商人「絶対駄目です!ギャンブルも禁止!」
勇者「えー、じゃあどうやってお金返せばいいのー」
商人「返す気で働いてくださいってことです。ほんとに返さなくてもいいですから!」
勇者「それは駄目だよ。商人に悪いもん」
商人「いいですから、ほんともう。それじゃ」
勇者「だめっ!」
ギュッ
商人「なんですか、もう」
勇者「わ、私働いたことないし・・・・・・」
商人「あー、そういえばそうですね。んーっ」
勇者「だ、だから・・・・・・」
商人「じゃあ実家に帰ればいいじゃないですか。うんっ、それがいいです」
勇者「いやだよ!お母さんうるさいし」
商人「若いうちに孝行はしておけと言いますよ」
勇者「もうしたもん」
商人「いや、確かに世界救いましたけど・・・・・・」
勇者「じゃあ、体で払う」
商人「ぶっ!」
勇者「体で商人に借金払うから」
商人「げほっ・・・・・・げほっ・・・・・・何言ってるんですか!」
勇者「んふふ、知ってるんだよ。商人が宿屋で私達が着替えてるとき、チラチラこっち見てたの」
商人「ちょっ!!」
勇者「それに私達が部屋にいないとき一人で・・・・・・」
商人「わーーー!わーーーー!」
ブンブンッ
勇者「だから商人欲しいでしょ。私の体」
モジモジ
商人「駄目です!」
勇者「えー、なんでー」
商人「それじゃ私はさっきの黒服と同じじゃないですか」
勇者「あ・・・・・・」
商人「私はお金で勇者をどうこうするつもりはありません」
商人「勇者はちゃんと働いてください」
商人「働き方が分からないというならちょっと私のところで働いてみればいいでしょう」
勇者「ほ、ほんと!?」
商人「リハビリが終ったら普通のところで働いてください」
勇者「リハビリって・・・・・・ひどい」
―――露店
商人「分かりましたか?こっちが売る値段表、こっちが買う値段表」
勇者「う、うん」
商人「返事ははい!です。勇者さんは見習いなんですから」
勇者「えー」
商人「給料下げちゃいますよ」
勇者「は、はい!」
商人「よろしい」
勇者「商人のくせに・・・・・・」ボソッ
商人「何か言いました?」
勇者「ううん!」
商人「うーん、あとちょっと変装しておいたほうがいいですね。ほらっ、これ被って」
勇者「うわっ、なにこのフード」
商人「勇者さんが自分で売ってるなんて価値が下がってしまいますからね」
勇者「そういうものかな」
商人「では私は商談がありますので、出かけます。お願いしますね」
勇者「は、はい」
勇者「は、働くの初めて・・・・・・」
ドキドキ
勇者「い、いらっしゃいませぇ・・・・・・」
ドキドキ
勇者「い、いらっしゃいませー」
勇者「お客さんこないなぁ」
「んっ?勇者様の武具だって?」
勇者「あ、いしゃしゃいまふぇ」
勇者「あうあう」
「これ、あの勇者様が?」
勇者「は、はい。そう!あの超絶かわいくて、超絶かっこよくて、超絶モテモテの勇者様のだよ!」
「へぇ、この武器は?」
勇者「あ、それは1つ目のダンジョンの奥で見つけたやつだよ。結構長く使ってた」
「こっちは?」
勇者「それは魔物が持ってたやつで見た目は悪いけど切れ味はいいよ」
「詳しいね、お嬢さん」
勇者「え、あっ、という話を聞いたんです」
「ほー、まぁ鑑定書もついてるし、これいただけるかい?」
勇者「えっと、じゃあ値段表はどっちだっけ・・・・・・んーっ、これ」
「え?こんなに安いの?」
勇者「うん、そうみたいだけど・・・・・・」
「ラッキー、じゃ、これとこれも」
勇者「は、はい」
「え?マジ。安売り?」
「すげー伝説がこんな安いなんて」
ワイワイワイ
商人「はぁ、どうしよう。勇者さんアレ絶対疫病神だよ」
商人「前儲けたお金が消えてしまった・・・・・・」
商人「ついつい雇っちゃったけど・・・・・・うーん」
商人「おいてっちゃおっかなぁ」
商人「絶対金運下がる・・・・・・」
商人「しかし、勇者さん生活力ないから一人じゃ厳しいかもなぁ」
商人「実家帰ればいいのに・・・・・・」
富豪「貴重な品を売りたいとな?」
商人「はい」
富豪「ほぅ、見せてみよ」
商人「こちらでございます」
富豪「こ、これは」
商人「これこそは勇者が魔王軍との戦いで使いし剣。振れば疾風、突けば稲妻のまさに伝説の剣でございます」
富豪「お、おお・・・・・して、そなたは?」
商人「勇者とともに旅をした商人でございます」
富豪「なるほど、偽者ではなさそうだな」
