町長「ああ、あの方ですか。随分繁盛なされているようですね」
武具屋「おう、それよそれ」
町長「だからなんですか」
武具屋「あいつ伝説の武具なんかもいっぱい持ってるらしーじゃねーか」
町長「そのようですね。ただ、それは普通に買える様な値段ではないようですけど」
武具屋「俺思ったんだよ。あいつの売ってるもんってよ。すげー貴重品なんじゃねーかって」
町長「それは魔王討伐の勇者様達のものだったんですから当然でしょう」
武具屋「だろ?それをあの商人あっちへこっちへ売りまくりやがってよ」
町長「それがなにか?」
武具屋「あれはもっと大事にしなきゃいけないもんだろうってことだよ」
町長「大事に?」
武具屋「そう!王国でも先王やかつての英雄達の遺産を大事にしてるじゃねーか」
町長「ええ、王国博物館ですね」
武具屋「おう!それよそれ!あいつの持ち物って一種の国宝じゃねーの?勝手に売っていいのかよ」
町長「た、たしかに・・・・・・」
武具屋「町長からも言ってやってくれよ。お前の持っているのは売っていいようなものじゃないぞって」
町長「わ、分かりました」
武具屋「頼んだぜ!」
町長「ところで武具屋さん、さっきから貴方が被ってるそれはなんですか?」
武具屋「はっ?これは勇者ちゃんのパン・・・・・・いや、なんでもない」
商人「やれやれ、1ヶ月でこれだけの売り上げならまずまずでしょうか」
商人「長い旅でしたからねぇ・・・・・・。まだ結構売れるものが残ってますね」
商人「この町はこの辺りで、別の町にいってみますか」
町長「ちょっと商人さんよろしいでしょうか」
商人「あ、町長。これはお世話になっております」
ペコッ
町長「いえ、今日はお願いがあってきたのです」
商人「お願い?」
町長「あなたの売っているものは勇者様達の武具だそうで」
商人「ええ、まぁ道具もありますけど」
町長「それをまとめて寄付する気はございませんかな?」
商人「え?」
町長「それは今後勇者様達の遺産として後世に残していかなければならないもの」
町長「そのような貴重な品はぜひ博物館に展示なされては」
商人「いや、しかし、これは私が勇者達から買い取ったものでして・・・・・・」
町長「ではその買い取った値段をお支払いしましょう」
商人「町長さん、よく聞いてください。これを私が買い取ってなければおそらくこれらは倉庫の錆となっていたでしょう」
商人「それを皆さんに喜んでもらえるものとしてこうして売ることはその商品自体の存在価値を高めるものです」
商人「それこそ有効利用というものではないですか?」
町長「博物館なら大勢の人に見てもらえます。それにメンテナンスも一般の方よりはしっかりできるでしょう」
町長「ぜひ!売っていただきたい!」
商人「しかし・・・・・・これを買値で売ってくれとは商売をご存じないとしかいいようがありません・・・・・・。私も商売人ですので・・・・・・」
町長「では、いかほどでしたら?」
商人「えっと、このくらいでしょうか」
パチパチパチッ
町長「!!?」
町長「ば、馬鹿にするのもたいがいになさい!!!バチあたりにもほどがありますぞ!!」
町長「こ、これは世界を買えるほどの値段ではございませんか!!」
商人「その通り。勇者たちはこれだけの価値のある仕事をしたのです」
町長「むぐぐ・・・・・・」
町長「皆のもの!!」
パチンッ
武具屋「おせーよ、町長」
ザッ
武具屋「わりーけど、その商品は置いていってもらうぜ」
商人「あなたでしたか」
武具屋「俺と組んでればこんなことにはならなかったのによ」
町長「申し訳ないが、こうなれば世の中のため、商人さん。あなたには泣いてもらう」
商人「ふぅ・・・・・・私手荒なことは苦手なんですが・・・・・・」
武具屋「や、やろうって言うのか。この人数相手に」
商人「こう見えても私も勇者達と魔王を倒した一人ですよ」
ザッ
武具屋「ま、丸腰で何言ってやがる!」
商人「だって、私が使ったらこれらの商品価値が下がってしまうじゃないですか」
武具屋「地獄で言ってろ!」
ズバッ
町長「あ、余り乱暴にしてはいけませんよ!」
武具屋「わぁってるって!ころさねーよ」
商人「はぁ、仕方ないですね」
サッ
トスッ
武具屋「うぐっ・・・・・・」
バタッ
町長「な、何を!?」
商人「ちょっと気絶してもらったです」
町長「わ、私達をどうするつもりだ」
商人「私も商売人として修羅場はくぐってきているつもりです。でも暴力は嫌いなのでこの辺で」
ボフンッ
町長「ごほっ、ごほっ・・・・・・煙幕!?」
ヒヒーン
商人「ではごきげんよう!」
商人「はぁ・・・・・・失敗したなぁ」
商人「敵を作るつもりはなかったんですけどねぇ」
商人「それに最後の方は使用済みランジェリーショップみたいになってしまいましたし」
商人「やっぱり狙うのは王族か富豪ですかね」
商人「では、次はあそこあたりですかね」
商人「大物を狙ってみましょう」
―――カジノの町
商人「ここなら富豪なんかも集まっているでしょう」
商人「とりあえずここにきたならまずカジノにご挨拶しておきますかね」
バタッ
商人「さて、支配人さんはどこでしょう。ん?」
勇者「ちょ、ちょっと待って!次!次買ったら返すから!」
黒服「何を言っているんですか?あなたは我々にこんなに借金があるんですよ?」
