王女(……)
王女(最後のお仕事しなきゃ)ムクッ
王女「行ってきます、勇者」
バシュンッッ
国王「なんと……それは真か!!」
騎士「間違いありません!!」
国王「おお……きっと勇者が魔物の親玉を討ったに違いない」
尖兵「報告します!!」ザッ!
尖兵「急速に魔物達は次々と消滅! 現在、王国周辺には魔物はいません!!」
勇者B「………」オオオオ
勇者B「やるじゃないですか、まさかこうも容易く『彼女』を惚れさせるとは」
勇者B(さて、こうなると『彼』の功績は私以上か)
勇者B( 神 に多少の減刑を申し立てしてあげましょうかね)
勇者B(……では行きましょう)ザッ!
勇者B「この下らない弱者のおままごとを終わらせる為に、ね」
バシュンッッ
バシュンッッ
王女「……」スタッ!
王女(これで、これで私は終わり)
王女(勇者と幸せな人生をおくって、沢山沢山……勇者と幸せになる)
王女(これで、終わり)
ガチャッ
王女「ただいま、勇者!」
勇者B「おかえりなさい」
王女「………ぇ」
勇者B「どうかした?」
王女「………勇者はどこ?」
勇者B「二階の寝室でまだ寝てました、余程あなたとの夜に満足したようだ」
王女「………」
勇者B「いやいや、中々貴女を見つけられないと思ってたらこんな民家に住んでいたとはね」
王女「……出ていって」
勇者B「まるで不倫相手にでも言いそうな台詞だ、今の状況を理解していますか?」
王女「…………」
王女「っ!!」バシュンッッ
勇者B(やはり『彼』を気にして逃げたか、行き先も予測済みだ)
勇者B(亡国の王女、貴女は私が殺すのではない)
勇者B(貴女は『勇者』に殺される)
バシュンッッ
朽ちた城
バシュンッッ
王女「っはぁ……はぁ、勇者………」
王女(『勇者』が、あいつが来た……っ)
王女(今度は大丈夫だと思ったのに、また・・・)
勇者B「お疲れですか」バシュンッッ
王女「……!」
勇者B「さて、もう貴女は終わりです」
勇者B「お得意のマジックはあと400年先まで使えない、まだ『駒』すら整ってもいない」
勇者B「……ほら、避けないと死んでしまいますよ?」
ヒュッ!!
王女「っっ!!」
ガギィン!!
土魔王「……」
勇者B「へぇ、まだ残してあったんですか」
ガガガガガガガガガッッッッ!!!!
土魔王「……ッ」バラバラ
勇者B「脆い」ヒュッ!!
バガァンッッ
王女「土魔王……!」
勇者B「四天王にも満たない相手では、ね」
王女「……」ジリッ
勇者B「命乞いの準備は? 貴女が存在した事によってどれだけの人間が犠牲になったと?」
勇者B「罪には罰を、刃向かう者には斧を」
ジャキリッ………ッ
王女(まだ、まだ諦める時じゃない! 私は、私は必ず………)
雷魔王「………」ズオオン
水魔王「………」ズオオン
炎魔王「………」ズオオン
勇者B「召喚…! 一人は私が殺した筈ですが」
王女「……勇者が倒す度に蘇って強くなるようにしたの、勇者なら絶対負けないと思ってたから」
王女(もう必要なくなったと思ってたけど、こいつに使うなんてね)
勇者B「はは、出来損ないの『彼』も一応は勇者を名乗る者ですからね」
勇者B「まぁもっとも……私はその遥か上に位置するんですが」
王女(……行きなさい)
炎魔王「……」ギュオゥッッ
雷魔王「……」バリバリィッ
水魔王「……」バシャァツ
ベシベシッ
勇者「ん……おはよう」
スライム娘『勇者! た、助けて下さい!』
勇者「!」
勇者「一体どうした…の?」
勇者「スライム・・・君、体が透けて…!」
スライム娘『私の事はいいんです! これが私達の幸せなんです!』
スライム娘『それより勇者! 今すぐ魔王城に行って下さい!』
勇者「魔王……」
勇者(何故この子が魔王城という名を? いやそれより)
勇者「・・・何が起きてるんだ? どうしたら良い」
スライム娘『それは……主をたすけバシュンッッ
勇者「!!」
勇者「よくわからないけど、これは……」
勇者(よくない事が起きてる?)
勇者「王女! どこにいる!」
勇者(王女もいない? くそ、何を呑気に寝ていたんだぼくは!!)バッ
ガシャッ
チャキッ
バサァッッ!!
勇者(………)
王女『「………東の国・王女、それが私の名前」』
勇者(あの子は、滅亡した国の王女だった)
勇者(そして魔王城に近づくのを彼女は嫌がっていた、何か関係してる)
勇者(・・・違う、嫌がっていたんじゃない)
勇者(王女は、ぼくに何か知られる事に怯えていたんだ)
勇者B「……さて、片付きました」ザッ!
