、力負けしてるぞ?」

女戦士「うわぁっ! なんつーばか力だよ……」

側近「魔王軍は無敵なのだ!」

パァンッ!

側近「ぐはぁっ!?」

勇者「同じ所に、二発目!?」

魔法使い「はぁはぁ……。そ、僧侶さんの犠牲を、無駄はしないっ」

側近「ば、ばかな……」

勇者「でも、どうしてそんな速く……」

魔法使い「速度上昇の魔法。僧侶さんが掛けておいてくれました」

魔法使い「また、僧侶さんに救われました……」

側近「……ぐおおおお」

女戦士「流石に、効いているみたいだね」

勇者「眉間に二発の銃弾。上位の魔物でも倒れているはずなのに……」

側近「魔王軍は、魔王軍は!!」

勇者「そんなの知るかよ、くたばりやがれ!!」

側近「……がはっ……」

側近「……――」

女戦士「……さ、さすがにもう動かないよな?」

勇者「そうだろ」

魔法使い「僧侶さん!」

僧侶「……」

勇者「そうだ、僧侶さん!」

女戦士「僧侶ちゃん、大丈夫かい!?」

魔法使い「……うぅ」

女戦士「僧侶ちゃん……」

勇者「くっそ……」

僧侶「……」

魔法使い「せっかく、こんなに仲良くなれたのに……」

勇者「魔法使い……」

魔法使い「こんなのって……」

女戦士「くそっ、絶対に仇を取ってやる!!」

魔法使い「……はい」

僧侶「……あ、ぐっ」

魔法使い「僧侶さん……?」

僧侶「……ふ、ふふ。言ったじゃ、ない……です、か。死に、ま……せん、って」

魔法使い「でも、どうやって……」

僧侶「気合と、根性です。回復魔法を、遅延発動させました」

女戦士「こんな技術……」

僧侶「攻撃魔法で削れる体力を、回復魔法で相殺しました」

勇者「なんてむちゃくちゃな」

僧侶「ふふ、でも……少し危なかったです。もう一歩も動けそうにありません」

魔法使い「僧侶さんが頑張ったと思う……頑張ったよぉ……」

僧侶「ああ、魔法使いさんのそんな愛らしい顔を見れただけで満足です」

女戦士「……でも、本当に良かった」

勇者「ああ。よかった……」

僧侶「……わたくし、動けそうにないので、どうか置いていってください」

勇者「……」

魔法使い「帰ろう勇者さま。僧侶さんを失いたくない」

僧侶「だめです。やっとここまで来たんですから」

勇者「……」

魔法使い「でも、だってっ!」

僧侶「お願いします」

勇者「わかった……」

魔法使い「勇者さまっ!」

勇者「だけど、女戦士……。君は僧侶についてやって欲しい」

女戦士「言われるまでもない」

僧侶「……ですが」

勇者「大丈夫だよ。俺とこいつで、ばっちり仕留めてきてやるからさ」

勇者「じゃあ、行ってくるよ」

魔法使い「任せて」

僧侶「ごめんなさい……」

女戦士「……武運を祈る」

僧侶「……ごめんなさい、本当にごめんなさい」

女戦士「気にすんな。きっとあの二人ならやってくれるよ」

僧侶「……ああ、神よ」

女戦士「ははは。とりあえずさ、隠れておこう」

僧侶「……はい」

勇者「……なんか久しぶりだな」

魔法使い「二人きりっての、そうですね」

勇者「旅の始まりを思い出す」

魔法使い「……本当に、こんな所まできちゃったんだ」

勇者「そうだな。あんなに逃げたがってたくせにな」

魔法使い「……本音を言うと、今でも走って家に帰りたいです」

勇者「そうなんだ」

魔法使い「でも、私……勇者さまや、仲間たちと此処まできたの、無駄にしません」

勇者「魔法使い……」

魔法使い「絶対に勝ちましょう……。魔王を倒せば平和に」

勇者「そうだな。そして見返してやれ、お前を苛めていた連中を」

魔法使い「……はいっ!」

――魔王城 魔王の間――

勇者「……」

魔法使い「…・」

魔王「ふふふ、ははは、ふーーははは!! よくぞここまで来た勇者よ!」

勇者「お、お前が魔王!」

魔法使い「……っ」

魔王「まさかあの側近を倒してしまうとはな」

魔王「それにしても……。汝らは二人だけか? 残りは死んだか」

勇者「死んでない。お前なんて、俺たち二人でも十分だ!」

魔法使い「……うん」

魔王「なるほど……。くくく、よくぞ吼えた!」

魔王「ならば、敬意を表してわしの本当の姿を見せてやろう!!」

勇者「な、なんだあれは」

魔法使い「……真っ黒な、竜」

魔王「我こそ、魔の王! 竜の王! 竜王である!!」

勇者「……でけぇ」

魔法使い「あんな鱗……流石に貫けない……うぅ」

勇者「弱気になるな!! 弱点はどっかにあるはずだ!!」

魔王「フハハハハ、そんなものあるはずないだろう!」

魔王「オリハルコンよりも硬い我が鱗を、そんな鉄砲でどうにかると思うてか!」

勇者「やってみなくちゃ分からないだろうが!!」

魔王「減らず口を! かかってこい、勇者よ!」

勇者「うぉおおおお!!」

勇者「おりゃあー!!」

魔王「なんだそれは。傷一つ付かぬぞ?」

勇者「くっそ、かてぇ……」

魔法使い「装填完了……すぅー……んっ」

パァンっ!

魔王「ん、ハエか?」

魔法使い「そんな……。最大威力だったのに……」

魔王「貴様はなんだ? 大道芸人か何かか?」

勇者「俺ら勇者一向の魔法使いだよ! その目に刻めよ!!」

魔王「フハハハ、効かぬ効かぬわ! それにしても、貴様が魔法使い? はっ、赤子並の魔力しか持ってはおらぬではないか」

魔王「なんだ、出来損ないか?」

魔法使い「……ぐっ」

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11