パチッパチッ
勇者「?」
キョトンッ
商人「さあ、急ぎましょう」
パチパチッ
勇者「えへへー、そ、そんな誘惑されちゃったら困っちゃうなー」
商人(何言ってんの!?この子)
商人「違います!」
勇者「違うの?」
戦士「あ、そうだ!商人、お前アレもってたよな」
商人「あ、あれ?あ、これですか。はい、やくそう。修行には怪我が付き物ですからね」
商人「それじゃ!」
戦士「ありがと、もらっとくよ。んでアレなんだけど」
商人「あ、あれですね!はい、毒消し草。この辺蛇も多いでしょ」
戦士「いやぁ、いろいろもらっちまって悪いな。んで、アレなんだけど」
勇者「伝説の剣のこと?」
商人「ちょっ!!!」
戦士「そうそう、あれ看板にすれば人も寄ってくると思うんだ。村も発展するだろうし」
勇者「そうだねー」
戦士「商人、アレ譲ってくれないかな」
商人「あっ・・・・・・あう・・・・・・・あうっ・・・・・・で、では買っていただけるということで?」
戦士「ああ、ただなんていわねーよ」
商人「これはこのお値段になります」
パチパチッ
戦士「おい!これは桁が4つか5つくらい多いんじゃないか!?」
商人「わ、私はこれで売れるものと思っています。それだけの価値があると」
戦士「あたし達から買ったときはこんな高くなかっただろ!!」
勇者「そうだよ!もっと安い値段で買ってたよ!」
商人「あの勇者さん。あなたは私の商売仲間ですよね・・・・・・」
勇者「あ、そうだった、てへっ」ペロッ
商人「勇者さんはもう黙っててください!」
戦士「お前私達を騙しやがったな!」
商人「騙すとは人聞きが悪い!安く買って高く売る!これは商売の基本です」
戦士「そ、それでもこれはいくらなんでも」
商人「それに伝説の剣があればこの道場が流行ると思っているようですが、私はそうは思いません」
戦士「なんだって?」
商人「伝説の剣に集客力は確かにあるでしょう。魔王を倒した勇者の遺物の中でも最高のものですからね」
勇者「あの・・・・・・私まだ死んでない」
商人「それはこの世界の平和と同等の価値があるといっていいでしょう」
戦士「だ、だったらそれさえあればここはもっと・・・・・・」
商人「そうですか?私にはそれよりもっと素晴らしい価値のあるものがここにはあると思いますが」
戦士「え?ど、どこに?」
キョロキョロ
商人「それは・・・・・・戦士!あなた自身です!!」
ビシッ
戦士「!!」
商人(よし!いけるか!?)
商人(この剣は・・・・・・この剣だけは手放したくない!)
戦士「あ、あたし自身・・・・・・だって!?」
商人「そうです。魔王を倒した戦士さん、それ自体伝説であり、みんなの憧れでしょう」
戦士「で、でも子供しか習いにこないし・・・・・・」
商人「それは宣伝が足りないからです」
戦士「宣伝?」
商人「ええ、この道場の前以外にここがわかる看板はありますか?」
戦士「いや、だってこんな狭い村じゃ必要ないし」
商人「ここにではありません。世界中の町にです」
戦士「町に?」
商人「ええ、『魔王を倒せし戦士道場』とでもしてここを紹介すれば門下生などいくらでも集まるでしょう」
戦士「な、なんかそれ恥ずかしくね?」
商人「あなたのような超一流の戦士に剣を習えるのです。恥ずかしがる必要などありません」
戦士「あははは、そ、そっかなぁ。なんか照れるなぁ」
テレテレ
商人「ですので、伝説の剣などなくてもあなたは十分伝説です」
戦士「なるほど」
商人(よかった・・・・・・いけたか・・・・・・本当によかった・・・・・・・)
勇者「じゃあ戦士が伝説の剣を持ったら2倍すごいね!」
商人「あああ!もうこの子はあああああ!」
ガシガシ
勇者「頭かゆいの?」
戦士「そりゃそうだ!商人、剣も欲しいぞ!」
商人「代金をいただかない限りお譲りできません!これは商人としての誇りの問題です!」
戦士「そこをなんとか・・・・・・なっ、仲間のよしみで」
商人「では仲間のよしみで、この値段で」
パチンッ
戦士「だから高いって!!」
商人「これ以上はまかりません!」
戦士「じゃ、じゃあ借金で・・・・・・ん?勇者そういえばあんたの借金返すあてあるの?」
勇者「うん、商人と一緒に商売して帰すんだー」
戦士「そ、そんな儲かるの?」
勇者「すごいよ!」
商人「あ、なんかまたやな予感・・・・・・」
戦士「じゃああたしも・・・・・・」
商人「あっ!!急に電波が来た!!呼ばれてます!これで失礼!」
ダッ
戦士「待て」
ガシッ
商人「あ、あの戦士さん痛いです・・・・・・。肩が・・・・・・」
戦士「商人の誇りは分かった。だからお金は払う」
ギリリリッ
商人「いたたたたっ、ちょっ、ちょっと・・・・・・お金ないんでしょう?」
戦士「だから体で払う」
商人「体でって・・・・・・」
チラッ