王女(強い…やっぱり力の大半が無くなった私の四天王じゃ勝てない)
勇者B(おっそいですね……このままではただ殺して終わりになってしまう)
勇者B(それではいけない)
勇者B「 『罪には相応の罰を』 それが神の意思なのですから 」
王女「……」ゾク
勇者B「もう駒が無いのなら逃げては如何です? 二秒だけ見逃しますよ」ジャキリッ
王女(ひっ・・・)
バシュンッッ!!
勇者「・・・シィッッ」ヒュッ
勇者B「!」
ギィンッ!!
勇者B(っ、これは……!?)ズザザザザ
勇者「王女!」チャキッ
王女「……勇者」
勇者「良かった、無事みたいだね」
王女「勇者…来てくれた」
勇者B「何を安堵しているんだか」オオオオ
勇者「ッ! 動けるのか」
勇者B「ヒットした瞬間に私に電流を流して麻痺させたつもりですか、やはり出来損ないですね」
勇者「……ぼくにそっくりな君は何者なんだい」
勇者B「そっくりな、ですか」
ヒュッ
勇者B「果たしてそうでしょうかね、そこの王女ならば分かるのではないでしょうか」スタッ!
勇者(ッ!! 背後に……)
ゴバァァンッ!!
勇者「ッッ…!!」
王女「勇者ぁ!」
勇者「…ゥ、ぐ」バシャァッッ
勇者B「詠唱も魔法名も唱えずに水魔法を操れるんですか、凄い凄い」ゴオオオオオ
勇者「・・・ッ」ジュゥゥゥ
勇者(今の炎……ただの炎じゃない)ジュゥゥゥ
勇者B「……さて、本題に入りましょうか」
バシュンッッ
王女「!?」
勇者B「この一見すると可憐な少女、勇者にはどう見えます?」グイ
勇者「その子から離れろ……」
勇者B「………やはり『覚えていない』らしいですね」
勇者B「この子はね、君にとってはとても因縁のある相手なんですよ」
王女「やめて!!」バシュンッッ
勇者B「おっと」バシュンッッ
ガガガガガガガガガッッッッ……!!!!
ドガァッ!!
王女「ぁあッ……」
勇者B「はは、まだ話しは終わっていません」
勇者「王女……!!」
勇者B「勇者……貴方は彼女がどう見えました?」
勇者B「超移動魔法を駆使して、音を越える速度の体術を操る彼女が、どう見えましたか」
勇者B「・・・ただの亡国の姫が成せる技ですかね」
勇者「……」
王女「やめて!! やめてぇ!!」
勇者B「彼には真実を知る権利がある、違いますか」
勇者「ぁあ違う、お前は私が相手だ……!!」
バシュンッッ
ガギィィンッ
勇者B「・・・では相手をしましょうか、『あの時』のようにね」ギュオゥッッ
バシュンッッ
バシュンッッ
ガギィン!!
ドガァッ ヒュッ!! ザッ!
ゴォオゥッッ バシャァッッ!!
スタッ!
勇者「……!!」バシュンッッ
ガガガガガガッッッッ
ドガンッ!! ザシュンッッ
バシュンッッ バシュンバシュンッッ!!!!
バシュンッッ
勇者B「……そろそろですかね」ボソッ
バシュンッッ
……次々と空気中に鳴り響く破裂音。
二人の勇者が瞬間移動魔法を手足の如く操り、凄まじい攻防を繰り広げているのだ。
両者の扱っている魔法は四天王や魔王のみしか扱えない程の魔力消費量を誇り、故に連続使用は避けるべき戦術。
しかし両者は止まらない。
この程度で止まるような魔力しか持ち合わせていないならば、四天王にすら劣るのだ。
勇者「・・・ッ!!」
空間を飛び越えながらの超戦闘の最中、 勇者の眼が虚空を捉えた。
ギィンッ
ガギィン!! ガガガガガガガガガギギギギギィィィンッッッ!!!!!
抜刀した際に爆ぜた火花を吹き散らす。
否、更なる剣撃の嵐が閃光の雨となってその場を支配しているのだ。
勇者B「………フゥ」キィィン
勇者「………ッ!!」ガガガァッ
虚空から突如繰り出される斬撃を予知して防ぎ、虚空から現れる者の動きを予知して剣撃を飛ばす。
バシュンッッ!!
勇者B「……へぇ、粘りますね」
バシュンッッ!!
勇者「ハァ……はぁ………」スタッ!
勇者B「実力が上がったんじゃないですか? 剣撃や速度だけなら私と大差ありません」
勇者「・・・」チャキッ
勇者B「時間がかかってしまいますね、貴方を消すだけで」
勇者B「あー、でも私が手を下すまでもないですね」
勇者「なに…?」
勇者B「だってほら、忘れているようですが『我々の敵』は何でしたか?」
勇者「……魔王だ」
勇者B「ならばほらほら、そこにいますよ?」
勇者「!」
王女「ぁ…」