商人「勇者から直々に渡された品でございます」
富豪「して値段は?」
商人「こちらで」
パチパチ
富豪「こ、これは、いや、しかし、高すぎではないか?」
商人「この値段は世界の平和の値段。そしてそれを買われる富豪様の価値となりましょう」
富豪「ほ、ほほぅ」
商人「世界を平和に導いたこの武具を持っているだけで、社交界などでの立場もあがりましょう」
富豪「ほ、ほんとうか!」
商人「はい。そしてこれを持っているということは世界の平和に貢献した証でもあるのです」
富豪「おお」
商人「清廉潔白、人望にも厚い富豪様にはぴったりのお品でしょう」
富豪「うむっ!買った!」
商人「ありがとうございます!」
商人「やれやれ、やっと一つ売れました」
テクテク
商人「勇者さんは頑張ってますかね」
勇者「あ、商人!!」
商人「勇者さん。お店番ご苦労様でした。どうでしたか?」
勇者「ほらっ、渡されたのは全部売れたよ!」
商人「どれどれ、ほほぅ、これは」
勇者「はい、これお金」
商人「・・・・・・」
商人(これは、勇者さん売値と買値間違いましたね・・・・・・)
商人(うむむ・・・・・・怒っては駄目です・・・・・・ぐぬぬぬ)
商人「ゆ、勇者さん・・・・・・」
ビキビキ
勇者「うん!」
商人「よ、よくやってくれました。勇者さんは出来る子ですね」
ナデナデ
勇者「えへへ」
商人(褒めて育てる・・・・・・褒めて育てる・・・・・・損して得とれ・・・・・・)
勇者「サービスにもう一個つけたらすごい勢いで売れたんだよ!」
商人「!!?」
勇者「どうしたの?」
商人「こ・・・・・・こ・・・・・・」
勇者「?」
商人「ハァーハァー!」
勇者「ん?」
商人「・・・・・・今日はもう休みましょう。疲れました」
勇者「うんっ!」
―――宿屋
商人「二部屋お願いします」
商人(一人になりたい・・・・・・私は貝になりたい)
勇者「えー、もったいないよ。いつもみたいに一部屋でいいよ」
商人「いえ、あの、勇者さん」
勇者「一部屋でお願いします」
宿屋「あいよ。お楽しみください。うひひひひ。はい、カギ」
勇者「どーも。さ、いこ」
商人「・・・・・・」
勇者「あれ?商人もう寝ちゃうの?」
商人「ええ、疲れましたので」
勇者「えー、お風呂はー?」
商人「結構です」
勇者「んふふー、背中流してあげようと思ったのにー」
商人「結構です」
勇者「ほらっ、見て見て商人」
商人「ん?」
勇者「ほらほらっ、セミヌード」
グイッ
商人「はぁ、もう。勇者さんももう子供じゃないんですからそういうことやめてください」
勇者「えー」
商人「私だって男なんですよ」
勇者「知ってるよー」
商人「だからそういうことは・・・・・・」
チラッ
勇者「みたっしょ?」
商人「な、何を?」
勇者「んふふー。今みたっしょ?ちらっと」
商人「し、知りません!」
勇者「結構おっきいでしょ、ね」
商人「お休みなさい!」
ガバッ
勇者「あーあ、ほんとに寝ちゃった」
勇者「つまんないのー」
勇者「ふぅ、あれ?これって」
勇者「経理簿?商人のかな」
勇者「えへへ、商人の財産ご開帳ー♪なんちゃって」
ペラッ
勇者「お・・・・・・おおー黒字だー」
勇者「あ・・・・・・これ私の借金返したところでほとんど0に・・・・・・」
勇者「!?」
勇者「あ・・・・・これって私の今日の売り上げ・・・・・・あっ、売値と買値の表が・・・・・・」
勇者「じゃ、じゃあなんで怒らなかったんだろう?」
勇者「それどころか褒めて撫でてくれたのに・・・・・・」
勇者「商人馬鹿なのかな?」
勇者「ってそんなわけないか・・・・・。怒らないでくれたんだ・・・・・・」
勇者「商人・・・・・・」
勇者「ごめんなさい・・・・・・ごめんなさい・・・・・・」
ポタポタッ
勇者「ありがとう・・・・・・商人」
ギュウッ
商人「んむぅ、むにゃむにゃ。褒めて育てるぅ・・・・・・」
勇者「おやすみなさい。商人」
チュッ
チュンチュン
商人「んぅ、朝か・・・・・・」
ムニュ
商人「んっ!?」
勇者「むにゃむにゃ・・・・・・商人ー」
商人「な、なんでこっちのベッドに勇者さんが・・・・・・」
チラッ
商人「こ、この果実は・・・・・・い、いけないけない!」
商人「勇者さん!勇者さん!朝ですよ!」
ユサユサ
勇者「んーっ、あと5分ーむにゃむにゃ」
商人「時は金なりですよ!勇者さん!」