戦士「な、何見てんだよ!違う!あたしもお前と一緒に行く」
商人「あっ、電波が強くなってきた!聞こえません!何も聞こえません!」
戦士「あたしも商人の商売に協力するから、なっ!」
商人「ど、道場はどうするんですか!」
戦士「大丈夫だって!どうせガキどもも遊び半分で来てるんだから」
商人「あ、あなたに剣を教える資格はない!!」
戦士「そういうことだから、よろしく、ねっ」」
ギリリッ
商人「か、肩が・・・・・・」
戦士「いいだろ?」
ギリリリッ
商人「わ、分かりました!ただし、お金払ってくれないと絶対売りませんからね!」
戦士「やった!」
商人「疫病神が二人に・・・・・・」
_| ̄|○ il||li
戦士「大丈夫だって!今だって商談成立させたでしょ?あたし結構商売の才能あるかも」
商人「いや、今のは脅迫・・・・・・」
戦士「それ商売に必要じゃね?」
商人「まぁ時には必要ですが・・・・・・はぁ・・・・・・」
勇者「わー、また3人で旅だ!なんか昔に戻ったみたい!」
キャッキャッ
―――夜
ソーッ
戦士「おい、勇者どこへいく」
勇者「あ、いや、トイレ」
戦士「部屋の中にあるぞ。そっちは廊下へ行くドアだ」
勇者「えっと、その・・・・・・えへへへへ」
戦士「商人のところか?」
勇者「いやぁ、まぁ寝る前に挨拶しておこうかと」
戦士「駄目だ」
勇者「えっ?」
戦士「さっさと寝ろ」
グイッ
勇者「な、なんでー別に変な事しないよ!一緒に寝るだけだから」
戦士「何か気に食わないから」
勇者「えー?」
戦士「おやすみ」
商人「では次は砂漠の町を目指します。あそこは大富豪が多いようですからね」
勇者「はーい」
戦士「へーい」
商人「戦士さん、これから商売について色々教えていきますから。私のことは師匠と思うように」
勇者「はーい!師匠ー!」
ギュッ
商人「だから腕に絡まないでください!」
戦士「砂漠の町っていうと結構とおいなー」
商人「ええ、ですので道中十分気をつけていきましょう」
戦士「気をつける?」
商人「泥棒や強盗などです。商人はいつもその危険に晒されることになりますから。高価な品を持っていれば特に」
戦士「んなもん、全部ぶった斬ればいいじゃん」
商人「駄目です、守る剣にしたんでしょう?」
戦士「守るために斬るのはいいんだよ」
商人「私の指示に従ってください」
戦士「へいへい」
―――山道
山賊「おう、てめぇらちょっと待ちな」
商人「出ましたか」
山賊「へへへ、ここを通りたきゃ通行料を払っていきな」
戦士「よっしゃー!あたしに任せろ!」
ジャキンッ
商人「駄目です!!」
戦士「な、なんでだよ」
勇者「商人どうする気?」
商人「通行料はおいくらほどですか?」
戦士「なっ!」
山賊「そうだなー。荷物全部と、へへへっ、そのきれーなお嬢ちゃん二人置いていってくれればお前は通っていいぜ」
商人「それはちょっとお高い」
山賊「んだと!?」
商人「現金であれば多少お渡ししましょう。こんなものでいかがですか?」
パチパチッ
山賊「て、てめぇ舐めてんのか?」
商人「いえ、お互い怪我はしたくないでしょう。お金で済むならそれで済ませたいというだけです」
山賊「怪我、俺達にか!?」
商人「ええ、これでも私達は結構な使い手ですよ、やりますか」
スッ
山賊「あっ、こ、こいつらあの勇者・・・・・・」
山賊「でも、女二人だぞ。やっちまってもいいんじゃねーか」
山賊「待て待て。危険な橋渡るこたあねぇ!てめえら金払おうっていうんだな」
商人「ええ」
山賊「通りな!」
商人「では、これお金です」
山賊「おう!」
戦士「なんでやっちまわなかったんだよ!この腰抜けやろう!」
商人「それはですね・・・・・・」
戦士「あー、もう言い訳なんて聞きたくねー。見損なったぜ!」
戦士「あれが商人の誇り!?笑わせんじゃねーよ!」
勇者「せ、戦士おちついてよ」
商人「ではあのまま戦って皆殺しにでもするつもりだったんですか?」
戦士「そ、それは・・・・・・」
商人「そこまでして守るための剣ですか?」
戦士「で、でも追い払うくらいは・・・・・・」
商人「それで誰かが怪我をしたら?殺してしまったら?」
商人「私達商人は全てのものがお金で買えると思っています。平和でも命でも」
商人「だからお金で解決できるならそれが一番なんですよ。勝てるとも限りませんし」
戦士「勝てるさ!」
商人「世の中には隠れた実力者がたくさんいるものですよ」
戦士「じゃあなんでそいつは魔王討伐にいかなかったのさ!」
商人「正しいことだけに力が使われるわけじゃないからです」
商人「分かりませんか?」
戦士「わっかんねーよ!」
商人「それは残念」
商人「もうすぐ町ですね」
勇者「つかれたよー」
戦士「・・・・・・」
盗賊「おう!ひゃっはー。待て!」
戦士「またか」