勇者(いずれも水魔王と変わらないらしいけど、能力は炎と大地)
勇者(四天王もそうだった、『雷帝』『水帝』『炎帝』『地帝』の四人だ)
勇者(となると……もしかしたら彼らはぼくの知る四天王の祖先に当たる存在なのだろうか)
勇者(でも……)
勇者(分からない事だらけだ)
「おかえり勇者」
勇者「ただいま、大丈夫? 怪我はないね?」
「うん」
「……かっこよかったよ、さっきの」
勇者「さっきの?」
「ずっとあの魔物に圧力をかけてたでしょ、私に危害を加えないように」
勇者「そりゃ…そうだよ、君はほら……」
勇者「・・・えーと」
「ふふん、勇者として弱い女の子は守らなきゃ?」
勇者「そう、それ」
「ふーん」
「とりあえずお風呂入ってからご飯にしよ? あなた」
勇者(……)
(……思ったより恥ずかしいや)
数日後
勇者「ねぇ、大丈夫?」
「え、へぇ?」
勇者「ここ最近顔が赤いから」
「えー…大丈夫、だよっ」
勇者「本当に?」
「…………」
「ちょっと風邪気味です」
勇者「もう……待ってて、すぐに薬買ってくるから」
「行ってらっしゃい、勇者」フラフラ
(……勇者、私のために………………)
「うれしい…な」キュン
炎魔王「……ガハッ」ガクッ
勇者「……命は奪わない、急いでる」チャキッ
炎魔王「き、貴様は一体……」
勇者「死にたいならいつでも勝負は受ける、でも今は急いでるんだ」
炎魔王「くっ……」
勇者(薬草……確かこの先にあったはず)
勇者(あぁもう! どうして今日に限って薬屋が閉まってるんだ!!)ヒュッ!!
炎魔王(……ウ、ぐ)ヨロッ
炎魔王(噂通りの強さか、物理攻撃の効かない俺を一撃で仕留めて来るとはな)
炎魔王(俺も帰って一族の者達と鍛え直そう、でなければ水帝と雷帝に顔向け出来ん)
フラフラ
勇者B「どちらへ行かれるのですか」ドズンッ
炎魔王「!!?」ビチャッッ
炎魔王「ゴフッ…!! 貴様、見逃すと言っただろう!?」
勇者B「『私』が言ったのではありませんので、その契約は無効です」ヒュッ
ズバンッ
ボトッ
勇者B「・・・」オオオオ
バシュンッッ
勇者「ただいま! 薬草持ってきたからまっててね」
「……」
勇者「……どうかした?」
「勇者、私昨日勇者に何した?」
勇者「何って」
勇者「………なんだろう、沢山感謝するような事はしてもらったかな」
「!」
「おかえり! どこに行ってたのかな?」パァァ
勇者「く、薬屋だよ」
「ここの裾が焦げてるんだけどなーー」
勇者「う……」
「えへへ、甘い甘い」
勇者(ほんとこの子、勘が良いよね)
数日後・図書館
勇者「………」パラッ
勇者(・・・見つけた)
女「見つかりましたか?」
勇者「うん、悪いけど一人にしてもらって良いかな」
女「はい! 何かあれば呼んで下さいね?」
勇者(……歴史書第2の巻)
勇者(殆どこの国が出来た頃の話だ)
勇者(『かつてこの大陸には2つの国が存在し、同じく2つの城が存在した』)
勇者(『西の国』と『東の国』……『現在王国と呼ばれているのは西の国である』)
勇者(・・・じゃあ魔王城があったのは、『東の国』?)
勇者(『西の国と東の国の力は均衡しており、当時の戦力では決着はつかなかった』)
勇者(『しかしその後、神と契約した伝説の戦士が誕生』)
勇者(『戦士一人に東の国は成す術はなく陥落、その後数年間も東の国の王族は奴隷として使われた』)
勇者(まさかこの戦士って……『勇者』なのか)
パラパラ
勇者(……?)
勇者「あれ……この先のページが切り取られてる」
女「えぇ? ページが破れてる?」
勇者「そうなんだ、どうにかならないかな」
女「わぁ酷い……貴重な本なのに」
勇者「え、写本はないの?」
女「無いですよ、それだけ歴史的価値があるのに……」
勇者(……)
勇者「因みに、この破れてる先の内容と同じ時期の歴史書はあるかな」
女「あると思いますよ、今探して見ますね」
女「ありました、一冊しかないですけど」
勇者「ありがとう」
パラパラ
勇者「……!」
勇者「これって……『魔物図鑑』だよね」
女「実際に冒険家が旅をしながら魔物をスケッチしたそうです」
勇者「あのさ、ここの冒頭に書いてある事は…本当かな」
女「多分そうですよ、何でですか?」
勇者「・・・」
勇者(東の国が王国に支配されて二年後に、魔物が突然世界中で現れた……?)