勇者「だから次勝ったら返すからぁ!お・ね・が・い♪」
黒服「可愛く言っても駄目です。さぁ、こっちへ」
グイッ
商人「あれ?なんか幻が見えてる・・・・・・」
ゴシゴシ
商人「あれ?目がおかしいなぁ」
勇者「お願い!許してぇー!」
黒服「さぁ、こちらへ」
グイグイッ
勇者「わ、私をどうする気?」
黒服「地下で働いてもらうことになるでしょうね」
勇者「ち、地下!?」
黒服「勇者様の体なら高値で買われるでしょう」
勇者「か、体を売るの!?や、やだ!」
ジタバタッ
黒服「力ずくですか?自分で作った借金なんですよ?」
勇者「うっ・・・・・・」
黒服「大丈夫です。勇者様ならすぐ買い手がつきます。それに子供を欲しがる富豪の方も多いでしょう」
勇者「こ、子供!?」
黒服「優秀な遺伝子を残したいというのは動物の本能でしょう?勇者様の遺伝子となればそれはもう高値で」
勇者「や、やだ!助けて!」
黒服「ご安心を2,3人も産んでいただければ借金は返せるでしょう」
黒服「では、勇者様地下へご案内ー」
勇者「ちょっ、ちょっとーたーすーけーてー」
商人「はぁ、ほんとに勇者さんですか・・・・・・」
勇者「しょ、商人!助けてよー。この人たち酷いんだよ!」
商人「何でこんなことになってるんですか・・・・・・」
勇者「それは・・・・・・」
商人「あの時のお金はどうしたんですか?」
勇者「遊んで暮らせるって言ったでしょ?だから遊んで暮らしてたんだよ!」
勇者「なのにカジノで遊んでたらどんどん減っちゃって!」
勇者「いつの間にかなくなっちゃったんだよ!酷いでしょ。この人たち」
黒服「勇者様のお知り合いですか?」
商人「いえ、なんか人違いでした」
スタスタッ
勇者「ちょっと!商人!お願い!待って!ま、待ってくれないと商人の恥ずかしい秘密ばらすよ!」
勇者「商人はねー!宿屋で私達と一緒の部屋のときねー!」
商人「ちょっ!!」
ダダッ
勇者「えへへ、戻って来てくれた。商人はやさしいなぁ」
商人「はぁ・・・・・・王様とかに相談すれば多少の借金くらいは何とかしてくれたんじゃないですか」
勇者「そ、それは・・・・・・」
黒服「王様からの借金はこれだけになっております」
スッ
商人「わおっ・・・・・・」
黒服「そして我々に対する借金がこれ」
スッ
商人「oh・・・・・・」
黒服「我々も本来こんなことはしたくありませんが、これも商売ですので」
商人「商売・・・・・・。いいでしょう。私の土壌ですね」
黒服「何とかできると?こちらは出るところに出て判断をあおいでもいいのですよ」
勇者「商人たすけてー」
商人「もう勇者さんは黙っててください」
勇者「はい・・・・・・」
商人「まず、この金利ですが、明らかに法定金利を超えていますね」
黒服「そ、それはこのカジノ内でのルールで・・・・・・」
商人「しかも、ここ。2重で金利をかけています。しかも明細が不明な借金がこことここに」
黒服「うっ・・・・・・」
商人「ですので、実際の借金はこれくらいではないですか?」
パチパチッ
黒服「な、何を・・・・・・」
商人「違いますか?」
黒服「うっ・・・・・・」
商人「そして勇者さんが使った借金がこれだけ。これをお返ししますのでそれでチャラにしませんか?」
黒服「き、金利は!」
商人「違法の金利、しかも2重、不明金。出るところに出てもいいんですよ?」
黒服「くっ・・・・・足元を見て・・・・・・」
商人「いかがです?それなら即金でお支払いしましょう」
商人「公にこれを晒して何も取れなくなるよりはマシではないですか?」
黒服「わ、分かりました」
商人「では借用書をいただきます」
黒服「これです」
スッ
商人「ではこちらが代金です」
黒服「ではこれにて」
ササッ
勇者「商人!それやぶいちゃって!」
商人「は?何を言っているんですか?これは私が買い取ったんです」
勇者「え、ええ!」
商人「お金はしっかり返してくださいね」
勇者「な、なんで!?」
商人「いや、当然でしょう?勇者さんが使ったお金なんですよ?」
商人「別に金利を取ろうとはいいませんし、時間がかかってもいいですから返してください」
勇者「そ、そんなお金ないよ!」
商人「それでも借金は借金です。では、私は行くところがあるのでこれで」
勇者「ちょっ!ちょっと待って!そんなに無理だから!」
商人「んー、もう、わかりませんか?私は勇者さんから金利も取りませんし、督促もしません」
勇者「?」
商人「用事があるからもう行くと言ってるんです」
勇者「わからないよ!」
商人「だーかーらー!私は勇者さんから借金を取り立てたりしないって言ってるんですよ!」
勇者「じゃ、じゃあ借金はなし!?」
商人「なしじゃありません!もうこんなことないようにしっかりしてください」
勇者「じゃあ返さないといけないじゃん」
商人「その気持ちでちゃんと働いてくださいね。それじゃ」
勇者「だ、駄目!」
ギュッ
商人「は、離してください。なんか金運が逃げていく気がします」
勇者「借金ならちゃんと返すよ」
商人「そうですか。ではがんばってください」
勇者「だ、だから・・・・・・」
商人「?」
勇者「だからお金貸して?次は勝つから」
商人「駄目だこの女・・・・・・・はやくなんとかしないと」
勇者「いいでしょ?ねっ、ねっ?」