勇者(これは偶然? 東の国の怨念が魔物になったとか?)
勇者(・・・)
「おかえり勇者、今日のお昼はサンドイッチだよ」
勇者「包んでくれるかな? ちょっと今日も東の方に行って来る」
「東の……?」
勇者「前に話した朽ちた城だよ」
「………」
ギュッ
勇者「え、あの……」
「行かないで」
「あそこには……もう、行かないで……」ギュゥゥ
勇者「……ぁ」
勇者「………っ」
勇者(この子の名前が言えないぼくって…!)
勇者「・・・分かった、もう行かないよ」
勇者「でも今夜ぼくのお願いを聞いてくれるって約束、してくれるかな」
「……分かった」
キマイラ【バキャァアッ】
勇者「……」ヒュッ!!
ゴシャァッ
キマイラ【】ドサッ
リザードマン【・・・!】
勇者「……」バシュンッッ
スタッ!
リザードマン【!?】
勇者「……」ザシュンッッ
リザードマン【】ゴトンッ
勇者(…今日の討伐依頼は終わり)チャキッ
中央城下町・噴水広場
勇者「………」
勇者(昼間は咄嗟にあんなこと言ってしまったけど)
勇者(何をお願いしたら良いんだろう)
勇者(……それに、あの子のあの嫌がりようも)
勇者(・・・)
『こんなところで何してるの、勇者』
『………』くすくすくす
勇者(思えば、あの子はこの噴水広場で会ったんだよね)
勇者(あの時、彼女は突然話しかけてきて……)
勇者(……ぼくの隣でお疲れ様って、言ってくれた)
勇者(・・・)
勇者(いつも不思議な雰囲気を持ってて、いつもぼくの為に小さな事を頑張ってくれる)
……ズキッッ
勇者「っ……ぁ」ガクッ
勇者(な、何……? なんで胸の辺りがこんな……)
ジワッ
勇者「!? 血が……」
勇者(服を脱いで止血魔法をしないとまずい……)ビリッ
勇者「・・・えっ」
勇者(傷なんてどこにもない……)
勇者(……今のって、一体…)
勇者(………)
勇者(帰ろう、疲れてるのかも)
勇者「……っ」ピタリ
勇者(そう言えば、あの子がぼくの隣で居るようになって感じた事があった)
勇者(あの子の近くにいると……疲れが癒えて行くんだ)
勇者(心も、体も、何かに満たされていくような………)
勇者「…ただいま」
「おかえり!」パタパタ
勇者「うん、何かあった? 嬉しそう」
「ううん、今日も勇者が帰って来てくれたから」
勇者「そっか」
「あのね、今日は商店街で珍しいニューヨクザイっていう……」
ムギュッ
「………!!」ビクッ
勇者「……」ギュゥゥ
「ゆ、ゆうしゃ……?」
勇者「……これが幻でないなら」
勇者「君が本当にぼくの腕に抱かれてるなら」
勇者「今までの君が本物なら・・・」
勇者「どうか応えて欲しい」
「……」
勇者「ぼくに君の名前を呼ばせて欲しい……君の名前を教えて欲しい……」
勇者「もっと君の近くに、一緒に居たいんだ」
「・・・っ」
勇者「………」
「・・・」
ギュッ
「それが勇者の『お願い』なんだね」
勇者「うん」
「私ともっと近くに、一緒に居たいんだね」
勇者「そうだよ」
「……」
「いいよ、今度こそ応えないとだよね」
勇者「・・・」
「私の名前は…………」
王女「……『東の国・王女』、それが私の名前」
勇者「!!」
王女「驚いちゃう……よね」
勇者「東の国って確か、何百年も昔に!」
王女「………」
王女「ねぇ、名前呼んで」
勇者「え、あ……」
勇者「……王女」
王女「はい」ギュゥゥ
王女「勇者のお願い、ちゃんと叶えられたよ」ボソッ
勇者「・・・」ギュゥ
翌朝
勇者「……」モゾモゾ
王女(……えへへ)
王女(可愛いな、勇者の寝てる姿)
王女(・・・)スゥ
チュッ